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インターネットイニシアティブとは

株式会社インターネットイニシアティブ(Internet Initiative Japan Inc)は、日本の電気通信事業者であり、東京証券取引所プライム市場に上場している企業である。JPX日経インデックス400の構成銘柄の一つでもある。1992年に設立され、日本で初期に商用インターネット接続サービスを開始したインターネットサービスプロバイダであり、インターネット黎明期から国内の通信インフラを支えてきた企業である。IP通信専業のISP事業者としては国内最大級の規模を持ち、主要都市間を結ぶインターネットバックボーンを自社で構築・運用している。
1990年代の創成期より、国内外の主要インターネットエクスチェンジとのピアリングを積極的に行い、アジア太平洋地域の国際バックボーン構築にも関与するなど、日本のインターネット接続環境の整備にインフラ面で大きな役割を果たしてきた。設立には村井純氏や吉村伸氏らWIDEプロジェクトのメンバーが中心となって関与しており、現在もインターネットに関する研究、調査、実証実験、標準化活動に積極的に参加している。ISP事業者の中では研究開発投資の比率が比較的高いことも特徴である。
主要な顧客層は官公庁および法人であり、取引企業は11,000社以上にのぼる。特に高度かつ大規模なシステムインテグレーションを必要とする大企業分野に強みを持ち、各業界の主要企業を幅広く顧客としている。収益構造は、インターネット接続、クラウド、アウトソーシングなどの継続課金型サービスを中心としたストック型ビジネスが主体で、安定性の高い事業モデルとなっている。
事業内容は、法人向けインターネット接続サービスを中核とし、専用線、VPN、モバイル通信などを組み合わせたネットワークサービスを提供している。加えて、自社データセンターを活用したクラウドサービスやシステム基盤の提供、企業のITインフラ構築やクラウド移行を支援するシステムインテグレーション事業、ネットワークおよび情報セキュリティ関連サービス、システム運用やアウトソーシングサービスなどを展開している。
モバイル分野では、法人向け仮想移動体通信事業者(MVNO)としてのサービスを提供しており、個人向けには「IIJmio」ブランドで通信サービスを展開している。また、ISP事業者向けにインターネット接続のOEM提供を行うほか、移動体通信事業者とのL2接続による仮想移動体サービス提供者(MVNE)としての事業も手がけ、業界インフラとしての役割も担っている。
技術面では、自社開発のネットワーク機器やソフトウェアを有し、SMFなど独自技術を活用した高付加価値サービスを提供している。グループ会社を通じては、データセンター運用、ネットワーク保守、ヘルプデスクなど周辺領域もカバーしており、ネットワークからシステム、運用までを一体で提供できる体制を構築している。全体としてIIJは、日本のインターネット創成期からインフラ構築に深く関与してきた技術志向の高い企業であり、官公庁および大企業向けを中心とした高信頼・高付加価値のIT・通信サービスを主軸に、安定した収益基盤を持つ総合ITインフラ企業である。
インターネットイニシアティブ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3* | 252,708 | 27,221 | 27,309 | 18,838 | 104.3 | 29.3 |
| 24.3 | 276,080 | 29,029 | 28,934 | 19,831 | 111.8 | 34.36 |
| 25.3 | 316,831 | 30,104 | 29,184 | 19,933 | 112.7 | 35 |
| 26.3予 | 340,000 | 36,500 | 33,700 | 23,000 | 129.8 | 39 |
| 27.3予 | 365,000 | 42,500 | 39,700 | 27,000 | 152.3 | 45〜46 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 38,529 | -18,386 | -25,731 |
| 24.3 | 40,780 | -17,927 | -20,797 |
| 25.3 | 28,528 | -21,749 | -19,667 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 10.7 | 15.9 | 7.6 | — | — |
| 2024 | 10.5 | 15.7 | 7.2 | — | — |
| 2025 | 9.5 | 14.1 | 6.3 | 27.8(高) / 18.9(安) | 3.37 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績推移を見ると、インターネットイニシアティブの24.3期の営業利益は約290億円、経常利益は約289億円、純利益は約198億円である。25.3期は営業利益約301億円、経常利益約291億円、純利益約199億円と増収ながら利益の伸びは限定的である。26.3期予想では営業利益約365億円、経常利益約337億円、純利益約230億円と、再び利益成長が加速する見通しとなっている。利益水準自体は安定して高く、特に26.3期は明確な増益局面に入る計画である。
