株価
ABCマートとは

株式会社ABCマートは、東京都港区に本社を置く日本最大級の靴小売企業であり、主力ブランドである「ABCマート」を国内外に展開するシューズ専門チェーンのトップ企業である。国内店舗数は1,000店を超え、路面店、郊外のロードサイド型店舗、ショッピングセンター内のテナント店舗、さらにはアウトレットモールを活用したアウトレット店舗など、多様な立地戦略を組み合わせながら幅広い顧客層を取り込んでいる。2019年11月末時点では国内1,020店舗、海外312店舗と、アジアを中心に事業領域を積極的に広げている。
同社の大きな強みとして、HAWKINSやVansといった人気ブランドの商標権を取得し、これらのブランドを日本市場で独占販売している点が挙げられる。これにより他社との差別化を明確にし、独自のラインナップを提供できる体制を整えている。また、SPA方式(製造小売)を導入し、商品企画から製造、販売までを一元的に管理することで、品質の均一化、在庫コントロールの精度向上、そして低価格・高品質を両立させる仕組みを構築している。この効率的なビジネスモデルは高い収益力につながっており、靴小売業としては異例ともいえる20%超の高い利益率を実現している。
事業の中心は靴の小売であるが、衣料品や雑貨の取り扱いも拡大させ、総合的なライフスタイル提案型ストアとしての側面も強めている。海外市場では韓国や台湾を中心に積極的な出店が続いており、アジア圏でのブランド認知の向上や販売力の強化を図っている。さらに、スポーツ・アウトドア用品を扱う「オッシュマンズ(OSHMAN’S)」を傘下に持ち、靴小売だけでなくスポーツ・アウトドア市場にも事業領域を広げている点も特徴である。
近年はEC事業の強化やオンラインと実店舗を組み合わせたオムニチャネル戦略にも取り組んでおり、時代の変化に合わせた販売モデルの最適化を進めている。豊富な店舗網と自社ブランド商品の強み、SPA方式による効率的な運営体制を武器に、同社は国内外で堅調な成長を続けている企業である。
エービーシー・マート 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.2 | 290,077 | 42,301 | 43,360 | 30,256 | 122.2 | 56.7 |
| 連24.2 | 344,197 | 55,671 | 57,834 | 40,009 | 161.6 | 65.3 |
| 連25.2 | 372,202 | 62,550 | 64,618 | 45,358 | 183.2 | 70 |
| 連26.2(予) | 384,000 | 64,000 | 66,000 | 45,500 | 183.8 | 70 |
| 連27.2(予) | 397,000 | 66,500 | 68,500 | 47,200 | 190.6 | 70〜72 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 10,882 | -9,003 | -9,358 |
| 2024 | 51,230 | -11,405 | -18,587 |
| 2025 | 56,125 | -15,103 | -17,082 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 14.5% | 9.7% | 8.5% | – | – |
| 2024 | 16.1% | 11.7% | 10.3% | – | – |
| 2025 | 16.8% | 12.3% | 10.8% | 18.8倍(高値平均) 13.2倍(安値平均) |
1.77倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ABCマートの業績推移を見ると、まず売上高が毎年堅実に伸びており、企業規模そのものが継続的に拡大していることが分かる。売上高は3441億円から3722億円、さらに予想では3840億円へと増加しており、小売企業としては理想的な右肩上がりの推移を示している。単なる横ばいではなく着実にステップアップしている点が評価でき、特に市場環境が不安定な時期であっても安定した成長を維持できている点は大きな強みである。
営業利益も同様に、556億円から625億円、そして予想640億円と着実に積み上がっており、売上の増加とともに収益性の改善もみてとれる。売上が伸びても利益が伸びなければ意味がないが、ABCマートは利益率を維持しつつ規模拡大に合わせて利益も増やしているため、本業の収益構造が非常に強固であることが読み取れる。経常利益も578億円、646億円、660億円と連続増加しており、財務面での負担や不安要素が見られず、企業全体の収益バランスが極めて健全であることが示されている。
純利益も400億円から453億円、そして予想455億円と安定して増加している。派手な成長ではないものの、企業として「確実に利益を積み上げていく力」を備えており、これは長期的な株価形成にも良い影響を与える要素である。純利益の安定性は企業体力の強さの象徴であり、景気変動の影響を受けやすい小売業でこれほどの安定感を維持できる企業は多くない。
1株益(EPS)も161.6円から183.2円、さらに183.8円へと増加しており、企業価値が毎年着実に高まっていることが分かる。同じ株数でも企業が生み出す利益が増えているため、株主にとって非常に重要なポイントである。特にABCマートの場合、EPSが連続増加していることで市場の評価が維持されやすく、結果的に株価の下支えにもつながっている。
これらのデータを総合すると、ABCマートは売上、利益、EPS、配当のすべてが綺麗に右肩上がりとなっており、極めて安定性の高い企業であることが読み取れる。景気に左右されやすい小売業の中でも業績のブレが少なく、毎年利益を積み上げて成長している点は大きな強みであり、企業経営が非常に堅実であることの証拠である。
総合すると、ABCマートは「派手さはないが、非常に安定して成長し続ける優良企業」であり、長期投資の観点から見ても安心感のある銘柄といえる。特に利益と配当の安定性は際立っており、堅実な成長株として十分な魅力を備えている。
配当目的とかどうなの?
