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コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスとは

コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社は、本店を東京都港区に置き、「コカ・コーラ」製品の製造・販売を行う国内最大級のボトラー企業を傘下に持つ持株会社である。完全子会社であるコカ・コーラボトラーズジャパンが、関東地方、新潟県、山梨県、東海地方、南東北、近畿地方、中国地方、四国地方、九州(沖縄を除く)を担当し、1都2府35県をカバーする広大な販売エリアを有している。
日本の清涼飲料業界は、少子高齢化による市場の伸び悩みや安売り競争の激化に伴い、強固な経営体制を構築するためにボトラー各社が統合・再編を進めてきた。特に日本のコカ・コーラボトラーは1990年代以降、効率化やコスト削減の必要性から再編が加速した。その結果、現在の同社グループの基盤となる「コカ・コーライーストジャパン」と「コカ・コーラウエスト」が誕生した。
コカ・コーライーストジャパンは、関東・東海地域を担当していた複数のボトラー(東京コカ・コーラ、三国コカ・コーラ、利根コカ・コーラ、コカ・コーラ セントラルジャパン初代)を統合して2013年7月に発足。その後、2015年4月に仙台コカ・コーラボトリングを統合し、南東北地域も担当地域に加わった。
一方、コカ・コーラウエストは、九州北部を担当していた北九州コカ・コーラボトリングが1999年に中国地方の山陽コカ・コーラボトリングと合併して誕生した。その後、近畿の近畿コカ・コーラおよび三笠コカ・コーラとの経営統合(2006年)、西日本の広範囲を担当する大規模ボトラーとして成長し、さらには南九州、四国のボトラーを次々と統合し、西日本22府県を担当する巨大企業となった。また2010年には健康食品で有名なキューサイを買収するなど事業多角化も進めた。
こうした大規模な再編の末、2018年1月1日付でコカ・コーライーストジャパンを存続会社として、コカ・コーラウエストと四国コカ・コーラを吸収合併し、商号を「コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス」に変更した。これにより、国内の大部分をカバーする日本最大のコカ・コーラボトラーが誕生した。
2018年2月には国際財務報告基準(IFRS)への移行を発表し、2019年には経営体制を大幅刷新。代表取締役社長としてカリン・ドラガンが就任し、中長期戦略の見直しを図った。同年にはのれん減損として618億円超を計上し、事業の立て直しに向けた財務改革を進めた。2020年には本店を福岡から東京に移転し、グループの経営中枢を首都圏へと移した。
また、飲料事業へ注力するため2020年12月にキューサイの売却を発表し、2021年2月に譲渡を完了することで約120億円の利益を計上している。経営効率化、自販機モデルの改善、物流最適化などの構造改革も継続して進めており、巨大な販売ネットワークを背景に国内飲料市場で圧倒的な存在感を維持している。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2020/12 | 791,956 | -11,722 | -12,065 | -4,715 | -26.3 | 25 |
| 2021/12 | 785,837 | -20,971 | -21,683 | -2,503 | -14.0 | 50 |
| 2022/12 | 807,430 | -11,513 | -12,491 | -8,070 | -45.0 | 50 |
| 2023/12 | 868,581 | 3,441 | 3,224 | 1,871 | 10.4 | 50 |
| 2024/12 | 892,681 | 13,390 | 12,896 | 7,309 | 40.8 | 53 |
| 2025/12予 | 906,100 | -67,100 | -67,600 | -48,500 | -287.8 | 57 |
| 2026/12予 | 920,000 | 28,000 | 27,500 | 15,600 | 92.6 | 58〜62 |
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022/12 | 42,717 | -23,090 | -46,050 |
| 2023/12 | 59,102 | -14,287 | -15,229 |
| 2024/12 | 48,883 | -16,128 | -57,942 |
