株価
インフォマートとは

インフォマートは、企業間取引のデジタル化を専門に進めるクラウドサービス企業であり、日本のBtoB電子商取引市場において基盤的な役割を担っている。主力サービスであるBtoBプラットフォームシリーズは、企業同士がこれまで紙やFAX、メール添付のPDFで行ってきた受発注、請求書、規格書、契約書などの帳票業務をすべてオンライン化し、取引に関わるあらゆる情報の流れをクラウド上で完結させることを可能にしている。特に外食・食品業界向けの受発注システムでは他社を圧倒する導入実績があり、食品メーカー、卸、飲食店チェーンを中心に業界全体の業務効率化を長期間にわたって支え続けてきた。
BtoBプラットフォームは単なる帳票の電子化ツールではなく、取引先とのデータ連携を自動化し、企業の経理、購買、営業、店舗運営といった複数部門にまたがる業務プロセスを統合的に効率化する仕組みを備えている。プラットフォーム上に蓄積される取引データは、業務改善や需要予測、コスト分析などにも活用でき、企業全体の意思決定の向上にもつながる。利用企業が増えるほど価値が高まるネットワーク型のビジネスモデルであり、ストック型収益を中心とした堅実な事業構造が確立されている。
事業は大きくFOOD事業とES事業に分かれている。FOOD事業では、外食・中食・食品メーカーなど食品関連企業向けに受発注や規格書管理をデジタル化するサービスを展開し、創業以来25年以上にわたり食のサプライチェーン全体の効率化に寄与してきた。メニュー管理や店舗運営支援など、食品業界特有のニーズに対応した周辺サービスも豊富で、食品業界に深く根ざしたプラットフォームとして独自の地位を築いている。
一方、ES事業では建設、物流、情報通信など多様な業界に向けて請求書、契約書、見積書などの帳票業務を標準化・電子化するサービスを提供している。業界ごとに異なる商習慣を理解し、それに沿った形でフォーマットを最適化することで、企業間のやり取りをスムーズにし、紙文化からの脱却や業務の標準化を後押ししている。電子帳簿保存法対応や電子契約、決済サービスとの連携も進み、企業のバックオフィス全体を包括的にデジタル化する総合基盤として進化している。
インフォマートは単体ベースで配当性向50%を掲げており、利益に応じた株主還元姿勢を明確にしている点も特徴的である。サブスクリプション売上の比率が高く、解約率も低いため、毎年堅実に収益が積み上がる構造を持ち、長期的な成長を見据えながらプラットフォームの導入企業数拡大に取り組んでいる。
総合的に見てインフォマートは、企業間取引をデジタル化する「産業インフラ」として位置付けられ、特に食品業界を中心に強固な顧客基盤を築きながら、他業界へも領域を拡大している。バックオフィス業務の効率化ニーズが高まり続ける中で、同社のプラットフォームの重要性は今後さらに高まることが予想され、デジタル化の波に乗る形で中長期的な成長が期待される企業となっている。
インフォマート 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.12 | 9,835 | 1,030 | 1,021 | 538 | 2.4 | 1.43 |
| 連22.12 | 11,004 | 526 | 465 | 286 | 1.3 | 0.72 |
| 連23.12 | 13,363 | 830 | 632 | 298 | 1.3 | 0.97 |
| 連24.12 | 15,630 | 1,200 | 1,187 | 655 | 2.9 | 1.74 |
| 連25.12予 | 19,500 | 2,400 | 2,400 | 1,400 | 6.2 | 4.46〜4.6 |
| 連26.12予 | 21,500 | 4,250 | 4,250 | 2,380 | 10.5 | 5.8〜6.2 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 987 | -984 | -301 |
| 2023 | 1,827 | -1,794 | -1,209 |
