株価
ぐるなびとは

株式会社ぐるなびは、日本最大級の飲食店情報サイト「ぐるなび」(現在は楽天との連携強化により「楽天ぐるなび」として展開)を運営する企業で、本社は東京都千代田区に置かれている。食に関する総合的な情報プラットフォームを提供し“日本発、世界へ”を基本方針に掲げ、日本の食文化を国内外に発信することを理念としている。ぐるなびはもともと交通広告を取り扱うエヌケービー(NKB)の一部門として発足し、創業者は滝久雄(NKB創業者・滝冨士太郎の子)であり、現在も個人として大株主となっている。また、NKBの顧客企業である小田急電鉄や東京地下鉄(東京メトロ)も大口株主として名を連ねている。
ぐるなびのビジネスモデルの特徴は、一般ユーザーの口コミ主体のCGM(消費者生成メディア)型のグルメサイトとは異なり、「飲食店の販売促進支援」を事業の中心に据えている点である。収益の約9割が有料加盟店からの広告料や手数料で構成されており、飲食店向け販促ソリューション企業としての性格が非常に強い。総掲載店舗約50万店に対し、有料加盟店舗数は5万6,967店(平成28年3月期末時点)と大規模で、飲食店の集客・経営支援プラットフォームとして長い歴史を持つ。
2018年には楽天が創業者の滝氏から株式の一部を取得し、資本業務提携を締結。これにより「楽天ポイント」「楽天会員システム」と連携した送客モデルが強化され、2019年には楽天出身の杉原章郎が社長に就任している。こうした背景から、ぐるなびは単なる飲食店検索サイトにとどまらず、飲食店のDX支援、予約管理、在庫管理、マーケティング支援など“店舗の業務パートナー”としての役割を強めている。
また、傘下のぐるなび総研を通じて、その年に話題となった料理やメニューを「今年の一皿」として選定・発表する取り組みを行っており、日本の食文化トレンドを分析・発信する研究機関としての側面も持つ。
提供している主なサービスは多岐にわたる。「ぐるなび」を中心に、飲食店向け管理サービス「ぐるなびPRO for 飲食店」、ユーザー向けポイント・会員サービス「ぐるなびPRO for メンバー」、接待・会食ニーズに応える「こちら秘書室」、食品ECの「ぐるなび食市場」、宅配情報サイト「ぐるなびデリバリー」、結婚式場紹介「ぐるなびWEDDING」、旅行グルメ情報「旅ぐるたび」(2023年サービス終了)、スキー場情報サイト「SURF&SNOW」(後にSGグループへ譲渡)、かつて提供していた「えきから時刻表」、グルメキュレーションサイト「ippin」、訪日外国人向け情報サイト「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」、有料グルメガイド「クラブミシュラン」(2022年終了)、食に関する読み物サイト「みんなのごはん」など、多様な事業領域を展開している。
他社連携にも積極的で、「ミシュランガイド・デジタル」のオンライン配信事業、東京メトロと連携した「レッツエンジョイ東京」運営(後に譲渡)、海外観光客向けに45社が参画する「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO」、トリップアドバイザーとの相互連携、アメリカン・エキスプレスとの「ダイニング・トレンド」など、幅広い企業と協業している。
総じて、ぐるなびは飲食店の集客・経営支援を中心に、食文化発信・EC・訪日観光・企業プロモーションなど多岐にわたるサービスを展開し、単なる飲食店検索サイトにとどまらない総合“食ビジネスプラットフォーム企業”として進化を続けている。
ぐるなび 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 12,296 | -1,724 | -1,664 | -2,286 | -44.3 | 0 |
| 連24.3 | 12,982 | -339 | -277 | -363 | -9.0 | 0 |
| 連25.3 | 13,458 | 262 | 261 | 211 | 2.0 | 0 |
