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宮地エンジニアリンググループとは

宮地エンジニアリンググループ株式会社は、1908年に宮地鐵工所として誕生し、100年以上にわたり日本の橋梁・鉄塔・大型鋼構造物の建設に関わってきた企業である。東京タワーや関門橋をはじめとした国家的プロジェクトにも参加し、高層建築・長大橋梁・海上構造物など、重量鉄骨を扱う分野で確かな施工実績を積み上げてきた。「つくる」「架ける」「守る」を一貫して担える点が特徴で、設計・製作・施工・補修・維持管理まで一社で完結させられる総合力を持つ。
その歩みの中では、高度成長期のインフラ整備、1980年代の株式買占め問題、六郷大橋事故といった大きな波も経験したが、再編と統合を重ねてグループの体制を強化してきた。2003年には持株会社として宮地エンジニアリンググループを設立し、宮地鐵工所と宮地建設工業を統括。2011年には両社を合併し一体となることで生産・施工ラインを効率化し、技術基盤をさらに強固なものにした。2015年には三菱重工鉄構エンジニアリングを買収、社名を「エム・エムブリッジ」へ変更し、旧三菱重工系の技術・設備・人材を取り込んだことで橋梁分野における総合力はより厚みを持つことになった。
現在は橋梁・鉄塔・建築鉄骨・港湾構造物など社会インフラの幅広い領域に携わり、老朽化した橋の補修・耐震補強・更新工事など、今後数十年需要が続くであろうメンテナンス市場でも存在感を発揮している。日本では高度経済成長期に整備された橋梁や構造物の更新期が本格化しており、新設だけでなく「直す・延命する」施工の需要も増していく中で、同社が持つ長年の施工技術と全国的な案件実績は競争上の優位性となる。
加えて、インフラ建設は景気に左右されながらも公共投資が支えるため、売上が急激に振れるというよりは長期的に底堅い需要が続く分野である。施工・補修・点検まで自社で担える体制は受注の継続性につながり、大型プロジェクトや長期案件の獲得にも強みを発揮しやすい。東証プライム市場に所属している点からも、一定の規模と信頼性が評価されていることが分かる。
宮地エンジニアリンググループは、橋を架ける企業であると同時に、国家インフラの寿命を延ばし社会の基盤を維持する企業でもあり、「過去に造ったものを未来へ繋ぐ」という役割を担う存在でもある。100年超の歴史から得られた経験と技術は今後も活き続け、老朽化した社会インフラの更新周期に向けて、需要は長期にわたり続いていく可能性が高いと考えられる。
宮地エンジニアリンググループ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株当り配当 |
| 連23.3* | 60,279 | 5,127 | 5,373 | 3,077 | 113.1 | 35 |
| 連24.3* | 69,365 | 7,904 | 7,908 | 4,354 | 160.0 | 96記 |
| 連25.3* | 74,725 | 9,168 | 9,496 | 4,863 | 181.8 | 97.5 |
| 連26.3予 | 58,000 | 4,000 | 4,100 | 2,500 | 94.3 | 97.5 |
| 連27.3予 | 68,000 | 6,000 | 6,100 | 4,000 | 150.8 | 97.5 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
| 2023 | 495 | -711 | -2,147 |
| 2024 | 8,841 | -1,539 | -1,802 |
| 2025 | -2,652 | -2,458 | 2,498 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値-安値平均) | PBR |
| 2023 | 8.5% | 8.6% | 4.8% | – | – |
| 2024 | 11.3% | 10.9% | 5.8% | – | – |
| 2025 | 12.2% | 12.0% | 5.3% | 12.2倍 – 7.4倍 | 1.13倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益面を見ると、連24.3で売上693億、営業利益79億、純利益43億、連25.3では売上747億、営業利益91億、純利益48億と増収増益が綺麗に続いており、利益成長が数字に表れている。さらに営業利益率も23年8.5%→24年11.3%→25年12.2%と年々改善しており、収益性が向上している点は高評価できる。ROEは23年8.6%→24年10.9%→25年12.0%、ROAは4.8%→5.8%→5.3%とこちらも総じて改善していて、企業としての資本効率は年々強まっていると判断できる。
一方で連26.3予では売上580億、営業利益40億、純利益25億と前期比で大きく減益予想になっており、2024→2025の成長トレンドからいったん逆方向に戻る形になる。ここは評価が分かれるポイントで、強い改善トレンドからの鈍化が一過性なのか、構造的な調整かで今後の見方が変わる余地がある。EPSは連24.3で160円→連25.3で181円と増加したが、連26.3予では94円と半減する見通しであり、利益成長が綺麗に続く想定ではない点がリスクとして残る。
指標面を見るとPERは直近レンジで7.4〜12.2倍と割高感はなく、PBR1.13倍なら資産価値と比較しても過熱はしていない。利益率が右肩の改善傾向で推移するなら評価余地はあるが、26期での減益着地が現実化すると、市場が成長鈍化を意識しやすい状態でもある。つまり現状は割安〜適正の評価帯で、利益成長が続けば見直される余地はあるが、減益で止まれば評価が伸びにくいバランス型の位置づけと判断できる。
総括すると、過去数年の利益と効率改善は強みであり投資魅力はあるが、直近予想の減速が不安材料となる。利益成長が再び軌道に戻るかどうかが最重要の判断軸で、伸びるなら上方に見直される可能性、止まるなら横ばい〜慎重評価に寄る銘柄といえる。
配当目的とかどうなの?
