株価
三重交通グループホールディングスとは

三重交通グループホールディングスは、三重交通と三交不動産が共同で設立した持株会社で、東証プライム・名証プレミアに上場している。近鉄グループの一角であり、持分法適用会社にもなっている。事業の軸は大きく「交通」と「不動産」の二本柱で、さらに流通、観光、エネルギー、ホテル、介護などにも裾野を広げている。三重県を中心に愛知・奈良・和歌山にも広く展開し、地域生活のインフラを担うグループとしての性格が強い。
交通分野では、三重交通・名阪近鉄バスなどが乗合バスや貸切バスを運行し、タクシー事業も持つ。地方交通網の中核であり、路線維持により安定した事業基盤を確保している。一方の不動産では三交不動産が中心となり、住宅開発・マンション賃貸・オフィスビル・商業施設・仲介・駐車場などを広範囲に手掛ける。高齢者住宅や再エネ事業、農産事業(トマト栽培)まで含まれ、単なるデベロッパーにとどまらない収益多層構造が特徴となっている。
流通ではガソリンスタンド、コメダ珈琲店、大戸屋、ハンズ店舗の運営など生活接点型の商業事業を持ち、レジャーでは御在所ロープウェイ、鳥羽シーサイドホテル、三交イン、ゴルフ場、自動車学校、旅行業など観光・宿泊・娯楽まで幅が広い。これにより交通利用者から住宅購入者、観光客まで取り込める循環ができており、景気の波を事業分散で吸収しやすい構造になっている。
会社としての成り立ちは2006年の設立で、当初は三交ホールディングスを名乗っていたが、バス事業ブランド強化を目的として現社名へ変更。現在は子会社23社、関連会社3社、その他関係会社2社で構成され、企業規模としては地域密着型でありながら事業密度は大きく、交通・不動産・観光を軸に展開する地域複合企業といえる。メガソーラーなど再エネ事業も持ち、将来的な収益安定に向けた布石がある点も特徴。
総じて、三重交通グループHDは運輸・住まい・商業・観光・再エネを一括で抱え、三重県を中心に生活圏そのものを支える企業グループとなっている。バス収益という安定土台に対し、不動産事業が成長余地を持ち、レジャーや流通で消費まで取り込む形で、地域経済そのものを循環させる構造が強み。地域の生活と移動を止めない企業であり、景気に左右されにくい下支えを持ちつつ、開発と観光で上振れも狙える。
三重交通グループホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 93,124 | 6,374 | 6,914 | 3,769 | 37.8 | 10 |
| 連24.3 | 98,218 | 7,368 | 7,537 | 4,750 | 47.5 | 12(記念) |
| 連25.3 | 103,849 | 8,415 | 8,514 | 6,058 | 60.5 | 14 |
| 連26.3予 | 107,000 | 8,700 | 8,400 | 5,900 | 58.7 | 16 |
| 連27.3予 | 108,000 | 9,000 | 8,700 | 6,200 | 61.7 | 16〜19 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 8,357 | -2,494 | -3,712 |
| 2024 | 6,365 | -5,630 | -52 |
| 2025 | 9,104 | -11,261 | -2,693 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.8% | 7.1% | 2.2% | ー | ー |
| 2024 | 7.5% | 8.0% | 2.6% | ー | ー |
| 2025 | 8.1% | 9.6% | 3.3% | 高値平均13.0倍 / 安値平均10.1倍 | 0.80倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
三重交通グループホールディングスについて、まず数字を見る限り売上・営業利益・経常利益・純利益が3年を通して安定的に増加しており、特に営業利益が73億→84億→87億と確実に積み上がっている点は評価したいところ。利益の上下が激しい企業では、翌年・翌々年の見通しに不透明さが残るが、この銘柄は直線的に増えているため経営の再現性、つまり「狙った利益を出しにいける力」があると読み取れる。営業利益率も6.8%→7.5%→8.1%と綺麗に上昇。この数字はまだ高水準とは言えないが、毎年改善しているということ自体が重要で、企業体質が良くなっている可能性がある。コスト管理が進んでいるのか、売上の伸びに対する利益の伸び方が近年より効率的になってきたのか、単純に規模のメリットが出てきているのか、その判断材料になりえる。
経常利益もほぼ同様に上昇傾向で、財務面で大きなブレが見えないため、収益の安定性は比較的高いと考えられる。純利益は47億→60億→59億とやや踊り場の兆候はあるが、EPSは47.5→60.5→58.7で減っても大きく崩れていない。ここは微妙で、増収増益型の流れが続いている中で予想純利益だけやや後退している点は、投資家としては慎重に見ておきたいポイントでもある。ただし減少幅は大きくなく、成長ストーリーが崩れたとは言い難い。むしろ配当は12→14→16と上向いており、株主還元姿勢が強まっている可能性がある。特に2024が記念配当であった点を考慮すると、2025の増配は一過性ではなく、継続的な還元姿勢の示唆とも受け取れる。減益気味の年でも株主還元を落とさない企業は、長期視点では市場評価が安定しやすい。
財務指標を見るとROEが7.1→8.0→9.6、ROAが2.2→2.6→3.3とこちらも綺麗な右肩上がり。高効率体とは言えないが、資本の回転が年を追うごとに改善しているのは強く評価できる部分で、これは外からの資金や資産を使って利益を稼ぐ力が強くなっている証拠。もしこの改善が継続するのであれば、将来的にROEが10%を超える可能性があり、そのタイミングで市場の評価が変わることも十分あり得る。それがこの銘柄を中長期で持つ魅力になってくる。
バリュエーションでは実績PBR0.8倍、PERは安値で10.1倍、高値で13.0倍。PBRが1倍を割っている段階で市場は純資産以下の評価をしていることになり、現時点では割安寄りと見ていい。PER10〜13倍は市場平均と同等かやや低め。つまり業績成長・効率改善の流れが続くなら、過度な割高感はなく買いに入りやすい水準。成長株というよりは安定&改善型の企業で、急騰よりもじわじわ評価されるタイプに見える。配当も増加傾向にあり、長期で保有しつつインカムも期待できる設計。逆に短期の材料性・爆発力には欠けるが、それは悪い意味ではなく「ギャンブルではなく資産形成向き」という意味で好材料とも言える。
総じて、与えられた数字だけから判断するなら、これは長期投資でじっくり保有して年単位で成長と配当を受け取りたい銘柄だと思う。右肩の業績、利益率改善、ROE上昇、割安バリュエーション、増配姿勢。この4つが揃う銘柄は実は多くない。大化けを狙うよりは、手堅くポートフォリオの土台にするイメージで買うのが相性が良さそう。短期で大きく取りたい人には退屈だが、中長期でじわじわ資産を積み上げたい人にはむしろ好物。
配当目的とかどうなの?
