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三菱製紙(3864)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

三菱製紙とは

三菱製紙株式会社は、三菱グループに属する製紙会社であり、日本の製紙業界では中位クラス、業界6位前後のポジションに位置する企業である。印刷・情報用紙を主力としながら、写真感光材や水処理膜、不織布、電池材料などの機能材料分野にも事業を広げている点が特徴である。現在は王子ホールディングスが出資する持分法適用会社でもあり、三菱グループと王子グループの両方と関係を持つ製紙メーカーである。

事業の中心は印刷・情報用紙分野で、特に塗工紙と呼ばれる高級光沢紙などを得意としている。出版、商業印刷向けを中心に、品質重視の製品を展開してきた。一方で、国内の紙需要は構造的に縮小傾向にあり、従来型の印刷用紙だけに依存しない事業構造への転換が課題となっている。

このため同社は、写真感光材、フィルター、感光剤といった情報・機能系素材のほか、不織布、ガラス繊維ペーパー、リチウムイオン電池向けセパレーター、水処理用膜材料など、製紙技術を応用した高付加価値材料分野に注力している。これらの分野は紙とは異なる成長市場であり、三菱製紙にとっては将来の収益源として位置付けられている。

沿革を見ると、三菱製紙は長い歴史を持つ企業であり、品質重視・技術志向の企業文化を背景に、研究開発にも継続的に取り組んできた。2005年には中越パルプ工業との合併構想が発表されたものの、最終的には白紙撤回となった。その後、業界再編の流れの中で、2018年に王子ホールディングスとの資本業務提携を発表し、2019年には第三者割当増資を通じて王子HDの持分法適用会社となった。これにより、業界大手との連携を活かした事業基盤の強化を進めている。

拠点は全国に分散しており、本社は東京都墨田区両国に置かれている。生産拠点としては、高砂工場、京都工場、八戸工場、北上工場、白河事業所などを有し、用途や製品特性に応じた生産体制を構築している。また、高砂および京都にはR&Dセンターを設け、紙・機能材料の両分野で研究開発を行っている。

グループ会社には、特殊紙、林産、化学関連などを担う企業があり、製紙を軸にしながらも周辺領域を含めた事業展開を行っている。王子HDとの関係を通じて、販売や調達、技術面でのシナジーを活かす余地も持っている。全体として三菱製紙は、印刷・情報用紙という成熟市場を基盤としつつ、機能材料分野へのシフトを進めている過渡期の企業である。規模では業界最大手には及ばないものの、技術力とニッチ分野への対応力を強みに、収益構造の転換を模索している製紙メーカーと言える。

三菱製紙 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
純利益
(百万円)
一株益
(円)
一株当り配当
(円)
連23.3 209,542 968 3,089 -571 -13.0 5
連24.3 193,462 5,410 7,098 4,170 95.3 10
連25.3 175,942 4,567 4,548 4,343 99.1 15
連26.3(予) 175,000 6,500 6,500 2,850 65.0 15
連27.3(予) 180,000 7,500 7,500 4,400 100.3 15

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF
(百万円)
投資CF
(百万円)
財務CF
(百万円)
連23.3 -2,721 -3,565 5,209
連24.3 13,487 3,827 -16,264
連25.3 4,854 4,797 -13,402

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

営業利益率 ROE ROA PER(実績) PBR(実績)
2023 0.4% -0.8% -0.3%
2024 2.7% 4.5% 1.7%
2025 2.5% 5.0% 2.0% 7.8倍(高) / 4.2倍(安) 0.34倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

三菱製紙の業績を数字だけで見ていくと、まず24年3月期は売上が約1,934億円に対して、営業利益が約54億円、経常利益が約71億円、純利益が約41億円となっており、前期までの低迷局面からは明確に黒字へ回復している。ただし、売上規模に比べると利益額は小さく、収益力が十分に戻ったとは言いにくい水準である。25年3月期は売上が約1,759億円へ減少しているが、営業利益は約45億円、経常利益は約45億円、純利益は約43億円と、利益水準はほぼ横ばいを維持している。売上が縮小する中でも黒字を確保できている点は評価できるものの、成長というよりは守りを重視した安定運営の色が強い内容となっている。

26年3月期予想では、売上は約1,750億円と引き続き横ばいだが、営業利益と経常利益はともに約65億円まで回復する見通しとなっている。一方で純利益は約28億円とやや減少する計画であり、営業面の改善と最終利益の伸びが必ずしも連動していない点には注意が必要である。収益性を見ると、営業利益率は23年の0.4%から24年に2.7%、25年に2.5%と改善しているものの、依然として2%台にとどまっている。製紙業という業界特性を踏まえても高い水準とは言えず、利益率の低さは構造的な課題として残っている。

