株価
飛島ホールディングスとは

飛島建設株式会社は、日本の中堅ゼネコンの中でも特に歴史が長く、土木工事を中心に成長してきた老舗建設会社である。現在は持株会社である飛島ホールディングス株式会社がグループ全体を統括し、建設事業に加えて不動産や環境関連事業もバランスよく展開している。飛島建設は創業以来、トンネル・ダムといった大型土木分野に強みを持ち、数々の国家的プロジェクトに参画してきたことで知られる。代表的な施工実績には、日本の象徴的な難工事として名高い「青函トンネル」、厳しい地質条件に挑んだ「八甲田トンネル」、中部山岳国立公園内での施工で技術力が試された「安房トンネル」、さらに延長や地質条件の厳しさで知られる「飛驒トンネル」などがあり、これらのプロジェクトを通じて高い土木技術力を国内外へ示してきた。
1990年代には準大手ゼネコンに迫る規模を持つまで成長していたが、その後の建設不況の影響を受けて現在は中堅規模として安定的な運営を行っている。ただし規模が縮小した後も技術力そのものは極めて高い水準を維持しており、近年では国家的プロジェクトとして注目されるリニア中央新幹線の伊那山地トンネルおよび南アルプストンネル工事にJV形式で参画している点からも、依然として高度な施工力が求められる分野で信頼されていることがうかがえる。
飛島建設は、かつてはダム建設において圧倒的な強さを誇り「水力のトビシマ」と呼ばれた歴史を持つ。全国の水力発電所関連工事を数多く手がけ、土木施工技術の基盤を築いた。また、阪神・淡路大震災以降は防災分野への取り組みを強化し、地震対策・耐震補強・液状化対策・水害対策など、社会インフラ保全に関わる技術開発に注力し続けている。これにより「防災のトビシマ」と称されるようになり、現在でも国・自治体からの防災関連案件で高い評価を得ている。
近年は土木・建築工事に加えて、不動産開発や再開発事業、環境関連事業、エネルギー関連事業などへ領域を広げている。グループ会社との連携も強化し、保全・維持管理、環境計測、リサイクル事業など、多面的な事業展開を行っている点も特徴である。また、応用技術株式会社と共同でBIM/CIMモデルをクラウド上に構築し、工事現場をデジタル上で再現する取り組みも進めている。これにより遠隔地からでも進捗状況や施工手順の確認が可能となり、生産性の向上・工程管理の高度化・安全性向上へつながっている。建設業界のDXへの転換が求められる中で、飛島建設はデジタル技術の積極導入により競争力を維持しようとしている。
さらに、飛島ホールディングスは継続的にM&Aを活用し、建設周辺領域の企業を取り込みながらグループ全体の機能拡大を進めている。これにより、防災・環境・不動産・メンテナンスといった多角化が加速し、建設事業の景気変動リスクを分散させる経営体制を整えている。飛島ホールディングスはJPX日経中小型株指数の構成銘柄にも採用されており、投資家からも一定の安定性・成長力を評価されている企業である。
また、現在の大手準ゼネコンである熊谷組や前田建設工業はもともと飛島組(現・飛島建設)から独立した企業であり、飛島建設が日本の建設業界の発展に大きく関わってきた歴史的背景も興味深い点である。長い歴史に裏付けられた技術力、土木分野における圧倒的な実績、そして近年のデジタル化・多角化の取り組みを通じ、飛島建設は現在でも独自の存在感を持つ中堅ゼネコンとして進化を続けている。
飛島ホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025/3(連25.3) | 138,259 | 6,426 | 5,730 | 3,723 | 194.5 | 90 |
| 2026/3予(連26.3予) | 140,000 | 6,500 | 5,800 | 3,900 | 203.6 | 100 |
| 2027/3予(連27.3予) | 142,000 | 6,700 | 6,000 | 4,000 | 208.8 | 100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2025/3(連25.3) | 2,806 | -1,294 | 307 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均 / 安値平均) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025/3(連25.3) | 4.6% | 7.3% | 2.3% | 9.3倍 / 7.2倍 | 0.83倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
飛島ホールディングスは、利益水準や財務指標を総合すると「割安で安定性のある中堅ゼネコン」という評価になる。業績面では売上高が1382億円から翌期1400億円へと小幅に伸びており、営業利益も64億円から65億円、経常利益は57億円から58億円、純利益も37億円から39億円へと微増している。急成長とはいえないものの、景気の影響を受けやすい建設業の中では着実に利益を積み上げており、大幅な落ち込みが見られない点は評価できる。
収益性を見ると、営業利益率は4.6%で建設業としては標準的な水準である。高収益企業とまでは言えないが、薄利多売になりがちなゼネコン業界の中で、安定した利益率を維持しているといえる。ROEは7.3%、ROAは2.3%と資本効率は平均的であり、突出して高いわけではないが、無難な利益体質を示している。積極的な成長よりも堅実な経営を重視している印象が強い。
市場評価の面では、PERが高値平均9.3倍、安値平均7.2倍、PBRが0.83倍となっており、明らかに割安な水準に位置している。特にPBRが1倍を下回っている点は、企業の純資産価値に比べて株価が低めに評価されていることを示しており、バリュー株としての魅力がある。景気敏感な建設業という理由から市場の評価が厳しくなりがちだが、利益が安定していることを踏まえると株価にはやや割安感が残されている状態といえる。
総合すると、飛島ホールディングスは大幅な成長を期待するタイプの銘柄ではないものの、利益や配当が安定しており、中長期でじっくりと保有しやすい企業である。特に割安なPBRと無理のない利益計画を背景に、下値の固さが期待できる点はディフェンシブな投資家にとって魅力となる。急騰を狙うというより、安定配当と割安感を重視するスタイルに向いた銘柄といえるだろう。
配当目的とかどうなの?
