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テクマトリックスとは

テクマトリックス株式会社は、ニチメン系の情報処理会社を起源とする独立系のITソリューション企業であり、東京都港区に本社を置くネットワークインテグレーターである。インフラ構築と情報サービス開発を事業の柱とし、ネットワーク、セキュリティ、医療、金融といった専門性の高い分野で実績を積み上げてきた。JPX日経中小型株指数の構成銘柄にも採用されている。同社は、ネットワーク・インテグレーション、e-Businessアプリケーション、金融・医療・テレコム向けソリューションの3分野を軸に事業を展開している。東京本社を中心に、西日本支店、中部営業所、九州営業所を構え、海外ではタイ・バンコクに駐在員事務所を設置するなど、国内外で事業基盤を持つ。
ネットワーク・セキュリティ分野では、F5ネットワークス、パロアルトネットワークス、RSAセキュリティ、McAfeeなど、海外の有力製品を取り扱い、設計・構築から運用・保守までを一貫して提供している。次世代ファイアウォール、EDR、XDR、SASE、ZTNA、SOARなど最新のセキュリティ技術を組み合わせ、サイバー攻撃対策を含むトータルセキュリティソリューションを展開している点が強みである。導入後も24時間365日の運用・監視サービスを提供し、ストック型収益を積み上げている。
ネットワーク/ストレージ分野では、クラウド時代に対応した高信頼性の情報基盤構築を支援している。アプリケーションデリバリー、トラフィック制御、マイクロサービス対応製品、ストレージ、バックアップ、BCP対策などを、セキュリティ技術と組み合わせて提供し、機密性・完全性・可用性の高いインフラを構築している。
医療分野では、医療クラウドにおいて大きな実績を持ち、クラウドPACS「NOBORI」を中核とした医療情報サービスを展開している。医療画像などの大容量データを安全に保管・共有できるクラウドサービスを提供し、医療機関のIT化・効率化を支援している。この分野は同社の成長領域の一つとなっている。
金融分野では、金融機関向けに市場系業務管理システムを提供している。フロント・ミドルシステムを中心に、国際金融規制への対応やリスク管理の高度化、公正価値評価への対応など、変化の激しい金融市場に対応するシステムを開発している。高度な金融工学に基づく評価モデルと自社開発モデルを組み合わせ、金融機関のニーズに応えている点が特徴である。グループ会社には、医療系システムを手がけるPSP株式会社をはじめ、クロス・ヘッド、カサレアル、TechMatrix Asiaなどがあり、分野別に専門性を高めた体制を構築している。
全体としてテクマトリックスは、インフラ構築と情報サービスを両輪とし、セキュリティ、医療クラウド、金融といった高付加価値分野に特化することで、安定した成長と収益性を実現している専門特化型のITソリューション企業である。
テクマトリックス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 45,950 | 5,098 | 5,066 | 2,950 | 73.9 | 23 |
| 24.3 | 53,303 | 5,850 | 5,854 | 3,540 | 88.4 | 28 |
| 25.3 | 64,882 | 6,668 | 6,424 | 4,060 | 101.1 | 34 |
| 26.3予 | 73,000 | 7,600 | 7,600 | 4,880 | 121.5 | 36 |
| 27.3予 | 80,000 | 8,600 | 8,600 | 5,520 | 137.4 | 36〜41 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 6,348 | -3,131 | -1,299 |
| 2024 | 8,982 | -1,938 | 147 |
| 2025 | 6,836 | -5,955 | -799 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROA(%) | ROE(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 11.0 | 4.4 | 15.5 | ― | ― |
| 2024 | 10.9 | 4.1 | 16.2 | ― | ― |
| 2025 | 10.2 | 3.8 | 16.7 |
高値平均 26.5 安値平均 16.7 |
3.56 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず売上と利益の推移を見ると、24.3期の売上高は約533億円、25.3期は約648億円、26.3期予想では約730億円と、かなり力強い成長が続いている。営業利益も24.3期の約58億円から25.3期に約66億円、26.3期予想で約76億円へと拡大しており、規模の拡大とともに利益額も着実に積み上がっている。経常利益、純利益も同様に右肩上がりで、売上成長が利益成長を伴っている点は高く評価できる。
一方で収益性を見ると、営業利益率は2023年11.0%、2024年10.9%、2025年10.2%と、緩やかに低下している。10%台を維持しているため水準としては悪くないが、売上拡大に伴うコスト増や事業構成の変化により、利益率が少しずつ削られている構図が見える。今後も成長を優先する局面では、利益率が急に改善するよりも、横ばいからやや低下する可能性があると考えられる。
