株価
霞ヶ関キャピタルとは

霞ヶ関キャピタル株式会社は、東京都千代田区霞が関に本社を構える不動産会社で、物流施設やホテル、高齢者向け施設といった社会インフラに近い不動産の開発を全国規模で手がけている。単なる不動産デベロッパーというより、開発からファンド組成、運用、出口戦略までを一貫して行うアセットマネジメント会社としての性格が強く、投資家向けの不動産運用ビジネスにも力を入れている点が大きな特徴になっている。
物流施設では冷凍・冷蔵倉庫、オートメーション倉庫、ドライ倉庫など多様なニーズに対応した物件を開発し、人口・消費の変化に対応する形で安定した需要を取り込んでいる。ホテル事業では、自社グループの fav hospitality group が「FAV」「FAV LUX」「seven x seven」などのブランドを展開し、観光客や中長期滞在者向けの運営を進めている。また、高齢化社会を背景にした高齢者向け施設の開発にも積極的で、医療・介護分野との連携が視野に入る不動産領域にも注力している。
同社の歴史は意外と新しく、2011年に宮城県で「合同会社フォルテ」として設立されたところから始まる。最初は宮城県柴田郡大河原町にあるショッピングセンター「フォルテ」を取得し、商業施設の運営から事業をスタートした。その後、2015年に株式会社へと改組され、同じ年に社名を現在の霞ヶ関キャピタルに変更し、本社を東京都霞が関へ移して大きく舵を切った。それを機に不動産開発や資産運用といった事業に広く参入し、短期間で全国規模の不動産会社へ成長していった。2018年には東証マザーズに上場し、資金調達力と知名度を高めたうえで、2023年には東証プライム市場へ市場変更を果たしている。
さらに2023年には、プロバスケットボールチーム「仙台89ERS」の株式を約83.5%取得し連結子会社化するなど、地域スポーツへの関わりやブランド発信にも取り組んでいる。この動きは、事業の多角化や地域との接点づくりの一環と見られ、従来の不動産開発会社という枠を超えた企業活動も徐々に広げている印象がある。
不動産ファンドの運用体制としては、霞ヶ関リートアドバイザーズ株式会社がグループに存在し、ホテルを中心としたアセット運用を行う仕組みが整っている。2025年には「霞ヶ関ホテルリート投資法人」が東京証券取引所に上場する予定で、同社が開発したホテル資産をリートへ売却し、運用益を生むという循環型モデルがより強固になるとみられる。デベロッパーとして開発し、グループのリートに組み入れ、運用報酬を得るという流れは、安定した利益構造につながりやすい。
全体として霞ヶ関キャピタルは、物流・ホテル・ヘルスケアといった社会需要の高い領域に集中し、開発から運用までをワンストップで行うことで、収益基盤を強く固めている企業と言える。上場後の成長スピードも速く、事業の枠を広げながらグループ企業との連携で総合不動産投資グループの形を整えている段階にある。今後のリート事業の成長やホテル需要の回復など、複数の追い風が事業拡大に影響する可能性がある。
霞ヶ関キャピタル 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.8* | 20,780 | 2,141 | 1,732 | 1,018 | 66.4 | 15 |
| 連23.8* | 37,282 | 4,442 | 4,119 | 2,050 | 126.6 | 30 |
| 連24.8* | 65,685 | 8,537 | 7,860 | 5,020 | 270.8 | 85(記念) |
| 連25.8*予 | 95,000 | 16,700 | 15,200 | 10,000 | 506.6 | 120 |
| 連26.8予 | 135,000 | 24,000 | 22,500 | 15,000 | 759.8 | 150〜180 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | -7,928 | -1,153 | 9,505 |
| 2024 | -8,446 | -4,809 | 18,413 |
