株価
ドトール・日レスホールディングスとは

株式会社ドトール・日レスホールディングスは、東京都渋谷区に本社を置く外食グループの持株会社で、カフェチェーンのドトールコーヒーやエクセルシオールカフェ、パスタ店・洋麺屋五右衛門や星乃珈琲店など複数ブランドを統合している。背景には競争が激化する外食市場があり、2007年にドトールコーヒーと日本レストランシステム(NRS)が経営統合に合意し、株式移転により同年10月1日に持株会社方式で誕生した。設立時は会長に日本レストランシステム側の大林豁史、社長にドトールコーヒー側の鳥羽豊が就任し、その後2008年に山内実・星野正則体制へと移行した。現在はカフェ業態を中心としたフランチャイズモデルが強く、コーヒー豆の焙煎・卸売事業も展開し、店舗運営と食品加工の両面で収益を図る企業構造となっている。
傘下ブランドは多岐にわたる。ドトールコーヒー傘下では「ドトールコーヒーショップ」「エクセルシオール カフェ」「カフェ マウカメドウズ」「コロラド」「ル・カフェ・ドトール・ギンザ」など喫茶中心の店舗を展開し、価格帯は手頃で日常利用に強みがある。一方の日本レストランシステム傘下では「洋麺屋五右衛門」「先斗入ル」「たらこと私」などパスタ主体の外食店に加え、喫茶として成長を続ける「星乃珈琲店」、紅茶ブランド「THE DARJEELING」、MOZART、上辻園など幅広い飲食ブランドを保有している。FC主体のドトール、店舗ブランド展開の星乃珈琲店、パスタ・洋食業態の五右衛門、それらの多角化によって収益源を分散している点が特徴で、加えてコーヒー類の卸売や食品供給の機能も持つため、店舗ビジネスだけに依存しない体制を取っている。
外食市場はトレンド変動・コスト上昇・人件費影響が厳しく、同社の強みは複数ブランドの幅と価格帯の分散、喫茶と洋食の両面を押さえるバランスにある。カフェ日常利用層からゆったり系の星乃珈琲利用層まで取り込んでいるため、景気の上下にも比較的耐性がある構造で、統合を軸としたブランド拡張で規模と収益の安定化を狙う企業と言える。
ドトール・日レスホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.2 | 126,864 | 2,969 | 3,466 | 3,429 | 77.6 | 30 |
| 連24.2 | 140,625 | 7,322 | 7,701 | 5,491 | 124.9 | 40 |
| 連25.2 | 148,822 | 9,597 | 9,615 | 6,880 | 157.0 | 50 |
| 連26.2予 | 154,500 | 10,600 | 10,700 | 7,200 | 171.5 | 54〜58 |
| 連27.2予 | 160,000 | 11,500 | 11,600 | 7,800 | 185.8 | 54〜64 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 5,171 | -5,588 | -1,982 |
| 2024 | 11,795 | -4,904 | -3,373 |
| 2025 | 12,351 | -6,231 | -2,933 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.3% | 3.5% | 2.8% | – | – |
| 2024 | 5.2% | 5.5% | 4.2% | – | – |
| 2025 | 6.4% | 6.6% | 5.1% | 15.2〜19.7倍 | 1.03倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ドトール・日レスホールディングスの業績推移を見ると、売上は1406億から1488億、そして1545億予想と段階的に成長しており、外食産業としては比較的安定した拡大を続けている。営業利益は73億→95億→106億と増加していて、売上以上の伸びを示している点が重要で、これは単価政策やコスト管理、ブランドミックスの最適化が効いている可能性が高い。純利益も54億→68億→72億と積み上がっており、コロナ後の外食回復フェーズを上手く取り込んでいる印象だ。利益の伸びが売上を上回るということは、単に規模が大きくなっているだけでなく、利益構造が改善し「稼げる体質に近づいている」ということになる。
利益率・ROE・ROAの観点でも同じ傾向が見える。営業利益率は2.3%から5.2%、25年度には6.4%となり、低収益だった外食ビジネスが徐々に利益体質へシフトしている。ROEは3.5%→5.5%→6.6%で、資本効率は改善傾向。ROAも2.8%→4.2%→5.1%で、資産を使った収益獲得の効率が向上している。これらの数字はまだ爆発的とは言えないが、緩やかでも着実な改善を示すグラフが描ける企業という印象だ。高水準の高収益ではないが、低収益から脱却しつつある途中段階とも評価できる。
2025年のバリュエーション指標を見ると、PERは15.2〜19.7倍、PBRは1.03倍と落ち着いた水準。割高でもなく割安でもなく、ちょうど真ん中を評価されているようなポジションだ。市場はこの企業に対し過度な期待を乗せていないが、悪材料で売り叩く状態にもない。つまり「今後の利益成長次第で評価が動きやすい中立帯」にいる。PERが20倍近いということは、利益が今後も伸びる前提が株価に多少は織り込まれているが、伸びなければPER縮小=株価調整も当然起こるラインでもある。逆に利益伸長と利益率改善が継続すれば、今の評価はむしろ入り口に過ぎず、株価の居場所が一段切り上がる可能性もある。
