株価
サンマルクホールディングスとは

株式会社サンマルクホールディングスは、岡山県岡山市北区に本社を置く外食企業グループの持株会社であり、全国に展開するカフェやレストラン事業を束ねている会社である。元は1991年に「株式会社デコール」として設立され、当初はインテリアコーディネートや損害保険代理業など、現在とはまったく異なる分野の事業を手掛けていたが、その後旧サンマルクとの関係が深まり、2005年11月の持株会社制度移行をきっかけに商号を現在のサンマルクホールディングスへと変更し、完全に外食主体の企業へと姿を変えた。2006年には東京証券取引所第一部に上場し、同時に旧サンマルクから店舗・ブランドを受け継ぐ形で本格的に外食チェーンのグループ経営が始まったという歴史がある。
事業の中心には「サンマルクカフェ」があり、チョコクロで知られるパン併設型のセルフ式カフェとして全国に多数の店舗を持つ。都市部のビルイン立地やショッピングモール内を中心に拡大し、焼きたてのパンとコーヒーを比較的手頃な価格で楽しめるというコンセプトが支持されてきた。店によってはキッズルームがあったり、Wi-Fiが利用できたりと、単なる軽食の場ではなく、居心地の良さや滞在性を意識した空間づくりを進めてきた点も特徴である。名物の「チョコクロ」は登録商標取得済みで、サンマルクカフェの象徴的な存在となっている。2006年にはJR駅周辺店舗でSuica決済を導入するなど電子マネー対応でも比較的早い動きを見せ、全国展開のスピードとブランド認知の高さを背景に一大カフェチェーンとして定着した。
もう一つの柱がレストラン業態であり、特に「鎌倉パスタ」は店内製麺による生パスタにこだわる専門レストランとして広く展開されている。デュラム小麦を使用したもちもちの麺が特徴であり、内装もどこか和のテイストが漂う落ち着いた雰囲気となっているが、実は神奈川県鎌倉市とは直接の関係はないというのも少し面白い点である。そのほかにもベーカリーレストラン・サンマルクやバケット(BAQET)、ドリア専門店の神戸元町ドリアなど、複数の業態を同時に運営しながら外食市場の幅広いニーズを取りに行く戦略を取っている。
創業当初とは異なる形へ再編されてきたこともあり、沿革を見るとたびたび組織変更・分社化・会社分割が行われている。2006年の上場前後にはブランドを業態ごとに会社へ切り分ける再編があり、サンマルクカフェ、鎌倉パスタ、函館市場、バケットなどがそれぞれ独立した子会社となり、サンマルクホールディングスがその持株会社として上に立つ構造ができあがった。さらに2015年にはドリア業態から神戸元町ドリアを切り出し、同年には倉式珈琲店も子会社化。フルサービス型喫茶としてサンマルクカフェとはまた違う方向性で成長が期待されている。
外食市場が大きく揺れた2020年前後のコロナ禍では客足が大幅に落ち込み苦境の時期もあったが、サンマルクホールディングスは不採算店の整理や効率化を進めつつ、新規ブランド・M&Aを通じて事業規模を維持しながら回復に向けた体制を作ってきた。近年はパスタ、ドリア、牛カツといった専門業態の強化にも積極的で、サンマルクカフェ一本で勝負するのではなく、多業態展開によって外食トレンドの変化に耐えうる企業体質へと変化しつつある。すなわち、「パンとカフェの会社」で終わらないための成長戦略が動いているということでもある。
また全店舗に共通する施策として、アンケートを記入して投函すると誕生日や記念日に割引の葉書が届くというリピート促進策を行っており、単なる飲食提供だけでなく、顧客との接点を継続的に維持しようとする試みが見られる。外食チェーンとしてのブランド数が多いぶん、顧客層の幅も広く、ファミリー層・若年層・ビジネス層・買い物客まで、利用シーンや気分に合わせて選べる業態が揃っている点はグループ全体の強みと言える。
現在は主力であるサンマルクカフェと鎌倉パスタに加えて、倉式珈琲店の成長を加速させる動きが見られ、将来の柱を複数確保しながら安定した経営を目指している。かつて旧サンマルクとして始まり、インテリア会社から外食企業へと転じ、さらに複数の業態を抱えるコングロマリットへと変貌してきた歴史は長く、今後もブランド拡張やM&Aを含めた戦略的な動きが継続すると見られている。
サンマルクホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 57,831 | 239 | 1,596 | 416 | 20.2 | 44 |
