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高千穂交易とは

高千穂交易株式会社は、1952年の創業以来、エレクトロニクス分野を中核に事業を展開してきた技術商社であり、国内に先進的な電子情報機器をいち早く紹介してきたパイオニア的存在である。創業当初の会計機の輸入販売を皮切りに、OCR(光学式文字読取)システムや漢字情報処理システム、さらには商品監視システム(いわゆる万引き防止装置)など、まだ国内の市場にはほとんど存在しなかった製品を積極的に扱い、日本のオフィス機器・情報機器の普及に大きな役割を果たしてきた企業である。
とりわけ商品監視システムの分野では強い存在感を持ち、富士経済の2010年調査では国内市場シェアトップを獲得するなど、この領域では長年にわたり確固たる地位を築いている。2005年には東京証券取引所第一部に上場し、現在は東証スタンダード市場に属する上場企業として事業基盤を固めている。また、高千穂バロース株式会社(のちのBIPROGY)、昭和情報機器株式会社、千代田情報機器株式会社(現アイティフォー)、株式会社シー・エス・シーなどをかつてグループ企業に持ち、情報機器・電子機器分野で幅広い領域をカバーしてきた歴史を持つ。
高千穂交易グループの事業領域は大きく「システム機器事業」「デバイス事業」「カストマ・サービス事業」に分かれており、これらが組み合わさることで企業向けの総合ソリューション商社として独自のポジションを築いている。まずシステム機器事業では、オフィスからデータセンター、官公庁や重要施設まで、幅広い顧客に向けて安全性と利便性を両立したネットワーク環境の構築を支援している。ネットワーク分野ではデジタル化・クラウド化が急速に進む中、Cisco Meraki、Pulse Secure、SD-WANなどの先端ソリューションを活用し、セキュリティを重視した企業ネットワークの設計と導入を行っている。また、オフィスソリューションでは入退室管理システムや監視カメラシステムなど、物理セキュリティを含む幅広いソリューション提供を行い、顧客企業の安心・安全を支える役割を果たしている。
リテールソリューションの分野では、ショッピングセンターやドラッグストアなどの小売店舗に向けて、監視カメラ、商品管理システム(万引き防止ゲート)、顧客動線を分析するトラフィックカウンターなど、店舗運営を効率化し販売を支援するための各種システムを提供している。単に機器を販売するだけでなく、店舗ごとの業態や課題に応じたシステム設計、導入、運用支援まで提供していることが特徴で、小売業界のIT化・セキュリティ強化に不可欠な存在となっている。
また、メーリングソリューションでは、明細書や請求書といった大量の郵送物を扱う企業向けに、封入・封緘・宛名印字などを高速かつ正確に行うシステムを提供しており、大量処理の自動化・効率化を支える装置の販売を展開している。独自開発の封入封緘運用総合管理システム「TQM」はセキュリティ性が高く、金融機関や大手企業を中心に採用されている。
デバイス事業では「産機」と「電子」の2つの領域を中心に事業を展開している。産機分野では、ATMやコピー機などのOA機器、システムキッチン、オフィス家具、自動車関連など幅広い産業に向けて機構部品を提供しており、スライドレール、ガススプリング、昇降システムなど、機器の動作に必要なメカ部品を供給することで製品開発を支えている。また、通信ケーブル・パワーサプライ・ハーネスなど電気系部材も取り扱い、産業界のさまざまな製品に不可欠な部品を供給する役割を担っている。
電子分野では、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、カーナビ、産業用計測器など民生機器・産業機器を対象に、アナログ半導体を中心とした各種電子部品の販売や技術コンサルティングを行っている。電子デバイスは高度な設計力や用途理解が求められる分野であり、単なる部品の仲介ではなく、顧客企業の製品開発に入り込む形で技術支援を行うことが同社の大きな強みとなっている。
このように高千穂交易は、エレクトロニクスを核にしながらも、ネットワーク、セキュリティ、産業機器、電子デバイス、メーリング、リテールソリューションなど多岐にわたる領域で事業を展開する総合技術商社であり、長年の実績と専門性を武器に企業のIT化・DX化・設備機器の高度化を支える企業として存在感を発揮している。
高千穂交易 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 1株益(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 23,360 | 1,376 | 1,588 | 1,205 | 67.3 | 66.5 |
| 連24.3 | 25,224 | 1,465 | 1,835 | 1,437 | 79.2 | 79 |
| 連25.3 | 28,098 | 2,079 | 2,004 | 1,458 | 79.1 | 80(特) |