配当目的で考えるなら、この銘柄は“高配当株として狙いに行くタイプではないが、堅実に配当を貰いながら長期で持てる銘柄”というポジションに見える。利回りは連26.3で2.97%、連27.3も同じ2.97%あたりで横ばいの見通し。3%前後という数字は、配当だけを主目的にする人からすると決して高いとは言えない。4~5%台がゴロゴロある日本市場の中で「利回りで勝負できる銘柄か?」と言われたら一歩引く水準ではある。
ただ、この銘柄の強みは利回りの高さではなく、配当が業績や利益の伸びとセットで支えられているところにある。利益率やROEが年々改善していて、企業体質が少しずつ強化されている印象がある。「無理に高配当を維持している会社」とは違い、増収・増益・効率改善の中で配当が出ている。そのため、単純に今の利回りだけで評価すると弱いが、長期で持つなら価値があると感じる。
配当だけに全振りする投資家なら物足りないけれど、値上がり+配当の総合収益を狙うタイプの投資には向いている。成長が続けば今後の増配の余地もあるし、株価が評価されればインカムとキャピタルの両方が取れる。要は、配当でお金をとにかく多く受け取る銘柄ではなく、育てながら受け取る銘柄。
安定していて派手さはないが、大崩れしにくい長距離ランナー向けの株、という印象が近い。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価537円の三重交通グループホールディングスは、利益率とROEがじわりと改善しつつ、市場評価は未だPBR0.8倍水準にとどまっている。大きく買われてもいなければ大きく売られてもおらず、期待と慎重さのどちらも支配的ではない中庸の位置にいる銘柄だ。ここからの5年は、数字の積み上げ方次第で進路が変わる。その未来は大きく三つに分かれる。
良い場合
今の改善ペースが止まらず利益率とROEがさらに高い水準へ進み、増配が続くようなら、市場の評価はゆっくりと切り上がる。PBRが1倍を超えたあたりで「割安株」から「安定成長株」へ認識が変わり、株価は600円台を通過し、700円台に定着する可能性が高まる。外部環境の追い風があれば800円に触れる場面もなくはない。急伸よりも“静かに高値圏へ移動していく型”で、値動きに劇的な瞬発力はないが、長期保有の成果が年を重ねて可視化されていく未来だ。
中間の場合
増益は続くものの決定的な評価材料に欠け、市場が積極的に買い上げるだけの熱を帯びない場合、株価は550〜650円前後で滞留する可能性がある。企業の収益基盤は安定しており、配当利回りは3%前後で維持されるため、保有していて不安になる局面は少ない。ただし、派手な上昇もなく、結果として保有者は「堅いが伸びない5年」を過ごすことになる。地味であること自体は悪材料ではないが、評価が切り替わるきっかけが現れない限り大きな変化は望みにくい。
悪い場合
利益率の改善が止まりROEの上昇も鈍化すれば、市場は再び慎重姿勢へと戻る。PBRがさらに低下すれば割安ではなく「成長期待の乏しい銘柄」とみなされる可能性が強まり、株価は500円を割り込むこともある。暴落というより、評価の熱がゆっくりと抜けていくような沈み方で、値動きは小幅でも下方向に重さが残る。配当は維持されても利回り3%では強いバリアとはならず、停滞期間は長期化するリスクがある。
三つの未来はどれも極端ではない。強烈に上がる銘柄ではなく、緩やかな体質改善が評価と連動するタイプだ。上昇の鍵は今の延長線上にある改善をどこまで続けられるか、中間はその維持と停滞の混じり合う形、悪い場合は改善失速による評価低下というだけだ。537円という現在値は、上にも横にも下にも開けた位置にある。その行き先を決めるのは数字と時間、その二つだけである。
この記事の最終更新日:2025年12月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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