| 連24.3 | 64,556 | 2,620 | 2,753 | 969 | 47.5 | 50 |
| 連25.3 | 70,895 | 3,644 | 3,839 | 2,540 | 123.6 | 52 |
| 連26.3予 | 81,400 | 4,800 | 4,700 | 2,200 | 102.7 | 52〜54 |
| 連27.3予 | 83,800 | 5,100 | 5,000 | 2,300 | 107.3 | 52〜56 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 3,513 | -2,151 | -1,268 |
| 連24.3 | 5,073 | -2,801 | -1,342 |
| 連25.3 | 5,751 | -22,748 | 14,581 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 0.4% | 1.3% | 0.8% | – | – |
| 2024 | 4.0% | 3.2% | 1.9% | – | – |
| 2025 | 5.1% | 8.2% | 3.5% | 高値平均54.1倍 / 安値平均41.3倍 | 1.89倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
サンマルクホールディングスの直近数年の数字を見ると、低迷期を抜けて業績回復の軌跡を描き始めた企業であることが分かる。2023年時点の営業利益率はわずか0.4%しかなく、実質ほぼ利益の出ない体質で推移していたが、翌2024年には4.0%まで持ち直し、2025年には5.1%に達した。ROEも同様に2023年1.3%から2024年3.2%、2025年には8.2%へと大きく伸びている。ROAも0.8%から1.9%、3.5%と改善が続いており、資本と資産の効率が年々高まりつつあり、ようやく企業としてお金を循環させ利益を残せる体制が形になってきた段階といえる。売上も2024年645億円から2025年708億円、2026年予想では814億円と拡大を続けており、成長のエンジンが明確に回転し始めたことが数字から読み取れる。
利益成長の幅に注目すると、2024年の純利益約9億から2025年には25億へと飛躍し、約3倍近い伸びになっている。利益率改善と売上拡大が同時に作用しており、店舗運営の効率化や不採算領域の整理が進んだことが裏側にあると推測できる。ただ2026年予想では純利益は約22億とやや後退の見込みで、営業利益・経常利益は問題なく伸びているが、増益の角度、特に最終利益の部分は2025年がピークに近く、それ以降は一度ブレーキがかかる可能性も示唆している。この“勢いの持続性”が投資における最初の注目点になる。
株価指標に目を移すと、PERは2025年の実績値で高値平均が54.1倍、安値平均ですら41.3倍と水準は明確に割高である。つまり市場は既に強い成長を織り込んでいる状態で、期待を裏切れば下に振れる余地は十分にある。この倍数は成熟企業のそれではなく、今後数年に渡り利益が伸び続けることを前提にした評価であり、PBRも1.89倍と資産価値の約2倍近い値付けがなされている。ここには「低迷から脱した企業が再成長する」という物語に市場がベットしている空気が透けて見えるが、それが数年かけて確実に実現できるかどうかはまだ保証されていない。
もし投資する側の視点で考えるなら、この銘柄は「既に期待が乗っている成長株」であり、早期に大きく収益を狙うというよりは、成長継続を確認しながら押し目で拾うようなスタンスが理にかなっている。利益率とROEが右肩上がりで10%超の圏内に乗るようなら評価余地はさらに広がる。営業利益率5%台という水準が定着し、7%・8%と伸びていくのであれば、今のバリュエーションでも正当化される未来がある。一方で競争が激しい飲食市場の中で利益率が停滞した場合や、成長が鈍化すればPERの調整が起きる可能性は高く、リスクと期待が表裏一体で存在している。
つまり現状は、数字が回復し企業の力が戻ってきた確信は持てるが、株価はすでに楽観を含んで先を走っている。強気派なら成長維持を前提にホールド、慎重派なら値幅調整のタイミングや、さらなる利益率向上を確認してからでも遅くない。データからだけ判断するなら「復活の途中にある企業であり、今後の伸び方次第で投資妙味が変わる中間段階の銘柄」というのがもっとも妥当な評価だと思われる。
配当目的とかどうなの?