| 2025 | 6,893 | -18,557 | 24,698 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 11.9% | 18.5% | 4.6% | ― | ― |
| 2024 | 12.9% | 18.6% | 6.4% | ― | ― |
| 2025 | 19.6% | 28.3% | 8.4% | 35.8倍(高値平均) / 11.5倍(安値平均) | 4.28倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
霞ヶ関キャピタルの数字を見ると、まず売上と利益の伸び方がかなり強いことが分かる。売上は372億から1350億へと3年で約4倍になっており、営業利益も44億から240億へと5倍以上に増えている。この成長スピードは不動産デベロッパーとしては異例で、扱っている案件の規模や収益性が急速に拡大していることが考えられる。営業利益率の推移を見ると、11.9%から19.6%へと改善しており、利益率がしっかり伸びている。不動産業は利益率が低くなりがちな業種だが、この企業は明らかに採算の良いプロジェクトを増やしており、事業構造そのものが強化されている印象がある。
ROEも18%台から28.3%へ上がっており、株主資本を非常に効率よく回している状態が続いている。ROAも年々上昇しており、企業全体の稼ぐ力が強まっている。こうした数字の組み合わせを見ると、成長企業としての質が高いことが読み取れる。一方で、株価の評価に関係するPERを見てみると、高値時の35.8倍から安値時の11.5倍まで大きな振れ幅がある。投資家がこの企業を高成長株として見る時には高い評価を与え、逆にリスクを意識する時には一気に下がるという特徴がある。PBR4.28倍は不動産会社としては高く、期待が剥げた場合の調整リスクも無視できない。
ただし、EPSが126円から759円まで増えている点を見ると、利益の積み上がりが株価を引き上げる力は十分にある。高評価を受けてもおかしくない業績の伸びであり、成長が続く限りは株価にも上方向の余地がある。ただし、PERが30倍を超える場面は割高感が出やすく、買いのタイミングとしては注意が必要になる。
総合すると、霞ヶ関キャピタルは強い成長株であり、数字だけを見ると魅力が大きい企業だと言える。利益率の改善、ROEの上昇、売上の急拡大はどれも企業としての力強さを示している。一方で、評価が高まった時のバリュエーションが高く、株価の上下が大きくなりやすい特徴もある。したがって、長期で見るなら十分に有望だが、購入タイミングは慎重に選び、できればPERが15倍から20倍程度の落ち着いた水準の時を狙う方がリスクは低い。短期で急騰を狙う銘柄ではなく、成長が続く前提で中長期で持つことでリターンが期待しやすいタイプだと判断できる。
配当目的とかどうなの?
霞ヶ関キャピタルを配当目的で考える場合、まず押さえておきたいのは予想配当利回りが連26.8で2.10%、連27.8でも2.10%と、ほぼ同じ水準で続くという点だ。日本株全体で見ると2%前後というのは決して低すぎる数字ではないが、配当を主目的にする投資家がよく狙う3〜4%台の銘柄と比較すると、配当の魅力が特別高いわけではない。したがって、「毎年しっかり配当をもらうことだけが目的」という投資スタイルにはあまり向いていない。
ただし霞ヶ関キャピタルは、成長企業としての側面が非常に強く、利益の伸び方も売上の伸び方も大きい。そのため、本来なら成長投資を優先して配当をあまり出さないタイプの企業であるにもかかわらず、2%台の利回りを維持しているのはむしろ悪くない数字とも言える。利益が伸び続けている企業で利回りが一定以上確保されている場合、将来的には増配が続き、長期保有者の実質利回り(YOC)が上がっていく可能性がある。
一方で、直近の配当には記念配当が含まれていた時期もあり、毎年一定の配当を保証するタイプの企業とも言い難い。配当政策が安定型なのか、利益連動型なのか、あるいは今後変化していくのかは、現時点の数字だけでは判断が難しい。強い利益成長によって配当余力は増えているため、今後の増配は十分あり得るが、安定配当銘柄のように「毎年少しずつ確実に増える」とまでは言えない。
