株価
バリューコマースとは

バリューコマース株式会社は、東京都千代田区紀尾井町に本社を置く日本のアフィリエイトサービスプロバイダであり、成果報酬型広告の国内最大級企業として知られる。LINEヤフーの持分法適用関連会社であり、JPX日経インデックス400の構成銘柄にも選ばれているなど、一定の規模と収益性を備えた企業である。創業者はニュージーランド人のティモシー・ロナン・ウィリアムズで、日本市場向けにアフィリエイトビジネスを導入したパイオニア的存在といえる。2000年にはギャラップ・ジェーマールで営業・マーケティングディレクターを務めたブライアン・ネルソンをCOOとして迎え、翌2001年には社長に就任させるなど、早期からグローバル人材を活用して成長を図ってきた。
創業当時にはメジャーリーガーのイチロー(鈴木一朗)が出資していたことでも注目を集め、上場時点では150株を保有していたと言われている。経営陣の多くが外国人だったことから外資系企業と誤解されることもあったが、実際には日本で設立され、日本市場を中心に事業を拡大してきた国産企業である。
2010年には飯塚洋一が代表取締役社長に就任し、その後2012年にヤフー株式会社(現LINEヤフー)の連結子会社となったことで事業拡大が加速し、Yahoo!ショッピングやPayPayモールなどのECプラットフォームとの連動強化が進んだ。2014年にはヤフー出身の香川仁が社長となり、ヤフーグループとの連携をさらに強化。広告主向けのデータ活用支援や、EC事業者への集客・CRM支援など、アフィリエイト以外の領域にも事業を広げていった。
主力のアフィリエイト事業では、成果報酬型広告で国内首位級の規模を誇り、広告主とメディアを結びつけるプラットフォームを自社で運営している。EC事業者・金融・保険・旅行・美容など幅広い業界に顧客を持ち、効果測定、提携管理、レポーティング、報酬支払いまで一括で提供している。また、ヤフー向けのクリック課金広告運用にも長く関わってきたが、CRMサービスなど一部事業の契約は終了しており、現在はアフィリエイト領域を中心に収益源を再編している。
日本のアフィリエイト広告市場の成長とともに歩んできた企業であり、ヤフーグループとの協業やEC領域のデータ分析力を背景に、アフィリエイトだけでなく総合マーケティング支援企業としての見せ方を強めている。成果報酬型広告の知見、ECプラットフォームとの連携力、長年蓄積されたデータ資産を武器に、デジタル広告市場での存在感を維持している。
バリューコマース 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.12 | 33,560 | 7,905 | 7,947 | 3,260 | 100.9 | 43 |
| 連22.12 | 35,708 | 8,249 | 8,319 | 5,806 | 179.6 | 56 |
| 連23.12 | 29,396 | 5,229 | 5,217 | 3,400 | 105.2 | 53 |
| 連24.12 | 30,410 | 4,160 | 4,121 | 2,855 | 113.2 | 57 |
| 連25.12予 | 24,000 | 1,700 | 1,700 | 2,000 | 92.3 | 49 |
| 連26.12予 | 15,500 | -400 | -400 | -400 | -18.5 | 0〜10 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 6,774 | -367 | -1,720 |
| 2023 | 3,499 | -404 | -1,745 |
| 2024 | 3,461 | -708 | -12,511 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 17.7% | 15.1% | 11.9% | ー | ー |
| 2024 | 13.6% | 22.2% | 14.5% | 実績PER 高値19.8倍 / 安値9.6倍 | 実績PBR 1.06倍 |
| 2025予 | 7.0% | 15.5% | 10.2% | 予想PER 11.79倍 | ー |
