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クロス・マーケティンググループとは

クロス・マーケティンググループは、顧客企業のマーケティングプロセスを総合的に支援する企業グループであり、インターネットリサーチ事業からスタートし、現在はDXやデジタルマーケティング分野へと事業の主軸を移行・拡大している。本社は東京都新宿区にあり、連結子会社31社、持分法適用会社4社で構成される規模の大きなマーケティンググループである。
同社は2003年にインターネットを活用したリサーチ事業を目的として設立され、オンライン調査を中心に業績を伸ばした。2008年には設立から約5年半という短期間で東証マザーズに上場し、その後も事業領域を広げていった。インターネットリサーチに加え、グループインタビューや会場調査、店頭調査といった対面型の調査手法を拡充し、顧客ニーズに応じた多様なデータ収集を可能にしている。
2011年からはシステム開発などのITソリューション事業に参入し、マーケティング領域におけるデジタル化や業務効率化を支援する体制を整えた。2012年には初の海外拠点を中国・上海に開設し、その後もアジアや欧米を中心に海外展開を加速させている。2013年には持株会社体制へ移行し、事業会社ごとに専門性を高めることで、サービスの幅と深さを両立させてきた。2018年には東京証券取引所一部、現在のプライム市場へ市場変更している。
現在のクロス・マーケティンググループの事業は、デジタルマーケティング事業、データマーケティング事業、インサイト事業の三つを軸としている。デジタルマーケティング事業では、セールスプロモーションやデジタル広告、SNSやインフルエンサーを活用したマーケティング施策、アニメや漫画などのIPを活用したコンテンツプロモーション、さらにスマートフォンアプリやWebシステムの開発・運用・保守といったITソリューションまで幅広く手がけている。
データマーケティング事業およびインサイト事業では、祖業であるインターネットリサーチを基盤に、国内外の生活者データを活用した分析やコンサルティングを提供している。グループインタビュー、会場調査、海外調査などを通じて得られたデータを統合・分析し、企業の意思決定や戦略立案につなげる支援を行っている。約1,395万人規模のパネルネットワークを保有している点は、同社の大きな強みであり、迅速かつ精度の高い調査を可能にしている。
グループ内にはクロス・マーケティングをはじめ、メタサイト、メディリード、ウィズワーク、エンバイロセルジャパン、エクスクリエ、パスクリエ、クロス・コミュニケーション、オルタナエクス、トキオ・ゲッツ、REECHなど多様な子会社が存在し、調査、データ分析、広告、IT、コンテンツ制作までを一貫して提供できる体制を構築している。
全体としてクロス・マーケティンググループは、リサーチ専業企業として培ってきたデータ収集・分析力を基盤に、DXやデジタルマーケティング領域へと事業を広げ、国内外の企業に対してマーケティング活動全体を支援する総合マーケティンググループへと進化している。
クロス・マーケティンググループ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.6変 | 10,758 | 1,007 | 1,047 | 540 | 27.5 | 4 |
| 連22.6 | 24,899 | 2,521 | 2,497 | 1,559 | 79.1 | 9.6 |
| 連23.6 | 25,094 | 1,950 | 1,879 | 1,007 | 51.0 | 12 |
| 連24.6 | 26,185 | 1,844 | 1,912 | 1,192 | 62.1 | 13 |
| 連25.6 | 28,897 | 2,522 | 2,400 | 1,356 | 71.5 | 14 |
| 連26.6予 | 32,000 | 2,800 | 2,700 | 1,550 | 79.9 | 15 |
| 連27.6予 | 36,000 | 3,300 | 3,200 | 1,850 | 95.3 | 16〜17 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 1,796 | -902 | 27 |
| 2024 | 1,571 | -1,244 | 451 |
| 2025 | 1,956 | -480 | -1,144 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.7% | 16.7% | 7.0% | ― | ― |
| 2024 | 7.0% | 16.8% | 7.1% | ― | ― |
| 2025 | 8.7% | 16.9% | 8.2% | 8.4~15.0倍 | 1.44倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
クロス・マーケティンググループの業績を見ると、連24.6は売上約261億、営業利益18億、経常利益19億、純利益11億と安定した黒字を確保している。連25.6では売上約288億、営業利益25億、経常利益24億、純利益13億へと着実に拡大しており、連26.6予では売上約320億、営業利益28億、経常利益27億、純利益15億と、増収増益基調が継続する見通しとなっている。売上・利益ともに段階的に積み上がっており、事業の成長性は数値上は明確である。
収益性指標を見ると、営業利益率は2023年7.7%、2024年7.0%、2025年8.7%とおおむね安定しつつ、やや改善傾向にある。ROEは16.7%、16.8%、16.9%と高水準を維持しており、自己資本を効率的に使って利益を生み出せている。ROAも7.0%、7.1%、8.2%と改善しており、資産全体の収益力も着実に高まっていることが分かる。これらの指標からは、収益体質が比較的安定しており、成熟しつつも成長余地のある企業像が浮かび上がる。
バリュエーション面では、2025年の実績PERは8.4倍から15.0倍のレンジにあり、成長性と収益性を考えると過度に割高とは言いにくい水準である。PBRは1.4倍で、ROEが16%台であることを踏まえると、理論的にも概ね妥当な評価といえる。利益成長が計画どおり進めば、現在の評価水準は正当化されやすい。
以上の数値だけで判断すると、クロス・マーケティンググループは、安定した利益成長と高めのROEを両立している点が大きな強みであり、収益力・資本効率・成長性のバランスが取れた企業と評価できる。一方で、営業利益率は10%未満であり、急成長株というよりは、着実に積み上げる中成長型の性格が強い。
結論として、上記数値のみを見る限りでは、クロス・マーケティンググループは割高感が強い銘柄ではなく、業績に沿った評価水準にある。投資判断としては、安定成長と一定の収益性を重視する中長期投資に向いた銘柄であり、過度な楽観は不要だが、堅実に業績を追いながら保有を検討できる水準と判断できる。
配当目的とかどうなの?
