株価
SFPホールディングスとは

SFPホールディングス株式会社は、居酒屋『磯丸水産』と鶏料理店『鳥良商店(鳥良)』を主力とし、直営主体で展開する外食企業である。上場企業クリエイト・レストランツ・ホールディングスの連結子会社で、M&Aによる事業拡大にも積極的である。業態は多岐にわたり、海鮮浜焼きが中心の「磯丸水産」、鶏料理の「鳥良商店」、餃子・中華業態の「いち五郎」、大衆酒場としての「五の五」、寿司業態「町鮨とろたく」など、専門性の異なる飲食ブランドを複数保有する。
祖業は1984年に武蔵野市で寒川良作が手羽先唐揚専門店「鳥良」を創業したことに始まり、1990年代には店舗拡大に成功。2009年の「磯丸水産」開業を機に大衆向け海鮮業態へ進出し、事業規模を広げた。2010年には持株会社体制に移行し、2011年に社名をSFPダイニングへ変更、2013年にクリエイトレストランツHDの傘下入り、2014年に東証二部上場、2017年に現社名である「SFPホールディングス株式会社」へ改称、2019年には東証一部(現プライム)へ市場変更するなど、グループとしてのステージを段階的に引き上げてきた。
また同社は地域飲食企業の買収による領域拡大にも積極的で、2019年には熊本県を拠点とする株式会社ジョー・スマイル、長野県を基盤とする株式会社クルークダイニングを子会社化した。ジョー・スマイルは「ひゃくしょう茶屋」「前川水軍」「前川珈琲店」など熊本県内の飲食事業を展開し、クルークダイニングは長野県で「からあげセンター」「BANIKUMAN」「天ぷらと寿司18坪」などのほか「磯丸水産」長野・松本店舗を運営し、さらに信州須坂フルーツブルワリーなどのローカルブランドも手掛ける。これによりSFPは関東中心から地方主要都市にもネットワークを広げ、業態とエリアの両輪で成長する体制を整えた。
まとめると、SFPホールディングスは『磯丸水産』『鳥良』を中心とする直営型外食企業であり、クリエイトレストランツHD傘下の中核子会社としてM&Aを積極的に用いながら業態と地域を拡張している会社である。鶏料理から海鮮居酒屋、餃子、中華、大衆寿司まで幅広く運営し、外食チェーンとしての成長とブランド多角化を同時に進めている点が特徴といえる。
SFPホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.2 | 22,913 | -754 | 1,583 | 549 | 21.3 | 20 |
| 連24.2 | 29,079 | 2,026 | 2,236 | 1,731 | 71.0 | 23 |
| 連25.2 | 30,389 | 2,186 | 2,281 | 1,485 | 65.2 | 26 |
| 連26.2予 | 32,500 | 2,500 | 2,600 | 1,700 | 74.5 | 28 |
| 連27.2予 | 34,000 | 2,700 | 2,800 | 1,800 | 78.9 | 28〜30 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 4,226 | -95 | -667 |
| 2024 | 2,194 | -848 | -6,043 |
| 2025 | 2,052 | -485 | -808 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | -3.3% | 4.3% | 3.1% | – | – |
| 2024 | 6.9% | 22.3% | 13.0% | – | – |
| 2025 | 7.1% | 17.0% | 10.6% | 36.6〜52.3倍 | 5.18倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
SFPホールディングスの業績を数字だけで眺めると、まず目に入るのは売上と利益の回復傾向だと思う。290億→303億→325億と規模は派手ではないが確実に積み上げ、営業利益も20億→21億→25億と緩やかに改善している。営業利益率は-3.3%から6.9%へ一気に好転し、さらに7.1%へとわずかに伸びていることからも、ただ売上を増やしただけではなく収益体質を作り直してきたことが数字に表れている。ROEは4.3%→22.3%→17.0%、ROAは3.1%→13.0%→10.6%と改善には振れ幅があり、一度大きく跳ねた後に少し落ち着いた形になっている。これは攻めの回復期から、利益の質を問われる次のフェーズに入ったとも解釈できる。企業としては再び伸ばすことも、ここで減速して評価が剥がれることも両方あり得る微妙な位置にいる。
ただし指標を見ると景色は変わる。PERは36.6〜52.3倍と非常に高く、期待で買われている状態と言っていい。PBRも5.1倍と割高で、今の株価には未来価値が織り込まれているため、現状維持では株価が正当化されず、成長し続けることで初めて現在価格が成立するようなバリュエーションだと分かる。つまりこの株は数字が良いから買い、というよりも、数字がこれからもっと良くなる未来を信じて持つ銘柄に近い。逆に言えば、成長が止まると株価は素直に下へ向きやすく、配当や低バリューで支えられるタイプではないため、下値のクッションが薄い。期待の火が燃えている間は強いが、風が止めば冷えるスピードも速い、そんな温度感の株に見える。
投資家目線で考えると、数字が改善しているのは間違いなく強みだが、高評価ゆえに「良くて現状維持、悪ければ下落」という評価の天秤に乗っている。もし今後の決算で利益率がさらに伸び、EPSも増加し続ければ株価は素直に評価を積み増せる。だが成長が一度でも鈍ると市場の期待が剥離し、PERだけが高い状態として下向きの修正を受けるリスクがつきまとう。つまりこの銘柄の未来は、現在の数字よりも未来の数字が重要ということになる。すでに評価されている企業ほど失速の影響は大きい。成長株らしい上感度の高さと同時に、下振れすれば評価が速いという振れ幅のある銘柄で、買うなら業績進捗に神経を乗せて追い続ける必要がある。
まとめると、今のSFPは回復と利益改善が数字に現れ、ブランド力も持ち直しているが、株価は未来の成長をすでに十分に買い込んでいる段階。慎重な投資家なら足元数字を見ながらタイミングを待つ判断も妥当だし、成長ストーリーを信じて波に乗りたい人には保持の意味がある。どちらも正しい。ただ、利益のリズムが崩れるなら迷わず逃げる必要があるし、伸びると確信するなら安易に手放さず握るべき銘柄。数字を読むほどに、攻めにも守りにも理由をつけられてしまう、ある種の分岐点に立つ株の姿が浮かぶ。
配当目的とかどうなの?
