株価
すかいらーくホールディングスとは

株式会社すかいらーくホールディングスは、東京都武蔵野市に本社を置く日本最大級のファミリーレストラングループで、「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」「しゃぶ葉」「夢庵」「藍屋」などの多業態飲食チェーンを展開し、すかいらーくレストランツ、トマトアンドアソシエイツ、資さんなどを傘下に持つ持株会社である。洋食・和食・中華・しゃぶしゃぶビュッフェまで幅広いラインアップを持ち、2024年10月末時点でグループ店舗数は3,049店という国内最大規模の外食チェーンとして位置づけられる。2000年代以降はM&Aを積極的に推進し、スケールメリットを生かした仕入れ・調達・オペレーション統合により利益改善と収益基盤の拡大を図ってきた。
会社の起源は1962年、東京・ひばりが丘団地に創業された「ことぶき食品」というスーパーに遡る。横川家四兄弟が食料品小売からスタートし、コンビニ概念がまだ存在しない時代に小分け販売や利便性を重視した店舗運営で成功するものの、大型GMSの進出で競争が激化し、スーパー事業から外食産業へ舵を切った。兄弟は渡米し、ビッグボーイやデニーズ、マクドナルドなどアメリカの外食ビジネスモデルを研究、最終的に日本では成長余地が大きいと判断した「ファミリーレストラン」方式を採用したことが今日のすかいらーくグループの礎となった。
2006年には創業家主導のMBOが行われ、非上場化に踏み切る。この背景にはバブル期の投資負担や多ブランド展開の整理が必要になったこと、短期利益より事業再構築を優先するために市場の目から一時的に離れたかったという経営判断がある。2700億円超の資金を動かした当時国内最大級のMBOとしても知られ、店舗統廃合・業態再編・新ブランド開発といった再生プロセスが進められた。再建後は再度成長軌道に乗り、2014年に再上場を果たしている。
現在のすかいらーくは、ガストを中心とする大衆向けファミレスを収益エンジンに、中華のバーミヤン・しゃぶしゃぶ食べ放題のしゃぶ葉・和食の夢庵といった多業態で幅を持ち、幅広い客層を取り込む事業モデルを完成させている。またニラックスによるビュッフェ事業、トマトアンドアソシエイツ、北九州発祥で根強いファンの多い「資さんうどん」のグループ入りなど、地域色や業態特性を生かす拡張も進む。フードデリバリー・テイクアウトの比率も高まり、外食市場の変化に合わせて売り方を柔軟に変える企業体質ができあがっている。
まとめると、すかいらーくホールディングスはスーパーマーケットから始まり外食へ転換し、日本最大のファミレス企業に成長、MBOによる再構築と再上場を経て現在も多業態化と効率化・規模拡大を続けている企業である。ブランド力、店舗数、事業幅では国内トップクラスであり、外食インフラに近い存在といえる。
すかいらーくホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20.12 | 288,434 | -23,031 | -26,433 | -17,214 | -87.2 | 0 |
| 21.12 | 264,570 | 18,213 | 14,325 | 8,742 | 40.8 | 12 |
| 22.12 | 303,705 | -5,575 | -8,225 | -6,371 | -28.0 | 0 |
| 23.12 | 354,831 | 11,688 | 8,691 | 4,781 | 21.0 | 7 |
| 24.12 | 401,130 | 24,184 | 21,470 | 13,965 | 61.4 | 18.5 |
| 25.12(予) | 458,000 | 28,000 | 25,300 | 16,800 | 73.8 | 20〜23 |
