株価
TOKYO BASEとは

株式会社TOKYO BASEは、2008年に設立されたアパレル小売企業で、日本のドメスティックブランドに特化したセレクト事業と、純国産SPAによる自社ブランド製造・販売を両軸で展開している。「FROM JAPAN TO THE WORLD 日本発を世界へ」を掲げ、日本のデザイナー・技術・生産背景を一体で発信することを事業の核としており、STUDIOUS・UNITED TOKYO・PUBLIC TOKYOを中心に国内外で店舗を拡大してきた。
STUDIOUSではセレクトアイテムと日本生産プロダクトのみを扱い、日本ブランドの登竜門・発信基地としての役割を持つ一方、UNITED TOKYOやPUBLIC TOKYOでは100%日本生産のオリジナルウェアにこだわり、モード性と日常性の中間に位置するTOKYOカルチャーを体現するブランドとして浸透している。こうしたセレクトとSPAを組み合わせた構造は、国内のファッションデザイナーの裾野を押し上げながら、自社商品の利益率向上にも繋がるモデルであり、販売と供給の両面で事業の厚みを形成する。
事業の出店は東京・大阪・福岡・名古屋など主要都市が中心で、購買層をファッション感度の高い都市ユーザーに絞ることでブランドイメージを高めながらファンの濃度を深める戦略をとる。さらに近年では視野を国内に留めず、香港や上海など中国沿海部にも展開し、日本ブランドの支持が強いアジア市場で市場拡大を狙っている。単に海外出店を行うのではなく、日本製の価値=高品質・繊細な仕立て・素材選択を全面に押し出すことで、欧米型のハイブランドとも、中国系の大量生産ブランドとも異なる「日本発の第三ポジション」を作り出そうとしている点が特徴的で、将来の海外売上が伸びるほどブランド輸出型の収益モデルが固まっていく可能性もある。
同社は2007年に谷正人氏が前職で立ち上げた業態が母体で、翌年に株式会社STUDIOUSとして法人設立、その後2015年にUNITED TOKYOを開始し、同年マザーズ最年少上場を果たすなど急速な成長を辿った。2016年に社名をTOKYO BASEへ変更し、2017年に東証一部へ市場変更するなど、短期間で規模と評価を同時に引き上げた稀有な存在でもある。急拡大を支えたのは「国内ブランドの価値に焦点を当て、海外へ輸出する」という明確なコンセプトと、セレクトとSPAをミックスしたバランス型事業であり、ただ小売を展開するのではなく、クリエーションとマーケットを結ぶ中継点として機能する点が強みになっている。
今後は海外展開の速度とオリジナル比率の拡大、国内ブランドとの連動力、SPAとしての供給体制が利益力に直結してくるフェーズであり、日本ブランドを選び、作り、売るという一気通貫のモデルがどこまでスケールするかが鍵になる。アパレル市場の変動や消費心理の影響を受けやすい業態でありつつも、国産縛り・ドメスティック特化・海外発信という明確な焦点を持つことで、他のファッション企業と異なる立ち位置にいると言える。
株式会社守谷商会 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期(単位百万) | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.1 | 19,181 | 215 | 265 | -539 | -11.8 | 2 |
| 連24.1 | 19,986 | 881 | 1,122 | 335 | 7.3 | 4 |
| 連25.1 | 20,207 | 1,472 | 1,475 | 776 | 17.9 | 5 |
| 連26.1予 | 23,500 | 1,900 | 1,780 | 1,000 | 23.0 | 6 |
| 連27.1予 | 25,000 | 2,000 | 1,950 | 1,140 | 26.2 | 6〜7 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 64 | -730 | -3 |
| 2024 | 828 | -115 | 934 |
| 2025 | 1,744 | -758 | -1,502 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.1% | -10.1% | -4.9% | ― | ― |
| 2024 | 4.4% | 6.0% | 2.8% | ― | ― |
| 2025 | 7.2% | 15.2% | 6.7% | 49.5倍 / 22.4倍 | 3.78倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
TOKYO BASEの業績を数字だけで眺めると、売上は約200億から250億規模へゆっくりと伸び、営業利益も8億台から20億規模にまで増加し、収益力は着実に立ち上がってきている。営業利益率は1.1%から4.4%、さらに7.2%へと改善し、ROEもマイナス10%から6%、2025時点では15%超まで回復していることを踏まえると、赤字から黒字転換し、その後も利益体質を強めている段階にいると言えそうだ。ROAが -4.9%から6.7%へ上がっている点も、資産効率が改善していることを示し、企業としての筋肉がつき始めている印象がある。
一方で、市場の評価水準を見ると、2025年のPERは高値で49.5倍、安値でも22.4倍と決して低くなく、PBRも3.8倍と資産価値に対して十分高い評価を与えられている。つまり、数字だけを見る限り、すでに市場は一定の成長期待を織り込んだ価格帯にあり、これからの利益成長が続くことを前提としたバリュエーションになっているように読める。今後の業績が期待通り伸びれば良いが、もし勢いが緩む・利益率が頭打ちになるなどの変化があれば、その評価が縮む余地もある。
まとめると、業績と指標の動きだけで判断するなら、企業は改善途上にあり成長が続けば評価が伸びる余地を持つ一方、すでに期待を含んだ水準で買われているため、成長が鈍化すると重くも見えやすい位置にある。今後は利益率とROEをどこまで高く維持できるか、その一点が投資判断の分岐となる。
配当目的とかどうなの?
