株価
アンドエスティHDとは

株式会社アダストリアは、東京都渋谷区に本社を構えるカジュアル衣料品・生活雑貨の製造小売業を展開する大手アパレル企業で、アンドエスティHD(アンドエスティホールディングス)の完全子会社として事業を行っている。日本のアパレル市場における売上高は国内第3位で、ファッション、雑貨、ライフスタイル領域まで幅広く手がける総合アパレルグループである。
社名の「アダストリア」はラテン語の格言 “Per aspera ad astra(困難を克服して栄光を獲得する)” を語源としており、挑戦と成長を象徴するブランド理念が込められている。企業の歴史としては、2013年に当時の株式会社ポイントが持株会社体制へ移行し「アダストリアホールディングス」へ商号変更。その後、新設会社に事業を承継し、さらに2015年にはポイントとトリニティアーツを統合して再び事業会社としての形態へ戻り、現在のアダストリアとして事業を展開している。
アダストリアが展開するブランドは非常に多岐にわたり、GLOBAL WORK(グローバルワーク)、niko and…(ニコアンド)、LOWRYS FARM(ローリーズファーム)、LEPSIM(レプシィム)、LAKOLE(ラコレ)、studio CLIP(スタディオクリップ)、JEANASiS(ジーナシス)、Heather(ヘザー)、RAGEBLUE(レイジブルー)、HARE(ハレ)など、幅広い世代とスタイルをカバーするブランドラインナップを持つ。また、海外では香港を中心にCollect PointやGlobal Workなども展開している。
親会社であるアンドエスティHD(アンドエスティホールディングス)は、アダストリアグループ全体を統括する持株会社であり、ブランド戦略、経営資源配分、成長事業への投資判断などを担う組織として機能している。アンドエスティHDを軸とすることで、ブランド横断のシナジー創出やEC戦略の強化、海外事業の一体運営などをより効率的に進める体制を整えている。
アダストリアは今や衣料品だけに留まらず、雑貨、インテリア、家具、飲食、さらには自社ECサイト「ドットエスティ(.st)」によるオンライン事業強化など、顧客のライフスタイル全体を支える総合グループへと進化しており、アンドエスティHDのもとで持続的な成長を目指す企業として位置付けられている。
アンドエスティHD 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 1株益(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.2 | 242,552 | 11,515 | 12,026 | 7,540 | 166.4 | 60 |
| 連24.2 | 275,596 | 18,015 | 18,389 | 13,513 | 297.8 | 85 |
| 連25.2 | 293,110 | 15,510 | 15,964 | 9,614 | 208.9 | 90 |
| 連26.2予 | 305,000 | 19,000 | 19,000 | 14,500 | 314.5 | 90 |
| 連27.2予 | 319,000 | 21,000 | 21,000 | 14,000 | 303.7 | 90〜95 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年2月期 | 13,460 | -9,963 | -4,398 |
| 2024年2月期 | 22,223 | -9,920 | -5,581 |
| 2025年2月期 | 21,373 | -16,971 | -7,111 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.7% | 12.6% | 6.7% | — | — |
| 2024 | 6.5% | 19.2% | 10.5% | — | — |
| 2025 | 5.2% | 12.4% | 7.2% | 10.2〜15.6 | 1.63 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
アンドエスティHDの直近3期の数字を見ていくと、この会社が非常に“振れ幅のある成長企業”だという姿がはっきり浮かび上がってくる。連24.2の時点では売上2755億円、営業利益180億円、純利益135億円と非常に勢いのある決算だったが、翌期の連25.2では利益が一段落し、営業利益は155億円、純利益も96億円まで縮小している。とはいえ、完全に落ち込んだわけではなく、連26.2予では営業利益190億円、純利益145億円と再び回復基調に入る見通しで、成長と調整を繰り返すアパレル企業らしい動きになっている。
収益性を見ると、営業利益率は4.7%→6.5%→5.2%と比較的高めの水準で推移しており、同業のアパレル企業と比べても競争力のある収益体質であることが分かる。ROEも12.6%→19.2%→12.4%と高く、資本効率が安定しており、ROAも6〜10%台で推移している点を見ると、単なる規模拡大ではなく、しっかり利益を出しながら成長している会社であることが読み取れる。
一方、株価指標を見ると、実績PERは10〜15倍の間で評価されており、実績PBRは1.63倍。これは“成長性を適度に評価されている企業”の典型的なレンジで、割安でも割高でもない中間的な位置にある。EPSも297円、208円、そして予想314円へと推移しており、利益の上下はあるが、長期で見れば増加傾向にあることが分かる。
つまりアンドエスティHDは、売上が右肩上がりで増え続けながら、その中でブランド投資や店舗調整により利益が波打つタイプの企業だが、トレンドとしては“成長軌道から外れていない”というのが大きなポイントになる。営業利益率やROEが高水準で安定しているということは、構造的に強い企業であり、事業モデルに無理がない。
その一方で、利益が年度ごとに上下するため、市場は強気にも弱気にも振れやすく、株価が一定のレンジに収まりやすい特徴もある。PER10〜15倍という評価帯はまさにその象徴で、極端な割安にもならないが、爆発的な割高評価にもなりにくい。しかし、EPSが300円を超える水準へ向かっていく場合、PER12〜15倍がそのまま株価に掛かるため、株価の上値余地は十分に残されている。
まとめると、アンドエスティHDは、業績の振れ幅はあるものの、長期で見れば売上も利益も着実に成長しており、その過程で株価が一定の波を描きながら評価されていくタイプの銘柄である。収益性もROE・ROAの水準を見る限り高く、事業基盤が強いことは明らかで、成長シナリオが崩れていない。割安株というよりは「中価格帯で安定成長する優良アパレル」という立ち位置で、業績の波はあるものの、長期では堅実に積み上げていく力を持った企業だと言える。
配当目的とかどうなの?
