株価
ワールドホールディングスとは

株式会社ワールドホールディングスは、福岡県福岡市博多区に本社を構える総合人材サービスグループであり、全国で人材派遣・請負・コンサルティング事業を展開する東証プライム上場企業である。JPX日経中小型株指数の構成銘柄にも選定されており、国内の人材・人手不足を背景に事業を拡大してきた企業のひとつである。
同社の中核を担うのが、子会社である株式会社ワールドインテックで、製造業向けの労働者派遣および請負事業を主力としている。研究者派遣、技術者派遣、システム受託開発、販売職・施工管理技術者の派遣など、多様な分野での人材サービスを提供している。特に2004年の労働者派遣法改正により製造業への派遣が解禁されたことを追い風に急速に事業を拡大し、製造アウトソーシング分野では国内上位の規模に成長している。
その後、同社は情報通信事業や不動産事業にも進出し、2014年7月1日には持株会社体制へ移行し、現在の株式会社ワールドホールディングスとなった。多角化により収益基盤が広がったことで、景気の変動を吸収しやすい事業ポートフォリオを構築している。不動産分野ではマンション分譲や不動産再生、販売事業なども手がけ、グループ総合力を活用した事業展開が特徴的である。
また、グループ会社である株式会社ワールドスタッフィングのロジスティクス事業部では、Amazonの国内主要物流センターの運営・管理を担うなど、大型物流案件にも深く関与している。EC市場の拡大による物流需要の増加を背景に、同社の物流関連事業は安定した成長が期待される分野となっている。
なお、同社はアパレル大手「ワールド」(本社:神戸市)とは無関係であり、システムインテグレーターのインテック(富山市)とも関連はない。また、創業者の伊井田栄吉(代表取締役会長兼社長)は、かつて不動産会社・みくに産業(現・ミクニ)を創業した人物であり、事業拡大において経営基盤を築いてきた実績を持つ。人材・派遣・請負を主力にしつつ、技術者・研究者派遣、サービス業派遣、物流センター運営、不動産開発と事業領域を広げ、多角化による強い経営体制を築き上げている企業である。
ワールドホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期(単位百万) | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.12 | 154,704 | 7,481 | 7,738 | 4,626 | 265.0 | 79.5 |
| 連22.12 | 183,640 | 8,929 | 8,933 | 5,341 | 305.5 | 91.5 |
| 連23.12 | 213,742 | 10,365 | 10,251 | 6,204 | 353.6 | 106 |
| 連24.12 | 242,226 | 8,593 | 8,551 | 4,981 | 280.4 | 84.2 |
| 連25.12予 | 281,000 | 10,200 | 9,400 | 5,400 | 301.8 | 106.2 |
| 連26.12予 | 290,000 | 10,500 | 9,700 | 5,600 | 313.0 | 110 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | -4,765 | -5,990 | 15,064 |
| 2023 | -3,355 | -11,484 | 20,579 |
| 2024 | -1,444 | -2,970 | 5,995 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.8% | 15.4% | 3.8% | ― | ― |
| 2024 | 3.5% | 11.1% | 2.8% | 9.9倍/6.1倍 | 1.00倍 |
| 2025予 | 3.6% | 12.1% | 3.0% | 予想8.87倍 | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ワールドホールディングスの業績推移を見ると、売上は2137億円から2422億円、そして予想では2810億円へと順調に拡大しており、人材派遣・請負、物流支援、不動産関連事業が幅広く貢献している。一方で利益については、23.12期の営業利益103億円から24.12期には85億円へと一度落ち込み、利益率の低下がみられた。
これは人材採用コストの増加や物流領域でのコスト上昇、不動産事業の計画変動などが複合的に影響したものと考えられる。ただし25.12期では営業利益102億円、経常利益94億円、純利益54億円と再び回復する見通しが示されており、今回の減益は構造的な悪化というよりは、一時的な影響の可能性が高い。EPSも280円から301円へと戻る計画となっており、収益基盤自体は大きく崩れていない。
収益性の指標を見ると、ROEは直近で10〜12%台、営業利益率は3〜4%台と、派遣・請負企業としては平均的な水準ではあるものの、安定感のある数字になっている。またPERは9.9倍/6.1倍という実績水準にとどまり、PBRも1倍付近と低く、市場から割安に評価されていることが分かる。売上の成長性に対して株価水準は抑えられており、財務体質がしっかりしているにもかかわらず割安放置されやすい点は、この銘柄の特徴でもある。
総合的に見ると、売上は堅調に伸びており、利益も一時的に落ち込んだとはいえ翌期には改善が見込まれている。指標面ではPER・PBRともに割安で、EPSや配当も安定していることから、バリュー株としての魅力が強い銘柄といえる。特に人材派遣・請負業は景気に左右されやすい反面、ワールドホールディングスは多角化と規模拡大によって事業基盤を固めており、下値の堅さにつながっている。
短期で大きな値上がりを期待する銘柄ではないものの、中期から長期にかけて着実な売上成長と株価見直しを狙えるタイプの企業であり、安定した評価益と配当を享受しながらじっくり保有する投資スタンスが取りやすいだろう。
配当目的とかどうなの?
