株価
J-オイルミルズとは

株式会社J-オイルミルズは、東京都中央区に本社を置く、食用油脂の製造・販売を中心とした味の素グループの食品メーカーである。2003年に味の素製油、ホーネンコーポレーション、吉原製油の3社が統合して設立され、日本の製油業界において日清オイリオグループと並ぶ“2強”の一角を形成している。前身となる企業は2002年にまず味の素製油とホーネンが統合して持株会社「豊年味の素製油」を立ち上げ、翌2003年に吉原製油が加わったことで現在の社名に変更された。その後2004年には3社と日本大豆製油の4事業会社が吸収合併し、ブランド体系も整理され、家庭用油脂は「AJINOMOTO」ブランドへ、業務用は「J-OIL MILLS」ブランドを中心に展開する体制が整えられた。
同社は家庭用のキャノーラ油、サラダ油、こめ油、オリーブオイルをはじめ、ヘルシーオメガバランスやえごま油、アマニ油などの健康油シリーズまで幅広い商品を手掛けている。また、FILIPPO BERIOブランドによる本格オリーブオイルも輸入販売しており、品質面での評価も高い。業務用については、フライ油、製菓・製パン用油脂、加工食品用の専門油脂などあらゆる食品産業向けのラインを持ち、飲食店や食品メーカーから厚い支持を得ている。
2021年にはコミュニケーションブランドとして「JOYL(ジェイオイル)」が導入され、家庭用・業務用の両方でパッケージデザインを刷新し統一感を高めた。JOYLは“Joy of Life”のメッセージと連動し、生活者の食卓に「おいしさ」と「楽しさ」をもたらすブランドコンセプトを象徴している。同ブランドは通信販売限定商品からスタートし、現在ではAJINOMOTOブランドの既存商品にも順次ロゴが付されている。
また、同社はコーポレートメッセージとして「おいしい♪は幸せのエネルギー。」を掲げてきたが、2019年にはビジョンを「Joy for Life」に刷新し、持続可能な食の提供やヘルシーオイルの展開、植物由来のたん白質・食品素材の開発など、時代に対応した事業ドメインの拡大を進めている。健康志向の高まりや食の多様化への対応として、植物性素材の研究開発にも注力しており、食品機能の向上や新分野創出にも積極的だ。
J-オイルミルズはこのように、国内最大級の油脂メーカーとして伝統あるブランドと技術力を引き継ぎながら、健康油・高付加価値油脂・植物性食品といった成長領域に軸足を置き、味の素グループの一員として総合食品素材メーカーへと進化し続けている企業である。
J-オイルミルズ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | EPS | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 260,410 | 734 | 1,436 | 986 | 29.8 | 20 |
| 連24.3 | 244,319 | 7,243 | 9,043 | 6,792 | 205.4 | 60 |
| 連25.3 | 230,783 | 8,572 | 10,031 | 6,996 | 211.5 | 70記 |
| 連26.3予 | 240,000 | 8,600 | 9,600 | 6,700 | 202.5 | 70 |
| 連27.3予 | 250,000 | 9,000 | 10,000 | 7,000 | 211.6 | 70 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | -10,022 | -3,709 | 12,628 |
| 2024 | 22,468 | -3,336 | -17,347 |
| 2025 | 18,294 | -3,776 | -6,855 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 0.2% | 1.0% | 0.5% | ― | ― |
| 2024 | 2.9% | 6.6% | 3.8% | ― | ― |
| 2025 | 3.7% | 6.6% | 4.1% | 25.3倍 / 21.8倍 | 0.61倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