| 連26.3予 | 14,900 | 300 | 210 | 230 | 4.1 | 0 |
| 連27.3予 | 16,000 | 450 | 360 | 300 | 5.3 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -1,042 | -123 | 2,449 |
| 2024 | -1,498 | -718 | -693 |
| 2025 | 921 | -1,049 | -209 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | -14.1% | -33.6% | -17.6% | – | – |
| 2024 | -2.7% | -6.0% | -3.2% | – | – |
| 2025 | 1.9% | 4.2% | 1.8% | 196.0倍(高値) / 123.0倍(安値) | 1.87倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ぐるなびの直近3年の業績を見ると、売上は24.3期が129.8億円、25.3期が134.5億円、26.3期予想が149.0億円と、わずかながら右肩上がりで推移している。コロナ禍で大きく落ち込んだ外食市場が徐々に回復しており、それに合わせてぐるなびの事業も少しずつ正常化している印象がある。ただし、収益面を見ると改善はしているものの力強さには欠ける。
営業利益は24.3期がマイナス3.3億円、25.3期が2.6億円、26.3期予想が3.0億円と、黒字転換したとはいえ利益規模はまだ小さい。営業利益率も24.3期のマイナス2.7%から25.3期は1.9%に改善し、26.3期も2%台の見通しとプラスに浮上している。とはいえ競争の激しい IT・プラットフォーム業界において、営業利益率が2%前後というのは依然として低く、収益構造は脆弱なままと言える。
経常利益は24.3期がマイナス2.7億円、25.3期が2.6億円、26.3期予想が2.1億円となり、こちらも黒字を維持している。一方、純利益は24.3期がマイナス3.6億円、25.3期が2.1億円、26.3期予想が2.3億円と、黒字化後は安定しているが規模は小さい。飲食店向けサービスのDXや楽天との連携強化など成長の芽はあるものの、利益が大きく伸びていくには時間がかかりそうである。
ROEは24.3期がマイナス6.0%、25.3期が4.2%、26.3期も改善すると見られるが、企業として十分な収益性を示す水準(おおむね8〜10%)には遠い。ROAも1〜2%台であり、資産を効率的に稼ぐビジネスモデルにはまだ転換できていない。ぐるなびが抱える最大の課題は、収益の安定性と利益率の低さであり、外食産業の景気に左右されやすい点もリスクとなる。
株価指標を見ると、25.3期の実績PERは高値平均で196倍、安値平均でも123倍と、利益の小ささを反映して非常に高く見える。PBRは1.87倍で過度に割高ではないが、ROEがまだ低いことを考えると積極的に買われる水準とは言いづらい。利益が少ない企業はPERが跳ね上がりやすく、株価が“割高に見える構造”になってしまう点が投資の難しさにつながる。
総合的に見ると、ぐるなびは「売上は回復傾向だが利益水準は低く、収益性の改善が追いついていない」状態で、投資対象としては慎重な判断が必要な銘柄といえる。黒字化したことはポジティブであり、飲食店向けDXの需要拡大や楽天との協業強化は長期的には追い風となる。しかし、競合の食べログやGoogleマップなどとの競争も激しく、会員店舗の獲得や広告収入の回復は容易ではない。
投資スタンスとしては、短期的な株価上昇を狙うよりも、事業再構築がどれだけ進むかを静観しながら、収益性の改善がはっきり見られるまで慎重に判断したい銘柄である。業績の底打ち感は出ているものの、本格的な成長軌道に乗るにはもう一段の改革が必要だと感じられる。
配当目的とかどうなの?