SFPホールディングスを配当狙いで考えると、予想配当利回り(2026・2027年度)1.37%という水準は正直かなり物足りない。日本株で配当を目的とする場合、仮に銘柄選定の基準を一般的な3〜4%とするなら、その半分以下であり、運用効率としては低い。銀行預金よりはましでも、高配当ポートフォリオの主軸になるような利回りではない。つまり「配当収入を得るために買う株」というよりは「配当はあくまでおまけ」という位置づけになり、配当だけで投資妙味を評価できる銘柄ではない。
ただし利回りが低い背景を考えれば見えてくるものもある。SFPは直近で利益を伸ばしつつあり、配当も20→23→26→28円と着実に増えている。利回りが低いのは株価が高いからであり、それは市場が成長性に期待して買っているという裏返しでもある。つまり投資家がこの銘柄に求めているのは配当で静かに収益を得ることではなく、企業価値の上昇=株価成長だということ。もしも今後も利益が増え続け、EPSが積み上がっていくなら、配当はまだ増配余地がある。だが、それはあくまで「未来の話」であり、現時点では利回りだけで投資を決める価値は薄い。
結論を一言でまとめるなら、配当目的の銘柄としては弱く、利回りを求めるなら他により優先度の高い選択肢がある。ただし、もし成長が続き株価と利益が積み重なっていく未来を想定するなら、長期保有の中で増配と株価上昇の両方を狙える可能性は残る。「配当で回収する投資」ではなく「成長の副産物として配当が付いてくる投資」に近い。配当で選ぶ株ではないが、伸びる企業に乗りながら少しずつ配当ももらえれば良い、というスタンスなら成立する。
つまりこの銘柄は、配当が理由で買う株ではなく、成長ストーリーに乗るついでに配当も受け取る株。インカムではなくキャピタル狙い。これを理解して持つなら矛盾はないし、誤解して持つと期待外れになるタイプの銘柄だといえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
SFPホールディングスの現在株価は2,053円。ここから先の5年間を見通すと、この株は業績回復と利益率の定着が進むかどうか、さらに投資家からの評価プレミアムが保たれるかが未来の分岐として大きい。現状は決して割安ではなく「今後も伸び続けること」を前提に株価がついているため、成長が続くなら強いが鈍化すれば素直に下がる。どちらにも振れやすい位置にある。
良い場合、磯丸水産と鳥良商店の既存店売上が堅調に伸び、利益率がさらに高まり、営業利益率が7〜8%台に乗れば企業価値は上に再評価される。国内飲食市場が伸びない中で客単価を維持しながら出店効率を高められれば株価の伸びは現実的で、3,200〜4,000円の射程に入る。M&Aで地方飲食企業をさらに取り込み、海外や観光需要の取り込みが軌道に乗るようならもう一段の伸びもあり得る。市場が「成長は続く」と確信した時、この銘柄は一気に評価を引き上げやすいタイプ。
逆に中間シナリオでは、売上は伸びても利益率が横ばいで、EPS成長も穏やかなまま推移する可能性がある。市場の期待は剥がれないが熱くもならず、株価は2,300〜2,900円周辺で緩やかに動く。保有しても派手な値幅はないが、後退もしない。外食株として割高でも割安でもない「居心地のよい価格帯」に落ち着く未来。保有するなら慌てず長く持ち、決算ごとに方向性を確認しながら少しずつ評価を受け取るような付き合い方になる。
悪い場合は明確で、コスト上昇や客数低下で利益が伸びず、ROE・営業利益率ともに下降すれば期待プレミアムが剥離し、PERが縮小する。その時の株価は1,300〜1,800円まで沈む可能性があり、現株価から見ても下方向の余地は決して小さくない。高評価で買われている銘柄は期待が途切れただけで売られやすく、下落時は戻りが鈍い。配当利回りも1%台と低く、下支えになる要素が強くないため、数字が崩れた瞬間に投資家のマインドが反転しやすい。
最終的にいえば、成長を継続できるなら株価は伸びるし、止まれば下がる。そのどちらもあり得る分岐点にいる。今のSFPは「割安さで買う株ではなく、未来の成長を信じて持つ株」という立ち位置で、評価が上か下かは次の業績の積み上がり次第。5年後は3,200〜4,000円の上ブレか、1,300〜1,800円の下ブレか、その中間の2,300〜2,900円か。いまはそのスタート地点に立っていると考えるのが自然。
この記事の最終更新日:2025年12月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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