株ウォッチング

すべての株の情報を表示し管理人のアドバイスも一言


クラボウ(3106)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

,

株価

クラボウとは

クラボウ(倉敷紡績)は、名前だけ聞くと昔ながらの繊維メーカーという印象が強いけれど、実際の姿はずいぶん違う。紡績の歴史を持つ老舗でありながら、会社の中身は化成品や電子材料、産業用素材、計測機器まで扱う複合型の素材メーカーになっている。つまり「繊維の会社」というより「高機能素材と化学製品を軸に進化した企業」と言った方が正確で、古いブランドの表面の下に意外と先端技術に寄った事業が広がっている。

今のクラボウを形づくる中心は化成品事業で、フッ素樹脂やエンプラといった耐熱・耐薬品性の高い樹脂加工品を展開し、フィルタなどの産業用資材も供給している。これらは半導体製造装置や自動車、工業用途の部材として必要とされるため、景気が動けば業績にも響くし、伸びるときは一気に利益が上がる可能性もある。ここが今後の伸びしろを握る中核分野。

それと並んで存在感があるのが機能フィルム領域で、半導体プロセスで使われる離型フィルムやダイシングフィルム、太陽電池向け封止材など、電子産業と直結するフィルム素材を扱う。世界的な半導体投資に影響されやすく良し悪しは波が出るが、追い風が吹いたときの伸び方は大きく、変化に乗れば収益は強くなりやすい。

一方で産業マテリアル部門はもっと落ち着いた性格をしていて、断熱材や建材、不織布、軟質ウレタンなど生活にも工業にも使われる素材を幅広く展開している。派手なニュースにはなりにくいが、用途が絶えにくいため比較的安定感があり、全体の底支えとして働く部分。

祖業の繊維も完全に古い形で残っているわけではなく、今は高機能糸や難燃素材、ユニフォーム向け生地、暑さ対策ウェアなど付加価値の高い製品に比重を移している。カジュアル向けも含め、高機能系の素材へ転換してきているため「衣料=低収益」という単純な構図とはちょっと違う立ち位置になりつつある。

そして技術的に一番意外性があるのが環境メカトロニクスの領域で、撹拌脱泡装置、遺伝子抽出システム、ロボットビジョン、計測装置、膜厚センサー、水処理装置など、ライフサイエンスや製造現場に直結する機器を扱っている。繊維からこういう分野にまで事業を伸ばしている企業は多くないので、クラボウの進化を象徴している部分と言える。

さらにフリーズドライ食品や観光施設「倉敷アイビースクエア」、自動車教習所の運営、不動産賃貸など周辺事業も持っていて、特に不動産は収益の安定源として働く。景気が荒れたときにクッションになりやすい要素。

まとめると、クラボウは伝統の看板を持ちながら中身は高機能素材・半導体材料・メカトロ技術など未来型の分野へ軸足を移している企業で、成熟×成長の二面性を持つ。古くからある名前なのに、実際は静かに進化してきた技術型メーカーであり、今後の方向を決めるのは素材と電子系分野の伸び方という印象になる。

クラボウ 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上(百万円) 営業利益 経常利益 純利益 EPS(円) 一株配当(円)
連23.3 153,522 8,676 10,024 5,516 287.1 70
連24.3 151,314 9,186 10,191 6,738 362.5 100
連25.3 150,660 10,311 11,784 9,014 516.2 180
連26.3予 144,000 8,000 9,500 9,500 570.1 282〜300
連27.3予 147,000 9,000 10,000 10,000 600.1 282〜300

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期(単位百万) 営業CF 投資CF 財務CF
2023 2,516 -2,969 -3,581
2024 12,864 -387 -6,951
2025 11,048 -2,989 -9,038

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER PBR
2023 5.6% 5.4% 3.1%
2024 6.0% 5.7% 3.4%
2025 6.8% 7.5% 4.7% 6.0〜10.9倍 1.02倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

クラボウは数字だけで見ると「売上は伸び悩むが、利益体質は確実に良くなってきた会社」という立ち位置がはっきりしている。売上は1513億→1506億→1440億(予)と緩やかに縮む方向だが、その中で営業利益は91億→103億→80億(予)、経常利益は101億→117億→95億と推移しており、足元は若干の減益見通しでも、25年度までの利益水準は安定して上昇してきた。劇的な成長ではなくても、「稼ぐ力は落ちずに残せている」という点は大きな安心材料になる。

さらに重要なのは、収益性を示す指標がじわじわと改善していること。営業利益率は5.6%→6.0%→6.8%、ROEは5.4%→5.7%→7.5%、ROAも3.1%→3.4%→4.7%へと向上している。大きな数字ではないが、確実に企業としての効率と利益の質が上がってきている。その結果、市場から過度に割高視されているわけではなく、PERは6.0〜10.9倍、PBRはほぼ1.0倍。つまり評価はまだ織り込み過ぎておらず、良い方向に転がった時の伸びしろは残っている。逆に言えば、事業の改善が止まればこの水準が適正と見られ、上値が伸びきらない可能性があることも同時に示している。

