株価
マーケットエンタープライズとは

マーケットエンタープライズという会社は、東京に本社を構え、ネットで中古品を買い取って販売する「リユース事業」を軸に成長してきた企業だ。創業は2004年で、設立が2006年。その頃から実店舗を持つのではなく、最初からインターネットに全振りするという形で市場に入り込んできたのが特徴的だと言える。「高く売れるドットコム」をはじめ、ジャンルごとに細分化した買取サイトを多数運営し、ユーザーは検索からそのまま売却の入口へ入れるため、集客と買取を一体で回せるモデルになっている。家電やカメラのような一般的なモノから、医療機器や農機具のような専門性の高い分野まで扱いが広く、宅配・出張・センター持込という複数の窓口を設けることで、日本中からモノが集まる循環をつくり出している。
買い取った品は「ReRe」というブランドでAmazonや楽天市場などに出品され、販売もネット上で完結する。店舗を持たないため固定費が膨らまず、在庫の回転さえスムーズなら利益が積み上がる構造だ。その一方で、配送効率や査定スピードといったオペレーションの精度がダイレクトに利益に影響するため、そこが強みであり同時に勝負どころにもなっている。
さらに同社は、リユースの周辺にも手を伸ばしている。趣味、通信、機械、農機具といった領域のウェブメディアを運営し、ユーザーが「買う前」「売る前」に知りたい情報を整理して提供することで、検索から売買の導線を作っている。そしてもう一つの柱が通信事業で、WiMAXを提供する子会社MEモバイルの「カシモ」は格安通信として伸びている。リユースと通信は一見別の領域に見えるが、ユーザー獲得や生活インフラという観点で接点は多く、双方の顧客が循環するモデルを狙っていることが分かる。
ざっくり言えばこの会社は、中古品を流通させながら通信サービスまで取り込み、人とモノが循環する経済を大きく回そうとしている企業だ。店舗型リサイクルとは違い、ネットを起点に需要と供給を組み替えていく手法で、サーキュラーエコノミーの波にもはっきりと乗っている。市場は拡大傾向にあり可能性は広いが、競争が激しいからこそ回転速度と顧客獲得の効率が成長の肝になる。そこさえ伸びていけば、リユース・通信・メディアの三本柱は相互に強め合い、事業のスケールはまだ加速できる余地がある。
マーケットエンタープライズ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上収益 (百万円) | 営業利益 (百万円) | 経常利益 (百万円) | 純利益 (百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.6 | 10,875 | 54 | 32 | -40 | -7.6 | 0 |
| 連22.6 | 11,986 | -319 | -328 | -404 | -76.3 | 0 |
| 連23.6 | 15,257 | 94 | 278 | 290 | 54.6 | 0 |
| 連24.6 | 19,008 | 298 | 40 | -476 | -89.4 | 0 |
| 連25.6 | 24,771 | 625 | 684 | 484 | 90.8 | 0 |
| 連26.6予 | 30,000 | 1,100 | 1,050 | 650 | 121.5 | 0 |
| 連27.6予 | 35,000 | 1,450 | 1,400 | 860 | 160.7 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) | 投資CF (百万円) | 財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 192 | 87 | 421 |
| 2024 | -424 | -229 | 495 |
| 2025 | 482 | -51 | -196 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 0.6% | 21.4% | 5.9% | ー | ー |
| 2024 | 1.5% | -54.2% | -9.0% | ー | ー |
| 2025 | 2.5% | 35.5% | 7.7% | 19.6倍 / 7.7倍 | 6.84倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
マーケットエンタープライズは、まだ若い成長フェーズの企業で、売上は190億→247億→300億と着実に伸ばしてきている一方で、利益面はようやく形になってきた段階というのが数字から伝わる。24年は営業利益2.9億、経常利益0.4億、最終的に-4.7億の赤字だったにもかかわらず、翌25年には営業利益6.2億・経常利益6.8億・純利益4.8億と大きく持ち直し、さらに26年予想では営業利益11億・純利益6.5億まで伸ばす計画になっているので、売上の伸びに対して利益がついてくるタイミングがやっと来たという雰囲気だ。
ただし営業利益率を見ると0.6%→1.5%→2.5%と改善傾向にはあるものの、まだ利益率は薄く、商売の重さに対して利益が十分とは言えない。ROEやROAも上下に大きく振れていて、23年は高いものの24年に大きくマイナスへ傾き、25年には再び跳ねるように戻っているため、安定して高い利益を出せる体質というより、成長投資や費用の変動によって純利益が振れやすい会社という読み方が自然。
PERのレンジが7.7倍〜19.6倍、PBR6.8倍というのも象徴的で、まだ利益規模が小さく安定しきっていないにもかかわらず、市場はかなり強気の期待を乗せている。つまり業績がこのまま伸びる前提で買われている株だということになる。もし利益成長が続けば市場評価はもっと高まりうるし、改善の継続が確認されるたびに株価は素直に反応するタイプだろう。ただ逆に、成長の鈍化や一時的な利益減が見えた瞬間に、割高感が意識されて売られやすくなるリスクも同時に抱えている。
配当がない以上、下支え材料より成長ストーリーが株価の源泉になるため、保有するなら会社が描く成長曲線がちゃんと数字に出続けるかを常に確認していく必要がある。つまり、この銘柄は安定を求める投資ではなく、成長の勢いに乗るかどうかを判断するタイプの株で、リスクを承知で未来の伸びに賭けるなら有望だが、「安全な保険」にはならない銘柄。伸びる時は強いが、期待が剥がれれば下にも速い、そんな性質を数字がはっきり示している。
配当目的とかどうなの?