ABCマートの配当利回りを見ると、連26.2期・連27.2期ともに予想利回りは2.57%となっており、数字そのものは決して高配当株と呼べる水準ではない。しかし、この利回りが持つ意味を考えると、単純に「高い・低い」という判断だけでは語れない特徴がある。まず、一般的な日本株の平均利回りがおよそ1.8%前後であることを踏まえると、2.57%という水準は平均をしっかり上回っており、安定配当株として成立するラインに位置している。また、極端な高利回り銘柄のように財務リスクや急減配の心配があるタイプではなく、企業の業績が安定成長している中での自然な利回りである点が大きい。
ABCマートは数年間にわたって売上、営業利益、経常利益、純利益、そして1株益がすべて安定して伸びており、企業としての基礎体力が非常にしっかりしている。その中で配当は65.3円から70円へ増配し、その後も70円を維持している。特に減配が一度も起きていない点は、配当目的の投資家にとって非常に大きな安心材料となる。多くの企業は景気悪化や施策変更で配当を減らすことがあるが、ABCマートは業績の安定と企業姿勢の両面から、配当を守る力が強い銘柄であることが読み取れる。
したがって、配当利回りだけを見ると派手さはないものの、その裏側にある「減配の可能性が低い安定配当」という価値は大きく、長期的に配当を受け取りながら安心して保有したい投資家には向いている銘柄だと言える。逆に、利回り3%〜5%の高配当株を求めるタイプの投資家にとっては物足りなく感じる可能性はあるが、安定成長型の企業が提供する持続性のある配当を重視するなら、ABCマートは非常に相性の良い銘柄となる。総合的に見て、ABCマートは「利回りの高さよりも配当の継続性と企業の安定性を重視する長期投資向けの配当株」といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ABCマートの現在株価は2,722円であり、これまでの業績が大きなブレもなく右肩上がりを続けてきた点を考えると、今後5年間の株価推移は企業の成長ペースと市場全体の評価姿勢によって数パターンのシナリオが想定される。
まず最も良いケースでは、国内の安定した靴販売事業に加えて、アウトレット業態の拡大や海外市場、とくにアジア圏での店舗展開が順調に広がり、自社ブランドの強みを活かした高収益モデルが維持されることが前提となる。ABCマートはもともと収益率の高いビジネスモデルを持っているため、EPSが継続して伸びていくようであれば、市場が再び高めの評価を与える可能性は十分にある。その場合、過去のバリュエーションレンジの上限付近であるPER17〜20倍程度まで見直され、株価は3,800円〜4,300円といった水準まで伸びるシナリオが考えられる。業績成長と株主還元の両立が続くことを踏まえると、長期的には決して非現実的な数字ではない。
次に中間シナリオでは、業績は堅調ながら急激な拡大とはならず、現在の成長ペースを維持する程度のイメージになる。靴小売という業態の特性上、爆発的な成長はしにくいものの、ABCマートは安定性に優れているため、EPSが大きく落ち込むようなリスクも現時点では少ない。この場合、市場評価も現在と大きく変化せず、割安でも割高でもない水準で株価が緩やかに動く形が想定される。5年後の株価としては、2,900円〜3,200円程度が妥当で、劇的な上昇は見込めないものの、安定したレンジで推移する可能性が高い。特にABCマートのような安定配当企業は、相場全体が不安定な局面で資金が戻りやすいため、下値は比較的堅いと予想できる。
一方で悪いシナリオでは、消費環境の悪化や物価上昇による生活防衛意識の強まり、また人件費や物流費の増大など、コスト面での圧迫が利益率に影響する場合が考えられる。競合他社の値下げや海外市場での伸び悩みなどが重なれば、EPSの伸びが鈍化し、市場が成長性に疑問を持つ可能性もある。その場合、評価指標であるPERが現在よりも低い水準に見直されるリスクがあり、仮に12倍〜14倍程度で市場が定着した場合、株価は2,200円〜2,500円程度まで下落するシナリオも現実味を帯びてくる。ただし、ABCマートは財務の健全性が高く、減配リスクも低い企業であるため、急落よりもじりじりと弱含んでいくような推移になる可能性の方が高く、極端な崩れ方をするタイプの銘柄ではない。
総合的に見ると、ABCマートは業績の安定性が非常に高く、長期投資家にとって「安心して保有し続けられる銘柄」であるという点が最大の特徴と言える。急成長する企業ではないが、確実に利益を積み上げ、配当を安定して支払い続ける性質から、長期の資産形成向きの銘柄として評価できる。5年先を見据えた場合、良い時には4,000円前後までの上昇、中間では3,000円前後での安定推移、悪い時でも2,200〜2,500円程度の範囲に収まると考えられ、極端なリスクは低い。株価が大きく跳ねる夢は見にくいものの、着実な成長と配当を重視する投資スタイルには非常に適した企業である。
この記事の最終更新日:2025年12月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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