株価
ピックルスホールディングスとは

株式会社ピックルスコーポレーションは、単なる漬物メーカーという枠を超えて「発酵食品産業の総合プレイヤー」として進化しつつある会社である。もともとは東海漬物の子会社という立場からスタートしたが、今では漬物業界シェア1位にまで登りつめ、業界内でも中心的存在となっている点は大きな特徴。特に誰もが一度は店頭で目にする「ご飯がススム キムチ」はブランドとしての強さを確立しており、家庭向け商品の中核として長年売れ続けている。このキムチ開発の背景には、子供や辛さに弱い層でも食べやすい味付けに振り切った企画意図があり、その結果若い主婦層から支持を集め、定番商品へ育っていったというストーリーがある。
また販路面では、創業時からの繋がりを持つセブン&アイHD向けの取引が売上の約3割を占めており、コンビニ向け惣菜や日配食品の需要に支えられた安定収益を持つ。一方で、同社は漬物一辺倒ではなく、自社発見の「ピーネ乳酸菌」を用いた健康発酵食品の研究・商品開発にも注力しており、甘酒や発酵調味料といった新カテゴリーを広げている。さらに2020年には飯能市に発酵食品のテーマパークをオープンさせ、体験型マーケティング・発酵文化の認知拡大・ブランドファン育成を一気通貫で行うという展開にも踏み込んだ。2022年からは農業事業にも参入し、原料供給から加工・販売までのバリューチェーンを自社で一部完結できる体制にも着手している。
つまり、伝統食品を製造する老舗というより「食品×発酵×体験×農業」という多軸で成長を狙う会社。漬物・キムチの安定需要を土台にしながら、機能性食品と一次産業、さらに発酵文化発信まで巻き込み、食品企業としての次のフェーズへ舵を切ろうとしている姿が見える。株式として見ても、単なる守りの食品株ではなく、既存ブランドの堅さに加え、攻めの戦略を持つ「進化型食品メーカー」として捉えると理解しやすい。
ピックルスホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
| 連23.2 | 41,052 | 1,538 | 1,650 | 1,138 | 88.8 | 22記 |
| 連24.2 | 43,028 | 1,668 | 1,771 | 1,175 | 94.3 | 24 |
| 連25.2 | 41,518 | 1,279 | 1,345 | 958 | 77.1 | 26 |
| 連26.2予 | 41,000 | 1,500 | 1,530 | 990 | 79.0 | 27 |
| 連27.2予 | 42,000 | 1,600 | 1,670 | 1,070 | 85.4 | 27〜28 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
| 2023 | 1,665 | -882 | -876 |
| 2024 | 2,718 | -950 | 45 |
| 2025 | 831 | -4,693 | 1,082 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
| 2023 | 3.7% | 6.6% | 4.3% | – | – |
| 2024 | 3.8% | 6.5% | 4.2% | – | – |
| 2025 | 3.0% | 5.1% | 3.1% | 11.5倍〜14.8倍 | 0.79倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ピックルスは、売上規模が430億円前後と決して小さくない食品メーカーで、国民的ブランド「ご飯がススム」を軸に漬物市場でトップシェアを持つ企業であるにもかかわらず、直近の売上は430億→415億→410億予想と横ばい〜微減の流れにあり、まさに“安定はしているが、成長のエンジンがまだ強く吹いていない状況”と言える。事業モデルが日配食品であるため、店頭価格の硬直性・物流コスト・原料価格の上下に利益が振られやすく、数字だけで見ても「攻めより守りの食品株」という色は濃い。
利益面は16億→12億→15億予想と、落ち込んだ後に戻しているが、営業利益率は3%台が限界で、収益性は高くない。大きく稼ぐより、安定して売り続けられるビジネスという印象で、この低利益率はむしろ日配食品の宿命に近い。ROEも6.6%→6.5%→5.1%と下がりつつあり、資本効率は悪くはないが際立って高いわけでもなく、「良い会社ではあるが、投資対象としての魅力は派手ではない」という位置づけだと読み取れる。
しかし面白いのはバリュエーションで、PBR0.8倍という数字は企業価値に対して株価が割安に置かれている可能性を示している。市場がこれを“伸びない会社”として低めに評価しているからこそ安いので、もし今後ブランド価値を活かした新商品展開、コンビニチャネルの強化、発酵食品テーマパークや農業参入の事業化がうまく噛み合えば、見直し買いの余地はある。つまり現状で過度な期待はされていないが、その分ポジティブサプライズが出た時の反応は大きくなり得るタイプの株とも言える。
ピックルスは、売上は安定しているものの成長スピードは強くなく、利益率も高くないためROEの伸びも鈍め。派手さはないが事業基盤は崩れにくく、株価水準は割安圏に位置しており、守りの堅さが感じられる食品株という印象が強い。爆発的な成長で短期利益を狙うタイプではないが、評価が見直されれば上値余地も残されており、配当と穏やかな株価上昇を期待して長期的に持つ投資家に向いた銘柄といえる。
配当目的とかどうなの?
