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特種東海製紙(3708)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

特種東海製紙とは

特種東海製紙株式会社は、特種製紙株式会社と東海パルプ株式会社の経営統合により誕生した、独立系の製紙メーカーである。東京都千代田区丸の内に東京本社を、静岡県島田市に本店を置き、特殊紙分野に強みを持つ企業として製紙業界で独自のポジションを築いている。同社は、2010年4月1日に東海パルプおよび特種製紙を吸収合併し、事業持株会社体制へ移行した。その後、同年7月に「特種東海ホールディングス株式会社」から現在の「特種東海製紙株式会社」へ商号変更している。統合前の特種製紙は偽造防止用紙や情報用紙、ファンシーペーパーといった特殊紙の大手であり、東海パルプは板紙や段ボール原紙などを手がける製紙メーカーであった。両社の統合により、特殊紙と板紙の両分野を併せ持つ体制が構築された。

事業の中核は、付加価値の高い特殊紙分野である。偽造防止用紙、情報用紙、ファンシーペーパーなど、価格競争に陥りにくいニッチ分野に強みを持ち、代表的な製品としては、子牛の皮のような模様が特徴のファンシーペーパー「レザック66」などが知られている。一方で、段ボール原紙などの板紙事業も展開しており、この分野では日本製紙と提携関係にある。

特種東海製紙は、東海パルプ時代からの資産として、静岡県の最北端に位置する大井川最上流部一帯に、日本最大級の社有林である井川社有林を保有している。この広大な社有林は、原材料の安定確保だけでなく、環境保全や持続可能な森林経営の基盤ともなっている。グループ会社には、森林管理を担う特種東海フォレスト、素材・加工分野の特種東海マテリアルズ、物流を担う静岡ロジスティクスや新東海ロジスティクス、新東海製紙などがあり、製造から物流、環境関連まで一体的な事業体制を構築している。

また、エネルギー面では自家発電にも力を入れている。島田市にある赤松発電所では、水力発電により最大6,310キロワットの電力を発生させており、再生可能エネルギーの活用を進めている。加えて、三島工場では太陽光発電や小型風力発電を導入し、環境負荷低減にも取り組んでいる。全体として特種東海製紙は、大量生産型の汎用紙メーカーとは異なり、特殊紙という高付加価値分野を中核に、板紙事業、森林資源、環境・エネルギーを組み合わせた独立系製紙メーカーである。安定性と独自性を兼ね備えた事業構造が同社の大きな特徴と言える。

特種東海製紙 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(単位百万) 営業利益 経常利益 純利益 一株益 EPS(円) 一株当たり配当
連23.3 84,130 1,640 4,058 4,130 345.5 100
連24.3 86,517 2,296 6,188 4,590 388.0 120
連25.3 94,800 3,928 6,227 3,607 307.5 120
連26.3予 99,000 5,000 7,000 4,900 421.8 131
連27.3予 102,000 6,000 8,000 5,600 482.1 132〜138

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期(単位百万) 営業CF 投資CF 財務CF
2023 2,582 -1,149 -3,180
2024 11,397 -6,101 -2,582
2025 8,773 -9,366 -1,495

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

決算期 営業利益率(%) ROA(%) ROE(%) PER(倍) PBR(倍)
2023 1.9 3.3 5.7
2024 2.6 3.4 5.9
2025 4.1 2.5 4.5 高値平均 12.0
安値平均 8.9
0.65

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず売上と利益の推移を見ると、売上高は24.3期が約865億円、25.3期が約948億円、26.3期予想で約990億円と、素材メーカーとしては堅実な右肩上がりが続いている。急成長というほどではないが、需要が大きく落ち込むこともなく、事業基盤はかなり安定している印象を受ける。営業利益は24.3期の約22億円から、25.3期に約39億円、26.3期予想では約50億円と、売上以上のペースで改善しており、利益体質が徐々に良くなってきていることが分かる。経常利益も60億円台から70億円規模へと拡大しており、本業以外を含めた収益力も安定している。一方で純利益は25.3期に約36億円まで落ち込んだ後、26.3期予想では約49億円まで回復しており、年ごとの振れはあるものの、大きく崩れているわけではない。

収益性を見ると、営業利益率は2023年の1.9%から、2024年2.6%、2025年4.1%へと改善している。4%台という水準は決して高くはないが、製紙業界という装置産業・低マージンの世界を考えれば、むしろ健闘している部類と言える。特殊紙という付加価値分野を持っているとはいえ、構造的に利益率が高くなりにくい業界であることを踏まえると、着実な改善が続いている点は評価できる。

資本効率の面では、ROEは5%前後、ROAは2〜3%台と低めの水準にとどまっている。これは設備投資負担が大きい製紙業の特性をそのまま反映した数字であり、株主資本を効率よく回して大きなリターンを生む企業ではないことを示している。ROEやROAが高くならない点から見ても、この会社を成長株として評価するのは無理がある。

一方で株価評価を見ると、2025年実績ベースのPERは高値平均で12.0倍、安値平均では8.9倍と低水準で、PBRは0.6倍と明確な1倍割れにある。ROEが5%前後しかないことを考えると、PBRが低いのはある意味で妥当だが、それでも資産価値に対してかなり保守的に評価されていることは間違いない。市場はこの会社に大きな成長を期待しておらず、安定性と資産価値を重視して評価している段階にある。

