株価
カゴメとは

カゴメ株式会社は、名古屋と東京に本社を置く日本を代表するトマト食品メーカーで、現在では飲料や調味料、健康志向商品の分野にまで幅広く事業を展開している企業である。創業のルーツは1899年、創業者の蟹江一太郎が農業試験場から譲り受けたトマトの種を栽培したことから始まり、当時珍しかったトマトの栽培に挑戦し、余剰分の保存のためにトマトソース製造へと進んだことが事業発展の原点になった。1903年にはついに国産トマトソースの製造に成功し、その後1906年には自宅裏に工場を建てて本格的生産を開始、1909年にはケチャップやウスターソースの製造にも乗り出し、加工食品メーカーとしての基盤を確立していく。そして1933年、日本で初めてのトマトジュースを発売し、これが長期にわたりカゴメの象徴的な商品として受け継がれている。1966年にはガラス瓶ではなく合成樹脂のチューブ入りケチャップを世界で初めて発売し、利便性と保存性に優れた製品として広く普及したことも大きな転換点であった。こうした挑戦と製品革新を続け、健康志向の高まりとともに野菜ジュースや植物性乳酸菌飲料などの分野にも早期に参入し、現在の飲料事業の柱を築いている。
カゴメの特徴のひとつは株主への向き合い方で、単なる株式保有者ではなくファン株主として扱い、継続的な関係づくりを重視している点にある。工場見学や農園見学、健康セミナーなどの交流イベントを定期的に開催し、同社の製品・農業・食品づくりに興味を持つ人々との関係を強めてきた。2001年には「株主10万人構想」という取り組みを開始し、個人株主の拡大を図った結果、2011年時点で株主の約99.5%が個人株主となるなど、株主コミュニティの形成に成功している。こうした姿勢は食品メーカーに限らず、日本企業全体を見ても稀有な取り組みである。また社内には同社飲料が自由に飲める冷蔵庫があるというエピソードも象徴的で、従業員が日常的に製品に触れ、品質や味への感覚を自然と磨ける環境になっている。
グループとしての事業は加工食品・飲料・農業の三本柱であり、トマト加工分野では国内最大手として圧倒的な存在感を持つ。主力製品には「野菜生活100」「野菜一日これ一本」「カゴメトマトジュース」など健康訴求の強い飲料が並び、食品ではトマトケチャップ、トマトピューレー、基本のトマトソース、醸熟ソース、甘熟トマト鍋スープなど多彩なラインナップを展開している。農業領域にも大きく踏み出し、全国に直営農園を8ヶ所保有し、そこで栽培されたトマトはスーパーでも販売されるという農業×食品流通×加工まで一貫して関わる六次産業的な形も見せる。長野県富士見町には工場と農園に加えてテーマパーク「カゴメ野菜生活ファーム富士見」が併設され、観光・教育・食体験を通して野菜の価値や食文化を伝える拠点としても機能している。
本社組織は二拠点制で、登記上の本店や経理・情報システム部門は名古屋に、商品開発やマーケティングなど企業戦略の中枢は東京に置かれている。グローバル展開にも積極的で、米国を中心に業務用トマト製品の輸出や販売体制を拡大し、日本国内のブランド事業だけでなく海外市場の収益源育成にも力を入れている。飲料領域の利益率改善やトマト原料の安定生産体制、健康食品の需要拡大、野菜摂取の不足課題を背景にした市場成長余地など、今後の伸び代も多い。一方でトマトの原料価格上昇や天候リスク、為替によるコスト変動など、農産物特有の課題も存在し、安定供給体制の維持が継続的な企業運営のキーとなる。
まとめると、カゴメ株式会社はトマトを軸に食品・飲料・農業へ展開しながら130年以上の歴史を築いてきた企業であり、トマト加工品国内最大手、野菜系飲料の強力なブランド力、株主との関係形成、農業やテーマパークまで含む独自の事業モデルを持つ会社である。健康志向時代において存在価値はますます高く、今後は飲料・海外・農業の三領域でさらなる成長が期待される。
カゴメ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021.12 | 189,652 | 14,010 | 13,880 | 9,763 | 109.4 | 37 |