TOKYO BASEを配当目的で考えると、利回り1.2〜1.4%台という現状では、インカム収益を柱にする投資としてはやはり物足りず、配当で資金を増やしていく運用方針とは相性が強くない。平均利回り2%前後が一つの基準とされる国内市場の中で見ると、あえてこの銘柄を配当で選ぶ理由は明確ではなく、より高配当の銘柄と比較すると優先順位は自然と後ろになる。現状の数字だけを見る限り、「配当で育てる銘柄」ではなく「成長が出れば結果的に配当もついてくる銘柄」に近い。
ただ、この利回りの低さは裏を返せば、企業がまだ利益を外部に流す段階ではなく、ブランド拡大・出店・商品企画などへの再投資を優先しているとも読める。若い企業に多いパターンで、配当は低くても伸びしろで株主価値を還元していく成長企業タイプと考えると腑に落ちる。特にROEが改善し利益率が上向いている現状を踏まえると、今は利益種を撒くフェーズで、回収(=増配)が本格化するのはもう少し先の工程に感じられる。
もしこの銘柄を持つ理由があるとすれば、配当ではなく「事業の育ち方」「ブランドの世界展開」「EPSの積み上がり」といった未来への期待であり、配当はその結果として後からついてくる報酬、という位置付けで見る方がしっくりくる。投資家としては、今の利回りで満足を求めるのではなく、企業がどこまで拡張できるかを長い目で追うスタンスのほうが納得感を持てるだろう。配当目当てなら弱い、しかし成長を前提とした投資であれば評価余地は残る、そんな距離感の銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価477円のTOKYO BASEが今後5年でどう動くかを想像すると、まず前提として同社は「日本ブランドを国内から世界へ」という明確な軸を持ち、STUDIOUS・UNITED TOKYO・PUBLIC TOKYOといった国産SPAを主力に成長してきた企業である。利益率はまだ伸びしろが残されているが、近年は黒字定着とROE改善が進み、収益構造が整ってきている段階にある。国内アパレル市場は成熟しているものの、海外展開とブランド価値の浸透が成功すれば、企業としての評価が変わるフェーズに入る可能性も見える。
良い場合を想像すると、利益率とROEの改善が継続し、海外と国内ブランドの両輪が利益として実を結ぶ形となる。日本製にこだわるSPAモデルが差別化要因として強まり、EPSが積み上がれば、株価は成長企業として再評価される可能性が高い。その場合、5年後には株価が約800〜1,200円前後まで見直されるシナリオもあり、ブランドの厚みがそのまま企業価値に転化する未来が描ける。
中間の場合は、売上は伸びて利益も増えるがスピードはなだらかで、成長と停滞を繰り返しながら少しずつ企業体力が増していく形となる。期待は過熱せず落胆もなく、市場はニュートラルに評価を続ける。5年で大幅な変化は起こらないが、株価は550〜750円程度の範囲で上下を繰り返しながら緩やかに前進するイメージで、時間をかけて育てる銘柄としての姿が近い。
悪い場合は、売上は伸びても利益が追いつかず、ROEや利益率の改善が止まるケースだ。市場が成長前提の評価から現実評価に切り替わると、PERの高さが重荷となり、過去の期待分が剥がれやすい。投資や出店負担が利益を食い、EPSの進展が鈍れば株価は350〜480円の範囲で重い推移となる可能性があり、横ばいから下方向に触れやすくなる。
企業としては営業利益・ROEの回復が進み、収益基盤が整いつつある点から見ても改善の軌道に乗っていると言える。しかし同時に市場からの評価はすでに成長を織り込んだ水準にあり、今後も利益が積み上がることを前提とした株価が付けられているように見える。つまりこの銘柄は、成長が継続すれば株価がもう一段評価される余地を持つ一方で、伸びが止まった瞬間にはその期待が重しとなり下振れ圧力として現れやすい。良い方向に進めば跳ねる余地があり、足踏みすれば評価が冷静なレベルへ収縮する可能性も含んだ、両方の顔を持つ銘柄だと言える。
この記事の最終更新日:2025年12月10日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す