株価
アルペンとは

アルペンは名古屋に本社を置くスポーツ用品・アウトドア用品の大手小売企業であり、単なる店舗展開に留まらず、自社ブランドの企画・開発・製造までを手がけるメーカーとしての一面も持つ。スポーツデポ・ゴルフ5・アルペン・アルペンアウトドアーズと複数の業態を持ち、それぞれ違うターゲット層とカテゴリーに対応していることが特徴で、スキー用品に強く依存していた時代から、総合型スポーツ+アウトドア+ゴルフへと事業を分散し、季節や流行の変動リスクを抑えてきた。全国チェーンとしては業界上位で、競合するゼビオやヒマラヤとも位置を競り合いながら店舗網とブランド力を積み上げている。
創業は1972年、東証市場への上場は2006年。スキー全盛期にはウィンター中心の売上を伸ばし、テレビCMでは広瀬香美「ロマンスの神様」が象徴的な広告戦略として浸透した。後年はスキーブームが縮小したが、ゴルフ専門「GOLF5」や大型総合スポーツ店舗「SPORTS DEPO」を軸に転換し、生き残りではなく再拡大に向かったことが現在の企業構造につながっている。また、CM活用やスポーツ選手・有名選手とのタイアップ、人材吸収を伴うM&Aなど、ブランドと事業を広げる手段を多様に使っている点も経営の特徴と言える。
グループにはIGNIOやTigora、kissmarkなどのオリジナルブランドがあり、外国ブランドや大手メーカーの取扱いと並列でPB商品を展開することで価格競争と差別化の両立を図っている。IGNIOは低価格×汎用性でスポーツ版ユニクロのような立ち位置を狙い、Hartやkissmarkはウィンタースポーツ分野で歴史と実績を持つ。メーカー機能を持つことにより仕入れ依存度を下げ、販売現場で得たデータを企画に戻し高速な商品開発に繋げる循環が成立している。これは単なる小売では作れない優位性で、在庫戦略、粗利改善、価格訴求などの面で効果が大きい。
店舗運営では大規模店と専門店の使い分けにより、購買単価の高いユーザーからファミリー層まで幅を広く確保している。アウトドア需要の拡大を追い風にAlpen OutdoorsやMountainsを強化し、ウィンター偏重から事業ポートフォリオを平準化させた点は、市場変動への耐性づくりとしても意味がある。一方で、店舗統廃合や合理化を進めているのは、業界内競争が激しくコスト構造の最適化が不可欠である現実を示してもいる。大都市圏ではゼビオ傘下のヴィクトリア、モール商圏ではイオン傘下のメガスポーツ、地域密着型ではヒマラヤなどが競合になるため、PB強化と大型旗艦店戦略で差別化し続ける必要がある。
創業家が6割超を保有する同族企業であることも特徴で、短期株主の声に左右されにくい一方、ガバナンスには賛否が生じやすい。しかし経営の意思決定は早く、商品戦略や出店政策に一貫性が保たれやすいという利点もある。スポーツ用品という商材は流行と季節で需要が上下しやすいが、アルペンのモデルは単品依存を避け事業を多角化させ、在庫回転と売場構成で利益を吸収するスタイルへ移行している。
スポーツ量販最大手の一角でありながら、PB生産を持つ多層構造、小売とメーカーの融合、業態展開の広さという要素が積み重なり、単純な販売業では語り切れない企業となっている。ウィンターの歴史を持ちながら、アウトドアとフィットネスへ伸ばし、PBで収益性を確保し、競争市場で粘り強くポジションを維持している会社です。
アルペン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期(単位百万) | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | EPS(円) | 配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.6 | 233,215 | 15,088 | 16,836 | 10,773 | 274.9 | 45 |
