株価
神戸物産とは

株式会社神戸物産は、1981年創業、兵庫県加古川市に本社を置く企業で、日本全国に展開する「業務スーパー」ブランドの運営で特に知られている。フランチャイズチェーン方式(FC制)を採用し、自社が本部とエリアライセンス本部として加盟店の指導・管理を行う形で店舗網を拡大しており、国内では冷凍食品や加工食品を中心に販売する独自色の強いスーパーとして認知されている。
流通・製造・輸入を自社グループで完結させることが特徴で、2021年時点で45か国と取引し、約50か所以上の海外協力工場と連携しながら、オリジナルPB商品の開発・生産・輸入・配荷・販売に至るまで自社の統合サプライチェーンで管理することで、低コスト販売を実現してきた。FC加盟は法人限定としロイヤリティは仕入れの1%と低く設定し、加盟店が利益を確保しやすいモデルを確立している点も強みになっている。
業務スーパーの1号店は2000年に兵庫県三木市で開店。名称が「業務用向け」を連想させたため一般客が寄りつかず苦戦したが、「一般のお客様大歓迎」の掲示で認知が広まり、価格の安さや輸入食品の豊富さが支持されて拡大。段ボールのまま陳列する「箱陳」による人件費削減やPB商品の比率拡大、生鮮に依存しない常温・冷凍主体の品揃えなど、徹底したローコスト運営が特徴である。店舗数は2022年10月時点で全国1007店舗に達し、47都道府県で展開。直営は3店舗のみで残りはFC店、最大加盟企業はG-7ホールディングス。地域により生鮮・惣菜の扱いは異なり、需要とオーナー裁量に応じた柔軟な店舗形態となっている。
食品スーパー事業を核としつつ、外食事業(神戸クック・ワールドビュッフェ11店舗、プレミアムカルビ16店舗)、中食事業(馳走菜87店舗)、さらに太陽光発電18基・バイオマス発電1拠点を持つエコ再生エネルギー事業にも進出している。海外では飲食店出店やホテル計画などに挑戦したが必ずしも成功ばかりではなく、中止された案件もある。一方で公益財団法人「業務スーパージャパンドリーム財団」を通じた人材育成・文化発信活動も行い、財団は同社株式の25%超を保有する筆頭株主でもある。
まとめると、神戸物産は「業務スーパー」という強力なブランドを全国に拡大し、自前の低コストサプライチェーンとPB商品開発力を武器に、食品販売を中心に外食・中食・発電事業まで広げる独自のビジネスモデルを持つ企業である。低価格販売を成立させる仕組みを自ら構築し、加盟店にも利益が残る運営モデルで成長を続けてきたことが最大の特徴といえる。
神戸物産 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連20.10* | 340,870 | 23,851 | 23,646 | 15,047 | 69.9 | 15特 |
| 連21.10 | 362,064 | 27,311 | 29,087 | 19,592 | 90.5 | 20 |
| 連22.10 | 406,813 | 27,820 | 32,125 | 20,832 | 95.4 | 22特 |
| 連23.10 | 461,546 | 30,717 | 29,970 | 20,560 | 93.6 | 22 |
| 連24.10 | 507,883 | 34,350 | 31,576 | 21,443 | 97.1 | 23 |
| 連25.10予 | 550,000 | 39,000 | 40,800 | 27,000 | 122.0 | 26 |
| 連26.10予 | 570,000 | 41,000 | 41,000 | 27,100 | 122.4 | 26〜28 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2022 | 21,582 | -12,483 | -3,752 |
| 2023 | 30,343 | -6,821 | 80 |
| 2024 | 30,772 | -10,184 | -5,595 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.6% | 18.4% | 9.7% | – | – |
| 2024 | 6.7% | 16.5% | 9.1% | PER 高値平均47.1倍 / 安値平均31.9倍 | PBR 5.44倍 |
| 2025 | 7.0% | 22.9% | 12.7% | 予想PER 34.23倍 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
神戸物産の数字を見ると、まず売上は4615億から5078億、そして5500億、さらに5700億予想と迷いがなく右肩に伸びている。営業利益も307億→343億→390億→410億とほぼ同じ角度で上昇し、利益が売上成長を裏切らずについてきているあたりに事業の強さが感じられる。EPSも93円から97円を経て122円へと跳ねており、一過性ではなく利益効率が確実に積み上がってきた事がわかる。スーパーマーケットという低マージンのビジネスで営業利益率が6.6%→6.7%→7.0%に上がっている点は特に強い。普通なら売上が増えるほど利益率は落ちやすいが、むしろ改善し続けている。この時点で経営の精度や価格設定の強さ、PB戦略の浸透など、構造的に強い会社だという印象が生まれる。
ROEは18.4%→16.5%→22.9%、ROAも9.7%→9.1%→12.7%と、どちらも非常に優秀と言っていい範囲で推移している。特に2025予想のROE22.9%は圧巻で、資本効率をこれだけの水準で出せる小売業はそう多くない。稼ぐ力は本物、という評価が素直に成立する。数字がきれいすぎて疑う余地があまり無いほどだ。
ただし株価評価は別だ。24年度のPERは31.9〜47.1倍、PBRは5.4倍。そして25年予想PERは34.2倍。つまり市場はすでにこの企業を「高成長株」として扱っている。いわゆる割安株ではなく、もう期待を受けた状態で価格が形成されている。数字が崩れなければ問題ないが、伸びが鈍れば株価は真っ先にPER調整で押される可能性がある。企業は強いが、株価は強気評価を前提に置かれている、ということだ。
まとめると、神戸物産は売上・利益・EPS・利益率のどこを切っても綺麗に伸びており、ROEやROAの高さも含めて財務指標は極めて優秀。企業としては素直に成長している。一方で株として見ると、すでに市場はその優秀さを認めて高めに評価しており、買うなら「今後もこの成長が続く」と信じて乗る投資になる。短期的に安いところを拾いたい人向けではなく、長く持ち、利益と事業拡大を信じて託すスタイルが最もハマる銘柄。強い企業を高めの評価で買うかどうか、それだけの話になる。
期待を裏切らないなら報われる。伸び続ける限りホールドが報われる。ただし成長が止まれば株価は素直に重くなる。そのシンプルな構造の中で、神戸物産は今、成長が続く未来を前提に株価が組まれている。
配当目的とかどうなの?
