株価
アルフレッサ ホールディングスとは

アルフレッサ ホールディングス株式会社は、東京都千代田区大手町に本社を置く医薬品卸の大手持株会社で、福神とアズウェルという当時業界3位・4位の企業が合併する形で2003年に誕生した。現在ではメディパルホールディングスと並び、国内医薬品流通の中枢を担う存在として位置付けられている。医薬品サプライチェーンは社会インフラそのものであり、医薬品を必要な時に医療現場へ届けるという極めて責任の重い役割を負っている企業であるため、単なる卸売ではなく、製造・物流・調剤・DX支援まで幅広く事業を展開し、医療全体を包括的に支える体制を築いている。
グループ企業の数も多く、地域ブロックごとに卸売機能を持つ会社が並ぶことで全国ネットワークを構築している。アルフレッサや四国アルフレッサ、東北アルフレッサなどの名が並び、沖縄から北海道まで医薬品の供給を途切れさせない動脈として機能する仕組みとなっている。また、セルフメディケーション分野にも広く踏み込み、OTC医薬品やサプリメント、日用品など生活領域の商品も取り扱うことで、病院だけでなくドラッグストア・薬局までカバーする裾野の広いビジネスモデルを持つ。製造分野では医薬品原薬を手がけ、受託製造を行うファーマ事業も抱えており、流通と製造の両軸を持つ点は他の卸会社よりも踏み込んだ強みと言える。
情報システム基盤を担うグループ会社も存在し、物流・発注・在庫管理・医療機関向けシステムの構築まで支援している。医薬品供給はスピード・正確性・温度管理・トレーサビリティの維持が求められ、これを大量の品目を扱いながら24時間体制で行うにはIT基盤が欠かせない。そのためグループの中にシステム運用会社を抱えることは、医療の安定供給を支える重要な骨組みになっている。高齢化が進み医療費が拡大し続ける日本において、同社が担う役割は年々重要性を増しており、医薬品流通の効率化や物流再編・共同配送などの取り組みも成長テーマとして存在している。
同社の特徴を一言でまとめると、病院や薬局に薬を届けるだけの企業ではなく、「日本の医薬品流通網そのものを運営し保つ基盤企業」であるという点に尽きる。医薬品の安定供給は社会システム全体の根本であり、少しの遅れや欠品が医療現場に大きな混乱を招く。その重責を担いながら、医薬品製造・卸・調剤・情報システムをグループで一体的に運用し、医療サービスを支える構造を維持している。
さらに一般用医薬品の領域も拡大しており、生活者に直接関わる市場でも存在感を強めているため、医療のプロ向けと一般消費者向けの両方向から収益機会を持つ企業へと進化している。医療制度改革やジェネリック普及、薬局再編、物流DXといった業界変化にどう対応するかが今後の焦点で、安定と成長のバランスをとりながら日本の医療供給の根幹を担う企業として存在感を示し続けている。
直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益 (EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 2,696,069 | 30,148 | 32,831 | 25,786 | 127.4 | 57 |
| 連24.3 | 2,858,500 | 38,460 | 39,997 | 29,558 | 154.1 | 70記 |
| 連25.3 | 2,961,051 | 38,080 | 40,485 | 27,389 | 147.5 | 63 |
| 連26.3予 | 3,107,000 | 37,100 | 39,700 | 25,000 | 137.4 | 68 |
| 連27.3予 | 3,220,000 | 40,000 | 42,500 | 26,500 | 145.7 | 68〜70 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) | 投資CF (百万円) | 財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 13,086 | -20,539 | -12,918 |
| 2024 | 86,379 | -14,217 | -19,698 |
| 2025 | 5,639 | -24,917 | -23,534 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(2025) | PBR(2025) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.1% | 5.2% | 1.9% | – | – |
| 2024 | 1.3% | 6.1% | 2.0% | – | – |
| 2025 | 1.2% | 5.6% | 1.9% | 高値16.3倍 / 安値12.1倍 | 0.88倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
アルフレッサHDの直近推移を見ると、売上高は約2.85兆円→約2.96兆円→約3.10兆円(予想)と緩やかな増加を維持しており、事業規模としては確実に拡大している。一方で利益面では、営業利益384億円→380億円→371億円(予)、経常利益399億円→405億円→397億円(予)、純利益295億円→273億円→250億円(予)と微減傾向で、売上の伸びがそのまま利益成長に結びついておらず、収益性は頭打ちの状態にある。EPSも154円→147円→137円予と減少が続いており、株価を押し上げる力は利益成長というより、安定供給による底堅さに依存している印象が強い。