| 2022.12 | 205,618 | 12,757 | 12,557 | 9,116 | 105.1 | 38 |
| 2023.12 | 224,730 | 17,472 | 16,489 | 10,432 | 121.2 | 41 |
| 2024.12 | 306,869 | 36,221 | 33,665 | 25,015 | 278.5 | 57(記) |
| 2025.12予 | 300,000 | 23,000 | 22,500 | 13,400 | 147.8 | 48 |
| 2026.12予 | 320,000 | 25,000 | 24,500 | 14,600 | 161.0 | 48〜50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算年度 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 4,635 | -9,457 | -5,512 |
| 2023 | 4,617 | -6,056 | 15,626 |
| 2024 | 31,692 | -46,325 | -571 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.7% | 7.8% | 3.9% | — | — |
| 2024 | 11.8% | 13.4% | 6.9% | PER 高値25.9倍 / 安値20.3倍 | 1.35倍 |
| 2025(予想) | 7.2% | 6.9% | 3.5% | 18.72倍 | — |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、2023年は売上2247億、営業利益174億、最終利益104億と悪くないが飛び抜けた強さはなく、利益率も7%台と標準的な食品メーカーの数字という印象。ところが翌年2024年には売上3068億、営業利益362億、純利益250億まで大きく伸びており、特に営業利益率11.8%・ROE13.4%・ROA6.9%と財務の質が一段階上がっている。市場評価の裏付けとしてPERは高値平均25.9倍、安値平均でも20.3倍と割高側にあり、利益の伸びを投資家が素直に評価していたことが数字だけからもわかる。PBR1.3倍という資産倍率も、極端なプレミアムではなく適正〜やや割高くらいの位置に見える。
しかしその高利益体質は2025にかけて一度崩れ、売上は3000億と高いままなのに営業利益は230億、純利益は134億と半減に近い落ち方になっている。営業利益率は7.2%、ROEも6.9%まで低下するため、2024が特別に良かったのか、あるいは2025が一時的に弱含むのか判断がつきにくい。PERが2025予想で18.7倍まで下がってくるので、株価は利益低下を先回りして織り込んでいる可能性が高い。2026には売上3200億、営業利益250億と小幅な回復予想が示され、これが実現するなら評価が戻る余地はあり、逆に再び利益率が伸びなければ市場の目は厳しいままになる。
まとめて言えば、2024年は非常に強く、投資家が高く評価した形跡が数字に残っているが、2025で利益が落ちるため強気に振り切るには材料が足りず、PERも下がって妥当化に向かう段階に見える。ただし2026が回復に向かうなら割安修正から再上昇の可能性があるため、現段階では中立〜押し目拾いの視点がちょうど良い距離感。数字だけを見て判断するなら「2024の再現性が確認できたら買い」「まだ確信がないなら様子見」という結論が最も自然になる。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りが2025年も2026年も1.79%ということは、少なくとも現状の想定では大きな増配を見込んでいないという読み方になる。一般的に配当狙いで買う銘柄は3〜4%以上、インカム重視なら5%以上ほしいという投資家が多い中で、1.7〜1.8%台という利回りは配当を主目的にする銘柄としては正直物足りない水準。つまり「配当で稼ぐ」「長期保有で配当収入を積み上げる」という観点だと、優先候補に上がるタイプとは言えない。