| 連22.6 | 232,332 | 7,153 | 8,988 | 5,310 | 135.7 | 50 |
| 連23.6 | 244,540 | 5,062 | 6,930 | 5,469 | 141.5 | 50 |
| 連24.6 | 252,936 | 3,330 | 5,307 | 1,733 | 45.0 | 50 |
| 連25.6 | 268,655 | 8,516 | 10,464 | 5,573 | 144.6 | 50 |
| 連26.6予 | 282,000 | 9,000 | 10,500 | 5,590 | 145.0 | 50 |
| 連27.6予 | 293,000 | 9,500 | 11,000 | 5,800 | 150.5 | 50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 5,785 | -6,746 | -9,866 |
| 2024 | 5,705 | -10,508 | 5,391 |
| 2025 | 9,080 | -8,574 | -3,443 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.0% | 4.7% | 2.9% | – | – |
| 2024 | 1.3% | 1.4% | 0.8% | – | – |
| 2025 | 3.1% | 4.6% | 2.7% | 26.4倍(高値)/ 22.6倍(安値) | 0.74倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
アルペンは、売上が2024年2529億から2026年には2820億へ伸びており、規模としては安定的に拡大している。数字を見る限り、企業活動は縮小しているわけではなく、むしろ緩やかに前進している。ただ問題は収益率で、営業利益は2024年33億と利益水準が薄く、営業利益率も1.3%と低い。翌2025年に85億、2026年90億と回復しているものの、それでも営業利益率3.1%止まりで、利益構造が強いとは評価しづらい。ROEも2024年1.4%から2025年4.6%へ戻っているが依然平均水準には届かず、ROAも同様に2.7%程度で投下資本の効率性は限定的である。
一方で指標面を見ると、PBRは0.74倍と低く、企業の資産価値に対して市場が割安に見積もっている状態が読み取れる。つまり、利益率は低いが資産価値は一定以上あると市場が判断している可能性がある。ただしPERは22.6〜26.4倍と高めで、利益成長のわりに株価が織り込み済みとも言える水準であり、バリュー株とも成長株とも言い切れない中途半端な位置にいる。利益が改善してきている段階で、まだ評価に対する裏付けが十分に整っていない印象が強い。
数値だけを見ると、現状のアルペンは売上は伸びていて利益も回復傾向にはあるが、収益性が低く資本効率も高くないため、積極的に買い増ししたくなるほどの強い材料にはなりにくい。それでもPBR0.7倍台は明確に割安であり、もし収益がさらに改善し営業利益率が5%に近づくような展開が見えれば、現在の評価はむしろ安い可能性も出てくる。逆に利益率が改善しないままならPERは割高で、株価の伸びは限定的になるリスクも含む。
最終的には、利益成長を今後も継続できるかが判断の分岐点で、現段階の数値だけで強気に買うというより、回復が確かに続くかを確認しながら拾う方が合理的だと考えられる。収益がさらに乗ってくるなら評価余地、停滞するなら割高、数字がまだ過渡期である以上、焦って攻める銘柄というより慎重に観察しながら関与する対象になる。
配当目的とかどうなの?
