株価
SUMINOEとは

住江織物は、大阪市中央区に本社を置く老舗の内装材メーカーで、国会議事堂の赤じゅうたんを納入する企業として特に有名である。創業前の1891年に帝国議事堂へ絨毯を納めた実績を持つほど歴史が長く、インテリア業界では名門企業として扱われている。カーペット分野では国内トップシェアを長年維持しており、カーペット、タイルカーペット、カーテン、壁装材、人工芝、美術工芸品など多様な製品を扱う。
同社のもう一つの大きな柱は自動車・輸送機器向けの内装材で、自動車用のシート地、天井材、カーペット、マットなど幅広く供給している。1896年には日本で初めて手織りのシートモケット製造に成功し、1899年に国鉄へ採用されたことを皮切りに、JR、私鉄、地下鉄、バス、航空機、船舶など公共交通機関のシート表皮材で圧倒的なシェアを築いている。鉄道向けの内装材では現在でも国内首位であり、ほぼすべての日系自動車メーカーにも部材供給を行うなど、輸送業界との結びつきが非常に強い。
インテリア分野では一般住宅向け製品に加え、ホテル・劇場・公共施設など大規模空間向けの特注カーペットの導入実績も多く、デザイン性と品質の高さが評価されている。美術工芸品として袱紗や風呂敷も扱うなど、伝統と工芸性を活かした製品群を持つ点も特徴である。
企業グループとしては国内外に多数の関連会社を持ち、中国(広州・蘇州など)を中心に海外拠点も展開し、自動車用内装材や織物製品の製造をグローバルに行っている。国内ではスミノエ インテリア プロダクツ、ルノン株式会社、住江物流などがグループに属し、製造・販売・物流など一体化した事業体制を構築している。かつては住江木工(現住江工業)の親会社であり、百貨店の髙島屋とも資本・業務で長い提携関係を持つなど、企業規模・歴史ともに業界でも強い存在感を持っている。総じて住江織物は、インテリアと輸送機器向け内装材の両分野で国内屈指の技術力とシェアを持ち、伝統と産業素材の双方を強みとした老舗メーカーである。
SUMINOE 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.5* | 79,702 | 1,049 | 1,211 | 409 | 32.4 | 17.5 |
| 連22.5* | 81,713 | 110 | 950 | 281 | 22.2 | 35 |
| 連23.5* | 94,828 | 1,294 | 1,575 | 320 | 25.3 | 27.5 |
| 連24.5* | 103,478 | 3,300 | 3,668 | 874 | 66.1 | 35 |
| 連25.5* | 104,791 | 3,001 | 2,514 | 669 | 50.2 | 40 |
| 連26.5予 | 105,000 | 3,100 | 3,350 | 1,500 | 113.1 | 43 |
| 連27.5予 | 109,000 | 4,000 | 4,000 | 2,000 | 150.8 | 57 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 1,803 | -2,834 | -52 |
| 2024 | 7,450 | -2,323 | -4,204 |
| 2025 | 2,283 | -2,254 | 773 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.3% | 1.1% | 0.3% | ― | ― |
| 2024 | 3.1% | 2.7% | 0.9% | ― | ― |
| 2025 | 2.8% | 2.1% | 0.7% | 31.6倍(高値平均) / 21.9倍(安値平均) | 0.51倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、売上は横ばいのまま大きく動いておらず、営業利益も33億から30億、そして予想31億と大きな改善は見られない。利益が微減から横ばいの範囲に収まっているため、事業全体に大きな成長ドライバーがあるようには読み取りにくい。純利益も8億から6億と減少しているが、予想では15億と改善している。ただし利益のブレが大きいため、毎年安定して稼げるビジネスモデルというよりは、特定事業の採算の変動に左右されやすい体質が見える。
営業利益率も3%前後で推移しており、高付加価値企業というよりは、典型的な製造系の薄利な構造がそのまま数字に表れている。2〜3%の利益率では、市場から高い評価を受けるのは難しい。
ROEとROAを見るともっとはっきりしており、ROEは1〜2%台、ROAも1%に届かない水準が続いている。これは資本や資産を使って効率よく利益を出す力が弱い企業を意味し、数値だけを見た場合、成長株評価とはほど遠い。ROEが10%を目安とされる中、2%前後では株主価値創造も小さく、長期で見ても投資妙味は高くない。
次にバリュエーションを見ると、PERが高値で31倍、安値でも22倍と、業績の割にはかなり高く評価されていることが分かる。利益が横ばいの企業に対してPER30倍近い評価がつくのは、数字だけを見る限りやや過熱感がある。対照的にPBRは0.51倍と非常に低く、資産価値に対して株価は割安であることを示している。この組み合わせは、利益は小さいが資産はしっかりある老舗企業でよく見られる形で、株価が資産に支えられて下値は硬いが、成長期待で大きく買われるタイプではない。
総合すると、住江織物は売上・利益ともに大きな成長が見られず、収益率も低く、資本効率も高くないため、純粋な成長投資の対象としては魅力が小さい。一方でPBRが低いことで、極端に売り込まれにくい特徴を持つため、資産バリュー株としての側面は評価できる。予想純利益が跳ねている分、短期的な数字の改善に期待することはできるものの、継続的な成長が裏付けられていない以上、強気にはなりにくい。
結論として、数字だけで判断するなら住江織物は大きな成長を狙う銘柄ではなく、割安バリュー寄りの企業だが、資本効率が低いためバリュー株としてもやや弱い印象がある。買うなら大幅な下落局面やPBRが0.4倍台に沈むような割安場面が狙いであり、逆にPER30倍を許容して積極的に買いにいくタイプではない。堅実な事業基盤はあるため、長期でじっくり持つことは可能だが、大きなリターンを期待する銘柄ではないという判断になる。
配当目的とかどうなの?