宮地エンジニアリンググループの配当目的で考えると、予想配当利回りは連26.3・連27.3のどちらも約5.4%とされており、市場平均である2%前後を大きく上回る高水準になる。5%台という利回りは配当株として十分に魅力的で、インカム獲得を軸とした投資先として検討する価値は高く、2年続けて同じ水準が続く前提なら長期保有で配当を積み上げていく戦略とも相性が良い。
ただし、高配当を維持するためには利益が一定以上確保されている必要がある。現状の数値では減益予想が示されているため、利益が追いつかない場合には増配余地が限定される可能性もある。利益が落ち込んでも配当を維持するなら株主還元は強い姿勢と評価できるが、利益が伸びなければ将来的な配当の伸びは鈍化しやすい。配当利回りだけを理由に判断するのではなく、その裏付けとなる利益が安定して継続するかを見極める必要がある。
総合的に見ると、宮地エンジニアリンググループは現時点では配当利回りが非常に高く、インカム重視のポートフォリオには明確な魅力を持つ銘柄といえる。ただし、配当の持続性は利益水準に依存するため、今後の業績が安定して推移するかどうかが大きな鍵となり、高配当の恩恵を享受するためには企業の収益推移を継続して確認する姿勢が望ましい。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価1,788円の宮地エンジニアリンググループが今後5年でどう動くかを想像すると、まず同社は橋梁や鉄骨構造物に強みを持ち、インフラの新設だけでなく補修・更新まで担える技術を持つ企業である。国内では橋の老朽化や更新需要が長期的に続くと見られており、受注が安定する土台が既にあるという点が特徴になる。公共色の強い事業であるため急成長よりは継続性が重視されやすく、利益が着実に積み上がるかどうかが今後の方向性を決めていく軸になる。
良い場合を想像すると、橋梁更新・補修需要が国レベルで長期化し、民間建築鉄骨案件と合わせて安定した受注が続く。過去に積み上げてきた技術力と施工実績により大型案件の獲得が継続し、利益率が維持またはさらに改善していけば、キャッシュフローも強く回る形となる。ROEと営業利益率が高い水準で安定すると市場の評価は引き上がり、配当の持続性+利益成長ストーリーが両立する。これが現実化すれば株価は再評価の波に乗って、5年後には2,700〜3,400円の領域まで視野に入る。配当と株価成長の両面を取れる展開で、成熟型のインフラ企業から「安定 × 成長」の二軸評価へ移行する未来像だ。
中間の場合は、受注と利益は大きく崩れないものの、成長も急ではなく、波を伴いながら緩やかに推移するイメージとなる。大型プロジェクトの獲得に強弱はあっても、土木・橋梁・補修工事の需要は底堅いため、業績は上下しつつも右肩方向にじわりと進む。配当利回りの高さが株価の下支えになり、投資家の保有継続意欲に繋がりやすい。劇的な上昇はないが、値動きは安定寄りで、5年後には1,900〜2,400円あたりのレンジに収まりやすい。派手さより安定感を求める投資家に向く動きで、ゆっくり積み上げるタイプの銘柄として機能する。
悪い場合は、工事採算の低下や受注のタイミングずれにより利益が伸び悩む展開。原材料費の高止まりや施工負担の増加で利益が削られ、営業利益率やROEが鈍り始めると市場の期待値が後退する。公共案件中心で事業構造が急には崩れにくい一方、利益成長が止まれば株価評価は横方向〜下方向に寄りやすい。大型案件の先送りや受注競争が強まると、株価は1,200〜1,500円程度までレンジを下げて推移し、配当の高さのみが評価軸になる可能性もある。インカムは期待できても、値上がりの面ではやや厳しい景色になる。
宮地エンジニアリンググループの将来は、インフラ更新需要を追い風に成長と配当の両立が進めば株価再評価の余地が大きく、逆に利益が伸び悩めば高配当だけが支えとなる安定型銘柄に留まる可能性がある。最も現実的なラインは緩やかな成長と安定推移の中間シナリオで、業績と受注が堅調なら時間の経過とともに株価水準が切り上がる未来も描きやすい。つまりこの銘柄は、利益が伸びれば株価評価も伸び、止まれば横ばい寄りになるという分岐がはっきりしており、今後の成長が継続できるかどうかが投資判断の核心になる。
この記事の最終更新日:2025年12月10日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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