株価
物語コーポレーションとは

物語コーポレーション(The Monogatari Corporation)は、愛知県豊橋市に本社を置き、焼肉・ラーメン・和食・お好み焼きなど幅広いジャンルの飲食店を全国規模で展開する外食企業である。中でも核となるのは食べ放題の「焼肉きんぐ」で、家族客を主力とした郊外店舗を中心に支持を集めている。2024年2月時点で直営431店舗、FC243店舗、合計674店舗まで拡大しており、国内ブランド12種、海外3ブランドとラインナップも多様だ。焼肉、ラーメン、しゃぶしゃぶ、寿司、お好み焼きと複数業態に広がる構造は、単一ブランド依存を避け、トレンド変化や地域特性に合わせた出店調整ができることが特徴で、外食産業の景気変動に柔軟に対応しやすい体質を持つ。
展開ブランドは「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」「お好み焼本舗」「寿司しゃぶしゃぶ ゆず庵」など認知度の高い業態に加え、「焼きたてのかるび」「熟成焼肉 肉源」「果実屋珈琲」など新業態への挑戦も継続している。ラーメンだけでも丸源・二代目丸源・熟成醤油キャベとんと複数に分岐させ、顧客層・価格帯・体験価値を細かく分けて取りにいく設計がなされている。店舗展開はロードサイド・郊外型が中心で、都市型店舗と比べて家族連れの滞在時間が長く客単価を取りやすいうえ、駐車場を確保することで来店障壁を下げている。この郊外立地戦略は焼肉業態と相性がよく、価格帯と回転効率をバランスさせ収益力につなげている。
店舗が増えると通常は人件費や食材原価で利益率が落ちやすいが、同社は直営とFCを併用しながらスケールメリットを高め、共有仕入・レシピ統一・マニュアル化されたオペレーションで効率化を進めてきた。ブランドが複数あるため退屈させず、新規出店のスピードも鈍らず、成熟業態に依存しないのは外食企業として大きな武器になる。また、株主優待として食事券を発行し、個人株主からの人気も高く、優待目的の保有人口が株価の下支えとして働きやすい点も見逃せない。
事業構造だけを見ると、物語コーポレーションは単なる外食チェーンではなく、焼肉・ラーメン・和食の「複数カテゴリ×郊外立地×食べ放題モデル」という明確な勝ち筋を持つ企業という印象が強い。食べ放題は客層が広く、若年~ファミリー~団体まで取り込みやすい。価格に対する納得感が得られればリピート率も高く、コロナ禍を経て外食回帰が起こる中で追い風になる領域でもある。海外店舗数はまだ発展途上だが、国内の成長余地と知名度、業態の拡張余白を考えると、今後の伸びしろは十分残されているといえる。
物語コーポレーション 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株当り配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.6* | 64,018 | 2,555 | 4,265 | 2,727 | 75.4 | 20 |
| 連22.6* | 73,277 | 2,873 | 6,167 | 3,727 | 102.9 | 21.7 |
| 連23.6* | 92,274 | 7,202 | 7,179 | 4,693 | 129.5 | 26.7 |
| 連24.6 | 107,156 | 8,165 | 8,582 | 5,639 | 158.2 | 32 |
| 連25.6 | 123,921 | 9,242 | 9,035 | 6,157 | 163.1 | 36 |
| 連26.6予 | 147,200 | 10,800 | 10,600 | 7,400 | 192.1 | 40 |
| 連27.6予 | 168,000 | 12,800 | 12,600 | 8,800 | 228.5 | 40〜48 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 9,695 | -8,042 | -3,229 |
| 2024 | 10,626 | -9,240 | 3,519 |
| 2025 | 11,839 | -13,954 | 2,707 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.8% | 19.1% | 9.3% | – | – |
| 2024 | 7.6% | 19.3% | 9.1% | – | – |
| 2025 | 7.4% | 15.2% | 8.3% | PER 高値28.8倍 / 安値17.2倍 | PBR 4.09倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
物語コーポレーションは、数字だけ見ると非常に整った成長トレンドの企業といえる。売上は1071億 → 1239億 → 1472億予と年ごとにしっかり積み上がっており、営業利益も81億 → 92億 → 108億へ増加、純利益も56億 → 61億 → 74億予と揃って右肩に伸びている。利益率が落ちていないかを見ることは重要だが、営業利益率は7.8% → 7.6% → 7.4%とわずかに低下しているものの、大崩れというほどではなく、売上拡大で吸収しながら成長を継続している形だと読み取れる。
ROEとROAを見ると強みが一段とはっきりする。ROEは19.1% → 19.3% → 15.2%、ROAは9.3% → 9.1% → 8.3%で推移し、直近は少し下げているがいずれも一般企業が目標とする水準を上回る。資本効率が高いということは、事業投資に対して利益を効果的に生み出している会社である証拠で、短期で利益を削ってでも成長を取りにいく外食企業が多い中で、この水準を維持している点は評価に値する。
ただし、株価水準を示すPERやPBRを見ると雰囲気は変わる。2025年のPERは高値28.8倍、安値17.2倍、実績PBR4.1倍と決して安くはなく、明確に成長を織り込まれたバリュエーションになっている。割安株ではなく、期待・成長見込み込みで保有されている株であるため、株価は良いときは伸びるものの、期待が折れたときは調整も起きやすい。数字だけで判断すると、買うなら割安圏に落ちたタイミングが合理的で、指標としてはPER17〜20倍付近が拾いやすい水準と考えられる。
総合すると、物語コーポレーションは売上・利益・EPSがきれいに伸びており、ROE・ROAの高さも相まって優秀な成長株。だが現時点の株価は割高に近く、押し目を狙って中長期で持つのが一番相性が良い。爆発的な成長株というより、安定して規模を広げて収益を積み上げていくタイプであり、利益成長が止まらない限りは長く報われる可能性が高い。短期より中期〜長期で構える銘柄として評価するのが適切だと思われる。
配当目的とかどうなの?