住江織物を配当目的で考える場合、まず目に入るのは配当利回りの高さで、連26.5で3.53%、連27.5では4.69%と、かなり魅力的な水準になっている。日本株全体の平均利回りが2%前後であることを考えると、この数字は明らかに高配当の部類に入り、配当を目的とした投資家が注目しやすい水準にある。特に4%台後半の利回りは、成熟企業で安定配当を続ける銘柄に多く見られるタイプの数字で、配当によるリターンを狙う投資スタイルとは相性がよい。
ただし注意点として、住江織物の利益水準そのものは高いとは言えず、ROEやROAも低く、利益が安定的に積み上がっていくタイプではない。営業利益率も2〜3%と薄利で、市場全体の景気やコストの影響を受けやすい構造になっている。配当利回りが高い背景には、株価が資産価値に比べて割安に放置されていることも影響しており、PBRが0.5倍前後と低いまま推移している点がそれを裏付けている。つまり、配当利回りは高いが、企業の成長性が高いからではなく、株価が上がりにくい構造の企業だから利回りが相対的に高く見えているという側面もある。
とはいえ、老舗メーカーで事業基盤は堅く、急激に業績が悪化するタイプの企業でもないため、配当が突然途切れるリスクは極端に高いわけではない。むしろ安定事業が中心で、売上もゆっくり横ばい傾向にあるため、決して華やかな成長企業ではないが、大崩れもしにくい特徴を持つ。こうした性質は、高配当を狙う投資家にとってはプラスに働く。
総合すると、住江織物は利益成長を狙う銘柄ではなく、株価の大幅上昇を期待するタイプでもないが、配当を目的とした投資なら十分検討できる水準になっていると言える。利回りが3.5〜4.7%に達する企業は、長期保有しながら毎年の受取配当でリターンを積み上げる形が向いている。成長株ではない分、配当でリターンを得るという割り切ったスタイルが最もフィットする。
ただし、利益が安定して積み上がる構造ではないため、配当性向が高くなり過ぎた場合や利益が落ち込んだ場合には減配の可能性はゼロではない。したがって、配当目的で投資する場合は、決算の利益動向と配当性向を定期的にチェックしながら保有するのが現実的でリスクを抑えやすい。まとめると、高配当株としては魅力があるが、成長株ではないため値上がり益はあまり期待しないほうがよく、配当利回りそのものを目的として長期でじっくり保有するタイプの銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
企業の現在株価1,215円から今後5年間を見据えると、利益の積み上がりと営業利益率の改善、そしてROEの底上げが継続できるかどうかが、市場の評価を左右する大きな軸になる。住江織物は老舗企業で、急成長が見込まれるタイプではないものの、近年は利益水準に底打ち感が出始めており、収益力を徐々に立て直せるかが焦点となる。もし利益が着実に積み上がる方向へ進むなら、市場が持つ「低収益のまま固定された企業」という見方が薄まり、株価の評価も少しずつ変わってくる可能性はある。結局のところ、数字がゆるやかでも良いから安定的に伸びていくかどうかが、この5年間での株価評価を分ける。
良いシナリオでは、自動車向け内装材や鉄道車両向け素材の需要が着実に戻り、インテリア事業の収益性も改善し、営業利益率が緩やかに高水準へ向かうケースを想定する。ROEも2%から4〜5%台へと戻していけば、市場は住江織物を「伝統企業だが収益再生が進んでいる」と評価し始める。そうなるとPERが上方向へ切り上がり、12〜15倍程度までの見直しが起こる可能性がある。利益の改善とバリュエーションの正常化が同時に進む場合、株価は1,500〜1,800円の水準に届く余地があり、5年スパンでは2,000円台に触れる場面もあり得る。住江織物は成長株ではないが、収益性が改善する局面では株価が素直に反応する特性を持っている。
中間シナリオでは、利益の波はあるものの全体としては横ばいから微増にとどまり、市場の評価も強気にも弱気にも大きく傾かない展開が続く。PERは9〜11倍の範囲で落ち着き、株価は1,100円〜1,400円のレンジでゆっくり動く。大幅な上昇は望みにくいものの、下値は配当利回りが支えになるため、株価の安定性は高い。住江織物のような成熟企業は、派手な値動きよりも配当と含み益がじわじわ積み上がる「資産型の保有」に向いており、長期で静かに持つ投資スタイルに適した展開となる。
悪いシナリオでは、自動車生産の停滞や公共向け内装需要の鈍化が発生し、営業利益率がさらに下押しされ、ROEも1%台へ後退するケースを想定する。収益構造に対する信頼が薄れると、市場はPERを6〜8倍のレンジまで縮小し、株価は900〜1,000円台への調整が起こりやすくなる。業績悪化が続けば800円台まで沈む可能性も否定できないが、PBRがもともと低く、資産価値が株価を支えるため、過度に悲観する局面はむしろ長期投資家の買い場として意識されやすい。
最終的には、利益が堅実に積み上がるほど株価は着実に評価され、伸びが弱ければ膠着し、悪化すれば素直に反落するという構図になる。現在の1,215円という株価は、この三つの方向へどれにも動ける中間地点にあり、強気にも弱気にも偏りすぎていない位置にある。そのため、一度に大きく投資するよりは、時間を分散しながら少しずつ買い増しし、決算の数字を追いかけながら営業利益率とROEの改善が続いているかを見極める方が現実的でリスクも抑えられる。わずかでも利益が積み上がる方向に向かうなら株価は自然と上を向き、もし停滞や悪化があれば早めに違和感に気づいて軌道修正できる。最終的な答えは企業の積み上げる業績そのものが示してくれるため、焦らず長期で付き合う投資がもっとも合理的な戦略といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月11日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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