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日東紡(3110)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

日東紡とは

日東紡は、東京都千代田区麹町に本社を、福島県福島市に登記上の本店を置く総合マテリアル企業である。1923年に、福島紡織(1918年設立)と旧・片倉製糸岩代紡績所(1898年設立)を統合して創立され、繊維の時代からスタートした。長い歴史のなかで、1938年には日本で初めてガラス繊維の工業化に成功、またロックウール(断熱材)の国産化にも取り組み、戦後にはグラスウールの製造を手がけるなど、繊維から無機ガラス繊維への脱皮を果たした先駆的な企業である。

現在、日東紡の主力事業はもはや綿など古典的な繊維ではなく、ガラス繊維を核とする多様なマテリアルおよび機能素材に移行している。具体的には、電子機器用基板やプリント配線板向けのガラス繊維・クロス(いわゆる電子材料向けガラス繊維)、建材・住宅用断熱材としてのグラスウール、プラスチック強化材のための複合素材、産業用資材用途の素材、さらに医療分野での体外診断用試薬といったライフサイエンス領域まで、多岐にわたる。

2025年時点では連結従業員数2,745名、資本金約196億円で、6つの報告セグメント ― 電子材料事業、メディカル事業、複合材事業、資材・ケミカル事業、断熱材事業、その他事業 ― という構成。ガラス繊維原糸からガラス布、断熱材、産業資材、医療用試薬までを一貫して手がけることで、素材メーカーとしての強みを多角化している。

特に電子材料事業では、サーバー基地局・高速通信設備、高性能電子機器・スマートフォン・自動車向け電子部品などの基材として、低誘電/低熱膨張特性を持つ「NE-glass」「T-glass」といった特殊ガラス繊維を供給。薄型・高精度化・高信頼性が求められる現代電子機器の需要と相性が良く、技術力・品質・安定供給能力で国内におけるリーディングポジションを維持している。

また環境・省エネ・断熱ニーズの高まりを受け、グラスウール断熱材や産業用断熱材の需要も続いており、住宅・建築向け、産業インフラ向けともに安定した収益の柱となっている。加えて、医療用試薬などメディカル分野にも事業を広げており、景気循環や製造業の波に左右されにくい収益構造を志向。複合材・機能素材といった高付加価値分野へのシフトも明確で、従来の繊維メーカーとは一線を画す「マテリアル総合企業」である。

近年では、グラスファイバー製品と機能素材というコアを軸に、「電子材料」「断熱材」「複合材」「メディカル/ケミカル」「資材・産業用途」といった5〜6の事業セグメントでバランスよく展開することで、産業構造の変化や国際競争にも耐えられる基盤を構築している。特に、電子材料向けガラス繊維はAI サーバーの基盤材、半導体パッケージ、5G/6G通信インフラ、自動車の軽量化部品など、今後需要が見込まれる分野と親和性が高く、将来的な成長余地を残す。一方で、住宅の断熱材、産業資材、医療・診断薬など安定需要への対応も行っており、景気変動への耐性も備えている。

総じて、日東紡は「繊維から無機ガラス繊維へ」「衣料から電子・建材・医療・産業用途へ」という大規模な事業転換に成功した企業であり、日本初のガラス繊維を工業化した伝統を持ちつつ、現代産業の根幹を支える高機能素材サプライヤーとしての地位を確立している。マテリアル事業の幅広さ、技術力、多様な用途展開、収益の多角化により、インフラ、電子機器、建築、医療など多方面に分散しており、単一市場の不振に左右されにくい安定基盤を持つ企業だといえる。

日東紡 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益(EPS) 一株配当
連23.3 87,529 4,880 6,067 2,772 73.9 55(記)
連24.3 93,253 8,387 9,752 7,296 200.4 55
連25.3 109,035 16,445 17,568 12,837 352.6 106
連26.3予 119,000 17,500 17,500 13,300 365.3 106〜110
連27.3予 136,000 19,000 19,000 14,500 398.3 106〜120

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期(百万円) 営業CF 投資CF 財務CF
2023 7,643 1,979 -7,249
2024 5,057 -7,896 4,301
2025 19,121 -11,418 -3,277

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER PBR
2023 5.5% 2.6% 1.4%
2024 8.9% 6.1% 3.4%
2025 15.0% 9.8% 5.7% 高値平均 30.5倍
安値平均 15.2倍
3.28倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

日東紡の売上は932億→1,090億→1,190億と着実に拡大し、営業利益も83億→164億→175億と大きく増加している。特に24.3→25.3での利益跳ね上がりは明確な成長であり、26.3予でもさらに積み上げが見込まれている。純利益も72億→128億→133億と増加傾向で、利益の伸びに迷いが少ない。利益率を見ると営業利益率は5.5%→8.9%→15.0%と急改善しており、収益体質が大きく強化されていることが読み取れる。ROEとROAも同様に上昇し、資本効率と収益効率が同時に改善している点は成長評価として強い。

ただし2025年のPBR3.28倍は割安ではなく、すでに市場が成長余地を評価し始めている可能性がある。PERは安値15.2倍、高値30.5倍と振れ幅が広く、期待が乗っている時は高く買われ、失速すれば評価が一気に重くなるタイプと考えられる。つまり株価は伸びる余地がある一方、期待先行で割高化した場合には反動も起きやすい。

総合すると、日東紡は業績が伸び、利益率も改善、ROE・ROAも上昇という明確な成長銘柄の形になっている。一方でPBR・PERが既に高めの水準である可能性があるため、買うなら成長加速が続く前提が条件になる。保守的に見れば割高感を意識しつつ押し目を拾う形、積極的に投資するなら成長維持と次の増益が続くことを前提に攻めるスタイルが向く。

数字だけで判断するなら「成長が確認できており買いの要素はある。ただしすでに評価が進んでいるため、勢いが鈍れば反落リスクも同時に抱える銘柄」という結論になる。

配当目的とかどうなの?

