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セックとは

株式会社セックは、リアルタイムソフトウェア技術に強みを持つ独立系のソフトウェア開発会社である。1970年5月に東京都渋谷区代々木で創業し、高速道路管制システムやロケットエンジン高空性能試験システムなど、高信頼性・高リアルタイム性が求められる分野で実績を積み重ねてきた。2010年10月に本社を東京都世田谷区用賀へ移転し、現在も技術志向を軸とした開発受託型の事業を展開している。
セックの中核技術は、リアルタイムソフトウェアと組込みソフトウェアであり、社会インフラや宇宙、ロボット、自動走行、IoT、AIといった分野で、ミッションクリティカルなシステム開発を手がけている。派手なパッケージビジネスではなく、官公庁、研究機関、大手企業向けに高度な技術力を提供する受託開発を主軸としている点が特徴である。
事業は大きく4つのビジネスフィールドで構成されている。社会基盤システム分野では、高度交通システム、防衛、医療、環境・エネルギー分野など、社会公共インフラ向けのリアルタイムソフトウェアや情報システムを開発している。ITSの路車間通信システム、GPS緊急通報システム、洪水予報・警報システム、エネルギーマネジメントシステム、官公庁向け業務システムなど、公共性の高い分野での実績が多い。
宇宙先端システム分野では、科学衛星や惑星探査機に搭載されるエンベデッドシステム、天体望遠鏡の制御、観測データ解析などの宇宙関連システムを開発している。また、車両の自動走行技術や研究機関向けの先端技術アプリケーションにも関わっている。2003年からはロボットの共通基盤研究開発にも取り組み、ロボットの標準化技術や機能安全に関するノウハウを活かし、各種ロボットシステムの開発やコンサルティングも行っている。
モバイルネットワーク分野では、キャッシュレス決済端末や車載端末、スマートコンストラクション関連システム、XRなど、モバイルデバイスやエッジデバイス向けのソフトウェアを開発している。ユビキタス社会を支える技術として、ネットワークを介してモノと人をつなぐリアルタイム性の高いシステムを強みとしている。インターネット分野では、非接触ICのエンベデッドソフトウェア、IoT関連システム、企業向けWebシステムやクラウドシステムの構築などを手がけている。IoTデバイスとクラウドを連携させたシステムや、災害時統合情報システムなど、安全性や信頼性が重視される分野での開発実績も多い。
全体としてセックは、リアルタイム性・安全性・信頼性が強く求められる分野に特化し、社会インフラ、宇宙、ロボット、自動走行といった先端分野で技術力を発揮するソフトウェア企業である。規模拡大よりも技術の深さを重視し、ニッチだが高度な領域で安定した収益を積み上げている点が同社の最大の特徴である。
セック 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 単23.3 | 7,488 | 1,215 | 1,278 | 878 | 172.5 | 69 |
| 単24.3 | 8,534 | 1,467 | 1,547 | 1,105 | 216.9 | 87 |
| 単25.3 | 10,295 | 1,793 | 1,893 | 1,344 | 263.6 | 110 |
| 単26.3予 | 10,900 | 1,840 | 2,010 | 1,400 | 274.5 | 111 |
| 単27.3予 | 11,700 | 2,000 | 2,170 | 1,500 | 294.1 | 111〜118 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 526 | -303 | -381 |
| 2024 | 384 | -139 | -352 |
| 2025 | -250 | -40 | -445 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROA(%) | ROE(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 16.2 | 9.5 | 11.5 | ― | ― |
| 2024 | 17.1 | 10.9 | 13.1 | ― | ― |
| 2025 | 17.4 | 11.4 | 14.4 |
高値平均 23.1 安値平均 12.4 |
3.21 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず売上と利益の推移を見ると、売上高は24.3期が約85億円、25.3期が約102億円、26.3期予想で約109億円と、規模は大きくないものの着実な成長が続いている。営業利益も24.3期の約14億円から25.3期に約17億円、26.3期予想では約18億円へと伸びており、売上の拡大がそのまま利益の増加につながっている。経常利益や純利益も同様に右肩上がりで、事業の安定性と成長性が両立していることが分かる。
収益性の面では、営業利益率が2023年の16.2%から2024年17.1%、2025年17.4%へと継続的に改善しており、受託開発中心のソフトウェア企業としては非常に高い水準にある。価格競争に巻き込まれにくい分野で、高付加価値の開発を行っていることが、この数字からはっきり読み取れる。