J-オイルミルズの業績を見ると、ここ数年は売上が緩やかに縮小する一方で利益が部分的に改善する局面もあり、全体としては安定感はあるものの力強い成長軌道に入っているとは言い難い。2024年の売上は2443億で、営業利益72億、経常利益90億、純利益67億と一定の収益を確保しているが、営業利益率は2.9%と食品メーカーとしては控えめで、コスト構造の重さが収益を圧迫している状況が見えてくる。2025年も売上2307億と減収が続きつつ、営業利益85億、経常利益100億、純利益69億とわずかに利益は伸びているものの、この改善幅では根本的な収益体質の強化が進んでいるとは言えない。
2026年の会社予想では売上2400億、営業利益86億、経常利益96億、純利益67億と、売上はやや戻るものの利益成長は限定的で、営業利益率が3%前後から大きく跳ね上がる見込みもない。高付加価値商品の拡大や、家庭用・業務用のブランド方針の統一で効率改善を図っているが、食用油脂という業界特性上、原材料価格の変動に左右されやすく、コスト上昇局面では利益を確保しづらい構造が依然として残っている。
財務指標を見ると、2025年のROE6.6%、ROA4.1%は一定の改善を示しているが、資本効率が高いとは言えず、競争力のある高収益企業と比べると見劣りする。営業利益率も長期的に1〜3%台で推移しており、安定感はあるものの大きく儲かるビジネスモデルではないことが明確だ。株価評価指標を見ると、PERは高値平均25.3倍、安値平均21.8倍で割高水準に位置しており、利益面の弱さに対して株価が高めに評価される局面もある。反対にPBR0.61倍という低水準は、資産価値に比べて株価が割安に放置されている印象もあるものの、これは収益性の低さを市場が織り込んでいるとも解釈できる。
総合的に見ると、J-オイルミルズは大崩れしない堅実な企業ではあるが、大幅成長を期待しづらく、株価も構造的に大きく跳ねにくいタイプの銘柄と言える。食用油という生活必需品を扱うディフェンシブ性があるため、景気後退局面でも一定の需要が維持される一方、利益率が低いことから高収益企業のように株価が強く上昇していく展開は期待しづらい。市場に割安に評価される場面があるのも、収益の伸び悩みを反映している。
投資判断としては、急成長や株価の大幅上昇を狙う投資には適した銘柄ではないが、食品・日用品カテゴリーの安定性やディフェンシブ性を評価する長期保有という観点では一定の価値はある。ただし、中長期で株価を押し上げるためには利益成長の加速や事業効率化といった明確な改善シグナルが必要であり、現状の利益水準を見る限り、積極的に買い向かうほどの強い材料はまだ乏しい状況と言える。
配当目的とかどうなの?
J-オイルミルズを配当目的で考える場合、結論としては「そこそこ悪くないが、強くおすすめできるレベルでもない」という微妙な立ち位置の銘柄になる。予想配当利回り(2026・2027年度)は3.48%と、食品メーカーとしては比較的高めの水準にあり、日本株全体の平均利回り(2%前後)を上回っている点は素直に評価できる。配当の絶対値も増配傾向にあり、直近では60円から70円へ引き上げられるなど、一定の株主還元姿勢はうかがえる。
ただし、配当利回りが高い背景には、業績の伸び悩みや利益率の低さが反映されており、企業として強い成長軌道に乗っているわけではない。営業利益率は1~3%台と薄く、収益構造が盤石とは言えないため、長期的に安定した増配が続くかどうかは業績の波に左右されやすい側面がある。ROEやROAも6%前後と低い水準で推移しており、資本効率は決して高くない。
もっとも、J-オイルミルズは食用油という生活必需品を扱うディフェンシブ企業であり、景気に左右されにくい点はメリットだ。売上や利益が大きく崩れにくい分、減配リスクも極端には高くない。食品セクターの中でも安定寄りの位置づけで、株価の変動も比較的穏やかであることから、利回り3%台後半の配当を安定的に受け取りたいという投資家にとっては、一定の選択肢になり得る。