資本効率の面では、ROEが15.5%から16.7%へと上昇しており、株主資本を使った利益創出力は非常に高い。これは同社の大きな強みで、成長企業として市場から評価されやすい要因になっている。一方でROAは4.4%から3.8%へと低下しており、資産規模の拡大に対して利益の伸びがやや追いついていない。成長投資を積極的に行っている企業によく見られる動きではあるが、資産効率は改善局面とは言いにくい。
株価評価を見ると、2025年実績ベースのPERは高値平均で26.5倍、安値平均でも16.7倍と、明らかに高評価の水準にある。PBRも3.5倍と高く、ROEの高さと将来成長への期待がすでに株価にしっかり織り込まれている状態だと分かる。営業利益率が低下傾向にある中で、このPER水準を維持するには、今後も売上成長が安定して続くことが前提になる。
これらを総合すると、テクマトリックスは売上と利益の成長力、ROEの高さといった事業の質は非常に優秀だが、その分、評価面ではすでに割安とは言えない銘柄である。成長が続く限り株価は正当化されるが、成長鈍化や利益率低下が意識される局面では、PER調整によって株価が振れやすくなるリスクもある。結論として、テクマトリックスは安値を拾って放置するタイプの銘柄ではなく、成長の持続性を確認しながら中長期で向き合う銘柄であり、成長期待込みで保有する投資に向いた企業だと言える。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点でテクマトリックスを見ると、結論としては「配当も一定程度は期待できるが、配当最優先の銘柄ではない」という位置づけになる。まず数字を見ると、26.3期、27.3期ともに予想配当利回りは2.15%と、東証全体の平均と比べるとやや低めから中間程度の水準にある。高配当株の目安とされる3~4%には届かず、配当だけを目的に保有するには少し物足りない。
一方で、利益成長に合わせて配当も着実に増やしてきており、減配リスクは相対的に低い。営業キャッシュフローは安定しており、配当原資に不安は少ないため、「無理のない範囲で継続的に配当を出す企業」という印象は強い。インカムを完全に無視している企業ではなく、成長企業としては比較的配当姿勢は良い。
ただし、株価評価はPER20倍超、PBR3倍超とすでに高く、配当利回りが2%前後にとどまる分、株価下落時の配当による下支えはそれほど強くない。値動きの大半は、配当よりも業績成長と市場評価の変化に左右される。
総合すると、テクマトリックスは「高配当を取りにいく銘柄」ではなく、「成長を主軸にしつつ、配当もそこそこ受け取れる銘柄」である。インカム目的のポートフォリオの中核にはなりにくいが、成長株の中では比較的安心して配当も受け取りたい投資家には向いていると言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価2,274.0円から今後5年間を見据えると、テクマトリックスはネットワーク・セキュリティ、医療クラウド、金融システムといった専門性の高い分野に強みを持ち、ストック型収益を積み上げながら成長してきたITソリューション企業である。売上と利益はともに拡大基調にあり、ROEも高水準を維持している。一方で、営業利益率はやや低下傾向にあり、株価は成長期待をある程度織り込んだ水準にあるため、今後の値動きは成長の持続性と評価水準の変化に左右される。
良い場合のシナリオでは、セキュリティ投資の拡大や医療クラウド「NOBORI」の普及が順調に進み、売上・利益ともに中長期で安定成長が続くケースを想定する。営業利益率は10%前後を維持しつつ、ROEも15%台後半で安定し、高品質な成長企業としての評価が続く。この場合、市場はPER20~25倍程度を許容し、利益成長と評価の両面から株価は段階的に切り上がる。5年後の株価は3,000~3,800円程度まで上昇する余地があり、安定成長株として評価される展開が考えられる。
中間のシナリオでは、事業は堅調に推移するものの、成長率は徐々に落ち着き、利益の伸びは緩やかになるケースを想定する。営業利益率は10%前後、ROEは15%前後で安定するが、市場の期待は一巡する。この場合、PERは15~18倍程度に収れんし、株価は2,100~2,600円程度のレンジで推移する可能性が高い。現在値2,274.0円を中心に、上下を繰り返す比較的落ち着いた値動きとなる。
悪い場合のシナリオでは、IT投資の調整や競争激化により成長が想定よりも鈍化し、営業利益率の低下が意識されるケースを想定する。成長性への評価が後退すると、市場は慎重になり、PERは12~14倍程度まで低下する可能性がある。この場合、株価は現在値2,274.0円から1,600~1,900円程度まで下落する展開が考えられる。配当利回りは2%台にとどまるため、インカムによる下支えは限定的で、回復には時間を要する可能性がある。
総合すると、現在値2,274.0円を起点としたテクマトリックスの今後5年間の値動きは、良い場合で3,000~3,800円前後、中間で2,100~2,600円、悪い場合で1,600~1,900円といったレンジが想定される。配当を主目的とするよりも、成長と事業の安定性を見極めながら中長期で向き合うタイプの銘柄だと言える。
この記事の最終更新日:2025年12月13日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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