株価
イートアンドホールディングスとは

株式会社イートアンドホールディングスは、東京都品川区に本社を置く持株会社で、グループ内には外食事業の「大阪王将」、ベーカリー・カフェ業態の「R Baker」、そして食品製造を担う株式会社イートアンドフーズが含まれている。屋号の「大阪王将」は全国チェーンとして定着しており、看板商品である餃子や炒飯、天津飯、麻婆豆腐などの中華メニューを軸に店舗展開を続けている。外食事業では「よってこや」「太陽のトマト麺」など複数ブランドを持ち、それぞれ異なるターゲット層を取りにいく構造となっている。ベーカリー分野では「R Baker」や「Coccinelle」などのブランドを展開し、単なる中華業態に依存しない多角化も見られる。
事業のもう一つの柱は食品製造で、冷凍餃子・水餃子・中華惣菜などを全国の量販店・コンビニ・生協向けに販売している。特に「大阪王将 羽根つき餃子」は流通チャネルで存在感が強く、モンドセレクション金賞を複数年受賞、食品産業技術功労賞など受賞歴も多い。冷凍食品としての家庭内シェアは高く、とくに「ぷるもち水餃子」はカテゴリーNo.1の実績がある。食品事業の売上は現在では全体の約半分を占め、かつ外食に比べ利益率が安定しやすいことから、売上規模・利益の面でコア事業としての位置付けをより強めている。生産拠点は群馬(関東工場)、大阪、岡山など複数に分散され、需要対応や供給の安定性にも配慮された体制が敷かれている。
創業は1969年、大阪京橋の一軒の中華料理店からスタートし、そこからFC展開→食品製造→冷凍食品市場へと事業が広がった歴史を持つ。長い時間をかけて「飲食店+食品製造」両方を持つ体制になったことで、単に店舗の売上だけに頼らない事業構造が築かれた。近年は関東に経営機能を移し、東京を中心とした市場獲得と認知拡大に軸足を置いている。特に海外展開にも積極的で、日本国内40都府県に加え、タイ・シンガポール・フィリピン・ベトナム・ミャンマー・台湾・中国(深圳)などアジア圏へ出店している点は注目だ。餃子という普遍性の高い商品は海外で適応しやすく、今後の成長余地を感じさせる。
まとめるとイートアンドホールディングスは外食ブランド(大阪王将)で顧客接点を作り、食品工場で大量供給し、家庭用冷凍市場でも売上を伸ばしている企業。外食と食品製造の二軸があることで、景気変動や店舗状況に左右されにくく、売上のバランスが良い。餃子という強いコア商品を持ち、ブランド力と製造力を両立しているのが最大の特徴だと言える。
イートアンドホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | EPS(円) | 配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.2 | 33,033 | 915 | 1,053 | 385 | 37.9 | 10 |
| 連24.2 | 35,922 | 1,059 | 1,068 | -106 | -9.8 | 10 |
| 連25.2 | 37,335 | 1,090 | 987 | 888 | 78.4 | 15.5記 |
| 連26.2予 | 40,800 | 1,320 | 1,270 | 680 | 59.9 | 15〜15.5 |
| 連27.2予 | 43,000 | 1,430 | 1,380 | 700 | 61.6 | 15〜15.5 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 1,272 | -3,626 | 2,275 |
| 2024 | 2,077 | -3,412 | 2,389 |
| 2025 | 3,762 | -5,179 | 1,112 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.7% | 4.7% | 1.6% | - | - |
| 2024 | 2.9% | -1.1% | -0.5% | - | - |
| 2025 | 2.9% | 8.1% | 3.0% | 47.8〜37.3倍 | 2.00倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
イートアンドHDの数字を並べてみると、この企業は急成長型でも高収益型でもなく、外食と冷食の両軸で売上をじわじわ伸ばしながら利益を積み上げていく「中低収益型安定企業」という姿が浮かび上がる。売上は359億→373億→408億見通しとゆっくり拡大しており、事業規模は確実に大きくなっているものの、営業利益率は2.7→2.9→2.9%と極めて薄い。価格競争や原材料コストの影響を受けやすいビジネスで、高い利益率を狙うモデルではなく、量とブランド浸透で稼ぐ形だと数字が物語っている。
利益面を見ると、24年度は赤字、25年度で黒字復帰、26年度は黒字維持ながら利益は縮む予想。成長はしているが右肩で安定とは言い切れない。ROEも4.7%→-1.1%→8.1%と波が大きく、ROAも1%台と低位推移。総資産を使って大きく稼ぐ効率は高くない。倉庫や製造設備など固定コストが重く、利益の伸びが大きく跳ねにくい構造を持っている印象だ。
それにもかかわらず2025年のPERは37.3〜47.8倍という高水準で、PBRは2.0倍。利益率3%前後の企業としては明らかに割安とは言えず、株価はすでに期待を織り込んだ水準だと読み取れる。今買う投資家は「実績」ではなく「今後の伸びしろ」に賭けている形で、低リスクではなく期待によって押し上げられた株価帯に立っていると解釈できる。
つまりイートアンドHDは、数字だけを見ると安全・堅実・長期向けのディフェンシブ株というより「伸び始めを買われている途中段階の企業」。成長が本物なら株価は維持・上昇し得るが、利益が伸びなければバリュエーションの修正が入り下落する展開も十分あり得る。
現在の株価は割安圏に見えるタイプではなく、買うなら「確かな利益成長を確認できてから」または「期待が剥がれて安いときに拾う」が合理的なスタンスになる。強い成長力で押し上げる株ではなく、伸びが証明されて初めて買い場が生まれる銘柄。今は期待と実績の間にあり、様子を見ながら押し目や成長確度を判断したくなるポジションだと言える。
配当目的とかどうなの?
