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養命酒製造とは

養命酒製造株式会社は、慶長7年(1602年)創業という非常に長い歴史を持つ医薬品・酒類メーカーで、日本の薬用酒市場において圧倒的なシェアを持つ企業である。本店は東京都渋谷区、主力工場は長野県駒ヶ根市に位置し、伝統と自然資源を生かした健康領域のものづくりに強みを持つ。代表商品である「薬用養命酒」は第2類医薬品に分類され、400年以上の歴史の中で体質改善・滋養強壮を目的とした薬用酒として広く知られている。
近年は “自然の力を心と体に” を掲げた健康ブランド戦略を展開し、2023年時点のスローガン「次のすこやかさへ、一歩一歩」にもあるように、薬用酒以外の領域への展開を強化している。酒類では「夜のやすらぎ ハーブの恵み」「生姜のお酒」「高麗人参酒」「香の森」など、生薬やハーブを用いた独自の商品シリーズを展開し、クラフトジン系の新商品や若年層向けのフルーツ×ハーブ系リキュールなど、新しいターゲット層の開拓も進めている。
さらに、食品・サプリ分野にも力を入れており、「グミ×サプリ」シリーズや「黒酢系ドリンク」、機能性表示食品の「生姜黒酢」「黒豆黒酢」など、日常的に摂取できる健康食品ラインを拡大している。のど飴や甘酒など、生活に自然と取り入れやすい商品群も増えており、薬用酒だけに依存しない多角化が進んでいる。
財務面では自己資本比率が高く、堅実な経営が続いており、安定性の高い企業として知られる。また、駒ヶ根の広大な自然環境を活かした「養命酒健康の森」の運営など、企業活動を通した地域貢献にも積極的で、自然・健康を基盤としたブランドイメージが確立されている。
総合すると、養命酒製造は伝統と自然素材の活用を軸にした確固たるブランド力を持ちつつ、健康飲料・サプリメントなどの新分野にも挑戦し続けている企業であり、長期視点での事業安定性が極めて高いことが特徴である。
養命酒製造 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS)(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 単23.3 | 10,647 | 1,077 | 1,480 | 1,020 | 73.9 | 55記 |
| 単24.3 | 10,242 | 473 | 949 | 952 | 68.9 | 45 |
| 単25.3 | 10,017 | 128 | 626 | 679 | 49.1 | 45 |
| 単26.3予 | 9,950 | 470 | 1,090 | 1,110 | 80.1 | 45 |
| 単27.3予 | 10,100 | 490 | 1,110 | 1,120 | 80.8 | 45 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 1,748 | -1,451 | -554 |
| 2024 | 667 | 2,313 | -760 |
| 2025 | 473 | -1,194 | -623 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 10.1% | 2.3% | 2.0% | – | – |
| 2024 | 4.6% | 2.0% | 1.7% | – | – |
| 2025 | 1.2% | 1.4% | 1.2% | 25.8〜22.9倍 | 1.27倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
養命酒製造の業績を見ると、売上は100億円前後で非常に安定しているものの、利益が大きく上下する点が特徴的である。24.3期の営業利益は4.7億円あったが、25.3期には1.2億円まで落ち込み、利益率の低さが際立った。ただし26.3期予想では営業利益4.7億円、経常利益10.9億円、純利益11.1億円と回復が見込まれており、一定の持ち直し傾向が出ている。
ただし営業利益率自体は24.3期4.6%、25.3期1.2%、26.3期予想で4.7%と、安定した高収益型ではない。利益率がわずかに変動しただけで最終利益が大きく動きやすい「薄利構造」であり、ROEやROAも2%前後と低水準にとどまっていることから、資本効率も高いとは言えない。
その一方で、財務の健全性は極めて高く、企業としての安定性は抜群である。創業400年以上のブランド力と、薬用酒という独自の市場ポジションは他社が簡単に参入できない強みであり、事業基盤が揺らぎにくい。また、売上規模が安定しているため、倒産リスクや事業継続リスクは非常に低い。
市場評価としては、予想PERが20倍台とやや高めに推移しているが、これは成長期待というより「財務の安定性と伝統ブランド」へのプレミアムが付いていると見るべきである。PBRも1倍以上で評価されているが、収益成長力を考えると株価が急騰するような展開は期待しにくい。
総合すると、養命酒製造は成長株ではなく安定型のディフェンシブ銘柄であり、株価の大幅な上昇を求める投資家には不向きだが、事業の安定性と配当の継続性から長期保有には適している。値動きは緩やかで下値も比較的固いものの、投資リターンは派手ではなく、資産保全寄りの銘柄という評価が妥当である。
配当目的とかどうなの?
