株価
ヒューリックとは

ヒューリック株式会社は、東京都中央区日本橋大伝馬町に本社を構え、都心のオフィスビル・商業施設・ホテルといった収益不動産の保有・運用を中心に成長してきた不動産会社である。前身は1957年、日本橋興業株式会社として設立され、旧安田財閥にルーツを持つ富士銀行(現みずほ銀行)が所有していた銀行店舗・社宅などの不動産を母体としたことから、現在に至るまでみずほフィナンシャルグループとの繋がりが深い点が特徴的だ。2007年に社名をヒューリックへ変更し、HUMAN・LIFE・CREATE の頭文字を取った名称には、人と生活を基盤に価値を生み続けるという企業意志を込めている。
2008年の東証一部上場後は、物件取得や事業買収により規模と収益力を拡大。2010年に千秋商事と芙蓉総合開発を合併し、2012年には昭栄株式会社との経営統合で実質的な吸収合併を行い、現在のヒューリック(2代目)の体制が確立した。事業の中心は都区内駅近ビルを軸とした賃貸事業で、立地・利便性の良さによって稼働率は非常に高く、2017年末には空室率0.4%という異例の水準を記録している。需要が底強い都心立地を主戦場にすることで、景気変動の影響を受けにくい収益基盤を持つのが同社の大きな特徴である。
ヒューリックの成長エンジンは、既存物件を保有するだけではなく、建替え・再開発によって価値を引き上げて収益を増やす戦略にある。古い中規模ビルを建替え、床面積を拡大して賃料収入を伸ばす。用途もオフィスに限らず、ホテル、商業、住宅、サービス付き高齢者住宅などに広げることで、単一市場への依存を避け、収益を分散しつつ拡張してきた。その結果として「銀行由来の保守的な不動産運用」から「自ら価値を創る開発型不動産会社」へと進化した企業とも言える。
また同社は文化活動への投資にも積極的で、特に将棋界への支援は業界でも象徴的な存在だ。棋聖戦の特別協賛、女流棋戦「清麗戦」の開設、「ヒューリック杯・白玲戦」の創設など、棋界トップクラスのタイトル戦を複数支えるスポンサーとして異彩を放っている。優勝賞金額の増額や将棋会館ビルの取得など、文化・知的競技へ投資する姿勢は企業の社会貢献色を強め、ブランド認知にも結びついている。2024年には将棋会館が同社ビルに移転予定で、ヒューリックと将棋界の結びつきは今後さらに深まっていくことになる。
要するにヒューリックは、旧富士銀行の不動産を起点に安定した賃貸収益を確保しつつ、都心一等地の再開発を通じて資産価値と利益を伸ばすビジネスモデルで成長してきた会社だ。駅近・低空室率という強力な収益装置に加え、建替えによって成長余地を作り続けるという二階建ての構造を持つ。不動産を“持つ”だけでなく“育てる”ことで大きくしてきた企業と言える。文化支援やポートフォリオの多角化も進み、成熟市場でありながら変化と拡張を内包した経営スタイルが、ヒューリックの個性を際立たせている。
ヒューリック 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連20.12 | 339,645 | 100,596 | 95,627 | 63,619 | 95.2 | 36 |
| 連21.12 | 447,077 | 114,507 | 109,581 | 69,564 | 101.1 | 39 |
| 連22.12 | 523,424 | 126,147 | 123,222 | 79,150 | 104.0 | 42 |
| 連23.12 | 446,383 | 146,178 | 137,437 | 94,625 | 124.4 | 50 |
| 連24.12 | 591,615 | 163,360 | 154,329 | 102,341 | 134.4 | 54 |
| 連25.12予 | 636,000 | 179,000 | 165,000 | 108,500 | 142.9 | 57 |