クラボウは祖業である繊維に加え、高機能樹脂・機能フィルム・半導体材料・メカトロ関連など、収益源が多層になっている企業だが、次の成長エンジンは間違いなく化成品・機能材料領域。ここが伸びれば利益率はさらに改善し、ROEが8〜10%レベルに乗れば市場評価は一段階変わる。逆に材料価格や半導体需要のサイクルに弱さが出れば、数字が止まって株価も横ばいやや軟調になる可能性もある。

まとめると、クラボウは爆発的な成長株ではないが、「利益体質が静かに強くなる会社」。売上よりも利益効率の改善で評価が変わるタイプであり、数字が今のペースで続けば見直される余地がある。現状は過度に期待されてもいないが低評価とも言い切れない中間ゾーンで、今後の方向性は事業成長と利益率の積み上げ次第。成長を信じて静かに保有するか、改善が確認できたタイミングで入る銘柄と言う方が近い。配当をもらいながらゆっくり熟成を待つ投資が向き、短期で大きく取りたい人にはやや物足りるかもしれない。

配当目的とかどうなの?

クラボウの配当利回りは、連26.3・連27.3ともに3.67%見込み。数字だけ見ると十分に高めで、東証全体平均(約2%前後)より上。単純な配当利回りとしては魅力のある水準に入っている。ただしポイントは「安全に長く取れる配当か」「今後も伸ばせるか」という視点。過去の利益推移を見ると売上は横ばい〜やや縮小傾向、それでも利益率改善により増配が続いてきた背景がある。営業利益率やROEなどの収益性指標も緩やかに改善しており、今の体質なら無理のある配当とは言えない。むしろ企業として利益の質が安定してくれば、配当維持しつつ増配余地が広がる未来も考えられる。

一方でリスクもある。売上の成長が強くない、需要に左右されやすい化成品・半導体関連依存、材料高や景気後退局面では利益が圧迫される可能性がある。その場合、利回りが良くても安全とは限らず、中長期で安心して配当だけを取りにいく銘柄と断定するのは早い。あくまで「収益体質が良くなりつつある段階の企業」。高配当で安定した成熟銘柄というより、利益改善しながら配当を付けていく途中の会社という方が現実に近い。

結論としてクラボウは、配当利回りだけで見ても選択肢に入る水準だが、安定配当株として持つより「利益改善+配当の両取り」を狙うスタイルが合う。今の利回りは魅力、ただし業績が成長路線を維持できるかが最大の軸。値上がり+配当を同時に狙う保有は合理性があるが、配当だけで選ぶにはまだ様子見と見極めが必要な銘柄といえる。

今後の値動き予想!!(5年間)

クラボウの株価7,680円という現在価格は、過小評価とも過大評価とも言い切れない微妙なラインに位置している。材料株としての成長余地は十分にある一方、売上は横ばい〜微減傾向が混在しており、市場が「次の伸び」を求め始めている段階でもある。評価の軸は過去ではなく今後の収益源、特に化成品・半導体フィルム・メカトロニクス事業がどこまで伸びるか、そこが将来の株価を左右するスイッチになる。

クラボウは繊維メーカーのイメージが強いが、稼いでいるのはむしろ化成品や半導体工程用フィルム、高機能樹脂、遺伝子解析装置・膜厚測定器などのメカトロ機器群であり、事業内容は製造業・電子材料・バイオ・環境技術に広がっている。繊維は付加価値化に舵を切り、昔の紡績からは大きく変貌した姿になっているのが今のクラボウ。そのため株価の見方は「老舗繊維」ではなく「エレクトロニクス材料+機能樹脂メーカー」として評価すべきだと言える。今後5年の株価シナリオは大きく3つに分かれる。

良い未来
半導体需要が再拡大し、フィルム・機能樹脂の採算が上昇。ROEが8〜10%のゾーンに入り、PERも現在よりプレミアムが乗る。自動化・遺伝子関連装置が伸びると業績は上乗せされ、株価は9,500〜12,000円を目指す可能性が出る。成長株として再評価されるフェーズで、材料も強く需給も乗りやすい。

中間の未来(最も現実的)
売上は微増〜横ばいで推移、利益は安定的に積み上がるが爆発的な成長まではいかない。PERは8〜11倍あたりで評価が定まり、株価は8,200〜9,000円前後で推移する。大きな値幅よりも「配当を受け取りながらゆっくり育てる銘柄」になる。投資家の期待は高すぎないが、信頼も薄くはない安定タイプ。

悪い未来
半導体・産業需要が鈍化し、競争や価格下落で利益率が悪化。ROEが5%以下へ戻ると市場の期待は剥がれ、PERは6〜7倍に縮む可能性がある。株価は6,000〜7,000円あたりまで調整が入り、配当があっても含み損が重荷になる展開。製造コスト上昇や設備投資負担が続けばより厳しくなる。

総括すると、クラボウ株は「成長と安定が共存するが、花開くかは今後次第」という段階にいる。利回り3%超は魅力だが、業績が伸びなければ株価は伸ばしにくい。逆に半導体材料・高機能樹脂・メカトロ装置が伸びる環境なら評価は一段階上がり、株価も素直に反応する。つまり7,680円は未来への分岐点で、どちらへ振れるかは市場と事業成長の温度次第。この株は安定よりも「成長を信じて保有できるか」が問われるタイプだと言える。

この記事の最終更新日:2025年12月8日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP