株価
クオールホールディングスとは

クオールホールディングスは、調剤薬局「クオール薬局」を核に成長してきた企業で、もともとはクオール株式会社として運営されていたが、2018年に持株会社体制へ移行し、事業を複数領域で拡張できる体制を整えた。医薬分業の進展に合わせて医療機関と近接して出店する方針を取り、全国に薬局網を広げたことで、売上規模は国内調剤チェーンの中で上位に位置する。アインHD、日本調剤に次ぐ規模であり、薬局ビジネスとしてのポジションは業界で確立されているといえる。
特徴的なのは、薬局運営にとどまらず、小売りや生活導線のある場所との融合を積極的に進めてきた点。2008年にはローソンと業務提携し、調剤薬局×コンビニのハイブリッド出店を展開。これにより処方箋対応だけでなく日用品・健康関連商品までワンストップで提供できる店舗が生まれ、利便性を強みに顧客接点を広げてきた。本業に医療を抱えつつも、一般ユーザーに近い接点を増やせる戦略は、今後の収益源多様化にもつながる動きといえる。ビックカメラなどとの共同出店を進めていることも同じ文脈で、薬局の枠を越えて生活導線を取る姿勢が読み取れる。
さらに、この企業は「薬を売るだけで終わらない」のが大きなポイントで、人材派遣・MR支援・出版・医薬品製造販売まで領域を広げている。アポプラスステーション傘下でMR派遣、薬剤師・看護師・管理栄養士など専門人材の紹介・派遣を行っており、医療業界全体の業務を支えるBPOとしての収益基盤も持つ。メディカルクオールでは医薬情報資材・専門誌の編集制作を担い、情報面のインフラにも関わる。また第一三共エスファを子会社化したことで後発医薬品の企画販売にも踏み込み、薬局チェーン×医薬品製造×人材×情報提供という垂直的・水平的な展開を同時に進めている。
つまりクオールホールディングスは、単なる調剤薬局の運営企業ではなく、薬局・医薬品メーカー・医薬情報・専門人材サービスをまとめて抱える「医療流通と現場価値の多層構造企業」といえる。薬局は収益の土台でありながら、人材や後発医薬品、出版が利益の別ルートを形成し、将来は相互に補完し合うポートフォリオ経営になる可能性もある。高齢化と医療需要拡大という中長期テーマを追い風に、店舗網・供給・サービスの3方向を同時に伸ばせるという点は、他の薬局単体企業とは異なる強みになっている。
クオールホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 170,036 | 9,495 | 10,098 | 5,656 | 153.0 | 32記 |
| 連24.3 | 180,052 | 8,324 | 9,256 | 4,880 | 131.1 | 30 |
| 連25.3 | 263,972 | 13,465 | 13,831 | 5,164 | 138.0 | 34 |
| 連26.3予 | 280,000 | 15,500 | 15,600 | 7,000 | 186.2 | 46 |
| 連27.3予 | 295,000 | 16,300 | 16,400 | 7,300 | 194.2 | 46〜49 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 11,662 | -7,013 | -2,569 |
| 2024 | 13,533 | -13,155 | 7,969 |
| 2025 | 12,593 | -20,360 | 7,201 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.5% | 5.5% | 11.5% | – | – |
| 2024 | 4.6% | 4.1% | 9.2% | – | – |
| 2025 | 5.1% | 3.2% | 9.0% | 12.9倍 / 8.0倍 | 1.57倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
クオールホールディングスの決算数値だけを見ると、売上は1800億 → 2600億超 → 2800億予想と継続的に伸びており、規模拡大の流れは明確に続いている。営業利益も83億 → 134億 → 155億予想と増えているため、事業構造が縮小に向かっている様子はなく、むしろ取扱規模を広げながら利益も積み上げている段階と判断できる。ただ、利益率を見ると2023年5.5% → 2024年4.6% → 2025年5.1%と上下があり、上昇基調と言い切れるほどの勢いは感じにくい。利益は増えているが、利益率の改善スピードは緩やかで、売上拡大がそのまま効率向上に結びついているわけではない可能性がある。
ROEは11.5% → 9.2% → 9.0%と推移し、資本効率は標準以上を維持しているが、低下傾向は気になるポイント。企業として利益を生む力が弱まっていると断定はできないが、資本の増加や投資拡大に対し利益成長が追いついていない可能性がある。ROAも5.5% → 4.1% → 3.2%と下がっており、運用資産の増加に対してリターンがやや鈍っている印象になる。この数値推移は、売上拡大のために資産やコストを積むフェーズに入っている、または効率改善がまだ道半ばという見方もできる。
株価評価面を見ると2025年のPERは12.9〜8.0倍と幅があり、好材料が評価されると12倍後半、慎重な相場では8倍まで沈むと考えられる。PBR1.57倍は「資産に過剰な割高評価は乗っていないが、割安放置でもない」水準。つまり現在の市場評価は中立寄りで、強い割高でもなく割安でもなく、成長の結果を見ながら値付けされている段階といえる。PERの幅が大きいということは、利益の伸び具合で市場が態度を変えやすい銘柄という意味でもあり、評価が乗れば伸びる一方で、伸びなければ一気に冷える余地もある。
総合すると、売上と利益は伸びており企業規模は大きくなっている。ただしROE・ROAの低下を見ると、それが効率面の強さへ直結しているとは言い切れず、改善には継続的な収益力の上乗せが求められる。PER8〜13倍という評価帯は、成長が続くなら許容されるが、利益が止まればすぐ割高に見える位置でもある。つまりこの数値だけで見ると、クオールHDは「成長性はあるが効率改善はまだ課題」「評価は中庸で、伸びるか次第で上下に分岐」という投資判断になる。強みは売上成長と利益確保、弱点は効率面の明確な改善がまだ見えにくい点。今後の決算で利益率とROEが再び上向くなら株価評価にも追い風が入りやすい。
配当目的とかどうなの?
