株価
帝国繊維とは

帝国繊維株式会社は東京都中央区に本社を置く、防災・消防ホース分野の国内最大手企業であり、消防用ホース・消防車・救助工作車などの特殊車両、防災資機材、さらに繊維製品の製造・販売を行う。創業は1887年と歴史は非常に古く、亜麻繊維を原点とした技術を基盤に、現在は高機能繊維・防災車両・消防装備まで事業領域を拡大してきた。旧安田系企業としても知られる。
工場は鹿沼工場(栃木県鹿沼市)と下野工場(栃木県下野市/上三川町)を有し、鹿沼工場は防災車両製造を下野へ移管したことで消防ホースの専門工場として稼働。2021年には設備増強のため新ライン建屋が着工された。一方、新設の下野工場は2020年に前田製菓から取得した土地に建設された戦後初の中核工場で、消防車両の開発・生産拠点であり、検収施設やシャシー保管庫も備える。これによりホースと車両の機能が工場で分担され、生産効率と設備更新の両立が進められた。
製品は全国消防本部に納入される救助工作車II型〜IV型、高規格救急車、バス型救助車、横浜市消防局・東京消防庁など主要都市に配備される特殊救助車両を手掛ける。また、ローゼンバウアー社製の空港用化学消防車の国内販売窓口も担当し、空港消防領域にも存在感を持つ。繊維分野は亜麻を原点に産業用素材や機能素材へ展開しており、防災×繊維の両軸で事業を形成。テイセン産業・キンパイ商事などの関連会社を通じて製造・販売体制も持つ。
まとめると、帝国繊維は創業130年超の歴史を持つ消防ホース最大手であり、繊維技術を基盤に総合防災企業として進化してきた会社である。ホース・車両・機能繊維の3事業を柱に、災害対応インフラを支える安定性とニッチトップとしての強さを兼ね備え、公共需要を背景に底堅い収益基盤を持つことが特徴といえる。
帝国繊維 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連20.12 | 32,332 | 4,189 | 4,865 | 3,379 | 128.2 | 45 |
| 連21.12 | 32,993 | 4,910 | 5,693 | 3,978 | 150.5 | 45 |
| 連22.12 | 29,904 | 4,459 | 5,296 | 3,659 | 139.3 | 50 |
| 連23.12 | 28,032 | 2,585 | 3,569 | 2,445 | 93.8 | 50 |
| 連24.12 | 31,481 | 3,459 | 4,553 | 3,253 | 124.5 | 50 |
| 連25.12予 | 36,500 | 4,800 | 6,000 | 4,200 | 163.3 | 55 |
| 連26.12予 | 42,500 | 5,700 | 6,900 | 4,830 | 187.8 | 55〜63 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 9,446 | 1,471 | -2,852 |
| 2023 | -932 | -718 | -1,473 |
| 2024 | 1,951 | -11 | -1,242 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 9.2% | 3.7% | 3.0% | – | – |
| 2024 | 10.9% | 4.9% | 3.9% | 21.4倍(高値) / 14.0倍(安値) | 1.30倍 |
| 2025 | 13.1% | 6.3% | 5.0% | 23.24倍(予想) | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
帝国繊維は、直近の決算を見る限り、売上と利益の伸び方が素直で読みやすい企業だ。売上は綺麗に増加傾向を描き、営業利益は25億→34億→48億→57億と右肩に階段を刻むように伸びている。純利益も24億→32億→42億→48億と同じ形で推移しており、規模は大きくないが確実に積み上げる力を持っている。防災・消防ホースという分野は景気循環の影響を受けにくく、需要が極端に減る領域ではない。数字のブレが小さいのは事業の性質によるところが大きく、急激に伸びる尖った構造ではないが、下値が固いタイプの企業と言える。
利益率に目を向けると、営業利益率は9.2%→10.9%→13.1%と明らかに改善してきた。これは単なる規模拡大ではなく、製造効率や価格改善、製品構成の変化も進んでいる可能性を示唆する。消防車両・消防ホース・繊維の三本柱はニッチでありながら公共需要に支えられるため、急激な価格競争が発生しづらい。もし今後も利益率の上昇が続けば、この会社の株価評価はもう一段階切り上がる余地がある。
しかし、一方でROEとROAを見るとまだ発展途上であることがわかる。ROEは3.7%→4.9%→6.3%、ROAは3.0%→3.9%→5.0%。改善しているとはいえ投資家の目線で「高効率」と胸を張れる水準ではない。資産に対して利益を生み出す力は少しずつ上がっているが、まだ成熟しきっておらず、ここを高められるかどうかが次のステージへの鍵になる。裏を返せば、効率改善がもう一段階進んだ瞬間に、市場が評価を見直す可能性があるということだ。
株価評価の指標を見ると、PERは14.0〜21.4倍、25年予想は23.2倍。つまり市場はすでにある程度の成長シナリオを株価に織り込んでいる。今後利益が伸び続けるなら問題はないが、伸びが止まると割高感だけが残る。PBR1.3倍は過度に割安でも割高でもないジャスト中間、企業価値を大きく下回る放置株ではないが、高い評価を与えられているわけでもない。業績の良化と期待がちょうど釣り合っている位置で株価が立っている印象だ。
結論としては、帝国繊維は急騰を狙う投資ではなく、利益の積み上げが続く限りゆっくりと企業価値が肥えていくタイプの銘柄である。利益率とROEがさらに伸びるなら評価は一段階上がり、株価は素直に動く。今の株価は期待と実力が静かに均衡した位置にあり、そこから上へ進むか、横を続けるかは効率改善の速度次第だ。守りに強く、長く見守る価値のある企業。配当も継続しており、業績が崩れなければホルダーは報われる形になりやすい。
配当目的とかどうなの?