一方で収益性指標を見ると、営業利益率は2023年10.7%、2024年10.5%、2025年9.5%と、緩やかな低下傾向にある。売上成長に対して利益率がやや削られており、コスト増や競争環境の影響が示唆される。ROEも15.9%から15.7%、14.1%へと低下しており、依然として水準は高いものの、資本効率はピークアウト傾向にある。ROAも7.6%、7.2%、6.3%と下落しており、資産効率の面でもやや鈍化が見られる。
バリュエーション面では、2025年の実績PERは高値平均27.8倍、安値平均18.9倍とレンジが広く、市場の評価が成長期待と警戒感の間で揺れていることが分かる。PBRは3.3倍と高水準であり、すでに企業価値やブランド力、安定収益性を相当程度織り込んだ評価水準にある。
これらを総合すると、インターネットイニシアティブは利益規模が大きく、26.3期にかけて再成長が見込まれる点は評価できる一方で、営業利益率・ROE・ROAはいずれも低下傾向にあり、成長の質はやや落ちてきている。PBR3倍超、PERも高値圏では20倍後半となることから、指標面では割安感は乏しい。
結論として、現在の数値だけで判断すると、インターネットイニシアティブは「優良だが割高寄り」の銘柄であり、長期の安定成長を重視する投資には向くものの、短期的な上値余地は限定的と考えられる。投資妙味は、PERが安値レンジ(20倍前後)に近づいた局面、または利益率の下げ止まりが確認できた場合に高まると判断される。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点でインターネットイニシアティブを見ると、正直に言って主目的としては弱いという評価になる。26.3期の予想配当利回りは1.38%、27.3期でも1.59%と、いずれも株式投資全体で見ると低水準にとどまっている。安定した配当は継続しているものの、利回り面では高配当株や配当成長を重視する銘柄と比べると見劣りする。
同社は純利益規模が大きく、配当額も年々増加しているが、株価水準が高いこと、PBRが3倍超と評価が先行していることから、配当利回りが押し下げられている。実際、26.3期・27.3期ともに利回りは2%に届かず、インカムゲインを主目的とする投資には向きにくい水準である。
一方で、業績は安定しており、減配リスクは比較的低いと考えられる。通信・ITインフラという事業特性からキャッシュフローは堅調で、配当の継続性という点では安心感がある。ただし、会社としては高配当を強く打ち出すスタンスではなく、成長投資と事業拡大を優先していると読み取れる。
結論として、インターネットイニシアティブは配当を「おまけ」として受け取りつつ、長期の企業価値成長を狙う銘柄であり、配当利回りそのものを目的に買う銘柄ではない。配当目的であれば、利回り3〜4%以上の銘柄の方が適しており、同社はあくまで成長+安定性重視の投資に向いた銘柄と評価できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価2,821.5円から今後5年間を見据えると、インターネットイニシアティブは日本のインターネットインフラを支える中核企業として、法人向けネットワーク、クラウド、セキュリティ、システムインテグレーションを主軸に安定した収益基盤を持つITサービス企業である。官公庁や大企業を中心とした顧客基盤を背景に、景気変動の影響を受けにくいストック型収益を積み上げてきた。一方で、直近では営業利益率、ROE、ROAが緩やかに低下しており、業績は成長を続けているものの、収益性の面では成熟フェーズに入りつつある点が意識される。今後の株価は、利益成長の持続性と市場が許容する評価水準に大きく左右される局面にある。
良い場合のシナリオでは、法人向けネットワークやクラウド、セキュリティ需要が引き続き堅調に推移し、売上・利益ともに計画どおり拡大するケースを想定する。コスト増を吸収しつつ営業利益率の低下が止まり、ROEも14~15%台で安定すれば、市場からは「高い安定性を持つインフラ系IT企業」として評価されやすくなる。この場合、PERは25倍前後まで許容され、5年後の株価は3,800~4,300円程度まで上昇する余地がある。業績の安定感が一段と強まれば、4,500円近辺を意識する展開も考えられる。
中間のシナリオでは、業績は概ね会社計画どおりに推移するものの、利益率の回復は限定的で、ROE・ROAも緩やかな低下傾向が続くケースを想定する。市場評価は現在水準を大きく上回らず、PERは20倍前後で落ち着く。この場合、株価は3,000~3,400円程度のレンジで推移し、緩やかな上昇にとどまる可能性が高い。配当は増配傾向にあるが利回りは低く、値動きは比較的落ち着いたものとなる。
悪い場合のシナリオでは、競争激化や人件費・設備投資負担の増加により営業利益率の低下が続き、ROEが13%を下回る水準まで低下するケースを想定する。成長性への評価が後退すれば、PERは15~17倍程度まで切り下がり、株価は2,200~2,500円程度まで調整する展開が考えられる。事業の安定性から急落は想定しにくいものの、株価の戻りには時間を要する可能性がある。
総合すると、現在の株価2,821.5円を起点としたインターネットイニシアティブの今後5年間の値動きは、良い場合で3,800~4,300円前後、中間で3,000~3,400円、悪い場合で2,200~2,500円といったレンジが想定される。配当利回りは高くないためインカムゲイン目的には向きにくいが、業績の安定性と緩やかな成長を評価し、長期で企業価値の積み上がりを狙う投資に適した銘柄だと言える。
この記事の最終更新日:2025年12月13日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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