株価
ダイドーグループホールディングスとは

ダイドーグループホールディングス株式会社は、大阪府大阪市北区中之島に本社を構える持株会社であり、ダイドーグループ全体を統括する中核企業である。2017年1月に、旧ダイドードリンコ株式会社から持株会社体制へ移行した際に商号変更して現在の社名となった。グループの主要事業会社には、飲料事業を担うダイドードリンコ株式会社、医薬部外品飲料の受託製造などを行う大同薬品工業株式会社、フルーツゼリーで知られる株式会社たらみなどが含まれる。
「ダイドー(DyDo)」という社名は、創業母体である“大同薬品工業”の「大同」に由来すると同時に、「Dynamic(ダイナミック)に挑戦し、Do(行動する)」という積極的な姿勢を表した造語でもある。ブランドメッセージは「こころとからだに、おいしいものを。」で、飲料・食品を通じて生活者に寄り添う姿勢を示している。
グループの中核となる事業会社・ダイドードリンコ株式会社は、自動販売機を中心とした飲料販売を主力としており、自販機網の強さが同社の最大の特徴である。国内大手飲料メーカーの中でも、自販機比率が非常に高い独自の販売体制を持ち、缶コーヒーや清涼飲料を中心に安定的な売上を確保している。また、アサヒ飲料株式会社と共同で「ダイナミックベンディングネットワーク株式会社」を設立し、自販機オペレーションの効率化や協業による新たな販売モデルの構築を進めている。
祖業は「配置薬(置き薬)」であり、現在も大同薬品工業を通じて医薬部外品ドリンク、パウチゼリーのOEM製造を行い、近年は希少疾病領域の医薬品事業にも参入するなど、事業の多角化を進めている。さらに、子会社の株式会社たらみは全国的に高い知名度を持つフルーツゼリーブランドを展開しており、食品分野でも確かな存在感を持つ。海外展開にも積極的で、トルコ・英国・ポーランド・中国などに拠点を持ち、グローバル市場での事業拡大も進んでいる。なかでもトルコ事業は同社の海外飲料領域の中心的な収益源となっている。
またCSR活動にも力を入れており、日本全国の祭りを応援する取り組みを継続的に実施している。特に全国の民放局が放送する特別番組『ダイドーグループ日本の祭り』の提供は長年続く社会貢献活動の象徴となっている。
ダイドーグループホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
EPS(円) | 配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 22.1* | 162,602 | 4,581 | 5,651 | 3,974 | 127.1 | 30 |
| 23.1* | 160,130 | 707 | 591 | -507 | -16.2 | 30 |
| 24.1* | 213,370 | 3,732 | 3,115 | 4,423 | 140.8 | 30 |
| 25.1 | 237,189 | 4,789 | 3,023 | 3,804 | 120.7 | 40(記念) |
| 26.1予 | 243,400 | 1,800 | -400 | -3,000 | -94.8 | 30 |
| 27.1予 | 254,000 | 2,000 | 1,000 | 700 | 22.1 | 30 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 5,125 | -5,025 | -1,120 |
| 2024 | 9,211 | -1,240 | -3,212 |
| 2025 | 10,824 | -11,595 | -1,708 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 0.4% | -0.7% | -0.4% | ― | ― |
| 2024 | 1.7% | 4.9% | 2.4% | ― | ― |
| 2025予 | 2.0% | 4.1% | 2.0% | ― | 0.86倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ダイドーグループHDの直近〜今後の業績推移を見ると、非常に振れ幅の大きい収益構造が浮かび上がってくる。まず2024/1は営業利益37億、純利益44億と比較的良い利益水準を確保しており、売上の伸びに対して利益もついてきている健全な決算だった。しかし翌年度の2025/1では営業利益が47億と一見伸びているように見えるものの、経常利益は30億と伸び悩み、最終利益も38億へと減少していて、利益の安定性という点では物足りなさが残る。
特に注目すべきは2026/1予の大幅な赤字転落である。売上は伸びているにもかかわらず、営業利益は18億まで落ち込み、最終利益は30億の赤字に転落する見通しとなっている。これは飲料事業におけるコスト構造の重さ、自販機ネットワークの維持費、原材料費上昇、海外事業の不安定さなど複数の要因が重なっている可能性が高い。利益率の低下、ROE・ROAの悪化が示す通り、企業としての稼ぐ力に明確な減速が見えている。
2027/1予では黒字に戻るものの、最終利益はわずか7億と非常に控えめで、EPSも22円程度と過去と比べて大きく水準を落とす形になる。つまり、2026年を底に改善するものの、完全な回復にはまだ時間がかかり、収益構造の弱さは依然として残る。
PBRが0.8倍台という水準から見れば、企業価値の割安感はあるものの、「割安=買い」と判断するには慎重さが必要になる。なぜなら低PBRは市場が“将来の利益成長に自信を持てていない”ことを示すサインでもあるからだ。利益が安定せず、2026年には赤字予想という状況が続く限り、株価が大きく持ち直す材料は乏しい。
まとめると、ダイドーグループHDは売上規模は大きく推移しているものの、利益変動が非常に大きく、収益の安定性に欠ける点が最大の弱点である。自販機中心のビジネスモデルは固定費が重く、環境変化の影響を受けやすい。業績のブレ幅が大きい限り、長期保有で安定成長を期待するタイプの銘柄とは言いにくい。改善が見られるまでは、中長期投資よりも慎重な姿勢が求められる企業であり、積極的な買い判断は難しいと言える。
配当目的とかどうなの?