| 連26.12予 | 660,000 | 191,000 | 177,000 | 115,000 | 151.5 | 57〜60 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 266,108 | -345,335 | 11,441 |
| 2023 | 270,819 | -298,330 | -28,024 |
| 2024 | 353,388 | -602,020 | 300,589 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 32.7% | 12.3% | 3.8% | – | – |
| 2024 | 27.6% | 12.2% | 3.3% | 12.0倍(高値)/ 9.0倍(安値) | 1.49倍 |
| 2025予 | 25.7% | 13.4% | 3.6% | 11.46倍(予想) | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ヒューリックの数字を冷静に眺めると、この企業は一言でいえば「高収益でありながら、市場評価は派手さがなく現実的に落ち着いている不動産会社」だと分かる。売上は2023の4463億から2026予の6600億へなだらかに拡大し、営業利益も1461億→1910億へ伸びている。営業利益率は32.7%→27.6%→25.7%と少し低下はしているが、それでも25%以上というのは不動産業としてかなり高い水準で、賃貸収益モデルの収益性が強固であることを示している。売上が増えて利益率がまだ高いままというのは、単なる規模拡大ではなく、収益性を保ちながら成長している証拠とも言える。
さらにROEは12〜13%台が連続して並んでおり、資本から効率良く利益を生む体質が安定している。ROAは3.3〜3.8%で、資産規模の大きい不動産業では平均以上の水準と見られる。つまり投資家視点では、「資本効率の高さと収益性の高さが同時に維持されている企業」という評価が成り立つ。利益率の高さは競争優位の裏付けでもあり、ROEの安定は経営が無理をしすぎていない証拠にもなり、数字のみならバランスが良い。
それにも関わらず市場の評価、つまりPERは9〜12倍で推移している。これは過小評価とは言わないが、少なくとも「高く買われている企業ではない」。むしろ収益力に対して株価は冷静で、期待が過熱していない分、暴落しづらいとも言える。PBRが1.5倍前後というのも特徴的で、資産価値に対して大きなプレミアムで評価されている状況でもない。数字だけ見ればこの企業は派手な夢で買われる銘柄というより、利益とキャッシュフローが可視化された現金創出型の純粋な収益企業として扱われている。
純利益も946億→1023億→1085億→1150億と右肩に揃い、配当も50→54→57→最大60という増配の流れが続いている。数字が示すのは、企業側が株主還元を利益成長に合わせて素直に積み上げているという姿勢。減配リスクよりも、成長に合わせて配当を引き上げていく長期方針が読み取れる。利回り狙いの投資家にとっては、価格変動が激しくない銘柄より魅力になる余地がある。
急激に化けるタイプではないが、利益が積み上がり、ROEは10%超えで維持され、配当は増え、市場評価は割安寄り。つまりこの銘柄は「持ち続けてじわじわ資産が厚くなる投資」に向いている。不動産業ゆえ景気敏感ではあるものの、賃貸の営業利益率が高く、利益率の低下局面でも25%以上保っている点は大きい。数字だけを見るなら安全性よりも「安定成長×収益性×過熱していない株価」という三拍子を揃えたタイプだ。
成長株のように夢を買うのではなく、現実の利益を積む企業に資金を置き、毎年の決算と配当で成果を拾い続ける投資。動きはゆっくりでも、利益が伸びている限り株価は後からじわっと追ってくる。ヒューリックはそういう企業に見える。放置しながら資産が静かに増えていく、雪が積もるような増え方を許容できる投資家なら、数字だけの判断では合格と言える。
配当目的とかどうなの?