ROEは23年が-0.8%、24年が4.5%、25年が5.0%とマイナス圏からは脱却しているが、資本効率はまだ低い。ROAも-0.3%、1.7%、2.0%と同様で、保有資産に対して利益を生み出す力は限定的である。バリュエーション面では、25年の実績PERは高値平均で7.8倍、安値平均で4.2倍と非常に低く、市場はこの会社を成長株としてはほとんど評価していないことが分かる。PBRも0.34倍と純資産に対して大きく割り引かれており、将来の収益性に対する期待の低さがそのまま株価に反映されている。

全体として三菱製紙は、赤字状態を脱して低水準ながらも安定した黒字を確保できる段階に入っている。一方で、営業利益率、ROE、ROAはいずれも低く、事業構造が大きく変わったと評価できる状況には至っていない。PBRの低さはバリュー面での魅力ではあるが、それは収益力に対する市場の慎重な見方の裏返しとも言える。

結論として、この銘柄は高成長や高効率を期待して買うタイプではなく、業績の底打ちと緩やかな改善を前提に、時間をかけて評価が修正される可能性に賭けるバリュー・再建寄りの投資向きである。利益率がもう一段改善し、ROEが安定して一桁後半に近づく兆しが見えてくるかどうかが、今後の評価を左右するポイントになる。

配当目的とかどうなの?

配当目的という視点で三菱製紙を見ると、主力の配当銘柄としてはやや物足りないという評価になる。26年3月期、27年3月期ともに予想配当利回りは2.32%で、無配や極端に低い水準ではないものの、高配当株として魅力を感じる水準ではない。一般的に配当目的で選ばれやすい銘柄が3~4%台を一つの目安とすると、三菱製紙の利回りはその基準には届いていない。

配当の安定性という点でも、過去を振り返ると業績の変動が大きく、23年3月期は最終赤字で配当も低水準に抑えられていた。24年3月期以降は黒字回復とともに配当を引き上げているが、営業利益率やROEがまだ低く、配当余力が十分に積み上がっているとは言いにくい状況である。

また、製紙事業は設備投資や維持更新に継続的な資金を要する資本集約型のビジネスであり、利益が出てもすぐに配当として還元しにくい構造を持つ。そのため、配当を大きく増やすよりも、まずは財務の安定や事業再構築を優先する局面が続きやすい。

一方で、完全に配当不向きというわけではない。2%台前半の利回りを確保しながら、業績の底打ちと緩やかな改善を待つという位置付けであれば、一定の納得感はある。ただし、配当そのものを主目的に長期保有する銘柄ではなく、配当はあくまで補助的なリターンと考えるべきである。総合すると、三菱製紙は配当目的の中核銘柄には向かず、業績回復やPBRの低さを評価したバリュー投資の中で、配当は「もらえれば良い」程度に捉えるのが現実的な銘柄と言える。

今後の値動き予想!!(5年間)

現在の株価644.0円を起点に今後5年間を見ると、三菱製紙は印刷・情報用紙という成熟市場を主軸にしながら、機能材料分野への転換を進めている過渡期の企業であり、株価は成長期待よりも業績の底打ち確認と割安修正の度合いによって動きやすい銘柄といえる。営業利益率やROEは改善傾向にあるものの、依然として低水準であり、市場の評価は慎重なまま推移しやすい。

良い場合のシナリオでは、26年3月期以降に営業利益が60~70億円規模で安定し、営業利益率が3%前後まで改善する展開を想定する。機能材料分野の収益寄与が徐々に高まり、業績のブレが小さくなれば、市場は「低収益だが安定した素材企業」として評価を見直す可能性がある。この場合、PERは現在と同程度の低水準を維持しつつ、PBRが0.5倍前後まで切り上がる余地がある。株価は段階的に上昇し、5年後の到達点は900~1,100円程度が意識される展開が考えられる。

中間のシナリオでは、業績は黒字を維持するものの、営業利益率は2%台にとどまり、ROEやROAも一桁前半で推移するケースを想定する。印刷用紙の縮小と機能材料の成長が相殺され、全体としては横ばい基調が続く。この場合、市場評価は大きく変わらず、PBRは0.3倍台で推移しやすい。株価は現在値644.0円を中心としたレンジ相場となり、5年後の水準は650~750円程度が現実的な到達点になる。

悪い場合のシナリオでは、紙需要の減少が想定以上に進み、機能材料分野の収益化も遅れることで、営業利益が再び大きく落ち込むケースを想定する。利益率が1%台まで低下すれば、市場の評価はさらに厳しくなり、PBRも0.2倍台まで低下する可能性がある。この場合、株価は下値を探る展開となり、5年後の到達点は400~550円程度にとどまる展開が考えられる。

総合すると、現在値644.0円を起点とした三菱製紙の今後5年間の値動きは、良い場合で900~1,100円、中間で650~750円、悪い場合で400~550円といったレンジが想定される。高成長や高配当を期待する銘柄ではなく、業績の底打ちと割安修正を待ちながら、時間をかけて向き合うバリュー・再建型の投資向けの銘柄と言える。

この記事の最終更新日:2025年12月14日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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