出典元:四季報オンライン
投資判断
バリューコマースの直近数年の利益推移を見ると、業績が下降トレンドに入っており、短期的には厳しい局面にいることがわかる。まず2023年12月期は売上293.9億、営業利益52.2億、経常利益52.1億、純利益34.0億と比較的高い収益を確保していた。しかし2024年12月期には営業利益41.6億、経常利益41.2億、純利益28.5億へ減少しており、広告出稿の鈍化、EC市場の調整、ヤフーとの広告関連契約の見直しなどが収益にマイナスに作用したと考えられる。営業利益率も17.7%から13.6%へ低下しており、利益体質が弱まりつつあることが数字に表れている。
さらに深刻なのは2025年12月期の会社予想で、売上240.0億、営業利益17.0億、経常利益17.0億、純利益20.0億と大幅減益が見込まれている点である。特に営業利益率は7.0%まで落ち込み、過去の高収益モデルから大きく乖離している。加えて2026年12月期の予想では売上155.0億、営業利益は-4.0億と赤字転落の見通しとなっており、事業構造そのものが転換点に差し掛かっていることが示唆されている。ここまで短期間で利益が縮小するケースは、広告業界全体の市況悪化に加え、同社のビジネスモデルが従来ほど強く機能していないことを意味する。
指標面では2024年の実績PERが高値19.8倍、安値9.6倍、PBR1.06倍と適正〜やや割安で推移していた。しかし2025年は利益が急減するため予想PERは11.7倍前後となり、見かけ上は割安だが、将来利益が再び成長軌道に戻る保証がない点がリスクとなる。ROEも22.2%から15.5%へ低下、2026年は赤字予想のためさらに悪化が避けられない。
総合すると、バリューコマースは過去に高収益を誇ったものの、現在は収益縮小フェーズに入りつつあり、短期・中期ともに不透明感が強い局面にある。ヤフー依存のビジネス構造が広告情勢の変化とともに調整を迫られており、新たな収益源がまだ十分に育っていない。2026年の赤字予想が示すとおり、本格的な業績底打ちまでは時間がかかる可能性が高い。
投資判断としては、安定的な成長や高配当を求める投資家には向きにくく、リスクが高い局面である。一方で、大幅な業績悪化とPBRの低下によって“過度に売られた場面”が発生した場合には、中長期の反転狙いとしての妙味が出てくる可能性もある。しかし現時点では改善シナリオが数字に現れていないため、積極的に買い向かうより、業績が底打ちしたと確認できるまで慎重姿勢が適切といえる。
配当目的とかどうなの?
バリューコマースを配当目的で考える場合、最初に注意しなければならないのは、配当がまったく安定していないという点である。2025年12月期の配当利回りは7.16%と非常に高く見えるが、翌2026年12月期は無配予想となっており、一気に0%まで落ち込む。この落差の激しさは、同社の配当方針が「安定配当型」ではなく、利益に応じて配当を大きく変動させるタイプであることを示している。高配当のように見える年があっても、それが継続する保証はなく、むしろ翌年には無くなる可能性が高い。
そもそも同社は2026年に赤字転落を見込んでおり、利益が確保できない中での配当維持は現実的ではない。企業としても無理に配当を出して財務体質を悪化させるより、当面は内部留保を優先し、将来の事業再構築や投資余力を確保する必要があるため、減配・無配は当然の判断といえる。つまり、2025年の高利回りは「持続性のない一時的な数字」であり、配当を目的とした長期保有の理由にはならない。
長期間にわたって安定した配当収入を求める投資家にとって、配当が急増・急減する銘柄は扱いにくい。特にバリューコマースのように業績の変動幅が大きく、来期・再来期の収益予想が不安定な企業では、配当の継続性を期待することは難しい。高配当銘柄の魅力は「安定して受け取れること」にあるが、この銘柄の場合、どの年に配当が出るかさえ読みにくく、配当投資の軸として据えるにはリスクが高すぎる。