サンマルクホールディングスを配当目的で考える場合、予想利回りが26.3期・27.3期ともに1.94%前後という水準を見ると、現状では高配当銘柄とは言い難く、インカム狙い専用で買うには物足りない印象になる。2%を割らない程度に保たれていること自体は悪くないが、日本市場には3~5%、時にはそれ以上の利回りを出す銘柄も存在するため、「配当だけを求めて買う銘柄か?」と問われると答えは弱くなる。特に生活インフラやディフェンシブ業種のような安定配当タイプではなく、業績変動が大きくなり得る外食産業で利回りが2%に届かないレベルなら、配当で利益を積み上げるより成長期待と値上がりによるキャピタルゲインを軸に考える方が合理的に見える。
ただ注意すべきは、低利回り=投資妙味がないという単純な図式ではない点で、むしろ最近数年の流れを見ると、業績が回復軌道に乗り始め、ROEも改善し、利益率も戻りつつあるという企業の成長フェーズの途中にある。それならば今後の利益増加次第で配当余力は高まり、利回りもじわじわ引き上げられる余地がある。現時点ではインカムよりグロース寄りだが、未来の増配、つまり「今後の配当成長ストーリー」を見に行く銘柄と捉えると意味が変わる。今は配当で儲ける段階ではなく、成長と収益性改善の先に配当がついてくるフェーズに入る可能性がある、という位置付けになる。
とはいえ現実的に、今買った時点で得られる利回りは約2%しかなく、高配当株のように配当収入で資産を増やしたい人には魅力が薄い。毎年安定したインカム収入を取りたい、将来的に生活資金化したいというタイプの投資家には向きづらい。一方で、企業再成長・利益拡大・ROE上昇を見込みつつ、長期で持って増配や株価上昇の両取りを狙う人には選択肢に入る余地がある。配当狙いの銘柄というより、「今後の配当余力が増えるかもしれない回復過程の企業」と見た方が現実に近い。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価2,675円のサンマルクホールディングスが5年後にどうなっているかを考えると、まず企業としての利益体質がどこまで強まっているのかが未来の姿を左右する中心軸になってくる。今は営業利益率が改善し始めた転換期にあり、複数ブランドを横に並べて成長させていくフェーズへ移行しつつある。
その流れがこの先も途切れず、サンマルクカフェだけでなく鎌倉パスタや倉式珈琲、ドリアや牛カツといった別業態がそれぞれ独立して利益を生む段階に育っていれば、5年後のサンマルクホールディングスは単一ブランドに依存しない、より立体的な企業として確かな存在感を持っている可能性が高い。今後5年間の良い場合、中間、悪い場合の株価予想を書いて行きます。
まず一番良いケースでは、店舗運営の効率化や不採算店整理が功を奏し、利益率の改善が今後も継続する形になる。営業利益率は現在の5%前後から7〜8%台に乗り、ROEも10%を超えて企業価値を押し上げる力を持ち始める。ブランドポートフォリオの複数軸が成長し、カフェだけでなくパスタ・ドリア・牛カツまで複線で売上を伸ばす状態になれば、市場は同社を“復活から持続成長へ移った企業”として見始め、PERは高めの35〜45倍を維持する可能性がある。この水準が保たれると現在のEPS成長と掛け合わせ、株価は5年間で3,900〜5,200円程度、場合によってはさらに評価が上振れして5,500円に迫る展開も全く非現実ではない。配当は現状まだ低利回りだが、利益余力が増せば年間配当の増額も期待でき、株価上昇と配当成長の両方で長期的な旨みが出てくる。成長認識が市場に浸透すれば、資金が継続的に流入する強気の未来が描ける。
次にもっとも現実味のある中間シナリオでは、利益率の伸びは継続しつつも勢いはやや落ち着き、営業利益率は5〜6%台、ROEは8〜10%のレンジで安定推移する。事業拡大は続くものの、劇的な伸びではなく一歩ずつ積み上げるような成長ペースとなる世界だ。市場もこれを織り込み、PERは過熱感が薄まり28〜35倍付近で定着する可能性が高い。銘柄自体の評価は残り続けるが、過去のような急騰ではなくじっくりと株価が育つ感覚で、5年スパンなら3,200〜3,900円あたりを目指す穏やかな右肩上がりのチャートになりやすい。配当は維持または少しずつ引き上げられる程度で、利回り狙いというよりは堅実な成長を見守る保有姿勢が向いている。買ってすぐ儲かる銘柄ではないが、長く付き合えば資産として育つ。いわば安定的な中間の現実路線で、投資家はそれなりに満足できる未来である。
そして悪いケースでは、利益率改善が一時の反発で止まり、営業利益率が5%前後で頭打ち、ROEも8%→6%→5%と下方向へじわじわ押し戻されるような展開が考えられる。飲食市場での競争がさらに激化し、原材料高や人件費増で利益率が削られ、出店ペースが維持できなければ市場は再評価を下方修正し始める。PERは期待剥落により18〜25倍あたりまで落ち着き、株価は現在の2,675円から2,000円台前半へ、最悪なら1,700円台まで沈む可能性すら否定できない。配当利回りは数字上多少上がる形になるが、それは株価が下落して算出上利回りが高まるだけであって、実質的には保有損が広がる展開になる。株価が期待先行で買われた分の反動が出る形で、企業の再成長ストーリーが崩れた瞬間に水準訂正が一気に起きるリスクをはらんでいる。
まとめると、良い未来では株価は大きく伸びて4,000〜5,000円台が見える一方、中間の現実路線では緩やかに3,200〜3,900円へ、悪いケースでは2,000円前後まで下落余地がある。つまり今のサンマルクは「成長が本物なら報われるが、期待倒れなら割高修正が来る」位置にいる。投資家が見るべきは利益率の推移とROEの持続性、そしてPERがどこで均衡点に落ち着くのかという市場心理であり、それが未来の株価を決める軸になる。
この記事の最終更新日:2025年12月10日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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