ただし、配当“成長”を期待する投資としては物足りない。利益の伸びが小さいため、大きく増配して利回りをさらに引き上げるような展開は想定しにくい。また、株価上昇によるキャピタルゲインも強くは期待できないため、「配当をもらいながら長期でゆっくり持つ」という投資スタイルに限定される銘柄になる。
総合すると、J-オイルミルズは、極端な高配当株でもなければ増配株でもないが、3.48%という利回りの高さとディフェンシブ性の高さから、安定インカムを求める投資家にとってはある程度魅力を持つ銘柄と言える。ただし、業績の伸び悩みや低い収益力を踏まえると、配当目的であっても過度な期待は禁物で、あくまで「安定した小さなリターンを狙う銘柄」という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
J-オイルミルズの現在の株価(2,006.0円)から今後5年間の株価を考える際に改めて重要なのは、この企業が抱える構造的な課題と、食品メーカーとしての安定性が同時に存在しているという点だ。まず収益構造を見ると、売上規模は安定しているものの、営業利益率は長年1~3%台にとどまり、原材料価格や為替の影響を受けやすい体質が続いている。2024年にかけて営業利益・経常利益が改善しつつある一方で、利益成長が大幅に伸びるわけではなく、収益の“薄さ”という問題は引き続き残っている。また、食品油脂という業界の特性として、値上げが浸透するまで時間がかかるため、コスト負担が重い局面では利益が一時的に大きく落ち込むこともある。
ただし、家庭用・業務用ともに味の素ブランドを活用した商品展開が強く、業界内での存在感は大きい。さらに高付加価値オイルやオリーブオイルの市場拡大、機能性油脂の需要増など、徐々に利益率改善へ向かうテーマも持っている。したがって、利益が劇的に伸びる企業ではないが、「じわじわと改善していく」可能性が完全にないわけではない。こうした背景を踏まえて株価予想を整理すると、より実像に近い中長期像が見えてくる。
良い場合のシナリオでは、原材料価格が落ち着き、利益率の改善が続き、高付加価値商品の販売が伸びて収益が底上げされるケースだ。営業利益率が3%台後半に安定してくると、市場は評価を改め、過度な割安評価が薄れ始める。こうした環境が続けば、5年後の株価は2,300〜2,600円程度まで戻りを試す展開が想定できる。ただし急騰は期待しづらく、緩やかに評価が見直されるイメージに近い。
中間シナリオでは、現状の延長線上で売上が小幅に増減しながら、利益は改善と停滞を交互に繰り返すという安定志向の状態だ。食品メーカーとしてはよくあるパターンで、収益が急伸もしなければ急落もしない。営業利益率が3%前後で推移する場合、株価は2,000円前後を軸に上下するレンジ相場を形成し、5年後は1,900〜2,200円に収まりやすくなる。大きく儲からないが、大きく損もしにくいという典型的なディフェンシブ銘柄の姿に近い。
悪い場合のシナリオでは、原料油価格の上昇や為替の円安基調が強まり、さらに労務費・物流費の上昇が重なり、利益が圧迫されるケースだ。油脂メーカーはコスト転嫁が遅れる局面があるため、営業利益率が2%台前半〜それ以下に落ち込む可能性も否定できない。そうなると市場の評価も厳しくなり、株価は割安放置されやすく、5年後には1,500〜1,700円まで下がるシナリオも十分に考えられる。特に業績が鈍化するとPERの縮小も起きやすく、下振れリスクには注意が必要になる。
総合すると、J-オイルミルズは大きな成長を見せる企業ではないが、急激に崩れるタイプでもないという特徴を持っている。食品油脂というディフェンシブな領域で基盤は安定しているものの、利益率の低さが株価の重しになりやすく、上昇余地は構造的に限られてしまう。したがって、この銘柄は値上がり益を狙うよりも「非常にゆっくりとした改善を見守る長期ホールド型」に近く、5年後の株価が大きく跳ね上がる可能性は高くない。改善シナリオが見えてくればプラス方向に動くが、基本は狭いレンジでの推移に落ち着くという現実的な中長期像が描かれる。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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