株価
アバントグループとは

株式会社アバントグループは、連結会計分野に強みを持つITサービス企業グループで、連結会計システム「DivaSystem LCA」を中核に、経営管理やDX推進支援までを手がけている。東京証券取引所プライム市場に上場しており、JPX日経中小型株指数の構成銘柄にも選定されている。連結会計システムの分野では国内首位級のポジションを確立しており、上場企業や大企業グループを中心に高い導入実績を持つ。
同社の起源は株式会社ディーバにあり、連結会計ソフトウェアを強みとして事業を拡大してきた。2013年に持株会社制へ移行する際、事業部門を新設会社へ承継し、純粋持株会社としての機能を残したうえで商号を株式会社アバントに変更した。その後、2022年10月の事業再編により、現在の株式会社アバントグループという商号となり、グループ全体の経営戦略立案と管理を担う体制が整えられている。
アバントグループの事業は、大きく三つの柱で構成されている。一つ目は、連結会計システム「DivaSystem LCA」を中心とした連結会計ソリューションである。制度改正への対応や決算早期化、連結決算の高度化といったニーズに応え、会計業務の効率化と正確性向上を支援している。連結会計という専門性の高い分野に特化していることが、競争優位の源泉となっている。
二つ目の柱は、DX推進支援および経営管理分野である。経営情報管理ソフト「アバント」をはじめ、予算管理、管理会計、業績管理といった経営管理領域をカバーするソリューションを提供し、企業経営の可視化と高度化を支援している。会計データを起点に、経営判断に直結する情報基盤を構築できる点が特徴である。
三つ目は、プロフェッショナルサービスおよび周辺事業である。連結決算や開示業務に関するコンサルティング、BPOサービス、システム導入後の運用支援などを通じて、顧客企業の業務改革を継続的に支援している。ソフトウェアとサービスを組み合わせることで、単発ではなく長期的な取引関係を築きやすいビジネスモデルとなっている。
グループ会社には、株式会社アバント、株式会社ディーバ、株式会社インターネットディスクロージャー、株式会社ジール、株式会社VISTAなどがあり、それぞれが連結会計、開示、BI、DX支援などの役割を担っている。各社の専門性を組み合わせることで、企業の経営管理領域を幅広くカバーできる体制を構築している。総合すると、アバントグループは連結会計システムで築いた首位級の地位を基盤に、DX推進支援や経営管理ソリューションへと事業領域を広げてきた企業である。会計・経営管理という企業活動の中枢に深く入り込む高付加価値ビジネスを展開しており、専門性と継続性を武器に安定した成長を目指すBtoB向けITサービス企業グループといえる。
アバントグループ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益EPS(円) | 一株当り配当(DPS) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.6 | 16,236 | 2,796 | 2,808 | 1,888 | 50.2 | 11 |
| 連22.6 | 18,703 | 3,247 | 2,988 | 2,045 | 54.4 | 13 |
| 連23.6 | 21,424 | 3,289 | 3,265 | 2,094 | 55.7 | 15 |
| 連24.6 | 24,419 | 4,099 | 4,121 | 2,850 | 76.6 | 19 |
| 連25.6 | 28,227 | 4,604 | 4,613 | 3,434 | 94.2 | 25 |
| 連26.6予 | 33,000 | 5,100 | 5,100 | 3,500 | 95.9 | 32 |
| 連27.6予 | 38,500 | 5,700 | 5,700 | 3,910 | 107.1 | 32〜40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023 | 2,175 | -795 | -507 |
| 2024 | 3,680 | -630 | -1,981 |
| 2025 | 4,469 | -201 | -1,036 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 15.3% | 16.9% | 11.1% | — | — |
| 2024 | 16.7% | 21.4% | 13.0% | — | — |
| 2025 | 16.3% | 22.0% | 14.0% |
高値平均 24.8倍 安値平均 16.9倍 |
4.18倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、アバントグループの売上高は2024年6月期で244億円、2025年6月期で282億円、2026年6月期予想で330億円と、年を追って明確な成長が続いている。DX推進や経営管理高度化の需要を背景に、事業規模は着実に拡大しており、減速感は見られない。利益面では、営業利益が2024年40億円、2025年46億円、2026年予想で51億円と安定した増益基調にある。経常利益も同様に41億円、46億円、51億円と推移しており、利益の質は高い。純利益についても2024年28億円、2025年34億円、2026年予想で35億円と拡大しており、売上成長とともに最終利益もしっかり積み上がっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年15.3%、2024年16.7%、2025年16.3%と、15%台後半から16%台を安定して維持している。会計・経営管理系のSI・ソフトウェア企業としては高水準で、価格競争に陥らず付加価値で稼げていることが分かる。ROEは16.9%から22.0%へと大きく改善しており、資本効率は非常に良好である。ROAも11.1%から14.0%へ上昇しており、資産を効率的に使って利益を生み出している。