ダイドーグループHDを配当目的で考えると、率直に言って魅力はかなり薄い。予想配当利回り(2026・2027年度)は1.17%しかなく、日本株全体の平均利回りを大きく下回っている。利回りだけを見ると、あえてこの銘柄を選ぶ理由は見当たらず、配当収入を重視する投資家にとっては候補にも入りにくい水準だと言える。
さらに問題なのは、同社の業績が非常に不安定である点だ。売上は伸びているにもかかわらず、利益が大きく上下し、2026年には赤字転落の予想が出ている。赤字になった年でも配当を維持する方針になっているが、これは企業にとって財務的に負担が大きく、本来の健全な配当政策とは言いがたい。安定した利益が配当金の源泉である以上、業績が乱高下する企業は配当目的の投資と相性が悪い。
また、利回りが低いだけでなく、増配の兆しがほとんど見られない点もネガティブで、配当が今後大きく伸びる期待も持ちにくい。長期的なインカムゲインを狙うなら、やはりもっと安定した業績・高い利回り・増配姿勢のある企業を選ぶのが合理的だろう。
ただし、ダイドーは株主優待が充実しており、200株以上の保有で毎年6,000円相当の詰め合わせが届く。この優待が実質的な“追加利回り”となるため、優待目当てで保有するという考え方ならまだ理解できる。しかし、それでも配当金そのものを目的に投資する銘柄とは言い難い。
総合すると、ダイドーは「安定配当で資産形成したい」と考える投資家には明らかに不向きで、配当を重視する戦略とは相性が悪い。むしろ、事業再建や海外展開の成長性を期待するか、優待の魅力で選ぶタイプの企業という位置づけであり、配当目的だけで採用する銘柄ではない。
今後の値動き予想!!(5年間)
ダイドーグループHDの株価は現在2,543円だが、ここから5年間の値動きを考えるには、まず同社の業績構造が非常に特徴的であることを踏まえる必要がある。売上は徐々に伸びている一方で、利益は大きく上下し、黒字と赤字を行き来するという不安定な体質を持っている。特に2026年には最終赤字に転落する予想が示されており、自販機を中心としたビジネスモデル特有の固定費の重さや、海外事業の変動リスクを強く抱えていることが、株価の評価にも重く反映されている。こうした背景があるため、株価の先行きは明確に分岐しやすく、良い時と悪い時で見える景色がまったく変わってくる。
まず良い展開を迎えた場合は、主力のトルコ飲料事業が大きく収益に貢献し、自販機事業でも運営効率化が進み、赤字年度を挟んでも利益基調が安定してくる。医薬品やゼリー食品といった周辺事業が着実に利益を生み、グループ全体としての収益力が底上げされると、市場の評価が自然と持ち直し、株価は現在値を上回って緩やかに上昇していく。大幅な跳ね上がりというよりは、少しずつ信頼を取り戻しながら水準訂正が起きるような形で、数年かけて3,000円台後半に近づいていくイメージが現実的になる。
一方で中間的なケースでは、赤字を挟んでも企業としての存続には何の問題もなく、黒字へ戻る動きも見せるものの、利益率はなかなか改善せず、市場の評価も低いまま固定される可能性が高い。売上は増えているのに利益がついてこないという状態が続くと、株価も大きく動く理由がなく、現在値に近い水準で小幅な上下を繰り返すだけの停滞した状況が続きやすい。投資家にとっても「保有しても損ではないが大きな伸びもない」という印象が残り、長期的に見ても大きなサプライズを生まない形で2,500円前後で落ち着いて推移する可能性が高い。
そして悪い流れに入ってしまう場合は、2026年の赤字を単なる一過性の要因ではなく、構造的な問題として市場に捉えられてしまうケースである。自販機事業の採算悪化が長引き、海外事業も為替や競争環境の悪化でうまく利益に結びつかず、利益体質そのものに疑問符が付くようになると、株価は見られ方が一変する。安定性への信頼が失われると、PBRが0.6倍付近まで沈むような状態になり、株価も2,000円を割り込み、1,600円台まで下がってしまう可能性も十分にあり得る。低迷状態に入ると、株価が長期停滞から抜け出すには新規事業や構造改革といった強力な材料が必要になるため、回復には相応の時間がかかりやすい。
こうして全体を眺めると、ダイドーグループの株価は「上がる時の上昇幅は大きくないが、悪い場合には下にも広がる余地がある」という形をしており、飲料大手の中では最も値動きが読みにくいタイプの銘柄だといえる。収益の安定性に欠ける点が株価形成を難しくしており、事業改善がしっかり進めば株価はじわじわと上向くが、改善が遅れれば長期停滞のまま推移しかねない。
現在の株価2,543円を起点にすると、五年後に見える景色は企業努力と外部環境に大きく左右されるが、いずれのケースでも“急騰する銘柄ではない”という点は共通している。良い場合は3,000円台後半、中間では現在値付近、悪い場合は2,000円割れといった幅広いレンジの中で、ゆっくりと動いていく未来が想像しやすい。安定成長株や高配当株とは性質が異なり、構造改善や海外事業の成功といった具体的な成長材料を慎重に見極める必要がある企業である。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す