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均 / 安値平均) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023/12 | 0.3% | 0.3% | 0.2% | ― | ― |
| 2024/12 | 1.4% | 1.5% | 0.9% | 135.7倍 / 81.6倍 | 1.25倍 |
| 2025/12予 | -8.0% | -10.6% | -6.2% | ― | ― |
投資判断
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、足元の業績推移を見ると、2023年・2024年にかけて黒字を確保し、2024年には営業利益が133億円、純利益が73億円まで回復しており、一時の低迷から改善が進んでいる。しかし、2025年は一転して671億円の営業赤字、676億円の経常赤字、485億円の最終赤字という大規模な業績悪化が予想されており、極めて大きな振れ幅が存在する点が最大のリスクとなる。
特に2025年の営業利益率は -8%、ROE -10.6%、ROA -6.2%と“構造的な赤字”を示す水準で、通常の景気変動による一時的減益を超えて、事業構造改革・コスト要因・一時損失の発生を疑わせる数値である。EPSも -287.8円と深刻で、黒字企業としての評価が一度途切れることになる。
一方で2026年予想を見ると、営業利益280億円、純利益156億円と急激なV字回復が見込まれており、EPSも92円台まで戻る。つまり、企業側が計画する「2025年の大赤字は一過性であり、翌年には回復する」というストーリーになっている。しかし、このような大幅赤字→大幅黒字の予想は、不確実性が非常に大きく、投資家としては鵜呑みにするのではなく、内容の精査が必須だといえる。
2024年のPERは高値平均135倍・安値平均81倍と極端に割高で、純利益が小さいため倍率が跳ね上がっている。PBRは1.25倍と過度に割安ではない水準で、資産価値に対して特別に放置されている印象はない。つまり、2024年時点では「利益水準が低いわりに株価はそれほど安くない」状態といえる。
配当は2023年〜2026年にかけて50円前後を維持しており、一見すると高配当のように見えるが、2025年の大赤字を踏まえると、配当の持続性には不安が残る。EPSが大幅マイナスとなる年に57円の配当を維持するのは企業努力の表れではあるが、財務負担が大きく、長期的な無理のない還元方針とは言い難い。
総合すると、同社は超長期的には日本国内最大級の飲料ボトラーとしての安定需要がある一方、中期的には業績変動が非常に大きく、2025年の大赤字をどう評価するかが投資判断の分岐点となる。2026年の黒字回復が現実的であれば株価は見直される余地があるが、予想が外れた場合には下落リスクが大きい。
配当目的とかどうなの?
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスを配当目的で保有する場合、まず確認すべきなのは、現在の予想配当利回りが2025年・2026年ともに2.09%程度にとどまっている点である。日本株全体の平均と比べれば決して低くはないものの、高配当株と呼ばれる3〜4%台の水準には達しておらず、配当投資として特別な魅力を感じる水準ではない。配当を目的に株を選ぶのであれば、利回りそのものが高いことと同時に、その配当が継続的に支払われる安定性が非常に重要になるが、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスの場合、この二つを同時に満たしているとは言い難い。
特に気になるのが、2025年に見込まれている大幅な赤字である。営業利益が671億円の赤字、最終利益も485億円の赤字という数字は、通常の景気変動では説明できないほど大きな損失で、構造改革や大規模な一時費用が予想される。それにもかかわらず、会社は57円の配当を維持する計画にしている。株主還元の姿勢としては称賛される面もあるが、赤字にもかかわらず配当を出し続けるということは財務負担が重くなり、配当の持続性に対しては懸念が残る。
翌年の2026年に黒字へ回復する予想が出されているものの、これが本当に計画どおり進むかどうかは不透明であり、実際のところは「赤字の翌年に突然大幅黒字になる」という企業計画はリスクが高い。飲料ボトラー事業は原材料コストや物流費の高騰の影響を受けやすく、為替変動や設備投資の負担も重いため、利益の安定性がそれほど高い業種ではない。