| 連26.3予 | 30,000 | 2,200 | 2,100 | 1,500 | 80.7 | 80.5 |
| 連27.3予 | 32,100 | 2,380 | 2,250 | 1,610 | 86.6 | 86.5〜87 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | -1,387 | 522 | -303 |
| 2024年3月期 | 1,642 | 29 | -1,459 |
| 2025年3月期 | 2,991 | -473 | -1,505 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 5.8% | 7.3% | 5.4% | ー | ー |
| 2024年 | 5.8% | 8.5% | 6.2% | ー | ー |
| 2025年 | 7.3% | 8.6% | 6.2% | 24.9倍(高値) / 15.7倍(安値) | 2.26倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
高千穂交易の直近3年(連24.3、連25.3、連26.3予)の業績推移を見ていくと、この会社が急成長を狙うようなアグレッシブな企業というより、着実に売上と利益を積み上げる「堅実な技術商社」であることが数字から伝わってくる。売上は252億、280億、300億と順調に伸びており、特に直近では産業機器やシステム関連の需要増を背景に、売上規模を確実に広げている。派手さはないものの、景気に敏感すぎない安定した事業基盤があるため、売上そのものが大きく落ち込むリスクは比較的低い構造になっている。
利益面でも同様で、営業利益は14億 → 20億 → 22億と右肩上がりで推移しており、営業利益率も5.8% → 5.8% → 7.3%と改善基調にある。商社系のビジネスはマージンが薄くなりがちだが、その中でも利益率が改善しているのは、取り扱い領域の拡大や高付加価値分野へのシフトが進んでいる証拠で、単純な売上成長だけでなく、収益構造そのものが少しずつ強くなっていることを示している。
ROEは7.3% → 8.5% → 8.6%と緩やかに改善している。日本企業全体の平均が7〜8%程度であることを考えると、ここ数年の同社の資本効率は平均以上の水準にある。収益性は高いとは言えないが、少なくとも効率よく利益を積み上げられる体質に入りつつあり、安定的な企業価値の増加が期待できる。ROAが5.4% → 6.2% → 6.2%と推移している点も、資産の使い方が適度に効率的で無駄な資産を抱えていないことを示している。
しかし、株価評価という観点で見ると、提示されたPER(高値24.9倍/安値15.7倍)とPBR2.26倍はやや気になるポイントだ。利益成長が年率で伸びてはいるものの、EPSは79円 → 79円 → 80円とほとんど横ばいに近く、株主1株あたりの利益が大きく増えているとは言い難い。EPSが横ばいにもかかわらずPERが高めに維持されているということは、市場が“業績の安定性”にしっかりとプレミアムを乗せて評価している状態と言える。換言すると、今の株価には一定の期待値がすでに織り込まれており、ここから株価がさらに大きく上振れするには、EPSの成長がもう少し加速する必要がある。
PBR2.26倍という水準も、ROE8%台の企業としてはやや高い印象がある。一般的にROE8%前後の企業の適正PBRは1.3〜1.8倍程度であるため、2倍を超えているということは、市場が将来の収益改善をある程度期待しているか、単純に“株価が割高気味”の可能性がある。もちろん、安定した業績の裏付けがあるため大きく下に崩れる可能性は低いが、株価の上昇余地という観点では限定的になりやすい。
配当は79円 → 80円 → 80円とほぼ横ばいで、極端に高い配当利回りではないものの、“減配とは縁の薄い安定配当企業”という位置づけが強い。技術商社としての事業構造上、収益が年間で大きくぶれにくく、小売業や製造業と比べても安定感があるため、長期で配当を受け取りたい投資家にとって一定の魅力はある。ただし、配当成長率は高くないため、“インカム重視・安定重視”の個人投資家に向いた銘柄という印象が強い。
以上のデータから判断すると、高千穂交易は「急成長による株価上昇を狙う銘柄ではなく、堅実な成長と安定した利益体質を評価して長期保有するタイプ」の企業である。業績は着実に伸び、利益率も改善しており、ROEも安定的に推移しているため、企業としての土台は強い。一方で、PERとPBRが高めで、EPSの伸びが限定的であるため、株価の大きな上昇を期待する投資よりも、“安定した企業に適正価格で投資し、緩やかに成長していく企業価値をじっくり享受する”タイプの投資が向いている。
総じて言えば、安定感はあるが過大な期待は禁物というバランス型の銘柄であり、業績に大きな波がないため長期で安心して保有できる一方、爆発的な成長株ではないためポートフォリオの“守りの一角”として認識するのが最も自然な投資判断となる。
配当目的とかどうなの?