飛島ホールディングスの株を配当目的で考える場合、現在の予想配当利回りが26.3期と27.3期ともに4.49%となっており、この利回り水準は日本株全体の平均(約2%前後)と比較してもかなり高い部類に入る。PBRが0.83倍と割安で放置されている一方、配当利回りが4%後半と安定している点を見ると、典型的な「バリュー株 × 高配当株」という性質が強まっている。
同社は急成長を目指す企業ではなく、売上・利益は大きく伸びないものの、大幅に落ち込むことも少ない。建設セクターの中では受注の波はあるものの、トンネルや防災関連など競争力のある領域で案件が入り続けており、利益が安定しやすい体質となっている。こうした安定型の企業は、無理のない範囲で継続的な配当を出せることが多く、実際に飛島ホールディングスも90円→100円と配当を増やしており、配当政策として特に弱さは見られない。
また、同社の配当性向は極端に高いわけではなく、利益の範囲内で十分に賄える水準であるため、配当が急に減配されるリスクも相対的に小さいと考えられる。建設業界は景気悪化時に減益しやすい側面はあるものの、飛島は比較的保守的な経営を行っているため、極端に乱高下するような業績になりづらく、安定配当株としての扱いやすさがある。
さらに、PBR1倍を下回る水準で推移している点は、株主還元強化(配当増加や自社株買い)の可能性を後押しする場合がある。市場全体で「資本コストを意識した経営」が求められている中、建設会社が配当強化を進めるケースも増えてきている。この観点で見ると、飛島ホールディングスも将来に向けてさらなる株主還元を強化する余地は残されている。
こうした点を踏まえると、飛島ホールディングスは配当目的の投資として十分に候補に入る銘柄だといえる。高成長は期待しにくいが、高めの利回りと下値の固さを併せ持つため、安定収入を求める投資家に向いた構造になっている。株価が大きく跳ねなくても、4%後半の利回りを受け取りながら、割安評価が改善した際には値上がり益も狙える「配当+バリュー」の両面取りができるタイプの銘柄である。
今後の値動き予想!!(5年間)
飛島ホールディングスの株価は現在2,227円で推移しており、PBR0.83倍という割安水準に位置している。建設業界の中でも同社はトンネル防災関連の高い技術力を持ち、売上・利益が大きく崩れない安定的な体質が特徴である一方で、急成長が期待できる企業ではないため、市場からの評価は総じて控えめになりやすい。とはいえ、こうした割安株は業績が安定している限り、長期的には「資産価値」や「防災インフラ需要」の拡大によって見直される可能性を秘めている。ここでは、飛島ホールディングスの財務状況や収益性、建設セクターの今後の公共・民間需要を踏まえつつ、5年間で想定される株価の動きを良い場合、中間の場合、悪い場合の3つのシナリオで整理する。
まず良い場合のシナリオでは、同社の強みであるトンネル・ダム工事、防災関連インフラ、さらにはリニア中央新幹線のような国家プロジェクトへの参画が続き、売上・利益が緩やかにでも成長を示す展開が想定される。加えて、国主導の防災・減災投資が継続し、中堅ゼネコンの技術力に再評価が入れば、PBR0.8倍台という評価が1.2〜1.5倍程度まで改善する可能性がある。PERについても7〜9倍から10倍台まで上昇する余地があり、このような利益拡大と評価見直しが重なった場合、5年後の株価は3,200〜3,700円ほどに上昇する可能性がある。特に防災関連需要が拡大し、同社が収益性を改善できた場合には4,000円台に乗る展開も視野に入る。
中間のシナリオでは、現在のような穏やかな売上・利益の推移が継続する。営業利益率は4〜5%台で推移し、大幅な改善も悪化もない状態となる。建設株特有の需給と市場評価の変動が小さく、PERは7〜10倍、PBRは0.8〜1.0倍の範囲で落ち着くとみられる。この場合、株価の中心レンジは2,200〜2,600円程度となり、現在値と比べて「大きく下がりづらく、大きく上がりづらい」横ばいに近い推移となる可能性が高い。飛島ホールディングスの安定した利益体質や資産の厚さを考えると、この中間シナリオが最も現実的といえる。
悪い場合のシナリオでは、公共工事や民間建築が減少し、受注環境が悪化することで利益率が低下する可能性がある。特に景気後退局面では建設投資が大きく落ち込むことがあり、その場合は営業利益率が4%を割り込み、ROEも5%以下に低下する恐れがある。建設セクター全体の株価が売られる局面では、PBRが0.6〜0.7倍を割り込むケースもあり得る。こうした評価の悪化を織り込むと、株価は1,600〜1,900円程度まで下落するリスクがある。ただし同社は資産価値が厚く、財務も比較的堅実であるため、1,500円を大きく目安に下抜けする可能性は低く、構造的な毀損がない限り極端な暴落は起こりにくいと考えられる。
総合的に見ると、飛島ホールディングスは急成長を期待する銘柄ではないが、資産価値と安定利益に支えられた「割安・ディフェンシブ型」の性質が強い。大きなリスクを取りたくない長期投資家にとっては魅力がある一方、短期で急騰を狙うタイプの銘柄ではない。現時点では下値の固さが意識されやすく、業績の安定および評価改善が重なれば、数年スパンでじわじわと株価が上向く可能性も残されている。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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