配当利回りが高ければ「リスクがあっても保有してみるか」という判断もあるが、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスの配当利回りはあくまで2%台前半。これでは、赤字による不安定さを上回る魅力があるとは言いにくい。赤字でも配当を維持しようとする姿勢は評価できる一方で、利益が大きく揺れ動く構造では、将来の減配リスクが完全に消えるわけではない。
総合すると、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、配当目的の長期安定投資に向いている企業とは言い難い。むしろ、構造改革によって業績が戻り、株価が回復していくことに期待する「キャピタルゲイン狙いの投資」が中心となるタイプである。国内最大級のボトラーとしての存在感は大きいが、配当狙いという一点で見ると、ほかに優れた選択肢が多く存在するため、慎重に判断すべき銘柄だといえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスの株価は現在2,868円前後で推移しており、日本最大級の飲料ボトラーとしてのブランド力と広大な販売網を持つ一方で、飲料市場そのものの成熟化やコスト構造の重さ、物流費の上昇といった構造的な課題を抱えている。こうした背景から、今後5年間の株価を予想する際には、事業環境・コスト構造・競争環境・経営改革の進捗など多角的に見ていく必要がある。ここでは、良い場合、中間の場合、悪い場合の三つのシナリオに分け、株価の未来像を考えてみる。
まず良い場合のシナリオでは、飲料市場が多少の波はありつつも安定し、同社が進めてきた物流効率化、自動販売機網の見直し、サプライチェーンの最適化などが確実に利益へ結びつくことが前提になる。特に原材料価格やエネルギーコストの高騰が落ち着き、為替にも急激な変動がない環境では、営業利益率の改善が進む可能性がある。また、国内のボトラー再編によって得た「スケールメリット」が本格的に収益に反映されれば、利益の安定性も高まり、市場からの評価も改めて見直されることになる。こうした改善が進んだ場合、株価はブランド価値の高さや全国的な販売網の強さを背景に、3,800〜4,200円程度まで水準訂正が進む余地がある。特に海外投資家は「大規模消費インフラ企業」を高く評価する傾向があるため、黒字転換と利益成長の継続が確認されれば上値の余地は広がりやすい。
次に最も現実的と思われる中間シナリオでは、飲料市場は大きく成長しないものの、安定した需要が続き、売上高は横ばい〜小幅増の範囲で推移する。コスト構造についても、一定の改善は見られるが大幅な伸びにはつながらず、営業利益率は低水準ながらプラス圏を維持するというイメージである。競争環境においては、他飲料メーカーとの価格競争や販促競争が続くものの、全国的なブランド力によって大きくシェアを落とすわけではない。そのため、株価は現状の2,800〜3,200円程度のレンジで推移し、上昇する局面もあれば調整局面もあるが、長期的には横ばいが基本の動きになると考えられる。このシナリオでは、株価が急騰する材料も急落する材料も比較的限られ、市場も同社を「安定的だが成長性は低い企業」として扱い続ける。
悪い場合のシナリオでは、国内飲料市場の縮小がより深刻化し、消費者の健康志向の変化やペットボトル離れなど、構造的に飲料需要が減少するリスクが表面化する。また、物流費や人件費、資材コストの高止まりが続けば、利益率が再び圧迫され、黒字維持すら困難になる可能性がある。特にボトラー事業は設備投資や自販機網の維持にコストがかかるため、コスト上昇局面では利益が大きく削られやすい。もし2025年のような大幅赤字が繰り返されるような展開が続けば、株価は2,000〜2,400円あたりまで下落するリスクが高くなる。また、赤字でも配当を維持している現在の姿勢が続けば、財務の健全性にも懸念が出てくる可能性があり、株主還元政策にも影響が及ぶ恐れがある。
総合的に見れば、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスの株価は、今後5年間で大きく化けるタイプの銘柄ではなく、業績安定とコスト改善によってじわじわと評価が戻るか、または成熟市場の中で横ばい〜やや下のレンジにとどまるかが中心的なシナリオとなる。ただし、ブランド力・販売網・物流基盤といった強みは大きく、急落リスクが極端に高い企業でもない。一方で急成長を期待できる事業構造ではないため、投資判断としては「安定性重視の中長期ホールド」か「業績回復シナリオに賭ける成長期待」のどちらを優先するかによって評価が分かれる銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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