株価
アイルとは

アイルは、中堅・中小企業向けに販売管理・在庫管理を中心とした基幹業務システムを自社開発・提供する独立系IT企業である。特に、実店舗や訪問営業などのオフライン領域と、ECやクラウド、モバイルといったオンライン領域を統合管理する仕組みに強みを持ち、「Real」と「Web」のシナジーを軸にDXによる業務変革を支援している。
同社は、企業のビジネスモデルや業務プロセスが複雑化する中で、単なるIT導入ではなく、業務プロセスそのものを見直し、最適化・自動化することを重視している。AI、ビッグデータ、RPA、BPMといった先端技術を活用しつつも、技術導入そのものを目的化せず、企業本来のビジネス変革につなげる点を特徴としている。長年にわたり基幹業務システムとWebシステムの両方を手がけてきたことで、業界や業務に精通した営業・SEが、複雑な業務要件を分析し、最適なシステム設計を行える体制を構築している。
主力製品は、販売・在庫・生産管理システム「アラジンオフィス」である。導入実績は5,000社以上にのぼり、販売管理、在庫管理、生産管理に必要な機能をコンパクトにまとめた高機能パッケージとして提供されている。業種特有の商習慣への対応力が高く、ファッション、食品、医療、鉄鋼・非鉄金属、ねじ業界など幅広い分野で利用されている。カスタマイズ性にも優れており、卸売業、製造業、小売業など、業態ごとに最適なシステムを構築できる点が評価され、ユーザーリピート率は98.4%と高水準を維持している。
また、BtoB向けEC・Web受発注システム「アラジンEC」も展開している。企業間取引に必要な機能をパッケージ化し、取引形態に応じた柔軟なカスタマイズが可能なBtoB専用ECシステムである。FAXや電話注文をWeb化することで、受発注業務の効率化やミス削減を実現し、販促や得意先囲い込みといった用途にも活用されている。
さらに、複数ネットショップを一元管理するクラウドサービス「CROSS MALL」を提供している。複数のECサイトにまたがる在庫、商品、受注、発注・仕入を一括で管理でき、商品ページの一括登録にも対応している。多店舗運営に伴う業務を効率化・自動化し、EC事業者の運営負荷を大きく軽減するサービスとなっている。
実店舗とECを横断した顧客・ポイント管理を行う「CROSS POINT」も主力サービスの一つである。POSシステムやECシステムと連携し、ポイントや顧客情報、購買履歴を一元管理することで、チャネルをまたいだ顧客分析やマーケティング施策を可能にしている。メール配信やプッシュ通知、クーポン配信などを通じて、顧客接点やブランド力の強化にもつなげている。
そのほか、人材サービス業界向けに、スタッフ管理クラウドサービス「CROSS STAFF」を展開している。スタッフ情報や就業記録、帳票管理に加え、専用チャット機能によるコミュニケーション支援を行い、派遣会社や人材サービス企業の業務効率化を支援している。全体としてアイルは、基幹業務システムとWeb・EC領域を横断的にカバーし、実店舗とネットを統合した業務改革を得意とする企業である。中堅・中小企業の業務に深く入り込み、高いリピート率を背景に、ストック性のある安定した事業基盤を築いている点が特徴といえる。
アイル 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.7 | 12,944 | 2,100 | 2,121 | 1,377 | 55.0 | 18 |
| 連23.7 | 15,924 | 3,547 | 3,571 | 2,472 | 98.8 | 31 |
| 連24.7 | 17,508 | 4,263 | 4,285 | 2,887 | 115.4 | 41 |
| 連25.7(予) | 19,200 | 4,800 | 4,830 | 3,260 | 131.9 | 47 |
| 連26.7(予) | 21,200 | 5,600 | 5,630 | 3,800 | 153.8 | 47〜56 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.7 | 3,073 | -547 | -526 |
| 連24.7 | 2,637 | -712 | -901 |
| 連25.7 | 3,366 | -546 | -2,080 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 22.2% | 31.9% | 20.4% | ― | ― |
| 2024 | 24.3% | 29.8% | 20.3% | ― | ― |
| 2025 | 24.9% | 30.9% | 22.1% | 35.1倍(高) / 19.0倍(安) | 5.31倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益の推移を見ると、23年7月期は営業利益が約35.4億円、経常利益が約35.7億円、純利益が約24.7億円となっている。24年7月期には営業利益が約42.6億円、経常利益が約42.8億円、純利益が約28.8億円まで拡大しており、25年7月期予想では営業利益が約48.0億円、経常利益が約48.3億円、純利益が約32.6億円と、利益は一貫して右肩上がりで推移している。利益成長の継続性という点では非常に安定した数字である。