ピックルスを配当目的で見ると、予想配当利回り(2026・2027年度)はおよそ2.3%前後と中庸レベルで、高配当株として強く推せる水準ではない。ただし漬物・キムチといった日常食の需要は景気に左右されにくく、売上は大きく崩れにくい。そのため極端な減配リスクが低い点は安心材料となる。食品株の多くがそうであるように急成長より安定が軸であり、収益力に大きなジャンプが期待しづらい一方で、じわじわと利益が積み上がれば配当も据え置きまたは小幅増配の形で長期恩恵を得られる可能性は残る。
利回りだけで銘柄を選ぶなら3〜4%超の企業が競合になるため、ピックルス単体ではやや物足りなく映る。しかし、業務の特性上大赤字に転落しづらく、業績の底堅さが株価下落時のクッションにもなり得る。つまり「高配当で稼ぐ銘柄」ではなく「安心しながら細く長く受け取る銘柄」。配当を大きく増やして複利で資産を増やすタイプでもないが、塩漬けになりにくい業態という意味ではメンタル的にも持ちやすい。
もし投資家が年利4〜5%の配当収入を求めているなら優先候補にはなりにくいが、手堅い食品株の中で安定した配当と緩やかな株価評価の見直しをじっくり待つ運用スタイルなら、選択肢になり得る。リスクは低いがリターンも大きくはない。まさに地味さと堅さを併せ持つ、コツコツ型のインカム株という立ち位置である。
今後の値動き予想!!(5年間)
ピックルスの現在株価は1,240円。ここから5年先を考えると、この銘柄は成長株というより「緩やかに値が動くディフェンシブ食品株」であり、投資結果は大きな波ではなく長い時間の積み重ねによって決まっていくタイプになる。漬物・キムチは嗜好性がありながらも生活必需品に近い立ち位置にあり、急に需要が蒸発することは考えにくい。こうした背景が株価ボラティリティを抑え、急騰も急落も生まれにくい特性に結びついている。
良い方向に進んだ場合は、コスト改善と価格転嫁がうまく進み、利益率がゆっくり上向き、売上成長は小さくても収益性の面で市場からの再評価が進む。キムチ需要は中食・惣菜の浸透と共に伸びる余地があり、セブン&アイ向け供給という強みが劇的ではないにせよ利益の安定化に効く。もし投資家が「安定+再評価」を期待し始めれば、現在の割安なバリュエーションに陽が当たり、株価はじわりとレンジの上へと滑っていく可能性がある。この場合、5年後は1,600〜2,100円前後という、ゆっくりと成熟した結果に着地しやすい。
中間のケースでは、市場の評価は大きくは変わらず、売上横ばい・利益も平坦に推移し、そのまま今の延長線を歩き続ける未来だ。新たな事業ドライバーが生まれない限り、ピックルスは「買われすぎず売られすぎず」の範囲で安定し、株価は1,200〜1,450円程度の箱から大きく離れない。退屈だが不安も薄い。配当を貰いながら長期保有する分には心地よいが、短期的な快感や爆発力を投資家に提供する銘柄ではない。
悪い方向では、物価高・原料高の波が収まらず利益率が削られ、コンビニPBの強化で売値が抑えられ、ROEが低水準で定着する可能性がある。食品は景気に強い一方、原料の値動きに弱い。ここを乗り越えられない場合は市場からの評価が戻らず、株価はゆっくりと下方向へ沈む。とはいえ事業が崩壊するリスクは低く、900〜1,150円あたりで下値の粘りを見せる展開になるだろう。すぐに戻るとは限らないが、ゼロになるような破壊的リスクは小さい。
総合すると、ピックルスは「静かに育つか、静かに横ばいか」という静の銘柄だ。市場がまだ十分に評価していない余白はあるものの、成長爆発が起きる銘柄ではないため、投資家がどんな未来を望むかで評価が変わる。一言で言えば、攻めではなく守りの株。退屈に見えるが、長く保有して気づけば手元に利益が残っている。そんなじっくり型の投資と相性が良い。
この記事の最終更新日:2025年12月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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