物語コーポレーションを配当目的で考えると、まず利回り水準がかなり低く、配当投資という観点からは魅力は強くない。予想配当利回りは連26.6で0.91%、連27.6も0.91%とほぼ1%ラインで推移しており、これは東証プライム全体の平均利回り(概ね1.7〜2.0%)を下回る水準。銀行預金よりは上だが、高配当株を探す投資家からすると候補に入る数字ではない。配当収益のみでリターンを期待する投資法とは相性が弱く、「インカムを得るために持つ株」というよりは完全に別の目的で保有すべき銘柄といえる。
ただし、「配当が弱い=評価が低い」という話ではない。むしろ背景は逆で、売上・利益・EPSが伸び続けている成長企業であり、利益を内部留保や出店・新業態開発に回すことで企業規模をさらに大きくしている段階。そのため配当より成長に重きを置いた資本配分をしている可能性が高く、今は配当よりも投資優先で企業価値の拡大を狙っているフェーズとも読める。ROEも15〜19%と高く、資本の回転効率も良い。配当性向を大きく高めずとも利益成長で株主還元を実現しやすい体質になっている。
もう一つ重要なのは、低配当でも「今後増配余地があるかどうか」。利益とEPSが伸びている以上、配当性向を上げれば利回りは自然に改善できる余地がある。出店拡大やブランド力の向上が続き、利益が安定して積み上がるなら、3〜5年後に利回り水準が高まる可能性はある。つまり現状は利回りが低くても、「育っていく配当」を期待する選択肢は残っている。ただし、それはあくまで利益成長が継続した場合の恩恵であって、今すぐ配当で収益を取りたい人には向かない。
まとめると、物語コーポレーションは配当で稼ぐ銘柄ではない。利回りだけで判断すれば弱いが、成長を優先し、企業価値の拡大の中で後から配当が付いてくる可能性があるタイプ。配当主体で買うと不満が残るが、長期で見て業績に乗るなら、将来の増配と株価上昇を両方取りに行ける余地はある。配当ありきで選ぶ株ではなく、成長を信じて保有し、その結果として配当も育つかもしれない――そんな向き合い方が現実的だ。
今後の値動き予想!!(5年間)
物語コーポレーションの株価4,385円を起点に5年後を想定すると、今後の株価は「どれだけ成長を維持できるか」「市場がその成長にどこまで価値をつけるか」で大きく形が変わる。売上・利益は右肩で伸びている一方、営業利益率は微減傾向、PERは高めの評価帯という現状を踏まえると、将来は楽観・中庸・悲観で分岐する。以下、3つのストーリーが現実的なイメージになる。
まず良い場合は、今の成長が鈍らないどころかさらに強まる未来だ。焼肉きんぐ・丸源ラーメンを軸に既存店が順調に伸び、新規出店が成果に繋がり、海外展開や新ブランドが第二・第三の柱に育つような展開。ここまで噛み合うと売上も利益も伸び続け、EPS拡大が株価を押し上げる。市場も成長企業としての評価を続ければPER25〜30倍が維持され、株価は6,500〜8,200円に到達する可能性がある。飲食大手の中でも成長スピードは速い部類のため、このラインは強気ではあるが完全に非現実ではない。
次に最も現実的と見られる中間のシナリオ。売上と利益は拡大するものの成長率が徐々に落ち着き、成熟フェーズに近づいていくイメージ。利益率は現状維持〜少し低下しつつ、事業規模の拡大で全体としては増益基調。この場合、PERは18〜25倍あたりに安定しやすく、株価は5,000〜6,000円のレンジが濃厚。大きく跳ねるよりも少しずつ上へ積み上がる展開で、長期保有で報われるタイプ。急騰よりも堅実な伸び方をするイメージで、投資家の期待と実績がバランスよく噛み合ったときの結果がこれになる。
悪い場合は、コスト環境や競争の影響で利益が鈍化し、EPS成長が止まるシナリオ。原材料、人件費、エネルギーコストの上昇が利益率を圧迫し、値上げ耐性が弱まれば業績モメンタムは急速に低下する可能性がある。市場が成長の鈍りを織り込み始めるとPERは縮小方向に進み、17倍以下が定着すると株価は3,300〜3,900円まで押し戻される。外食業界全体の需要後退や消費弱化が重なると、このシナリオは現実味を増す。成長を織り込んだ株だからこそ、失速時には下げ幅も大きくなりやすい。
まとめ、成長が続き業績が伸びるなら株価は6,500〜8,200円あたりまで上を目指せるし、ほどほどの伸び方で落ち着いた場合は5,000〜6,000円くらいに収まる可能性が高い。最悪なのは利益率が落ちたり競争が激化した場合で、3,300〜3,900円あたりまで評価が縮むこともあり得る。
現在の株価にはある程度の成長期待が既に含まれているため、今後も勢いが続くかどうかの見極めが一番重要になる。配当で安定収益を狙う株ではなく、成長と株価上昇で利益を取るタイプなので、強気なら長期保有、慎重なら押し目待ち、成長鈍化の可能性が見えるなら無理に飛び込まず様子を見る判断も十分あり得る。結局のところ、この銘柄の未来は業績が伸び続けるか、市場がその成長をどこまで評価し続けるか、その2点に尽きる。
この記事の最終更新日:2025年12月7日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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