一方で、食品メーカーは景気変動に左右されにくく、配当が急に途絶えるリスクが相対的に低い業種ではあるため、安定性という意味では悪くない。ただ利回りが低い以上、配当だけで保有の価値を正当化するには弱く、その分キャピタルゲイン(株価上昇)と合わせて狙う投資スタイルにならざるを得ない。利益率が2024年に跳ね上がった後、2025年に一旦落ち、2026年に持ち直す予想という利益パターンを見る限り、増配トレンドも連動して不規則になりやすく、将来の利回り改善に確信を持つのも難しい。
まとめると、カゴメは配当の「安心感」はあるが利回り水準は低く、配当目的単体で見ると魅力は限定的。配当狙いというより、業績回復を待ちながら株価上昇も含めてトータルリターンで取る銘柄という立ち位置になる。「利回りで選ぶ銘柄」ではなく、「業績改善が見えたら株価と配当を一緒に取りにいく銘柄」という評価が数字から導ける妥協点だと思う。
今後の値動き予想!!(5年間)
現株価2,671.5円という価格は、過去のバリュエーション感覚でいえば割高でも割安でもなく、どちらにも振れる可能性が残っている中立位置にいるように見える。2024年の利益が突出して良かった分、2025年で利益が一度落ち込む予想になっているため市場の見方が割れており、この迷いが株価の動きにも表れているように思える。利回りは約1.8%と低く、配当を目的に持つ銘柄ではなく利益の回復や市場評価の再上昇を狙って保有する方が向いている銘柄という印象の方が強い。食品企業としてはブランド認知、家庭内シェア、スーパーでの優位性が強く、海外展開も拡大余地がある分、中長期ではプラスの伸びしろも残っている。
良い未来を描くなら、2024年に見せた利益率の高さが再現し、営業利益率10%前後、ROE10%以上を安定して出せる企業体質へ移行する場合。消費者の健康志向の強まりや価格転嫁がうまく続き、農業生産の効率改善が収益に反映されれば、PER20〜25倍の評価が再び付く可能性もある。もしそうなれば株価は4,000円を超え、5,000円台まで視野に入っても不思議ではない。海外の業務用トマトビジネスが伸び、原材料リスクを自社生産で吸収できるようになれば評価が一段上がる未来もある。投資家が「また利益率が上がる」と確信したタイミングがあれば、その時は株価が跳ねやすい。
中間シナリオでは、利益が上下はしながらも長期で売上は伸びていき、利益率は8〜9%あたりで安定して推移。大きくは伸びないが堅実な食品メーカーとして定着する形。その場合PERは15〜20倍あたりに落ち着きやすく、株価の目安は3,200〜3,800円レンジが現実的な水準になる。急騰は期待しにくいが下にも強く落ちない、長く持ちながら市場全体の波に合わせて利益を拾うタイプの銘柄になると思われる。配当は低水準で推移すると考えられるため、売却益を合わせてトータルで回収するスタイルでの保有が自然。
悪い方へ転んだ場合は、2024がピークで以降は利益率が上がらず、ROEも一桁台前半で横ばいのまま推移するケース。市場が成長期待を失えばPER10〜14倍まで縮む可能性があり、その場合の株価水準の目安は2,200〜2,700円付近。現値はすでにこの帯域の上限付近のため、シナリオが悪ければ含み損を抱えやすく、配当利回りが高くない分、耐えきれず売りが出やすい形になる。食品メーカーは急落はしにくいが高い配当で持ちこたえるタイプでもないため、停滞シナリオでは面白みに欠ける期間が長く続く可能性もある。
5年で考えるなら、この銘柄は「2024級の利益率を再び取れるかどうか」が最大の分岐になる。取れるならすでに株価は安い。取れないなら今は高くはないが妙味も小さい。中間の未来なら配当は低く株価も緩やかで、他の成長株に資金が流れやすい。結局のところ、投資判断は利益率の再現性への信頼度で変わると思う。2026以降の収益改善が確認できるなら買い、曇りが残るなら中立、利益の伸びが見えなければ無理に触らない。カゴメは伸びる時は滑らかに伸び、伸び悩むと横ばいが長い銘柄だと思う。
この記事の最終更新日:2025年12月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す