イートアンドHDを配当目的の投資対象として見ると、正直なところ魅力はかなり限定的だ。予想利回りは26.2期、27.2期ともに0.76%しかなく、配当収益を期待して資金を置くには弱い水準。1%にも届かない配当利回りは、株式投資として「配当でリターンを取る」という発想にはほぼ向かず、銀行預金と比べれば上だとしても、株式というリスクを負う対価としては薄い。
さらに問題は「この利回りが今後大きく伸びる根拠が数字だけではまだ見えない」という点。利益率は3%前後で低く、ROE・ROAも高水準とは言えない。利益成長の土台がそこまで強くない以上、増配が長期で積み上がるタイプとも断言しづらいし、株主還元が急加速するイメージもまだ持ちにくい。現状の配当水準は、成長株として市場評価を受けるための付属要素であって、配当自体に投資価値があるとは言いにくい。
もちろん、配当が低い=悪い企業という意味ではない。ブランド力や食品事業の成長余地を考えれば、将来的に利益が伸びて配当方針が変わる可能性は残っている。ただ、それはまだ期待ベースのシナリオであり、現段階で「配当目的で買う価値がある」とまでは言い切れない。
つまりイートアンドHDは、配当をもらいながらじわじわ資産が育つ銘柄ではなく、業績改善と市場評価の上昇を期待して持つタイプ。配当が主役の銘柄ではなく、あくまでサブ要素。利回りを求める投資家よりも、事業成長やブランド価値の拡大に可能性を見て長期で持つ投資家向けだと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
イートアンドHDの現在株価1,958円を起点に、5年後の株価を想定すると、この銘柄は「爆発的に伸びる株ではないが、事業の積み上げが成功すればじわりと株価が育つタイプ」だということが数字から見えてくる。売上は緩やかに右肩で、利益はまだ細いが伸びる余地は残されており、冷凍食品・外食ブランドを両輪にした収益モデルは景気に左右されつつも一定の需要があり続ける。食品企業としては決定的な強みがあるとは言い切れないが、市場からの認知力やブランド浸透速度が安定すれば株価は中長期的に自然と押し上げられる可能性がある。
良い未来を描くなら、冷凍食品の売上が加速度的に伸び、利益率3%台から4〜5%台に改善し、ROEが10%前後まで安定してくるシナリオだ。大阪王将ブランドが家庭にも外食にも浸透し、コスト管理が機能し、海外展開が軌道に乗ると、市場は今よりも強い期待を乗せ始める。この場合、PER30倍前後でも許容され、株価は5年間で2,800〜3,600円というゾーンが現実的に見えてくる。派手な成長ではなくても、積み上げ型の成長が続く限り、じわじわと評価が上乗せされる未来だ。
最も現実的なのは中間シナリオで、売上は伸びるが利益率は現状と大きく変わらず3%付近を維持する形。事業規模が拡大しても利益が比例しないため、株価はゆっくりとしか上がらない。ブランド力が安定し、価格転嫁が部分的に進み、外食と冷凍食品が均衡成長していくパターン。市場評価も落ち着き、PERは20倍付近に収まり、株価は5年後で2,200〜2,700円あたりに収まる。このルートは派手さこそないが、企業としての継続性や収益の安定性は担保されるため、保有ストレスは低い。投資家が欲張らずに付き合うならこの未来が最も現実的で、最も息の長い保有スタイルを成立させる。
悪い未来では、原材料高や人件費上昇、競合拡大が収益を圧迫し、利益率がさらに薄まり、成長が鈍化する可能性がある。もし食品市場が停滞し、ブランドの競争力が落ちれば、市場は評価を剥がし、PERは15倍以下まで縮むことも想定される。その場合、株価は1,300〜1,700円と今より下で横ばいになる可能性が高い。事業自体が崩壊するわけではないが、株主から見たリターンは乏しく、長く持っても成果が出にくい。伸びる株ではなく、「持ち続けるだけの株」になってしまうリスクがある。
まとめると、イートアンドHDは一か八かの成長株でも、高配当で守る銘柄でもない。業績次第で上にも下にもじわりと動く、中間レンジ型の銘柄だ。大勝ちは狙いづらいが、改善すれば穏やかに育ち、失速すればじわっと沈む。5年後の株価は企業努力と市場環境次第で大きく色が変わるが、今の数字だけを見るなら「慎重に見守りつつ、成長が見えたときに乗るタイプ」。期待だけで買う銘柄ではなく、変化を確認してから戦略的に拾うのが最も合理的な向き合い方だと感じられる。
この記事の最終更新日:2025年12月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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