株価
あさひとは

株式会社あさひは、日本最大級の自転車専門チェーン「サイクルベースあさひ」を展開する製造小売企業で、全国45都道府県に550店舗という圧倒的な販売網を築き、自転車市場の中で最も大きなシェアを握る存在となっている。関東・関西・中部を中心に始まったチェーン展開は現在では北海道から九州まで広がり、都市型店舗・ロードサイド大型店・アウトレット・リユース店・電動自転車専門など多様な業態を揃え、来店目的の異なる顧客を取りこぼさない構造になっている点が特徴である。さらにネット通販も強く、自転車専門店としては国内最大級のEC規模を持ち、店舗受取とオンライン購入を組み合わせたOMO(Online Merges with Offline)戦略をいち早く導入し、ネットで選び実店舗で調整・受取・メンテを受けるという、リアルとデジタルが連続した購買導線を完成させている。
あさひの強さを語るにはプライベートブランド(PB)の高さが欠かせず、その比率は全体の50%にも達する。一般小売業のPB比率が20〜30%に留まることを考えると異例の高さであり、同社はユニクロ・ニトリと同じ製造小売(SPA)型モデルを自転車業態で確立している。しかも多くのメーカーが外部OEM設計なのに対し、あさひは企画・開発・製造・品質管理まで自社主導で行い、コスト低減と差別化を両立している。価格帯の幅も広く、一般車はもちろん電動アシスト・スポーツバイク・子供車まで展開し、ユーザー層の裾野が非常に広い。自社開発ゆえの利益率確保は不況期にも発揮され、リーマンショックで他の小売が苦戦する中でも利益を伸ばし、2009年にはフォーブス「アジア注目中小企業200」に選ばれるまでに成長した経緯がある。
また、あさひは売り切って終わりではなく「売った後に顧客が戻る仕組み」を用意していることも重要ポイントで、点検・修理・カスタム相談の導線が自然に維持される。代表例である「サイクルメイト」は盗難補償とメンテナンス割引、無料点検を組み合わせたサービスで、購入後3年間ユーザーが来店する理由を明確に作り出している。
盗難時の再購入負担率の設定が細かく、自転車価格や年数に応じて20〜50%で新車買い替えが可能となり、顧客が再びあさひを選ぶ確率が高まる設計になっている。さらに店頭だけでなくWebサイトで修理の方法やカスタム指南まで公開しているため、「買う場所」ではなく「相談する場」「知識を得る場」としてブランドが定着していることも強みだ。
一方で課題がないわけではない。自転車産業は天候・需要期・季節性の影響を受けやすく、あさひも例外ではなく利益が上期(春~初夏)に偏りがちな構造を持つ。また電動アシスト市場は競争が激化しており、ヤマハ・パナソニック・ブリヂストンなど大型メーカーとの価格・ブランド競合は今後も続く。とはいえ全国網・PB力・修理体制という「生涯顧客化の仕組み」を持つ企業は他になく、大型SPA型店舗として確立したポジションは強固である。市場変化に対応しながらECと実店舗を融合させ、末端需要を取り込み続けられるかが中長期の鍵になる企業といえる。
あさひ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 単23.2 | 74,712 | 5,127 | 5,316 | 3,366 | 128.9 | 28 |
| 単24.2 | 78,076 | 4,912 | 5,192 | 3,113 | 119.2 | 45 |
| 単25.2 | 81,593 | 5,485 | 5,626 | 3,555 | 136.5 | 50 |
| 単26.2予 | 83,500 | 5,050 | 5,200 | 3,300 | 126.7 | 50 |
| 単27.2予 | 86,500 | 5,380 | 5,530 | 3,500 | 134.4 | 52 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 2,534 | -2,638 | -734 |
| 2024 | 8,581 | -3,053 | -1,323 |
| 2025 | 4,293 | -2,998 | -1,358 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.8% | 6.6% | 9.6% | - | - |
| 2024 | 6.2% | 5.9% | 8.4% | - | - |
| 2025 | 6.7% | 6.5% | 9.0% | 高値11.8倍 / 安値9.8倍 | 0.82倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
株式会社あさひの数字を見ると、この企業の特徴は「伸びすぎず、崩れず、着実に稼ぎ続けている」という安定型の収益構造にある。売上は780億→815億→835億(予想)と大きく跳ねるわけではないが、右肩でじわりと増加しており、少なくとも縮小基調ではない。小売業という構造上、急成長はしにくいが、その代わりに消費動向さえ大きく乱れなければ利益が継続して出るタイプの企業と言える。
営業利益は49億→55億→50億のレンジで推移しており、一時的な凹凸はあるものの黒字維持が安定している。純利益も31億→35億→33億とほぼ同じ幅で動いており、この一貫性は評価できるポイント。つまり成長スピードではなく、損益が大きく崩れない耐久力の方が魅力になる企業だ。景気が良い時に大きく利益を出すタイプではなく、悪い時でもギリギリ踏ん張る体質という印象が強い。
利益率を見ると営業利益率は6.8%→6.2%→6.7%で非常にフラット。大幅な利益改善や原価低減が進んでいるわけではないが、逆に劣化しているわけでもなく「一定の収益体質が確立されている」ことが数字に表れている。ROEが9〜10%付近で推移しているのも興味深く、資本を大きく遊ばせず効率的に回していると見ていい。ROA6%台というのも製造小売業としては素直に評価でき、過剰な投資で資産効率が悪化している気配もない。
PERは約10〜11倍、PBR0.8倍前後と、バリュー寄りの評価に分類される。割高ではなく、むしろ利益の安定性を考えると割安圏に位置しているとも解釈できる。短期で爆発する銘柄ではないが、逆に暴落しにくい守備が強い。市場から期待はそれほど織り込まれていないため、利益率がもう1ポイントでも改善すればPER13〜15倍への見直し余地は十分ある。つまり派手ではないが「じわりと効いてくるタイプ」。
総じてあさひは、成長株ではなく強い安定株という分類になる。年々の積み上がりは小さいが確実性があるため、急騰を狙う投資家には刺激が弱い一方、資産を溶かさず確実に回したい人には相性が良い。利益率が改善したときが本当の評価転換点であり、それが見えた瞬間は市場も気付く。上を取りにいく銘柄というより、安心して持ち続けられる長期保有向きの性格で、配当と着実な成長を狙うスタイルに最もフィットする数字をしている。
配当目的とかどうなの?