結論として、バリューコマースは配当目的の投資には向かない銘柄だといえる。2025年に高利回りが見込めるという点だけに惹かれて投資すると、その後の無配によって総合的な利回りが大きく落ち込む可能性が高い。配当よりも「事業再建の兆しが見えるかどうか」を優先して判断すべき局面であり、安定配当株として保有する考え方とは相性が悪い銘柄である。配当収入を重視するのであれば、他のより安定した企業を選んだ方が合理的だと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
バリューコマースの現在値684円を起点に、今後5年間の株価推移を考えるうえで重要になるのは、同社が抱える「広告市場依存の収益構造」と「ヤフー連携の変化」、そして「EC広告の競争激化」という3つの軸である。アフィリエイト広告は景気動向や広告主の予算変動を強く受けるため、好況期は一気に利益が伸びるが、不況期は短期間で利益が半減するという特徴がある。バリューコマースはここ数年、その典型例のような業績推移を見せており、株価もそれを素直に反映して大きく変動してきた。
また、ヤフーとの広告関連契約が縮小された結果、収益源が細りやすくなっている点は今後の株価予想にも影響する。バリューコマースはヤフー経由の広告に強みを持っていたが、この依存度が高い構造が業績の変動をさらに大きくしている。競合のファンコミュニケーションズやCARTAと比べ、バリューコマースは「大口の依存先の変動リスク」が相対的に高いため、株価の動きも振れ幅が大きくなりがちだ。
こうした背景を踏まえたうえで、株価の5年後をシナリオ別に整理すると次のようになる。
まず良い場合では、広告市場が回復し、EC広告の伸びが再び顕著になり、連動してアフィリエイト広告単価や広告主側の投資意欲が回復する。この環境ではバリューコマースも案件数・成果報酬単価が改善し、営業利益率も徐々に戻ってくる可能性がある。さらにコスト削減効果が定着し、利益の波が徐々に小さくなって安定感が出てくれば、投資家の評価も再び向上し、PERが15倍〜20倍の水準まで戻ることも十分あり得る。この場合の株価は5年後に1100〜1300円と、現在値の1.5倍〜2倍程度の上昇が見込める。成長シナリオというより、正常化シナリオに近いイメージである。
次に中間シナリオでは、広告市場が低迷も回復もせず、横ばい圏で推移するケースだ。売上は大きく伸びないが、急激な悪化もないため極端な赤字には陥らない。企業としても利益調整を続けながら維持を図り、配当も小幅で継続される可能性が高い。こうした場合、投資家の評価は大きく変わらず、株価も700〜850円あたりのレンジで推移し続ける。バリューコマースの歴史的な株価推移を見ても、業績横ばいの時期はレンジ相場が長く続く傾向があり、この「中間シナリオ」がもっとも現実的だと考えられる。
悪い場合では、広告市場が縮小し、広告主の予算削減が続き、成果報酬型広告の単価も案件数も減少する。特にEC系広告は競合が増えており、大手プラットフォームのアルゴリズム変更や広告枠削減などの外部要因によって、アフィリエイト事業が大きな打撃を受ける可能性がある。こうなるとバリューコマースはふたたび利益が伸び悩み、赤字に転落するリスクも現実味を帯びる。利益の見通しが立たない局面では、投資家の評価も下がり、PERが10倍を割り込むような場面も出てくる可能性がある。この場合、株価は500〜600円までじわじわと沈む展開があり得る。
総合的に見ると、バリューコマースは「安定配当型の成熟企業」ではなく、「広告環境に強く左右される変動型銘柄」であるため、株価のブレ幅も他の広告系銘柄より大きくなりやすい。現在の684円という株価は、直近の業績悪化と将来の不透明性をすでにある程度織り込んだ水準だが、長期投資で大きな上昇を期待する銘柄とは言い難い。一方で、広告市場の復調が明確になったタイミングでは株価の戻りも早いため、割安圏で拾って回復を待つという戦略は一定の合理性がある。
ただし、あくまで「市場環境が改善した場合」であり、中長期で安定的に伸び続けるモデルではないため、ポートフォリオ全体でリスクをコントロールしながら持つべき銘柄であることを忘れてはいけない。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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