| 26.12(予) | 505,000 | 31,300 | 28,600 | 19,000 | 83.5 | 20〜26 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 45,716 | -15,575 | -53,271 |
| 2023 | 70,717 | -14,861 | -44,471 |
| 2024 | 67,923 | -39,228 | -36,429 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 3.2% | 2.9% | 1.1% | – | – |
| 2024 | 6.0% | 8.0% | 2.9% | PER高値76.6倍 / 安値50.4倍 | 4.29倍 |
| 2025(予) | 6.3% | 9.6% | 3.5% | 47.08倍 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
すかいらーくHDは、数字だけを追うとどこか独特なバランスを持つ銘柄のように見える。売上は23年の3548億から26年予想の5050億まで、年を追うごとに積み上がり、規模拡大は迷いなく右肩に伸びている。それに伴い利益も回復し、営業利益は116億、241億、280億予、313億予と増加している。営業利益率も3.2%→6.0%→6.3%へと改善し、外食企業としては標準からやや良い水準に入ってきた印象だ。ROEが2.9%→8.0%→9.6%と10%に近づき、ROAも1.1%→2.9%→3.5%へ向かっているのは、会社が成長フェーズに入り企業全体の回転効率が良くなってきたサインでもある。過去に一度苦しんだ体質が改善され、ようやく「利益を生みやすい身体」に変わり始めている段階。数字を見る限り事業運営は強くなっており、会社そのものの方向は間違っていない。
ところが、これだけ収益性が改善しているにもかかわらず、投資判断として簡単に飛びつけない理由がある。それがPERとPBRで、2024年の実績PERは安値でも約50倍、高値では76倍にも達し、PBRも4.3倍とかなり高い。つまりこの銘柄はすでに市場から期待を大きく織り込まれた状態にあり、「これだけ伸びたのだから割安だろう」という考え方は成立しない。2025年は予想PERが47倍まで下がるとはいえ、それも利益成長が順調である前提で、もしEPSが思ったより伸びなければ、現在の評価は過大だったと判断されて株価が調整に入るリスクがある。成長株の皮を被りながら、まだ実績利益が十分追いついていない銘柄特有の不安定さが残る。
配当についても7円→18円→20〜23円→20〜26円と増加傾向にはあるが利回りは高くなく、長期インカム狙いで選ぶ理由には乏しい。すかいらーくに期待する投資家の多くはおそらく配当ではなく、ブランド浸透・店舗効率化・人件費最適化・デリバリー需要取り込みといった成長シナリオを買っている。ガスト・バーミヤン・しゃぶ葉など業態の強さも確かで、日常食の基盤を押さえているという安心感もあるが、それでも株価が期待値先行で動きやすい以上、業績が一度失速するとPERの高さがそのまま下落圧力になりかねない。つまりこの銘柄は「伸びて当たり前」と見られている状態で、伸びなかった時の代償が大きい。
数字の並びだけで判断すれば、これはリスクもリターンも片側に寄っている銘柄だと思う。良い未来を信じて持てる人には面白く、慎重な人にはまだ早い。成長が継続するなら良いと思うが成長停滞なら簡単に崩れる。結局投資家が問われるのは「業績改善が本物だと信じられるか」だけであり、その信頼を持てるなら中長期保有は成立するし、疑わしいなら調整局面を待つのが正しい姿勢になる。今すぐ全力で飛びつける株ではないが、嫌う理由もなく、むしろ見続ける価値がある銘柄。数字のリズムが変わるかどうか、その瞬間を掴めるなら面白い勝負ができる株に見える。
配当目的とかどうなの?