一方、バリュエーションを見ると、2025年実績PERは安値平均で16.9倍、高値平均で24.8倍と、成長性と高収益性を織り込んだ水準にある。PBRは4.1倍とかなり高く、純資産面から見た割安感はない。ただし、ROEが22.0%まで高まっている点を考えると、高PBR自体は一定程度正当化できる。これらを総合すると、アバントグループは売上・利益ともに明確な成長軌道にあり、営業利益率、ROE、ROAといった指標も非常に優秀な「成長性と収益性を兼ね備えた企業」と評価できる。事業内容も連結会計・経営管理という企業の中枢領域に深く入り込んでおり、業績の再現性は高い。
一方で、指標面だけで見ると株価評価はすでに一定の成長を織り込んでおり、PBR4倍超、PER20倍前後という水準は決して割安ではない。急激な上振れを狙うよりも、成長の持続性を確認しながら付き合う銘柄と言える。結論として、アバントグループは業績内容そのものは非常に良く、中長期での成長期待は高いが、数値だけで判断する限り「割安で買える局面」ではない。既に保有している場合は継続保有が妥当で、新規投資の場合は株価調整やPERが15倍台まで下がる局面を待ちたい、という投資判断になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的でアバントグループを見ると、結論から言えば配当狙いには向かない銘柄である。予想配当利回りは2026年6月期、2027年6月期ともに1.79%と低水準で、市場平均や高配当株と比べると明確に見劣りする。インカム収入を主目的とする投資では、魅力は乏しい数字である。
業績自体は非常に好調で、営業利益率は16%前後、ROEは20%超、ROAも14%程度と、収益力と資本効率は極めて高い。営業キャッシュフローも年々拡大しており、配当を出せない企業ではない。しかし、同社は成長投資を優先する方針が強く、稼いだ利益は配当よりも事業拡大や人材投資、M&Aなどに回されていると読み取れる。実際、PBRは4倍超と高く、市場はアバントグループを「配当を厚く出す企業」ではなく、「成長による企業価値向上を狙う企業」として評価している。配当水準も、利益成長に対して控えめで、利回りが大きく改善する構造にはなっていない。
そのため、配当目的で保有するよりも、成長株としての値上がり益を狙う銘柄という位置づけになる。配当はあくまでおまけ程度で、1.8%前後を安定的に受け取ることはできるが、インカムを重視する投資家には物足りない。総合すると、アバントグループは業績成長と高いROEを評価して中長期で保有する銘柄であり、配当収入を主目的とする投資には適さない。配当を重視するなら他銘柄を選び、成長性を重視するなら検討余地がある、という判断になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価1,784.0円を起点に今後5年間を見ると、アバントグループは連結会計・経営管理という専門性の高い分野で安定した成長を続ける企業であり、株価はテーマ性よりも業績の積み上がりと成長の持続性を評価されながら推移する銘柄である。売上・利益ともに拡大が続き、ROEは20%超と非常に高い一方、配当利回りは低く、株価は基本的に成長期待で動く構造にある。
良い場合のシナリオでは、DX投資やガバナンス強化の流れを背景に、連結会計・経営管理システムの需要が堅調に拡大し、売上が年率10%前後で成長するケースを想定する。営業利益率は16%前後を維持し、ROEも20%超が続けば、市場はアバントグループを「高成長・高効率な専門IT企業」として評価し続ける可能性が高い。この場合、PERは20〜25倍程度が許容され、EPSの成長とともに株価は段階的に切り上がる。5年後の株価は2,700円〜3,300円程度まで上昇する展開が考えられる。
中間のシナリオでは、業績は順調に伸びるものの、成長率は徐々に落ち着き、市場の評価も安定するケースを想定する。売上・利益は拡大を続けるが、PERは15〜18倍程度に収れんし、評価の上振れは限定的となる。この場合、株価は現在値1,784.0円を中心に推移し、5年後の水準は1,900円〜2,300円程度にとどまる。大きな値上がりはないが、業績悪化も起きにくく、緩やかな右肩上がりとなる。
悪い場合のシナリオでは、企業のIT投資が鈍化し、受注の伸びが想定を下回るケースを想定する。業績自体は黒字を維持するものの、成長期待が後退し、市場の評価が引き下げられる可能性がある。この場合、PERは12〜14倍程度まで低下し、株価は1,784.0円から1,200円〜1,450円程度まで調整する展開が考えられる。事業の競争力が失われるというより、評価の剥落による下落が中心となる。
総合すると、現在値1,784.0円を起点としたアバントグループの今後5年間の値動きは、良い場合で2,700円〜3,300円、中間で1,900円〜2,300円、悪い場合で1,200円〜1,450円といったレンジが想定される。配当目的には向かない一方で、業績成長と高い資本効率を評価し、中長期で値上がり益を狙う投資家向けの銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2025年12月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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