アンドエスティHDの予想配当利回りは連26.2・連27.2ともに3.17%となっており、日本株としては“そこそこ魅力がある”水準に入ってくる。2%台では物足りないが、3%を超えてくると配当目的の投資として検討しやすくなる。特にアパレル企業としては比較的高めの利回りで、配当をしっかり出している印象が強い。
では、問題はその配当を今後も安定して払えるかどうかだが、これは利益水準を見ればある程度判断できる。あなたの提示した数字だけで見ると、純利益は135億 → 96億 → 145億と推移しており、直近は回復傾向にある。EPSも208円から314円へ見込みが伸びており、今の90円配当は十分カバーできる範囲にある。配当性向も過度に高くなるわけではないため、現時点で減配リスクはそれほど高く感じない。
収益性の指標を見ても、ROEが12〜19%、ROAが6〜10%と、アパレル企業としては比較的高収益な部類に入る。営業利益率も5〜6%あたりを維持しており、低迷していたアパレル業界の中では安定した稼ぐ力を持っていることがわかる。つまり、配当を支えるだけの収益基盤が今のところ確保されている。
一方、株価指標を見ると、実績PERが10〜15倍、PBRが1.63倍となっており、割安でも割高でもない“適正〜やや高め”という位置にある。高配当株にありがちな「超割安で放置されている」というタイプではなく、事業の強さを織り込みながら適切なプレミアムがついている状態だ。そのため、株価が下落しにくい安心感は一定あるが、“利回りだけで買う”ほどの妙味が突出しているわけでもない。
総合すると、アンドエスティHDは配当目的としては“悪くない選択肢”ではある。利回りは3%台で安定しており、利益もそれを支えるだけの水準があり、成熟企業として堅実なキャッシュフローが期待できる。ただし、もっと高い利回り(4〜5%)を求める投資家から見ると、やや物足りなさも残る。あくまで「安定性のある中配当銘柄」であり、「利回り目的だけで強く買う銘柄」ではないという位置づけになる。
減配のリスクも比較的低く、今後も90〜95円程度の配当を維持する可能性は高いので、配当を受け取りながら長期保有するというスタイルには向いている。ただし、短期的に利回りを最大化したいタイプには少し弱いかもしれない。
今後の値動き予想!!(5年間)
アンドエスティHDの現在値が2,833円という前提で、この先5年間の株価がどのように動くかを考えると、まず重要になるのは利益の安定性とEPS(1株益)の水準である。直近はEPSが208円→314円へと回復しており、予想でも300円前後を維持している。アパレル業界の中では収益が比較的安定しており、営業利益率も4〜6%台、ROEも12〜19%と高めで、業界の中では財務体質がしっかりしている銘柄だといえる。PERの実績も10〜15倍の範囲で動いており、「安定成長の中型アパレルとして市場が適正評価している」状態が続いている。こうした前提を踏まえて、5年後の株価を良い場合、中間、悪い場合に分けて予想すると次のようになる。
良い場合は、EC強化やライフスタイルブランドの伸びが続き、EPSが350〜380円程度まで成長するケースである。アパレルとしては比較的高い成長力を維持できるため、市場の評価はPER14〜16倍程度まで高まりやすい。この場合の株価は4,900〜5,800円のレンジが想定され、現在値から見ても十分な上昇余地がある。アンドエスティHDはブランド力と商品回転率の高さが強みなので、事業構造が大きく崩れない限り、このシナリオは十分現実的といえる。
中間の場合は、EPSが280〜330円を行き来し、市場評価もPER12〜14倍で安定するケースである。利益の大きな成長はないが、ブランド展開が広いため極端に崩れることもない。この場合の株価は3,300〜4,000円程度となり、現在値の2,833円から見れば「緩やかに上向くが爆発力は弱い」といった動きになりやすい。成熟アパレルにありがちな、じわじわした株価推移が続くイメージだ。
悪い場合は、コスト増やトレンド変化により利益が落ち込み、EPSが200〜250円に後退するケースである。市場がアパレルに対して慎重姿勢を強めた場合、PERは10倍程度で評価され、株価は2,000〜2,600円のレンジに沈む可能性がある。ブランド力のある企業なので急落しにくいが、利益が縮むとさすがに株価は重くなり、長い時間横ばい〜下落基調になることも考えられる。
まとめると、アンドエスティHDは事業が安定しており、利益率も高めなので、長期的に見れば「現在値より上を目指しやすい銘柄」である。ただしアパレル業界特有の市況に左右される部分もあるため、利益の伸びが止まれば株価はすぐに重くなる。良い場合は5,800円前後、中間で3,300〜4,000円、悪い場合は2,000〜2,600円というのが数字から導ける妥当な範囲といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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