これらを総合すると、特種東海製紙は高成長や高リターンを狙う銘柄ではなく、業績の安定性と割安感を評価するタイプの企業だと言える。営業利益率やROEが低い以上、株価が大きく切り上がるシナリオは描きにくいが、PBR0.6倍、PER10倍前後という水準は下値リスクを抑えやすい。業績が大きく悪化しない限り、株価が大崩れする可能性も高くはない。

結論として、特種東海製紙は派手さはないが、地味に業績を積み上げ、割安な評価で放置されやすい典型的な素材株である。短期の値上がりや成長性を求める投資には向かないが、安定性と割安感を重視し、配当を受け取りながら中長期で保有するというスタンスには比較的合った銘柄だと判断できる。

配当目的とかどうなの?

配当目的という視点で特種東海製紙を見ると、悪くはないが、突出して魅力的というほどでもない、という評価になる。まず数字を見ると、26.3期の予想配当利回りは2.86%、27.3期でも2.88%と、3%弱の水準が見込まれている。高配当株の基準とされる4%前後には届かないものの、東証プライムの平均と比べれば平均以上で、インカムを意識した投資として一定の水準は満たしている。

業績とのバランスを見ると、営業利益や経常利益は着実に増加しており、営業キャッシュフローも安定してプラスを維持している。加えて、製紙業という設備産業でありながら、特殊紙という付加価値分野を持ち、収益の変動が比較的緩やかな点は、配当の安定性という意味ではプラスに働く。実際、ここ数年は減配ではなく、配当水準を維持、もしくは微増させる姿勢が見える。

一方で、ROEは5%前後と低く、成長性も高くはないため、配当の大幅な増配を期待するのは現実的ではない。将来的な配当は、業績の伸びに応じて緩やかに増えるか、横ばいが続く可能性が高く、高配当化が一気に進むタイプの企業ではない。また、PBRが0.6倍と低く、株価自体は割安水準にあるため、株価下落リスクが比較的小さい点は、配当目的の投資家にとって安心材料になる。一方で、株価の大きな上昇によるキャピタルゲインはあまり期待しにくく、リターンの中心はあくまで配当になる。

総合すると、特種東海製紙は「高配当株ではないが、安定した配当をそこそこ取りにいく銘柄」という位置づけになる。インカム目的のポートフォリオの一部として、派手さはないが安定感を重視する投資家には向いている。一方で、配当利回りの高さを最優先する場合や、増配スピードを重視する投資には、やや物足りない銘柄だと言える。

今後の値動き予想!!(5年間)

現在の株価1,523.0円から今後5年間を見据えると、特種東海製紙は特殊紙という付加価値分野を中核に、板紙事業や広大な社有林、自家発電設備を併せ持つ独立系の製紙メーカーである。大量生産型の汎用紙とは異なり、価格競争に陥りにくいニッチ分野を主力としている点が特徴で、業績は景気に左右されにくい。一方で、成長性は高くなく、株価の動きは急成長期待よりも、業績の安定性と配当水準、割安評価がどこまで見直されるかに左右される。

良い場合のシナリオでは、特殊紙の需要が安定的に推移し、コスト改善や製品ミックスの向上によって営業利益率が4%台で定着するケースを想定する。業績の安定性と配当の持続性が評価され、現在PBR0.6倍台にある評価が見直される。この場合、市場は特種東海製紙を「安定配当・資産株」として再評価し、PBRは0.8倍前後、PERも12倍程度まで許容される。5年後の株価は1,900~2,200円程度まで上昇する余地があり、配当込みでは堅実なリターンが期待できる。

中間のシナリオでは、業績は会社計画どおりに推移し、売上・利益ともに緩やかな増加にとどまるケースを想定する。営業利益率は3~4%台、ROEも5%前後で安定し、市場評価は大きく変わらない。この場合、株価は1,400~1,700円程度のレンジで推移し、現在値1,523.0円を中心とした比較的落ち着いた値動きになる。値上がり益は限定的だが、毎年の配当を積み上げることでトータルリターンを確保する展開となる。

悪い場合のシナリオでは、原材料価格の上昇や需要の弱含みにより利益率が再び低下し、業績の改善が止まるケースを想定する。営業利益率が3%を下回り、先行き不透明感が強まると、市場評価はさらに慎重になる。この場合、PBRは0.5倍近辺まで低下し、株価は1,523.0円から1,000~1,200円程度まで下落する展開が考えられる。配当は一定の下支えになるものの、株価下落を完全に補うほどではなく、回復には時間を要する可能性がある。

総合すると、現在値1,523.0円を起点とした特種東海製紙の今後5年間の値動きは、良い場合で1,900~2,200円前後、中間で1,400~1,700円、悪い場合で1,000~1,200円といったレンジが想定される。高い成長を狙う銘柄ではないが、割安感と安定配当を重視し、値動きの穏やかさを求める投資家が中長期で向き合うタイプの銘柄だと言える。

この記事の最終更新日:2025年12月13日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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