マーケットエンタープライズは、配当目的で持つ銘柄ではまったくない。そもそも配当が存在せず、26.6期も27.6期も利回り0.00%と予定されている時点で、その方針はハッキリしている。つまりこの会社は株主に現金を返す段階ではなく、利益をそのまま事業拡大に注ぎ込むフェーズにいる。リユース事業は在庫仕入れと物流拡張が命で、さらにメディア事業は広告投資が必要、通信事業も加入数拡大のためのプロモーションと回線維持コストが重くのしかかる。利益が出ても手元に残すより、次の成長に向けて使う方が会社の生存確率も売上成長率も高まるため、配当は後回しになる。だから今の姿は「利益を株主に返す会社」ではなく「利益を次の売上に変換する会社」。
配当を期待して買う人から見ると、この銘柄は終始報われない。1年待っても3年待ってもキャッシュが落ちてこない可能性の方が高い。一方で、会社のスタンスとしては「外部に還元するより成長の火力を落とさず回し続ける」という選択で、それは投資家にとってリターンの形が違うだけだ。配当ではなく株価上昇という形で戻ってくる可能性を買う銘柄になる。言い換えれば、この会社の投資家は配当を貰うことで回収するのではなく、成長ストーリーが現実化することで資産価値が増えることを狙う。ゼロ配当である以上、株価が上がらなければ持つ理由も無くなるので、企業の成長速度と売上拡大を追うことが唯一の評価軸になる。
もし今後配当が出る未来があるとすれば、それは利益率が安定し、自己資本の厚みが増し、成長投資フェーズから成熟フェーズに変わった時。その時は成長スピードが鈍化している可能性もあるため、皮肉にも「配当が出る=株価の成長余地が縮小しているサイン」になることすらありえる。だから、配当投資家にとっては静観、あるいは対象外。一方、成長株としてリスクを許容し、利益が膨らむ未来に賭ける投資家にとっては面白い。手元に現金は落ちないが、期待が数字に乗れば株価として跳ね返る可能性が残る。つまりこの銘柄は配当で報われる株ではなく、「未来の成長が成功した時だけ報われる株」。持つ理由も捨てる理由も、全部そこに集約されている。
今後の値動き予想!!(5年間)
マクエンの株価1,610円が5年後にどこへ向かうかは、結局「利益が伸び続けるか」に尽きる。売上は伸びているが、株価が本当に動くのは利益が継続して積み上がり、収益体質が数字で証明されたときだ。事業には伸びしろもコストも大きく、成功も失速もありえる。今は期待と不確実性が同居した分岐点で、未来を決めるのは思惑ではなく決算の積み重ね。つまりこの銘柄の答えは、成長が本物になるかどうかです。
まず良い方向への未来を描くなら、売上拡大の流れが崩れず、営業利益率が2.5%から3%、さらには5%へと段階的に厚くなっていくことが前提になる。粗利改善・コストコントロール・回転効率などが噛み合い、利益が安定的に増える形が定着すれば、今の株価はただの出発点になる。ROEも持続的に高い水準で推移するなら市場の見る目が変わり、「期待株」から「実績で評価される企業」へ格上げされていく。その時の株価の想定としては2,300〜3,800円あたりまで視野に入るイメージで、決算が連続して好調なら階段を上るように水準が引き上がる。上昇は緩やかでなく、むしろ数字さえ裏付けば思った以上に早く評価が跳ねる。上方向はブレーキがかかりにくい。
しかし現実には、売上は伸びているのに利益の伸びが追いつかないパターンも十分あり、むしろ多くの成長企業が通るのはこちらだ。良い決算が来ても次の期に薄くなるなど波があると、投資家は強気にも弱気にも振れず、静観モードになりやすい。その場合の株価は1,400〜1,900円のレンジで上下し、上がっても押し戻され、下がっても買いが入り戻される、方向感のない推移が続く。5年持っても劇的な成果にはならず、悪くもならず、ただ時間が溶ける感覚に近い。企業としては前に進んでいるのに、投資家としては「進んでも進んでも景色が変わらない」状態が続くわけだ。これは良くも悪くも最も現実的な中庸シナリオでもある。
逆に悪い未来では、売上は維持されても利益がついてこず、投資負担が重くのしかかるケースがある。利益が薄い・伸び悩む・赤字気味に戻る──このどれかが起きただけで、期待で買われていた評価は簡単に剥がれる。しかもマクエンは配当がゼロのため、株価の下支えが存在しない。だから失望が一度出れば戻りが鈍くなり、株価は800〜1,300円の方向へ自然と落ち着こうとする。期待が剥がれると「成長前提」は「割高評価」に変わり、そこからの回復には数字という強い材料がもう一度必要になる。
5年後の株価は、利益が伸びれば上へ、伸び悩めば横へ、止まれば株価は下落する。良い未来では株価は上昇し、数字が未来を押し上げる。中間では力強さに欠け、方向なく横ばいで時間が消える。悪い未来では期待が外れ、評価が縮み価格は下へ滑る。いまはその分岐のスタート地点。方向を決める主役は市場ではなく、これから積み上がる決算だ。成長が証明される会社か、期待が剥がれる会社かを示すのは数字しかない。
この記事の最終更新日:2025年12月8日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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