ヒューリックの予想配当利回り(2025・2026年度)3.58%は、数字として突出して高いとは言えないが、利回りが低いわけでもなく、安定して受け取れる水準として現実性があるラインに位置している。高配当株と呼ぶには4〜5%欲しい場面もあるものの、この企業は利益が年々増えており、配当の裏側で利益が確実に積み上がっている点が重要で、利回りの持続力という観点では水準以上の評価ができる。営業利益率が25%超で推移し、ROEも12〜13%台を維持していることから、配当は無理をして捻出しているものではなく、企業のキャッシュフローと収益構造の延長線上にあると理解できる。
今後の利益予測を見ると、2023の946億から2026予の1150億へ純利益が伸びていくため、配当支払い余力にはまだ厚みがあり、増配や継続維持の可能性を否定する材料が数字には見えない。つまり、3.58%という利回りは大きなインカム収入を狙うにはやや物足りないが、利益成長と組み合わせて考えると、将来的なトータルリターンは配当だけでは測れない伸びしろを持つ。配当狙いというより、配当を軸にしつつ株価成長も拾う運用が現実的で、利回り単体よりも複数の利益源を並行して狙う投資が噛み合う銘柄に見える。
利回りが一定で株価が動かない場合でも、年間3.5%前後の分配が積み重なることで保有価値は徐々に大きくなる。株価が上がればリターンは補強され、下がっても配当が一定のバッファとなる。3.58%というのはまさにその中間で、守りと攻めの過度な偏りがなく、安定配当+緩やかな利益成長という投資モデルを想定しやすい位置にある。
高成長株のように株価差益を前提に買う銘柄ではなく、また利回り至上主義の高配当株とも違う。その間に位置し、数字の裏付けが伴っている点で長期保有に向く。単純に利回りだけ求めると不十分だが、成長と配当の両方を拾うなら悪くない。安定と維持可能性に寄せた配当水準で、長期運用で複利が効くタイプの企業と判断できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ヒューリックの現在株価は1,672.5円。今後5年間の株価を考える場合、事業成長率、純利益の推移、予想PERの位置を手掛かりに3つの未来を想定できる。業績は2023から2026にかけて売上と利益が着実に増加し、ROEは12〜13%水準で維持されていること、2025年の予想PERが約11.4倍である点を踏まえると、株価は利益成長と市場評価の方向性に左右される。そこで良い未来、中間、悪い未来の3つのシナリオに分解して考える。
良い未来では、純利益が予想通り伸び続けROEも維持、さらに市場評価がやや見直され、PERが13〜15倍に再評価されると仮定する。この場合、EPSは年々増加しているため、5年後にEPSが160円前後まで伸びる可能性があるとし、PER14倍なら株価は2,200〜2,400円台まで到達しても不自然ではない。特に不動産賃貸収益の安定性が評価され、資金流入が継続する場合は、株価+配当で年6〜8%程度の総合リターンを狙える展開になる。上昇幅は急騰型ではないが、安定成長と中配当の複利で5年後に報われるパターン。
中間の未来では、利益は増減を繰り返しながらも全体として横ばいから微増程度に留まり、PERは現在地近くの10〜12倍で推移する。EPSも160円付近まで伸びると仮定しても、市場評価が変わらなければ5年後の株価は1,700〜2,000円のレンジに収まりやすい。この未来では大幅に上がらないが大きく崩れもしないため、配当3.5%前後の受取が実質的な収益源になる。値動きが乏しい期間が続いても保有継続の合理性はあり、振れ幅が小さいぶん心理的ストレスも少ない。
悪い未来では、利益の成長が鈍化または後退し、市場評価もPER9〜10倍まで沈むケースを想定する。EPSの伸びが止まれば、5年後の株価は1,300〜1,500円台に調整される可能性がある。この場合でも配当が維持されれば利回りは相対的に上昇し下値のクッションになるが、業績悪化と減配が重なると株価維持が難しくなる。つまりリスクは利益成長の鈍化であり、成長株ではなく安定収益株である以上、期待先行の評価が剥落する局面では素直に下方向へ動きやすい。
まとめると、ヒューリックは爆発的な成長より利益の積み上げと配当継続で価値が作られる企業であり、5年後の株価は良い未来で2,200〜2,400円、中間で1,700〜2,000円、悪い未来では1,300〜1,500円が現実的なレンジになる。利回り3.5%とEPS成長が並行する場合は複利が効き、中間以上のシナリオなら保有メリットは十分に残る。
この記事の最終更新日:2025年12月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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