あさひは現時点での予想配当利回り(2026・2027年度)が約3.8%となっており、配当目的で保有する銘柄として十分に検討できる水準にある。小売業は景気に左右されやすいことも多いが、あさひは売上・利益が大きく崩れずに推移しており、毎年しっかり利益を確保しているため、継続した配当支払いの土台は比較的安定していると言える。業績の伸び方は爆発的な成長というより、少しずつ積み上げるタイプで、利益率も6%前後で大きな乱れがないため、急成長というより堅実な運営が続いている。ゆっくりと利益が増え、それに合わせて配当も伸びている点は、長期で保有してじわじわと配当を受け取りたい投資家と相性が良い。
ただし、期待される姿はあくまで安定配当銘柄であり、株価が一気に跳ねて資産を短期で大きく増やすような銘柄ではない。上昇するとしても数年単位で緩やかに積み重なるタイプであり、刺激的な値動きを求める投資家には物足りなく映る可能性もある。それでも堅調な利益と無理のない配当支払いが続く限り、長期保有の安心材料になりやすく、配当を軸にした投資なら悪くない選択肢になる。
業績が崩れない限りは配当維持に期待が持て、株価の緩やかな値上がりと合わせてトータルでのリターンを取りにいくイメージになる。結局のところ、あさひは高い夢を追う銘柄ではなく、日々安定して働く堅実な銘柄という印象が強い。大きく跳ねればラッキー、跳ねなくても配当で回収できる、そうした落ち着いた投資を望む人には向く企業だと思われる。
今後の値動き予想!!(5年間)
あさひの株価は現在1,302円。今後の5年間を考えると、この銘柄は電動アシスト自転車の普及、PB自社企画商品の販売構成比、EC×店舗受取モデルの伸び方で未来が大きく変わる。自転車業界は大きな成長産業ではないが、生活必需に近い日常耐久消費財であるため、景気が悪くても需要が一気に消えるタイプではない。だからこそ、この企業は爆発的成長ではなく“積み上げ”によって価値を広げていく銘柄と言える。
まず良い未来の場合、電動アシストや子育て層向け高単価モデルの販売が伸び、PB比率の高さが利益率を押し上げることで収益拡大に繋がる。店舗とECの連携がさらに強化され、オンライン注文→店頭受取の仕組みが主流化すれば粗利改善にも寄与する。営業利益率が7%前後、ROEが10%近くで安定し続けるような状況になれば市場の評価は自然に切り上がり、株価は1,600〜最良で2,000円台を狙う可能性もある。競争が激しい業界ではあるが、PBを持つ製造小売業という強みは単なる自転車店とは本質的に異なり、長期での収益力改善余地を残している。
次に中間の未来。売上は緩やかに伸びても利益が飛躍せず、営業利益率6%台、ROE8%前後で推移するイメージ。この場合、企業価値は維持されるが急伸までは期待しにくく、株価は1,200〜1,450円のレンジで上下しながら推移する可能性が高い。配当利回りは3.8%前後で安定しており、配当を受け取りながら長期で保有するインカム型の投資には向くが、短期的な値幅を狙う銘柄ではなくなる。強烈な上昇はないものの、底堅く安心して持てるタイプになりやすい。
そして悪い未来。低価格自転車の流通増加による価格競争、PBの採算悪化、来店頻度の減少が重なると利益率が低下し、ROE・ROAが縮む可能性がある。もし市場が「あさひは成長力が鈍い企業」と見始めれば、PERは収縮し、株価は1,000〜1,150円台まで下がるシナリオも現実的だ。特に電動自転車のメーカー競争が激化すると、利益確保が難しくなる危険は見逃せない。ただし底割れしてもすぐに事業が傾くような企業ではなく、収益改善の材料次第で戻りやすいのも特徴。この銘柄は業績より期待で動くタイプではないため、数字が悪化すると素直に下に向き、改善すればまた戻していく。
総合すると、あさひは大化け株ではないが、倒れにくく崩れにくい企業体質を持ち、値動きより事業の地力を見て判断すべき銘柄だ。5年後の姿は「緩やかに評価が切り上がる未来」「現状維持で安定利回りを取る未来」「競争圧力でじわり下げる未来」の三つに分かれやすく、いずれのルートも可能性としては否定できない。市場が熱狂する銘柄ではない分、長期投資家の選択と判断が結果を左右する。成長の芽を信じて先に乗るか、数字の改善が固まってから手を出すか最終的に問われるのは投資家自身のスタイルだ。
この記事の最終更新日:2025年12月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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