投資判断としてまとめるなら、現時点のドトールHDは「堅実な収益改善が続くなら買う価値がある銘柄」。外食は原材料や人件費の影響を受けやすい業種で、ここ数年は価格改定とブランド強化で利益率を押し上げてきたが、この改善が今後も継続できるかどうかが勝負。星乃珈琲店の成長と、ドトールの安定、そして五右衛門などNRS系ブランドが回復すれば収益の底がさらに厚くなる。一方で物価高や人件費高騰が長期化すると、せっかく改善してきた利益率が再び押し戻される可能性もある。
総じて、現状は「銘柄としての方向性は良いが過度に割安ではない」。強く買うより、成長が続くかどうかを見ながら押し目で拾うスタンスが合理的。EPSの積み上げと利益率が今のペースで伸び続けるなら、中期投資で報われやすい。もし伸びが止まるなら、評価はすぐに重くなりやすい。つまり期待と慎重さのバランスで向き合うべき銘柄、と言える。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは連26.2で2.14%、連27.2で2.22%と、ほぼ2%前後の水準になる。日本株の平均利回り(約1.7〜2.0%)と比較するとわずかに高めではあるが、高配当株として積極的に狙うほどの強さはなく、配当利回り単体で見れば特別に優位とは言えない。どちらかといえば、「配当だけで利益を取りにいく銘柄」ではなく、「利益成長と株価上昇を期待する中に、プラスで配当が付いてくる銘柄」という位置づけに近い。
ただし、ドトール・日レスホールディングスの良いところは、利益が右肩に伸びていること、EPSも増えていること、営業利益率やROE・ROAが改善していることで、配当の源泉である利益が強まってきている点だ。利回り自体は2%台と控えめでも、利益が伸びるなら将来的な増配余地は大きくなり得る。今の水準では「高利回りで十分な配当収益を狙う銘柄」ではないが、長期で見れば利回りが成長し、保有するほど配当が育っていく銘柄になり得るポジションだと言える。
一方で注意点もある。外食産業は原材料・人件費・光熱費の影響を強く受け、利益がぶれやすい業種。来店数や客単価の変動、競合環境、コスト増の継続が業績に直結する。利益改善が続く前提が崩れれば、利回りの伸びどころか維持が課題になる可能性もあるため、「利回りがあるから買って放置」というタイプではない。成長と利益率改善が続く限り評価できる銘柄であり、配当目的で持つにしても業績の継続性を見ながら判断すべき中間型。
総合すると、ドトール・日レスホールディングスは現状では高配当銘柄ではなく、利益成長とともに配当も伸びる余地のある「配当成長候補」。今の利回りだけで買うのは弱く、業績改善を前提に中期保有して配当が育つことを狙う投資が現実的。配当で稼ぐ株というより、成長とともに配当が増していくことを見込むタイプと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
ドトール・日レスホールディングスの現在値2,518円を起点に5年後を考えると、未来を左右するのは「利益率の改善が続くのか」「ブランドポートフォリオが伸びるのか」「外食コスト圧力に耐えられるか」という3つの軸だ。売上や利益が伸びてきた現状は追い風だが、外食は景気や原材料価格に左右されやすく、競争も激しいため楽観と悲観の幅が大きい。だからこそ、未来を1つに決めつけるより、良い場合・中間・悪い場合の3つで考える方が現実的になる。
良い場合は、利益率がさらに高まり、ブランドの強さが数字へ素直に反映される未来だ。星乃珈琲の拡大、五右衛門の安定、ドトールの盤石な客層、これらがバランス良く成長し、値上げや客単価引き上げにも抵抗が少ない状況なら、EPSは継続的に積み上がる。営業利益率は8〜10%台に乗る可能性があり、PERも18〜22倍で評価されても不思議ではない。その場合株価は4,000〜5,200円のレンジを視野に入れられ、もし増配サイクルに入ればキャピタルと配当の両取りが狙える。いわば「配当も育ち株価も伸びる成熟型の成長銘柄」という姿に寄る。5年後に振り返って最も満足度が高いのはこのシナリオ。
中間の場合は、売上や利益は伸びるものの大飛躍とはいかず、緩やかな右肩成長に落ち着くパターン。客足や単価はそこそこ維持され、ブランドも安定はしているが、競合との差別化や店舗拡大スピードは爆発的とも言えず、利益改善は続くが大幅加速もしない。利益率は6〜7%台を維持し、PERは14〜17倍の落ち着いた評価となり、株価は2,700〜3,500円という比較的狭い帯で堅調に推移する。投資家にとっては「安心して持てるが興奮しない株」になりやすい。ただし下値リスクは良い場合より低く、長期で保有すれば配当と株価のゆっくりとした積み上げで報われる。派手さはないが裏切られにくい。
悪い場合は逆に、原材料・賃金・光熱費の高止まりが利益を圧迫し、値上げも進みにくく、客数の伸びも頭打ちになる展開。既存ブランドの勢いが落ちると利益率は再び低下し、EPS成長も止まるため、市場はプレミアム評価を外してPERは10〜13倍、株価は1,700〜2,200円まで後退する可能性がある。配当利回りは高くないため下支えになりづらく、長く持つメリットが薄れる。この状態になると「持てば増える株」ではなく「耐える株」になる。ここを避ける鍵は利益率の維持とブランド力の持続。
最終的にまとめると、ドトール・日レスホールディングスは利益成長さえ続けば4,000円台が狙える位置にいるが、伸びが止まれば評価はすぐに切り下がり2,200円付近まで落ちる可能性もある。3つの未来シナリオの中で最も現実的なのは中間で、急騰よりは緩やかな上昇、配当は派手ではないが育つ余地があり、腰を据えて持つほど報われるタイプ。短期で一気に大勝というより、長期で利益改善と配当成長を拾いにいく銘柄であり、成長を見ながらじっくり握る投資が向いている。
この記事の最終更新日:2025年12月7日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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