| 2024 | 2,072 | -2,911 | 213 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.2% | 2.8% | 2.2% | ー | ー |
| 2024 | 7.6% | 6.0% | 4.4% | 実績PER 高値441.8倍 / 安値176.8倍 | 実績PBR 7.05倍 |
| 2025予 | 15.1% | 14.2% | 10.4% | 予想PER 60.83倍 | ー |
出典元:四季報オンライン
投資判断
インフォマートの利益推移を見ると、2023年から2026年にかけて、非常にきれいな右肩上がりの成長カーブを描いていることがわかる。まず2023年は売上133億、営業利益8億、経常利益6億、純利益2億と利益率の低さが目立ち、成長企業としてはまだ物足りない水準だった。しかし2024年には営業利益12億、経常利益11億、純利益6億へと改善が進み、営業利益率も6%台から7%台へ上昇し、事業基盤が強まり始めている。
さらに大きいのは2025年の会社予想で、売上195億、営業利益24億、経常利益24億、純利益14億と、利益が短期間で倍以上に伸びる見通しを示している点である。営業利益率も6%から12%前後へ急改善し、各指標ともに明確な成長軌道に乗っている。業務デジタル化の追い風、BtoBプラットフォーム導入企業の増加、FOOD領域のシェア拡大、ES事業の伸長など、複数の成長要因が同時に効いていると考えられる。
そして2026年には売上215億、営業利益42億、経常利益42億、純利益23億とさらに伸びる見込みで、営業利益率は15%前後まで上昇する。ROE、ROAの改善も続き、高収益プラットフォーム企業へと変化していることが読み取れる。
一方で懸念点もある。PERは2024年の実績で非常に高水準にあり、株価が先行しすぎて割高と評価されやすい環境になっている。2025年予想でもPER60倍前後と高めで、利益拡大が続く前提で株価が既に評価されている点はリスク要因だ。また、PBRも7倍台と、成長株としても高い水準にあり、投資家の期待がかなり織り込まれていることがわかる。
総合すると、インフォマートは短期的にも中長期的にも業績成長が明確で、BtoBデジタル化の本流に乗っているため、事業の伸びは今後も続きやすい。特に受発注プラットフォームは業界標準化が進むほど解約率が下がり、ストック収益が積み上がるため、収益の安定性も上がっていく。一方で株価面は割高感が強く、成長企業特有の「期待先行」の状態が続いているため、急落時の値動きは大きくなりやすい。
結論として、インフォマートは業績面での成長余地が大きく、長期投資向きの銘柄といえる。ただし短期売買には向きにくく、買うなら調整局面を待つ方がリスクを抑えられる。指標面の割高感を許容し、プラットフォーム型ビジネスの強さと高い成長期待を重視する投資家に適した銘柄であると言える。
配当目的とかどうなの?
インフォマートの予想配当利回りは、2025年が1.22%、2026年が1.80%となっており、数字だけを見ると高配当株とは言えない水準である。利回り3〜4%を基準にする典型的な配当目的投資から見ると物足りず、「配当収入で資産を増やす」というタイプの銘柄ではない。
インフォマートの配当政策は単体ベースで配当性向50%を標準としており、利益に比例して配当が伸びる仕組みになっている。しかし現状では、事業成長に比べて利益水準がまだ過渡期にあり、配当金自体も限定的な大きさにとどまっている。つまり、配当性向が高くても “分母である利益が小さいため結果的に利回りは低い” という状態である。
ただし、今後の業績見通しを踏まえると、長期的には配当成長の余地は期待できる。2025年・2026年の会社計画では営業利益、経常利益、純利益すべてが大幅に増える見込みであり、それが実現すれば1株当たり利益も拡大し、配当額も自動的に増加していく。利回りは低くとも、配当金そのものの伸びを狙える「成長配当銘柄」の側面はある。
とはいえ、配当目的として選ぶ場合には注意点もある。インフォマートはあくまで成長企業であり、配当よりも事業拡大に資金を回したほうがリターンが高いフェーズにある。株主還元より成長投資を優先する傾向があり、高配当銘柄のような安定性や利回りの魅力はない。また、株価自体が成長期待で高く推移しているため、配当利回りは構造的に低くなりやすい。