すかいらーくHDを配当狙いで考える場合、予想利回りが25年0.63%、26年も0.63%という数字を見ると、結論としては配当目的で持つ銘柄ではないと言っていい。利回り0.63%という水準は、国内高配当株の一般的な目安である3〜4%、最低でも2%台を期待する水準からすると大きく下回り、資金を配当で回収するという発想とは相性が悪い。現金収益を求めて保有すると、投じた資金に対して戻りがあまりに小さく、銀行預金よりわずかにマシ程度という位置づけになってしまう。配当金で生活を支えたり、長期で安定収入を積み上げる目的なら他銘柄を探す方が合理的で、すかいらーくはあくまで成長ストーリーに乗りたい投資家向けの銘柄だと言える。
ただ、利回りが低いという事実にも背景がある。すかいらーくは売上拡大と利益体質の改善に力を入れており、内部資金を再投資に回すフェーズにいる可能性が高い。つまり株主還元より事業成長に資本を割き、企業価値そのものを上げて株価上昇で報いるスタイルに近い。これは高利回り銘柄とは逆の思想で、高配当が欲しい人には向かなくても、株価成長で利益を取りに行く投資家には選択肢になり得る。配当を増やせるほど利益が積み上がる未来が確信できる人にとっては、いまの低利回りは「投資回収より成長重視」の期間と割り切ることもできる。
しかし注意すべきは、利回りが低いのにPERが高いという点で、利益成長を見込んだ株価評価がすでに進んでいるため、「配当も低い、割安でもない」という状態にあることだ。成長が成功すれば株価伸長で報われるが、失敗すれば配当で支えられず下落を受け止める材料がない。つまり配当目的というより、成長信仰の強い投資家向けで、安定収入型投資の逆側にある銘柄。安全資産を求めるなら候補外だが、回復する業績波に乗りたい人なら狙いどころはある。
まとめると、配当利回り0.63%という数字が示すのは「配当で稼ぐ株ではない」という事実で、持つなら株価上昇狙い。配当を気にせず未来の成長に賭ける投資家向け、安定配当を求めるなら優先順位は低い。配当はあくまでおまけで、本命は企業体質の改善と売上規模拡大による株価の伸び。その違いを理解できれば、この銘柄と距離感を間違えずに扱える。
今後の値動き予想!!(5年間)
すかいらーくHDの株価は現在3,456円。ここから今後5年間の値動きを考えると、売上は拡大傾向にあり利益率・ROEも回復してきている反面、PERはまだ高い水準で推移しているため、成長に対する期待の強さと、期待を裏切った場合の下振れリスクが同時に存在する。未来の株価は成長が続くか止まるかの差で大きく変わり、方向性は三つに分かれる。
良い場合、市場の期待通り利益成長が続き、EPSが伸びてROE10%超を安定して維持できたなら、PERが30〜40倍で評価される可能性があり、株価はおおよそ5,500〜7,000円台まで上昇するシナリオが見える。しゃぶ葉やバーミヤンなど複数業態が収益源として強まり、海外展開やデリバリー事業が収益貢献する形になれば、さらに上へ抜けていく可能性もある。ブランド力の高さがそのまま企業価値に反映される未来。
中間の場合、成長は続くが速度は緩やかで、利益率6〜7%前後のまま推移し、PERは20〜30倍の範囲で落ち着く。このとき株価は4,000〜5,200円程度のレンジでゆっくり上昇し、5年をかけて現株価の1.1〜1.5倍程度に収まる。右肩だが角度は穏やかで、急騰も急落もない、保有期間の長さでリターンを取る運びとなる。
悪い場合、利益改善が止まりEPS成長が鈍化するか逆戻りすると、PERは過度評価の調整が入り10〜18倍程度まで下がりうる。この時の株価水準は1,900〜3,000円台が想定され、現在の3,456円から見れば下方向の余地が残る。ブランドは強くても市場期待が剥げた銘柄は戻りに時間がかかりやすく、配当利回りが低いためホールド維持の旨味が薄い点も重しになる。
すかいらーくHDは現在の株価3,456円から見て将来の動きは大きく三方向に分かれる。強い成長が継続するなら株価は5,500〜7,000円を目指せる一方、成長が緩やかなら4,000〜5,200円程度で落ち着く可能性がある。利益改善が鈍化し市場の期待に届かなくなれば株価は1,900〜3,000円台まで調整する余地が残る。未来を分ける鍵は利益を伸ばし続けられるかどうかで、市場はすでに成長を織り込んだ価格を付けている。期待どおりに業績が進むなら株価は維持され上昇余地があるが、停滞すれば評価は一気に下がる可能性もあり、現在はまさに分岐点に立つ局面と言える。
この記事の最終更新日:2025年12月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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