高千穂交易の予想配当利回りは、連26.3で3.91%、連27.3で4.20%と、個人投資家が配当目的で検討するうえで十分魅力的な水準にある。特に日本株の平均利回りが2%台であることを踏まえると、同社の利回りは“高配当の入り口”に位置しており、配当収入を安定的に得たい投資家に適した銘柄と言える。
業績を見ても売上・営業利益は毎年伸びており、営業利益率も改善傾向にある。ROEやROAも安定して上昇しているため、企業としての収益力は強まりつつあり、配当を支える基盤はしっかりしている。景気敏感な業種ではないため、急激に業績が落ち込んで減配に直結するようなタイプではなく、“長く持って配当を受け取り続けられる会社”という印象が強い。
一方で、PERやPBRがやや高めで、EPSが横ばいに近いことを考えると、株価自体が大きく伸びていく可能性は限定的。つまり「高い成長+高配当」の二つを同時に求める銘柄ではなく、どちらかといえば“安定配当を軸に据えた守りの投資”に向いている企業になる。
総じて、高千穂交易は大きな値上がりを狙うタイプではないものの、配当が途切れにくく、利回りも4%前後と十分魅力的なため、ポートフォリオの中に安定収入を確保する目的で組み入れるには非常に相性が良い銘柄だと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
高千穂交易の現在値2,057円を出発点にして、この先5年間で株価がどのように動いていきそうかを考えてみると、この会社の特性がそのまま将来の株価レンジに表れてくる。高千穂交易は急成長で株価が何倍にも跳ね上がるようなタイプではなく、売上も利益も大きな波を作らずに少しずつ積み上がっていく“堅実な会社”だ。営業利益率もじわりと改善し、ROEやROAもしっかり上昇しているため、下がりにくい体質を持っている。一方で、EPSが急速に伸びているわけではないので、株価が急騰するような展開もあまり起こりにくい。そんな特徴を踏まえると、良い場合、中間、悪い場合のそれぞれで見える将来がある程度形になってくる。
まず良い場合では、扱っている電子デバイスや産業用機器の需要が安定的に伸び、現在の業績成長がそのまま続くケースだ。営業利益率がさらに改善して収益力が高まれば、市場の評価も上がり、PERが20〜24倍の高めのレンジに入りやすくなる。その場合、株価は5年後に2,600〜3,000円あたりまでじわりと上がってくるイメージが近い。高千穂交易は派手な株ではないが、実力に比例してゆっくりと評価が伸びていくタイプなので、配当を受け取りながら株価も徐々に上を目指すという、バランスの良い展開が見込める。
次に中間のケースだが、実はこれが最も現実的だと思われるシナリオだ。売上も利益も今と同じように緩やかに増え、市場の評価も今と同じ16〜19倍程度のPERに収まるパターンだ。大きく上にも下にも振れず、現在のバリュエーションがそのまま続くようなイメージで、5年後の株価は2,200〜2,500円あたりに落ち着く。派手な値動きはないが、配当が4%前後あるため、保有している間に受け取るインカムはそれなりに積み上がり、結果的に「安心して持てる株」という位置づけになる。
一方で悪い場合というのは、利益の伸びが鈍化し、PERも低めの12〜15倍あたりにまで縮むケースだ。電子部品の景気など外部要因に影響されて伸び悩むことも考えられる。ただ、高千穂交易は業績が急激に崩れるような会社ではないため、大暴落の可能性は低い。それでも評価が下がれば株価は1,600〜1,900円程度まで下がる可能性はある。ただし下値は比較的固く、配当利回りがさらに高まることで、一定の下支えが働きやすいのがこの銘柄の特徴だ。
こうして3つのシナリオを並べてみると、高千穂交易は「大きく勝つ」というより「負けにくく、小さく増える」タイプの株だと分かる。現在値2,057円から見て、良い場合は3,000円手前、中間なら2,300円前後、悪い場合でも1,600〜1,900円に収まるという、そのレンジ感がまさに同社の安定性を物語っている。配当利回りも4%前後と高めで、持っているだけで一定のリターンが得られるため、長期の資産運用に向いている“守りの銘柄”だと言える。
この記事の最終更新日:2025年12月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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