営業利益率は23年が22.2%、24年が24.3%、25年が24.9%と、もともと高水準であるうえに、年々改善している。中堅・中小企業向けの業務システムを主力とする企業としては極めて高い収益性であり、価格競争に陥りにくいビジネスモデルであることが数字から読み取れる。
ROEは23年31.9%、24年29.8%、25年30.9%と、3年連続で30%前後の非常に高い水準を維持している。ROAも23年20.4%、24年20.3%、25年22.1%と20%超を継続しており、資本効率・資産効率ともに国内上場企業の中でもトップクラスといえる水準である。利益成長が一時的なものではなく、構造的な高収益体質に支えられている点は大きな評価ポイントである。
一方、バリュエーションを見ると、25年の実績PERは高値平均で35.1倍、安値平均で19.0倍となっている。PBRは5.3倍で、ROEが30%前後であることを考えれば一定の合理性はあるものの、数値としては明確に割高圏に位置している。成長と高収益を前提にした評価であり、業績の伸びが鈍化した場合には評価調整が入りやすい水準ともいえる。
総合すると、この銘柄は営業利益、経常利益、純利益が着実に拡大し、営業利益率・ROE・ROAはいずれも非常に高い水準を維持している、質の高い成長企業であることが数字から明確に分かる。一方で、PER・PBRはすでに高水準であり、将来の成長をかなり織り込んだ株価水準にある。結論としては、事業の安定性と収益性という点では非常に魅力的だが、投資判断としては「安く買う」局面ではない。業績成長が続くことを前提に中長期で保有する成長株としては成立するが、短期的には評価の揺り戻しリスクも意識する必要がある銘柄、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
26年7月期、27年7月期ともに予想配当利回りは2.48%となっている。この水準は日本株全体で見れば平均前後からやや高めであり、配当をまったく意識しない成長株よりは、配当目的もある程度視野に入る水準といえる。利益面を見ると、営業利益率は20%台後半、ROEは30%前後、ROAも20%超と非常に高く、配当の原資となる収益力は十分にある。営業利益・純利益ともに右肩上がりで推移しており、短期的に減配リスクを強く意識する必要は小さい。事業のストック性も高く、配当の安定性という点では安心感がある。
一方で、2.48%という利回りは高配当株と呼べる水準ではない。配当収入を最優先に考える投資にはやや物足りず、あくまで「成長を前提にしつつ、配当もそこそこ受け取れる」位置づけになる。株価が上昇すれば利回りは低下しやすく、配当利回りそのものを狙う投資には向きにくい。
総合すると、この銘柄は配当を主目的とするよりも、業績成長と高い収益性を評価し、その結果として2%台後半の配当を受け取る投資と相性が良い。高配当株としての魅力は限定的だが、安定した配当と成長の両立を重視する中長期投資家にとっては、十分に検討余地のある銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価2,411.0円を起点に今後5年間を見据えると、アイルは中堅・中小企業向け基幹業務システムという安定した分野を主軸に、高い利益率と資本効率を維持しながら成長を続ける銘柄である。営業利益率は20%台後半、ROEは30%前後、ROAも20%超と極めて高水準で、株価はテーマ性よりも業績の積み上がりと収益性の高さを評価されやすい。一方で、PERやPBRはすでに高めであり、成長の鈍化には敏感に反応しやすい局面にある。
良い場合のシナリオでは、売上と利益が今後も年率1桁後半から2桁弱で成長し、営業利益率が25%前後、ROEも30%前後を安定的に維持できる展開を想定する。高収益体質が続けば、市場は引き続きプレミアム評価を許容し、PERは20倍前後で推移しやすい。この場合、株価は段階的に切り上がり、5年後の到達点は3,300~3,800円程度が意識される水準となる。
中間のシナリオでは、業績は拡大を続けるものの、成長率はやや鈍化し、利益率やROEも現在の水準で横ばいに近い推移となるケースを想定する。この場合、市場の評価は落ち着き、PERは15~18倍程度に収れんしやすい。株価は緩やかに推移し、5年後の到達点は2,600~2,900円程度が現実的な水準となる。
悪い場合のシナリオでは、IT投資の抑制や競争激化により、売上・利益の伸びが鈍化し、高収益への期待が後退するケースを想定する。評価の切り下げが進むと、PERは12~14倍程度まで低下しやすく、株価も調整局面に入りやすい。この場合、5年後の到達点は2,000~2,200円程度にとどまる可能性がある。
総合すると、現在値2,411.0円を起点としたアイルの今後5年間の値動きは、良い場合で3,300~3,800円前後、中間で2,600~2,900円、悪い場合で2,000~2,200円といったレンジが想定される。高配当株として突出した魅力はないものの、高い収益性と業績成長を背景に、中長期でじっくり値上がりと配当の両方を狙う投資家向けの銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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