クオールホールディングスを配当目的で見る場合、予想配当利回りは連26.3・連27.3ともに約2.01%であり、高配当株とは言い難い。2%台という水準は、インカム収益をメインに期待するにはやや物足りず、利回りの高さだけで投資判断が成立する水準ではない。むしろこの銘柄は配当で大きく稼ぐより、売上拡大と利益成長がどれだけ継続するかに投資成果が依存するタイプと考えるべきになる。
一方で、利益は増加方向にあり、売上も2600億から2800億へ伸びているため、配当が極端に低いわけではなく、企業が成長の中で適切に還元しているとも読める。配当性向が無理な高さでない前提なら、今後の利益積み上げ次第では増配余地も持ち合わせている可能性はある。ただ、現状の2%台配当は「配当を主目的に保有する銘柄」ではなく、「成長が継続するなら配当はあくまで追加のリターン」という位置づけになる。
結論として、配当狙いの投資対象としては強く推せる利回り水準ではなく、配当はあくまで副次的な要素として捉えるのが自然。収益成長が継続し、今後の増配が期待できると感じられるなら保有する意義はあるが、現状の利回りだけで投資を決めるとリターンは限定的になりやすい。
今後の値動き予想!!(5年間)
クオールホールディングスの株価2,283円を基準に5年先を考えると、未来は三つのパターンに分かれていく。現在は売上拡大と利益成長が続いているものの、利益率とROEはまだ伸びきっていない位置にあり、判断材料はポジティブと課題が入り混じっている。だからこそ、今からの5年は業績の伸びに伴って株価が素直に評価される未来もあれば、効率改善が進まなければ価格が横ばいで停滞する未来もあり、逆に期待が剥落すれば下方向へ調整が進む可能性も残されている。上にも下にも扉が開いている状態で、どの方向に進むかは利益率とROEの推移によって決まっていく。そういう分岐点に立っていると見るのが自然になる。
まず良い場合は売上と利益の伸びが継続し、営業利益率5%前後を維持しながらROEが再び10%台へ戻る展開だ。2025年時点のPERレンジ12.9〜8.0倍から見て、高水準評価が続くなら市場はPER12〜14倍程度を許容しやすく、その場合の株価は2,700〜3,200円付近が目線になる。さらに利益拡大が続きEPSが伸びれば3,300円を超えてくる余地もある。劇的な跳ね方よりも、利益と評価がかみ合うことで緩やかに水準が切り上がるイメージが近い。
中間の場合は業績は伸びるが利益率の改善が限定的で、ROEが9%前後で横ばいになる未来だ。このケースでは市場評価も過度に高まらず、PERは9〜11倍程度に収まりやすい。株価で見ると2,300〜2,600円のレンジで推移し、現在値近辺を大きく割り込まずに動くものの、上にも抜けにくい状態が続く。値上がり益よりも業績の安定と配当を受け取りながら保有を続けるスタイルが主戦略になり、退屈だが大崩れしない形で時間を味方にする投資になる。
悪い場合は売上拡大は続いても利益率やROAがさらに低下し、効率の悪化が意識される未来だ。ROEが8%を割り込むような形になると市場は期待を剥ぎ始め、PERは7〜9倍に縮む可能性がある。そうなると株価は1,700〜2,000円が現実的な下値ゾーンとなり、調整が深くなると1,600円台も視野に入る。利益の成長が止まれば評価の支えが弱まり、価格は素直に下方向へ動きやすい。
総まとめすると、良い未来なら3,000円付近、中間は現在値前後のレンジで推移、悪い場合は2,000円割れの可能性が出てくる。上昇余地も下落余地も両方残っており、最も株価を決めるのは利益率とROEの推移になる。成長シナリオでは緩やかに株価を押し上げ、停滞すれば横に伸び、効率が劣化すれば下を掘る。5年スパンで見てもこの3方向が自然な着地点になる。
この記事の最終更新日:2025年12月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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