帝国繊維の予想配当利回りは連25.12・連26.12ともに1.55%と横ばいで、数字だけを見ると「配当重視の投資対象としてはやや物足りない」という位置づけになる。高配当株として魅力を感じられるラインは一般的に3〜4%以上とされることが多く、それと比較すると利回り面での優位性は高くない。ただし減配しているわけではなく、業績の伸びに合わせて配当額はじわりと増えてきており、利益が崩れない限り安定した支払いを続けられる企業であることは確かだ。
帝国繊維の場合、配当を「多くもらう銘柄」として保有するというよりも、事業と利益の堅さを背景に安心して長く持てるという意味で評価すべきタイプといえる。防災設備や消防車両は景気の影響を受けにくく、需要は継続して発生するため、配当原資が極端に落ち込む可能性は低い。それでも利回りが1.5%台では、配当のみを目的に買う理由としては弱く、配当収益で資産形成するには時間がかかる。成長+安定の中で、配当は「おまけ」程度に捉えるほうが実態に近い。
ただし視点を変えると、利益が今のトレンドのまま伸びるなら将来的に増配余地はある。営業利益・純利益は数年連続で伸びており、ROE・ROAも改善中であるため、企業体質がより効率的になっていけば、1.5%という利回り水準から2%・3%へと数字が向上する未来も見える。今は増配前の助走期間とも、成熟前の静かなフェーズとも言える位置にいる。
結論として、現状の配当利回りでは高配当狙いの投資対象には向かず、配当を主目的とするなら他に候補は多い。ただし、帝国繊維は利益が安定的に積み上がる企業であり、成長しながら静かに配当が増えていく可能性もあるため、「低リスクで長期保有」「増配の芽を育てる」というスタンスであれば十分選択肢になる銘柄である。配当で買う株というより、成長と安定を取りに行き、配当はその副産物として拾うイメージに近い。
今後の値動き予想!!(5年間)
帝国繊維の現在の株値3,540円です。この銘柄を5年というスパンで見た時、鍵になるのは利益率の改善がどれだけ続くか、そして市場がその改善をどの水準で評価するかだ。防災ホースと消防車両という極めてニッチで代替されにくい領域に強みを持つ企業であり、売上の変動は大きくない反面、利益の伸び方が緩やかであることも特徴。株価は今、伸びる可能性も横ばう可能性も同程度に内包した形で止まっている。
良い場合、営業利益率はさらに改善し、製品価格や付加価値の向上、製造効率の向上が続くことで利益の伸びにつながる。ROEが7〜10%に近づくような展開になれば、市場はようやく「伸びている企業」として認識しはじめ、PER20倍超の評価も十分あり得る。消防ホースと特殊車両という公共需要の高い分野でシェアを固めつつ、海外案件や空港向け化学消防車などの周辺分野の伸びが重なれば、株価は4,500〜5,500円、時間をかければ6,000円近くまで届くシナリオも考えられる。値動きは一気に走るというより、階段状に一段一段上がっていく形になりやすい。
中間のケースでは、利益は増えるが伸びはゆるやかで、ROEは5〜6%台で落ち着く。市場は評価を大きく変えず、企業の堅さは認められながらも成長力に高い期待は寄せない。株価は3,300〜4,200円を中心に長くもみ合い、上下どちらにも大きく傾かない。投資家にとっては退屈かもしれないが、逆に安定感のある値動きであり、ホールドしながら業績がどこかで更に強くなるタイミングを待つ戦略が成立する。配当利回りは大きくないが、安全圏で保有できる感覚が続くため、短期より中長期を前提とした投資家と相性が良い。
悪い場合は、資材コストや物流負担、公共調達のタイミングのズレなどで利益率が伸びず、ROEの改善が止まるケースだ。売上規模に大きな崩れは出づらいが、利益成長が鈍れば市場の評価は据え置かれ、株価は3,540円を天井として下値を試し、2,600〜3,200円あたりで滞留する可能性が出てくる。下落は一気ではなくじりじりと進み、配当利回りが相対的に高く見えるようになる水準で買い支えが入り底を作る。成長の方向性が明確になるまで、静かな停滞相場が続くイメージに近い。
3つの未来を並べると、この企業の株価の本質は「急騰する株ではないが、実力が積み上がれば着実に高みへ向かうタイプ」であることが見える。現在の株価は期待と現実の中間に位置し、どちらへ傾くかは利益率次第。今は火がついた株ではなく、ゆっくりと燃え広がる成長を狙う銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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