ぐるなびは現在、配当目的の投資先としては正直まったく向いていない企業といえる。予想配当利回りは26.3期・27.3期ともに0.00%であり、そもそも配当を出していない。上場企業の中には業績悪化で一時的に無配となるケースもあるが、ぐるなびの場合は長く業績が低迷してきた経緯があり、回復の途中であるため配当が出せる段階にまだ達していない。
企業の利益水準を見ると、24.3期は3.6億円の赤字、25.3期は2.1億円の黒字転換、26.3期予想も純利益は2〜3億円程度の見込みと、利益規模自体が小さい。営業利益率も1〜2%台で、事業構造として十分な収益を稼げていない状況が続いている。この水準では、配当を出す余裕はほぼないと考えるのが自然だ。
配当を出す企業の共通点としては、安定した利益・十分なキャッシュフロー・株主還元方針の強さが挙げられる。しかし、ぐるなびは営業キャッシュフローも不安定で、過去数年は赤字やマイナスが続いていた。これでは配当政策を強化する以前に、まず事業の立て直しと収益性の確保が優先される状態である。
もちろん、楽天との提携強化や飲食店向けDX支援、EC事業など、売上の成長につながる可能性のある取り組みは増えている。しかし、それがすぐに利益とキャッシュフローの安定につながるかといえば、まだ不透明と言わざるを得ない。配当を期待できる「安定株」になるためには、最低でも数年単位での収益改善が必要になる。
総合的に判断すると、ぐるなびは配当狙いの投資には全く向かないという結論になる。もし配当を目的に投資するのであれば、同じ外食関連でも利益が安定していて配当も確保している銘柄の方がはるかに適している。ぐるなびに投資する場合は、配当を求めるのではなく、事業再建が成功して業績が回復したときの株価見直しを狙う「中長期の再成長テーマ」として考える方が現実的な位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価171円を基準に、ぐるなびの今後5年間の値動きを考える場合、外食産業の回復スピードと同社の収益構造がどこまで改善するかが最大のポイントになる。売上はコロナ底から回復しつつあるものの、利益水準はまだ低く、営業利益率は約2%前後、純利益も数億円規模と小さい。競合の食べログやGoogleマップが強力で、広告依存モデルの弱点も残る。そのため株価の将来像は「劇的に伸びるシナリオ」と「再び低迷するシナリオ」のどちらも十分にあり得る。ここでは良い場合、中間、悪い場合の3つに分けて見ていく。
まず良い場合では、外食需要が本格的に戻り、ぐるなびが楽天との協業をさらに強化し、送客力と収益性が改善するケースが考えられる。飲食店向けDXが進み、加盟店数が増加し、広告収入が回復すれば、利益率も徐々に改善していく。純利益が毎年安定して数億円から10億円規模へ拡大できれば、市場評価は見直され、株価は300〜450円程度のレンジまで戻る可能性がある。これは現在比でおよそ1.7〜2.6倍ほどの上昇だが、同社の歴史や外食産業の回復力を考えれば、決して無理な数字ではない。ただし、この“良いシナリオ”が実現するには、ぐるなび自身が収益性を高めるための構造改革を継続し、競合との違いを明確にしていくことが前提になる。
次に中間の場合だが、多くの投資家が現実的と見ているラインとしては、売上は伸びるものの利益改善はゆっくりで、広告収益や加盟店の増加も限定的にとどまる可能性がある。この場合、株価は200〜260円程度のレンジで推移すると考えられ、急伸する力は弱いものの、下値も比較的固く安定しやすい。飲食店向けのサービスプラットフォームは一定の需要があり、事業自体は消える心配が少ないため、ボラティリティはやや小さめになる。中間シナリオでは「配当は期待できないが、低位株としては安定感がある」というポジションに落ち着きやすい。
最後に悪い場合だが、外食産業の回復が鈍化したり、広告出稿がふたたび縮小したりすると、ぐるなびの業績は簡単に再び赤字に転落するリスクがある。とくに競合環境が厳しく、食べログやGoogle検索の影響力が増すほど、ぐるなびの集客価値が相対的に低下し、加盟店収入や広告収入が減る可能性がある。収益が細り続ければ市場からの評価は下がり、株価は130〜150円程度まで下落する可能性がある。さらに悪化すれば120円台も視野に入る。無配が続いているため、株価を支える要素も弱いままである。
総合すると、ぐるなびは「大きく伸びる要素はあるが、同時にリスクも大きい典型的な低位株」であり、投資する際には事業構造の改善が進むかどうかを冷静に見極める必要がある。急騰を狙う短期投資よりも、事業再建の進捗を確認しながら長期で小さく狙うタイプの銘柄と言えるだろう。業績が改善すれば株価は見直されるが、逆に改善が遅れれば低迷が続く可能性も高く、まさに“両方向に振れやすい”性質を持っている。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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