資本効率を見ると、ROEは11.5%から14.4%、ROAは9.5%から11.4%へと着実に上昇している。自己資本や総資産を効率よく使って利益を生み出しており、中小型の技術系企業としては完成度がかなり高い。単なる売上拡大ではなく、質の高い成長が続いている点は大きな強みである。
一方で株価評価を見ると、2025年実績ベースのPERは高値平均で23.1倍、安値平均でも12.4倍と、明確な割安感はない。PBRも3.2倍と高く、市場はすでにセックの高い利益率や安定成長をかなり評価している状態にある。ROEが14%台であることを考えると、PBR3倍超は品質プレミアムが乗った評価と言える。
これらを総合すると、セックは業績、収益性、資本効率のいずれも非常に優秀で、事業の質は高いが、その分評価面ではすでに高めの水準にある企業だと判断できる。今後も同様の成長と高利益率を維持できれば株価は正当化されるが、成長が鈍化すれば評価調整が入りやすい点には注意が必要である。結論として、セックは割安株を探す投資には向かないが、技術力と安定した成長を評価し、中長期でじっくり保有する投資には適した銘柄だと言える。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点でセックを見ると、結論はかなりはっきりしていて、インカム狙いの銘柄ではない。まず数字だけを見ると、26.3期、27.3期ともに予想配当利回りは1.88%と、東証全体の平均と比べても低めの水準にある。高配当株の目安とされる3~4%には大きく届かず、配当だけを目的に保有する理由は乏しい。
業績自体は非常に良好で、営業利益率は17%台、ROEも14%台と収益力は高いが、その利益を積極的に配当に回す方針ではないことが、この利回り水準から読み取れる。会社としては配当よりも、人的投資や技術力の維持・強化、内部留保を重視しているタイプだと言える。
また、株価評価はPER20倍前後、PBR3倍超とすでに高く、配当利回りが低い分、株価下落時のインカムによる下支えも弱い。仮に業績が一時的に鈍化した場合、配当を受け取りながら耐えるという投資スタイルには向かない。
一方で、配当が極端に少ないわけではなく、毎期安定して支払われている点は評価できる。ただし、その水準はあくまで「おまけ程度」であり、主なリターン源は株価の上昇、つまり成長と評価の積み上がりにある。総合すると、セックは「配当を取りにいく銘柄」ではなく、「高い収益力と技術力を評価して成長に賭ける銘柄」である。インカム目的のポートフォリオには不向きだが、キャピタルゲイン重視で中長期に保有する投資には向いていると言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価2,969.0円から今後5年間を見据えると、セックはリアルタイムソフトウェアという明確な技術的強みを持ち、社会インフラ、宇宙、ロボット、自動走行といった高付加価値分野で安定した受託開発を行う技術志向の企業である。営業利益率は17%前後と高く、ROE・ROAも着実に改善しており、事業の質は非常に高い。一方で、株価にはすでにその高収益性と安定成長がある程度織り込まれており、今後の値動きは成長の持続性と評価水準が維持されるかどうかに左右される。
良い場合のシナリオでは、社会基盤・宇宙・ロボット分野での受注が堅調に拡大し、高い営業利益率を維持したまま売上と利益が着実に成長するケースを想定する。営業利益率は17~18%台、ROEも15%前後まで上昇し、高品質な技術企業としての評価が続く。この場合、市場はPER20~25倍程度を許容し、利益成長と評価の両面から株価は緩やかに切り上がる。5年後の株価は3,800~4,800円程度まで上昇する余地があり、安定成長株として評価され続ける展開となる。
中間のシナリオでは、業績は安定的に推移するものの、成長率は徐々に落ち着き、利益の伸びは緩やかになるケースを想定する。営業利益率は16~17%台を維持し、ROEも13~14%前後で安定するが、市場の期待は一巡する。この場合、PERは15~18倍程度に収れんし、株価は2,700~3,300円程度のレンジで推移する可能性が高い。現在値2,969.0円を中心に、上下を繰り返す比較的落ち着いた値動きとなる。
悪い場合のシナリオでは、受託開発の成長が鈍化し、人件費上昇などで利益率が低下するケースを想定する。営業利益率が15%を下回り、成長性に対する評価が後退すると、市場は一段と慎重になる。この場合、PERは12~14倍程度まで低下し、株価は現在値2,969.0円から2,000~2,400円程度まで下落する展開が考えられる。配当利回りは低いため、インカムによる下支えは弱く、回復には時間を要する可能性がある。
総合すると、現在値2,969.0円を起点としたセックの今後5年間の値動きは、良い場合で3,800~4,800円前後、中間で2,700~3,300円、悪い場合で2,000~2,400円といったレンジが想定される。配当目的ではなく、技術力と高収益体質がどこまで維持されるかを見極めながら、中長期で向き合うタイプの銘柄だと言える。
この記事の最終更新日:2025年12月13日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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