ワールドホールディングスの予想配当利回りは、連25.12期で約3.98%、連26.12期では4.13%と4%前後の利回りが見込まれている。東証プライムの平均利回りがおよそ2%台であることを考えると、同社の配当水準は「比較的高配当」と言える部類に入り、配当狙いの投資家にとって十分に魅力的な利回り水準となっている。特に同社は業績が大きく落ち込んだ24.12期でも減配を行わず、その後は増配基調に戻している点からも、配当方針は安定志向であり、株主還元の姿勢は強い。
一方で、配当を継続的に支える根本は利益水準であり、派遣・請負業という業種特性上、景気や需要動向次第で収益が変動しやすい面はある。とはいえ、25.12期以降は再び利益が持ち直す見込みとなっており、EPSの回復も続いているため、足元の収益環境は悪くない。売上の拡大トレンドも継続しているため、現状の利回りが急激に悪化するリスクは限定的と言える。
また、配当利回りが4%前後という水準は、株価の下支え要因としても機能しやすい。PERやPBRが割安に放置されていることを踏まえると、高配当の魅力と割安バリューの両面で投資妙味がある銘柄になっている。減配リスクが特別高いわけではなく、むしろ複数事業で分散された収益構造が安定感を持たせているため、中長期で配当を受け取りながら保有するには適したタイプの企業といえる。
総じて、ワールドホールディングスは「安定配当+割安株」という特徴が合わさり、配当目的の投資にも十分向いている銘柄と言える。高い成長性を追うより、着実な利回りと値上がり余地の両方を期待しながら保有するのが現実的な投資スタンスになるだろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価は2,662円で、ここからの5年間の値動きを考えるうえで鍵となるのは、ワールドホールディングスが展開する「製造派遣・請負」「物流支援」「不動産事業」という3本柱がどれだけ安定的に成長し、収益性を維持できるかである。同社は国内製造業の人手不足を背景に堅調な需要を取り込んでおり、売上は年々増加している。実際に売上は2137億円 → 2422億円 → 2810億円(予想)と力強く伸びており、事業規模は右肩上がりで拡大している。
一方で利益面は変動が大きく、23.12期→24.12期では営業利益が103億円から85億円へと一時的に落ち込んだ。これは人材採用費や教育コストの増加、物流関連の費用増、不動産開発計画のタイミングなど複数の要因が重なったためだとみられる。ただし25.12期予想では営業利益の回復が見込まれており、減益が構造的な悪化ではなく「一時的な調整」である可能性が高い。EPSも280円→301円へと再び戻る見通しで、利益を生み出す基盤はしっかりしている。
株価指標を見ると、PERは実績で9.9倍〜6.1倍、PBRはほぼ1倍と、明確に割安水準にある。財務体質も比較的健全で、自己資本比率も厚く、高配当が続いていることから市場では「下値が固いバリュー株」として認識されやすい。事業の多角化が進んでいるため景気変動の影響も分散されており、派遣・物流・不動産それぞれの収益サイクルが補完し合う構造になっている点も評価材料である。
良い場合は、人材派遣・請負事業が活発化し、製造業の増産や物流需要の拡大が追い風となり、営業利益率が4%台後半まで改善するシナリオが考えられる。不動産事業も堅調に利益を出せれば、ROEは13〜15%程度まで回復し、割安放置されていた株価が再評価されやすくなる。この場合は、5年後の株価が3,400〜4,000円程度まで上昇する展開も十分あり得る。
中間の場合は、売上の成長は続くものの利益率の大幅改善は見込めず、営業利益率は3.5〜4%前後、ROEは11〜13%付近で推移する可能性が高い。極端な景気の波がなければ堅調に推移するものの、強い上昇材料も乏しいため株価はゆるやかに上昇する程度となる。この場合、5年後は2,800〜3,200円程度が想定される。
悪い場合は、景気後退で製造業の稼働率が低下し、派遣需要が縮小するシナリオである。不動産事業の売上計上もタイミングによっては弱含みとなり、営業利益率は3%台前半にとどまる可能性がある。この場合、株価は2,000〜2,300円程度まで調整することもあり得る。ただしPBR1倍付近・配当利回り4%前後という環境が下値を支えるため、大幅な下落に至りにくいことも特徴だ。
総合すると、ワールドホールディングスは売上の成長力が高く、事業の多角化で安定感もある一方、利益率が高くないため劇的な成長株にはなりにくい。しかし割安指標と高配当が投資妙味を生み、長期的に見れば「下値の固いバリュー株」として評価できる。短期で急騰を狙うというより、中期〜長期で業績の安定成長と株価の見直しを待つ投資スタンスに向いた銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月1日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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