結論として、インフォマートを配当目的で買うのは適していない。現在の利回りは低く、短期的に配当収入を期待する投資家には向かない。一方、長期的な成長を見込み、「業績が伸びるにつれてゆっくりと配当も積み上がる」タイプの銘柄として考えるのであれば、成長配当株としての魅力はある。どちらかと言えば、配当より成長性を重視する投資家に向けた銘柄である。
今後の値動き予想!!(5年間)
インフォマートの現在値365円を起点に今後5年間の株価を考える際、まず押さえておくべきポイントは、この企業が「BtoBのデジタルトランスフォーメーションを支えるインフラ企業」であるということだ。受発注、請求書、規格書、契約書など、企業が毎日必ず発生させる帳票類をクラウド化し、データを標準化して蓄積する仕組みは、取引先が増えるほど価値が増す“ネットワーク効果型のビジネスモデル”になっている。つまり、成長の初期段階では利益率が低いが、一定の規模を超えると収益が急拡大する特徴を持つ。
直近の業績を見ると、2023年から2026年にかけて営業利益・純利益ともに大きく伸びる計画が出されており、特に2025年以降は営業利益率の改善が顕著で、利益が2倍、3倍に跳ね上がるタイミングに差し掛かっている。これはプラットフォーム事業特有の「固定費が先行し、後から利益が一気に乗ってくる」典型例で、事業の収益化フェーズが本格化しつつあることを意味している。
株価予測で重要なのは、この成長がどこまで続くか、そして市場がどのように評価するかである。成長企業の場合、PERが高くなりやすく、インフォマートの実績PERが400倍を超えた年もあるのは、その将来期待が株価に大きく先行して織り込まれる傾向があるためだ。したがって、将来の株価は業績以上に「市場心理」に左右される側面がある。
良いシナリオでは、企業のDX化が一段と進み、電子帳票サービスの導入が当たり前になる流れに乗って、インフォマートのプラットフォームが業界標準化していく。外食・食品向けのFOOD事業はすでに強い基盤を持っており、ES事業も建設・物流・通信など幅広い業界で伸びる余地が大きい。取扱高や取引社数が増えるほど利益率が上がる構造を持つため、営業利益率が15〜18%に安定すると、企業価値は一段上のステージに再評価され、市場が強気に反応すればPERは50〜70倍まで十分あり得る。この場合、株価は800〜1,000円に達しても不思議ではない。
現実的な中間シナリオでは、デジタル化は進むものの、急激な導入拡大とはならず、売上も利益も緩やかな成長にとどまる。データ連携や周辺サービスのクロスセルが少しずつ増え、FOOD・ESともに安定した伸びが続くが、急成長ほどの勢いはない。この場合、PERは30〜45倍程度で落ち着き、株価は450〜650円レンジでの推移がもっとも想定しやすい。現在の365円からある程度の上昇余地はあるが、劇的な伸びは期待しにくい“普通の成長株”として扱われる可能性が高い。
悪いシナリオでは、外食産業の景気が弱いまま推移したり、競合のバックオフィスDXサービスが増えたり、電子帳票法制の変更や企業の予算縮小などの影響で導入ペースが鈍る。特に受発注プラットフォームは、取引先がセットで増えないとスケールしにくいため、成長が止まると利益率の改善も鈍化しやすい。また、成長期待株は失速するとPERが急低下し、20倍を割り込むような評価まで落ちることがある。この場合、株価は250〜330円あたりまで下押しされるリスクがある。
総合すると、インフォマートは「長期的に強い成長が期待できるプラットフォーム企業」ではあるが、「株価は期待で動きやすく、成長株特有の上下の大きさがある」銘柄と言える。配当利回りは低く、配当目的には向かないが、事業構造の強さを信じて成長段階で投資するタイプの企業であり、長期の視点でじっくり持つ投資家には魅力がある。一方で短期的には割高調整も起きやすいため、買い場を慎重に見極める必要がある。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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