養命酒製造を配当目的で考える場合、まず最初に意識しておくべきなのは「利回りが非常に低い」という点になる。予想配当利回り(2026・2027年度)は1.02%前後で、これは日本株の標準的な利回り(2%前後)を大きく下回っており、高配当株として期待できる水準ではない。安定した配当を出してはいるものの、それによって投資リターンを積み上げるという考え方には馴染まない。
同社は創業400年以上の歴史を持ち、財務体質は極めて健全で、事業も「薬用酒」という独自性の高い領域を中心としたニッチ市場を築いている。そのため収益がゼロに近づいたり、赤字が連続したりするリスクは小さめで、まさに“堅実経営のお手本”のような企業ではある。しかし裏を返せば、大きな成長を期待しにくい。新規事業としてハーブ飲料や食品などに展開しているものの、事業規模を一気に押し上げるほどのヒット商品が出ているわけではなく、売上は横ばい、利益も緩やかな増減を繰り返している。
こうした構造のため、配当政策も保守的で、配当金額は長年にわたって大きな変化がない。業績が急に伸びるタイプではないので、増配余地も限られており、配当利回りも今の水準から大きく上向く見通しは乏しい。企業としては財務の健全維持と事業の安定運営を最優先するスタンスが強く、株主還元に積極的な会社とは言いにくい。
とはいえ、養命酒製造は「安定性」という点では非常に強い。景気変動に左右されにくく、薬用酒という独自カテゴリーのおかげで一定の需要があり、利益が極端に落ち込むようなシナリオは想像しにくい。株価も大きく崩れにくいタイプの銘柄で、保有していて精神的に楽な部類に入る。
総合すると、養命酒製造は「配当でしっかり稼ぐ」という目的には向かないが、「リスクの少ない、手堅い資産として保有しておきたい」という長期的・保守的な投資スタイルには合っている銘柄と言える。利回りは低いものの、企業としての安定感は高いので、値動きの激しい銘柄が苦手な投資家には適した選択肢になる一方で、配当狙いの効率だけを見るなら、他銘柄のほうが優先度は高い、という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在値4,390円を基準にすると、養命酒製造の今後5年間の株価は大きな急騰・急落よりも、業績の小幅な変動に合わせてじわりと動く可能性が高い。養命酒という強固なブランド資産を持ち、1600年代から続く老舗企業として安定性は抜群だが、その反面、爆発的な成長を狙える業態ではなく、成熟市場に身を置いている点が株価形成に強く影響する。薬用養命酒は根強い需要があるものの市場規模は急成長しない領域で、ハーブ酒・生姜酒・健康飲料・黒酢など新分野も一定の需要はあるものの、売上の柱に育つには時間がかかっている。財務基盤は非常に健全で借入依存も小さく、倒れる心配はほぼないディフェンシブ企業と言える。
良い場合の株価推移としては、健康意識の高まりや漢方・ハーブ系商品の再評価によって主力の薬用酒や健康飲料への需要が回復し、さらに新規商品の投入がうまくハマることで営業利益が着実に増加するシナリオが考えられる。特に中高年層を中心に“体調管理系”飲料の需要が増える局面では追い風となりやすく、インバウンド需要の取り込みやアジア圏での販路拡大が進めば業績が今より一段上のステージに乗る可能性もある。この場合、企業の成長率こそ緩やかだが投資家の評価がじわりと高まり、5年後には株価が5,000〜5,600円程度まで上昇するシナリオが見える。急激な上昇ではないものの、堅実に積み上がるタイプの値動きとなる。
中間的なシナリオは最も現実的で、売上は横ばいから微減、利益も年度ごとに多少動くが大きく崩れたり爆発的に伸びたりはしない展開である。薬用酒は安定しているが大きく伸びず、新分野も少しずつ浸透するが収益の主力になるほどではない。コスト面の変動にも影響されやすく、利益率も高くはないため、株価は4,200〜4,600円の間で落ち着きやすい。投資としては“安心感は強いがリターンは控えめ”という特徴が際立ち、短期的な値上がり目的の投資には向かないが、安定した企業に長期で資産を置いておきたい投資家にとっては選択肢になり得る。
悪い場合のシナリオは、主力である養命酒市場が高齢化の進行とともに徐々に縮小し、新規健康飲料も大きなヒットに繋がらないケースである。広告・物流コストの上昇が利益を圧迫し、営業利益が低めで推移する状態が続くと市場の評価はやや下がる。とはいえ養命酒製造は財務が非常に健全で現金余力もあり、急激な業績悪化による企業価値の毀損は起きにくい。したがって株価が暴落するような展開は考えづらいが、それでも3,600〜4,000円程度まで下落する可能性はある。ただし大きく割り込むとディフェンシブ銘柄としての割安感が意識され、自然に買いが入る企業でもあるため、下値は比較的堅い。
総合すると、養命酒製造は成長株ではなく、ディフェンシブ色が非常に強い“安定維持型”の企業であり、株価もそれをそのまま反映した動きになりやすい。長期で持つ分には安心だが、積極的な株価上昇や高い配当リターンを求める投資家向きではない。一方で、下落耐性が強く経営も堅実で、長い目で見れば大きな損失を抱えにくいタイプの銘柄であり、資産保全や分散投資の一部としてなら十分に適していると言える。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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