予想配当利回り(2026・2027年度)が0.92%という水準は、東証平均利回り(約2%前後)と比較して明確に低く、配当狙いで保有する銘柄としては魅力は弱い。業績は拡大し利益率も改善、ROE・ROAも向上しているため企業としての成長姿勢は読み取れるが、その果実が株主への還元として配当に大きく反映されているわけではなく、どちらかといえば利益を内部留保し事業拡大に回す成長投資型に近い構造であると考えられる。EPSは伸びているにもかかわらず利回りが低いということは、配当より株価上昇や企業価値向上に重心を置いている可能性が高い。

したがってこの銘柄は、毎年の配当収入でリターンを積み上げたい投資家には向きにくく、高利回り株として期待して選ぶ対象ではない。利回りが1%未満で続く場合、配当だけで投資成果を得るには時間がかかり、他の配当株と比べても見劣りしやすい。ただし成長余地や利益率改善を背景に今後増配される可能性を見込むなら、保有の意味は変わってくる。配当はオマケ、収益成長と株価上昇を狙うタイプの銘柄であり、「配当で稼ぐ株」ではなく「成長が続けば配当も後から付いてくる株」という立ち位置に近い。

総合すると、日東紡は配当だけを目的に持つ銘柄ではない。利回り重視なら別銘柄のほうが効率が良い。一方で利益拡大と高利益率が継続し、将来的に還元姿勢が強まる可能性まで見るなら、長期成長のなかで配当が追いついてくる期待を持ちながら保有するという選択肢はある。今の数字だけで言うなら、配当狙いではなく成長性を見て持つ銘柄である。

今後の値動き予想!!(5年間)

日東紡の現在株価は12,290円。素材メーカーの中でも電子材料用ガラス繊維を強みとし、近年は利益成長と利益率改善が続いている。売上は年々拡大し、営業利益率は5.5%→8.9%→15.0%と改善、ROEも2.6%→6.1%→9.8%と伸び、企業の体質は明らかに強くなっている。事業の柱はガラスクロス・断熱材・複合材などで、AIサーバーや高速通信向け電子基板需要が膨らむ中、電子材料の追い風がどこまで続くかが最重要ポイントになる。断熱材や建材は安定性があるため業績の土台にはなるが、株価を大きく押し上げるのは電子材料の伸び方次第という構造である。

良い未来のパターンでは、電子材料がAIデータセンター、EV、自動車電装化、次世代通信の基板需要と共に増え続け、増産投資が利益に直結し続けるケース。利益成長が止まらずROE10%超が定着し、EPSも積み上がり続けると市場は期待を維持し、PERは高位で張り付く。複数の事業が同時に伸びれば評価はさらに強化され、株価は5年で18,000〜22,000円台も見える。これは「高機能素材の波を捉えたときの上方シナリオ」であり、期待が現実に伴った場合の到達ライン。

中間の未来では成長は続くものの、急角度ではない状態。電子材料需要は伸びるが変動的で、断熱材と複合材が下支えしつつもトレンドは緩やか。利益率はそこそこ維持され、ROEは中〜高水準で安定。市場は期待を持ちつつも過熱はせず、PERも現在付近の落ち着いた評価帯にとどまる。この場合、株価は12,000〜15,000円程度で推移し、保有リスクは大きくないが爆発力も限定される。伸びたら取れる、下がっても知れている、そんな安定を重視する投資家向けの地味な中庸パターンになる。

悪い未来では、半導体・電子部材サイクルが鈍化し、競争激化や原材料高・エネルギーコスト上昇・為替の逆風で利益率が低下する。市場は成長失速と見なしPERとPBRが縮小、期待価値が剥離すると株価は8,000〜10,000円あたりまで戻され得る。建材や断熱材は需要が底堅いものの、成長牽引力が弱ければ株価押し上げの燃料にはならない。素材株は外部環境の影響を受けやすく、米中需要・半導体景気・インフラ投資動向・エネルギーコストなどがマイナスに振れると下振れシナリオが現実味を帯びる。

結局のところ日東紡は成長の波に乗れば上、停滞なら中、逆風なら下と分かれやすい銘柄であり、未来の振り幅は小さくない。業績は改善し、企業の体質は強くなっているが、配当利回りは約0.9%と低いため、放っておくだけでリターンが積み上がる株ではない。狙うなら「成長シナリオが継続すると信じて乗る銘柄」であり、配当目的ではなく、利益と需要拡大が続いたときの株価上昇を取りにいく戦い方が向く。

この記事の最終更新日:2025年12月8日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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