アルペンを配当目的で評価する場合、予想配当利回り(2026・2027年度)2.14%という数値は決して高い部類ではなく、配当収入を主軸に資産形成する銘柄として見るにはインカムの厚みが足りない。配当だけでリターンを求める投資スタイルとは相性が薄く、利回り3.5〜5%級の銘柄と比較するとキャッシュフローの回収速度は遅くなる。現状の利回りで保有する意味を考えるなら、株価成長や利益改善と組み合わせて総合的なリターンを狙う形しか成立しにくい。
配当が維持されている点は安定性の面では悪くないが、2024〜2026の利益水準を見ると営業利益率は1〜3%台と低く、利益体質が盤石とはまだ言えない。利益率が低いままでは減益期に入った際に配当維持が負担になる可能性もあり、高配当株ほどの安心感はない。加えてROE4%前後、ROA2〜3%台という数字は資本効率としては中庸で、配当余力の継続性に不安とまでは言わないが、積極的に増配余地を感じるほどの強さもまだない。
逆に評価すべき点もある。PBRが0.74倍という低水準は、資産バリューとしての底は意識されやすく、株価の下側が反発しやすい環境を持っている。成長がはっきり見えれば市場評価が修正される可能性があり、売上と利益が2024年から2026年にかけて増えていることを考えると、将来的な株価上昇余地は利回りよりもこちらに期待が乗る。つまり配当で稼ぐ銘柄ではなく、資産バリュー+今後の収益改善に賭ける銘柄として成立する。
結論としては、アルペンを配当目的で買う明確な強みは薄く、利回り2.14%だけでは保有の動機として弱い。ただし利益が伸び、営業利益率が改善していくなら、配当と株価の両方で回収できる可能性は生まれる。つまり配当株としてではなく、業績改善の余地を見込んだ「値上がり+配当の複合型」として保有を検討する方が現実的で、今の利回りは補助的な位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
アルペンの株価2,327円を出発点に5年間の行先を考えると、もっとも重要な変数は利益率がどこまで改善できるかであり、そこが未来を三つに分岐させる軸になる。現在は売上が増えつつも営業利益率はまだ3%程度で、ビジネス規模に対して利益が薄く、資本効率も平均的だが、逆に言えば改善余地が残っているとも言える。一方でPBRは0.74倍と低く、資産価値が評価を十分に吸い上げられていない状態で放置されており、市場が利益成長を確認できるか否かによって株価水準は大きく姿を変えやすい。小売業全体がEC比率の上昇と価格競争の圧力を受ける中で、PBブランド、アウトドア需要、ゴルフ用品など収益源の育ち方が株価に直結する構造になっている。
良い未来では、営業利益率が3%から4〜5%台に向かい、粗利の改善と在庫回転の最適化が進む。PB(IGNIO・Tigora・kissmark)が売上構成で存在感を増し、仕入れ依存を減らすことで利益の取り分が増えれば、利益額は積み上がり、市場評価は自然と追随する。ECとの共存に向け店舗の大型化と体験型MDが機能し、顧客の囲い込みが進むと継続利益が安定し始める。この状態なら株価は2,800〜3,200円へ滑らかに接近し、PBRが1倍に向かう形で3,500円を試す可能性も現れる。爆発的な上昇ではなく、利益率の積み上げに伴って評価が修正されていく“遅効的な上昇”で、持つほど価値が育つ投資に変わる。
中間の未来はもっと現実的で、売上は伸びても利益率が2〜3%台にとどまり、大きな進展も後退も起きない展開だ。PBもEC戦略も形にはなるが突出はせず、アウトドア需要の反動減があれば成長速度は抑えられる。利益は出るが市場評価を押し上げるほどの力にはなりにくく、株価は2,200〜2,600円付近で横ばいを繰り返す。チャートは上下しても長期では平行線になりがちで、値上がり益ではなく保有継続による小さな複利が収益の中心となる。退屈だが崩れにくく、急がずに持てる銘柄になるが、積極的リターンを狙う投資家には物足りないだろう。
悪い未来は、利益率の改善が止まり、再び1〜2%台に戻るシナリオで、EC競争・スポーツ消費の鈍化・在庫回転悪化などが複数重なると起こり得る。利益の質が弱まると市場は現在のPER22〜26倍を維持できず、評価は縮小方向に流れる。PER15倍、場合によっては12倍水準も視野に入り、その場合株価は1,700〜2,000円が主戦場になり、弱ければ1,500円台まで沈むケースも想定できる。PBR0.7倍台が下値を支えやすいが、利益が細るとバリューの根拠も弱まるため、割安のまま沈むバリュー・トラップに類似するリスクも否定できない。
こうした未来を一つにまとめると、アルペンの株価行方は数字が示すとおり、利益率の変化に従って明確に分岐する。利益率が上がれば株価は3,000円台へと時間をかけて向かい、横ばいなら今と大きく動かず、低下すれば2,000円割れが現実的になる。期待で買う銘柄ではなく、数字で判断しながら向きを確かめて乗るべき銘柄で、急いで飛び込むより、改善が実際に表れた瞬間を捕まえる方が合理的にリターンを取りやすい。
この記事の最終更新日:2025年12月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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