総合的に見ると、霞ヶ関キャピタルは配当目的だけで買う銘柄ではないが、成長株として投資しながら副次的に配当も受け取れるという意味では悪くない選択肢だと言える。成長力を評価しつつ、ついでに2%前後の利回りが付いてくる、という感覚で保有するのが適した銘柄であり、純粋に配当利回りだけで投資判断をする場合にはもっと向いている銘柄が他にある。成長が続く前提なら、中長期で持つことで配当も自然に増えていく可能性が高く、配当と成長を両立させたい投資家には相性が良いタイプだと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
企業の現在株価7,840円から今後5年間を見据えると、売上や利益の積み上がり、営業利益率の改善、そしてROEの上昇が継続していくかどうかが、市場評価を分ける軸になる。霞ヶ関キャピタルはここ数年で急成長を遂げており、開発案件の大型化、ホテルリートの上場準備、物流・高齢者施設分野の拡大など、事業領域が広く成長余地も大きい。こうした状況が続くなら市場は同社を「高収益不動産企業」として再評価しやすく、現状のバリュエーションも見直し材料になり得る。結局のところ、利益が綺麗に積み上がり続けるかどうかが、この5年間の株価評価の最大の決定因子となる。
良いシナリオでは、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設といった複数事業が安定的に拡大し、営業利益率が高水準のまま維持される状況を想定する。ROEが20%後半で安定し続ければ市場は収益の再現性を高く評価し、PERは20〜25倍の水準まで切り上がる可能性がある。EPS成長とバリュエーション改善が同時に進む場合、株価は1万円台に乗せ、1万2000〜1万5000円に到達する場面も十分にあり得る。特にホテルリート上場後に資産循環型ビジネスが加速すると、業績拡大と市場評価の両立で株価が階段状に伸びていく展開が期待できる。
中間シナリオでは、利益は伸び続けるものの成長ペースは緩やかになり、市場評価も強気でも弱気でもない落ち着いた状態で推移する。PERは13〜18倍程度で横ばいとなり、株価は現在の7,840円から9,000〜11,000円方向へじわじわと上向く。急騰しなくても、開発案件の積み上がりや不動産ファンド事業の安定収益が下支えとなり、配当を受け取りながら含み益を育てるような形になりやすい。大きな夢は見ないが、長期保有すれば堅実に資産が増えていくタイプの動きになる。
悪いシナリオでは、開発案件の遅延、資材コストの上昇、不動産市況の冷え込みなどが重なって利益成長が鈍化する状況を想定する。営業利益率が低下し、ROEも伸び悩むと市場の信頼が後退し、PERは8〜10倍の低評価に沈む可能性がある。その場合、株価は6,000円台に押し戻され、業績が一段と落ち込む局面では5,000円割れもあり得る。さらに、市況悪化が続けば4,500円〜4,000円台の水準まで下げることも視野に入る。ただし、事業基盤がしっかりしている会社は、悲観がピークを迎えた時こそ割安感と配当利回りが投資資金の流入を促すため、その局面はむしろ中長期の買い場になるケースが多い。
最終的には、業績が順調なら株価は当然評価され、成長が鈍れば株価も停滞し、業績が崩れれば株価は素直に下落するという明確な分岐に沿って動く。現在の7,840円という株価は、この三つの方向いずれにも動ける「中立地点」に位置しており、強気にも弱気にも判断が偏りすぎていない。したがって、一気に大きく投資するよりも、数回に分けて買い増ししながら決算ごとの成長トレンドを確認し、営業利益率とROEの推移を見ながらポジションを調整するのが現実的でリスクも抑えやすい。数字の積み上がりが続くなら自然と上を向き、逆に成長鈍化の兆しが見えれば早めに身を引ける。最終的に答えを出すのは企業の成長そのものなので、焦らず長期で向き合う投資が最も合理的と言える。
この記事の最終更新日:2025年12月11日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す