神戸物産を予想配当利回りで見ると、率直に言って利回り目的で買う銘柄ではない。2025・2026年度の予想配当利回りは0.69%という水準はほぼ配当が存在するだけのレベルで、インカムゲインを狙う投資としては弱い。銀行預金より少しいい程度で、配当を主目的に保有するメリットはほとんど無いと言っていい。しかも24年までの成長性や指標の高さを考えれば、企業価値を評価して買うなら利益成長や株価上昇によるキャピタルゲインが軸となるはずで、配当を取りに行くにはリターン効率が悪すぎる。
EPSは増えているし利益成長もあるが、その伸びを株主還元へ積極的に回す姿勢ではなく、あくまで事業拡張と内部成長を優先しているように見える。配当水準が低いのは「成熟企業」というより「まだ伸ばしている企業」である証拠とも言えるため、配当を増やすことより成長へ資金を回すのは合理的でもあるが、配当狙いの投資家にとっては魅力が薄い。利回り3〜4%を求める配当投資家からすれば候補に入りづらく、0.69%で保有する理由は乏しい。
配当で持つなら、かなり長期で企業成長に伴う増配を信じて待つスタンスしか成立しない。だが現時点の数字では、その期待が短期で報われる可能性は高くない。成長企業としての強さは魅力だが、あくまで狙うべき価値は株価の上昇であって、配当で生活を支えるタイプの投資先ではない。
結論として、神戸物産は配当目当てで買う銘柄ではなく、成長と株価評価の上昇を見込むキャピタルゲイン型の企業。配当目的での投資は効果が薄く、利回り重視なら全くの別銘柄を探した方が合理的。
今後の値動き予想!!(5年間)
神戸物産の現在値は3,718円。ここから5年間を想像すると、この株は利益成長と市場の期待を燃料にして上がるタイプで、配当ではほぼ保てないため、結局は企業の成長を信じて持てるかどうかがすべてになる。売上は4615億から5078億、さらに5500億、5700億へと進む見込みで、営業利益も307億から343億、390億、410億と積み上がっている。EPSも93円から97円を経て122円まで伸びており、数字を見る限りは健全な拡張轨道に入っているといえる。営業利益率は6.6%から7%へ改善し、ROE22%前後、ROA12%台という小売業としては異例の効率の高さを見せている。これらの数字は「ただ売上が増えているだけの会社」ではなく、「利益をしっかり取れる体質に変わりつつある企業」であることを示している。
ただし問題は市場がそれをすでに織り込み始めていることだ。直近のPERは31〜47倍という成長プレミアムが乗っており、PBR5倍台というのは期待込みで買われている証拠。だからこそ5年後の株価は二面性を持つ。さらに伸びれば大きく上へ、成長がわずかに鈍るだけで評価が剥がれ落ちる。配当利回り0.69%では株価が下落したときに保有を正当化する武器にはならず、成長が止まれば株は素直に下へ滑る。つまり良い場合と悪い場合の差はかなり広くなる構造だ。
良い未来では、PB商品比率がさらに高まり、コスト削減と製造効率の改善で利益率が7%台後半に入り、ROE20%前後で安定する。海外調達ネットワークや食品工場買収が効き始めれば収益ボラティリティは下がり、食品インフラ企業としてより安定した評価を受けるようになる。そうなれば市場は再度強いプレミアムを付け、PER30〜40倍が定着すれば株価は4,500〜5,800円、シナリオがきれいに進む場合には6,000円台へ触れる展開も現実味がある。成長を信じる資金が入り続け、踏み上げるように価値が高まるイメージだ。
中間の場合は、成長は続くが勢いがやや落ち着き、営業利益率は6〜7%で安定、ROEは15〜18%程度で滑らかに推移する。市場の評価も冷静になり、PER25〜30倍が妥当水準となる。このとき株価は3,900〜4,500円程度を中心にゆっくり推移し、強くも弱くもない横ばい上昇の形になる。飛躍こそないが落ちもしない、成長企業として最も現実的な姿かもしれない。配当は低いので持ち続ける理由は成長期待のみだが、企業の拡大が続く限りホールドは報われる。
悪い未来は、利益成長が鈍り営業利益率が横ばい、ROEが15%を割り始めるとき。市場は期待を剥ぎ取り、PERは25倍→20倍→15倍と圧縮方向へ向かう。そうなれば株価は3,300円〜3,000円、弱気相場なら2,600円程度まで下げる可能性も見えてくる。配当が低いため下落局面では反発力がなく、投資家は「成長株の雰囲気が崩れた瞬間」に売っていく。良いときは強いが、期待が緩むと早く下に抜けやすい性格とも言える。
まとめると、神戸物産は今、期待で買われている成長株のポジションに立っている。利益が伸びる限り株価は報われるが、伸びが止まればPERが先に反応する。配当で耐える銘柄ではないためホールド理由は成長一本で、まさに未来を信じる投資ができるかどうかの勝負になる。5年後は3つの姿に分岐していて、光れば高く、普通なら横に、止まれば落ちる。それだけシンプルで、しかしだからこそ面白い株だと言える。
この記事の最終更新日:2025年12月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す