利益率を見ると、営業利益率は1.1%→1.3%→1.2%予と低水準で推移し、医薬品卸というビジネスモデルの特性から薄利多売が前提であることが明確に現れている。ROEは5.2%→6.1%→5.6%、ROAは1.9%→2.0%→1.9%とほぼ一定で、資本効率は良くも悪くも平均的。「利益を伸ばして評価を上げる銘柄」というより、「現状維持と安定性」が評価されるタイプだと読み取れる。
株価指標を見ると、2025年ベースのPERは高値16.3倍・安値12.1倍、PBRは0.88倍と1倍を下回り、資産バリュー面で相対的に割安といえる。EPSが減少している点は気がかりなものの、PBR1倍割れの放置は過小評価とも考えられ、下値耐性は比較的強い。医薬品流通という社会インフラを支える事業特性もあり、景気敏感株に比べて資金が逃げにくい面もある。
総合して、アルフレッサHDは高成長株というより安定型であり、利益率の低さとEPS減少により大幅な株価上昇は期待しにくい。ただしPBR0.88倍という評価は魅力的で、強い成長こそ見込みづらいが下値が固い点は投資上のメリットになる。狙い方としては値上がり期待の短期投資より、割安水準になった際にディフェンシブ銘柄として長期保有するスタイルが現実的であり、守りを意識した資金配分に向く銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
アルフレッサHDの予想配当利回りは連26.3期・連27.3期ともに約2.87%で横ばいとなっている。利回り水準だけで見ると高配当株とまでは言いづらく、配当目的で積極的に買うほどの魅力は強くない。ただし、医薬品卸は景気変動に左右されにくい業態で収益が比較的安定しているため、利回りは低めでも減配リスクは相対的に小さいと考えられる。
一方でEPSは154円→147円→137円と下落基調で、利益が伸びていない点は配当余力の観点でやや気がかり。業績が横ばいで利益率も低いままなら、配当を継続できても増配ペースは重たくなる可能性が高い。利回り3%前後の安定配当を維持する銘柄という色合いが強く、積極的な配当成長を期待するタイプではない。
つまり、配当だけを狙う投資としての魅力は中程度で、インカム重視の投資家にとっては「悪くないが決定打には欠ける」という立ち位置。値上がり益を求めず、ディフェンシブ性と安定還元を評価して長期保有という運用なら成立するが、高い利回りを求めて銘柄選定する場合は他候補のほうが優先されやすい。増配が見込めるシナリオより、現状維持を前提に安定利回りを受け取るイメージが現実的な選択となる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価2,366円のアルフレッサHDが今後5年間でどのように推移し得るかを考える際、まず前提として押さえるべきは「売上は増えているが、利益は微減傾向にある」という現状だ。薄利構造の医薬品卸というビジネスモデルは、物流効率化や規模拡大によって売上は伸ばせても、利益率の改善には時間がかかる。そのため株価は成長期待で大きく跳ねるタイプではなく、評価がじわりと動く銘柄だと言える。これを踏まえた上で、5年スパンの未来を3段階で想定してみる。
まず良いシナリオでは、薬価改定や流通制度の変化を吸収しつつ、デジタル化・統合効果・物流改革などが利益に寄与しはじめ、EPSが再び増加トレンドに戻ることが条件になる。卸売の収益構造が改善し、利益率が安定的に上昇すれば市場の見方も変わる可能性があり、PBRが1倍を上回って評価が戻る展開も想像できる。そうなれば株価は2,900円〜3,300円前後まで回復的に伸びていく未来が見える。急騰というより「重い扉が少しずつ開くように」上がっていくイメージで、成長を織り込み直す流れに乗れば中長期で堅実なリターンも期待できる。
次に中間シナリオでは、売上は伸びるが利益成長は弱く、EPSが横ばいか微減のままで推移するパターンだ。その場合、株価は上下を繰り返しながらも大きく方向感を出せず、2,200〜2,600円程度でレンジに収まる可能性が高い。資金は防御的に入りやすいが、利益の伸びが乏しければ買い材料は限定され、強い上昇も望みにくい。市場が評価を変える要素がなければ「持っていても減らないが増えにくい」という停滞感のある動きになりやすい。ディフェンシブ株らしさは保たれるものの、積極的なリターン追求型には物足りなさが残る。
悪いシナリオでは、薬価引き下げ・競争激化・物流コスト増などで利益がさらに削られ、EPS低下が続いた場合、成長期待の剥落とともに株価が評価縮小に向かう。市場が「安定はするが伸びない」と見切った場合、PBRが0.7〜0.8倍の水準で固定される可能性もあり、株価は1,800〜2,050円程度まで下振れするリスクがある。急落ではなくジリジリと値を削る形になることが多く、長期保有の心理的負担も増す。守りの銘柄とはいえ、利益が細れば防御力も低下するため、「安定株だから安心」と思い込むのは危険で、利益方向の変化は継続的なチェックが必要になる。
まとめると、アルフレッサHDの未来は利益率とEPSが改善するかどうかで分岐し、良い場合は3,000円近辺までの回復が見込めるが、中間では現状維持、悪い場合は2,000円割れもあり得る。成長株ではないが、割安性と防御性を持つため、景気不安や市場調整局面では相対的に強みも出る。攻めより守りの資産として捉えるなら適性があり、配当と安定性を軸に押し目で拾う戦略が現実的な向き合い方と言える。正直に言うとデータから見ると上値は重い。
この記事の最終更新日:2025年12月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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