連26.6の予想配当利回りは2.48%、連27.6では2.64%と、一般的に高配当株とされる水準である3~4%には届いていない。ただし、銀行預金や超低利回りのインカム商品と比較すれば、一定の配当水準ではある。
配当の裏付けとなる利益面を見ると、連24.6で純利益11億、連25.6で13億、連26.6予で15億と着実に増益が続いており、配当原資は安定して確保されている。ROEは16%台、ROAも7~8%台と高水準で推移しており、利益を生み出す力自体は強い。配当性向も段階的に引き上げられており、無理のない範囲での増配が続いている点は評価できる。
一方で、予想配当利回りが2%台にとどまっていることから、インカムゲインを主目的とする投資家にとってはやや物足りない水準である。現状の配当方針は、安定配当を維持しつつも、成長投資と内部留保を優先するバランス型であり、明確な高配当志向とは言えない。
以上を踏まえると、クロス・マーケティンググループは配当目的で積極的に選ぶ銘柄ではないが、業績成長に伴う安定配当と緩やかな増配を期待する分には適した銘柄といえる。結論として、配当目的で見るなら高配当狙いには不向きだが、成長と併せて安定配当を受け取りたい中長期投資には一定の適性がある、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価604.0円から今後5年間を見据えると、クロス・マーケティンググループは、リサーチ専業からデータ活用、DX、デジタルマーケティングへと事業領域を広げてきた企業として、比較的安定した成長が期待できる一方、景気や企業の広告・マーケティング投資動向の影響を受けやすい側面も併せ持つ銘柄といえる。
同社は直近数年にわたり増収基調を維持しており、売上は連24.6の約261億から連25.6で約288億、連26.6予で約320億へと拡大が見込まれている。営業利益も18億から25億、28億と着実に伸びており、営業利益率は7%台から8%台へと緩やかに改善している。ROEは16%台、ROAも7~8%台と高水準で推移しており、利益を安定的に生み出せる体質が定着しつつある点は、中長期投資の観点では安心材料となる。
良い場合のシナリオでは、デジタルマーケティングやデータマーケティング分野への企業投資が拡大し、同社が強みとするパネルデータやDX支援サービスの需要が一段と高まるケースを想定する。海外展開も順調に進み、売上成長が年率10%前後で継続、利益率も改善が進めば、市場は同社を安定成長型のデータ・マーケティング企業として評価しやすくなる。この場合、PERは12~15倍程度が許容され、株価は604.0円から900~1,200円程度へ上昇する可能性がある。5年という時間軸では、業績の積み上がり次第で1,300円前後を試す展開も視野に入る。
中間のシナリオでは、現在の増収増益基調は維持されるものの、成長率はやや落ち着き、売上成長は年率5~7%程度にとどまるケースを想定する。営業利益率は7~9%で安定し、ROEも高水準を維持するが、突出した成長ストーリーは描きにくい。この場合、市場評価はPER10~12倍程度に収れんし、株価は500~800円程度のレンジ内で推移しやすい。配当も年率数%ずつの増配が続くことで、下値は比較的限定され、値動きは穏やかな横ばい基調となる。
悪い場合のシナリオでは、景気後退や企業の広告・マーケティング予算の抑制が進み、デジタルマーケティング需要が想定より伸び悩むケースを想定する。利益率が低下し、成長期待が後退すれば、市場評価はPER8~9倍程度まで切り下がる可能性がある。この場合、株価は604.0円から300~450円程度まで調整する余地があり、5年間を通じて回復に時間を要する展開も考えられる。
総合すると、クロス・マーケティンググループの5年間の値動きは、良い場合で900~1,200円超、中間で500~800円、悪い場合で300~450円といったレンジが想定される。急騰を狙う成長株というよりは、安定した業績成長と一定の配当を受け取りながら、中長期で緩やかな値上がりを期待するタイプの銘柄であり、業績の継続性とマーケティング市場全体の動向を確認しつつ付き合うのが現実的なスタンスといえる。
この記事の最終更新日:2025年12月12日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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