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大王製紙(3880)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

大王製紙とは

大王製紙株式会社は、愛媛県四国中央市と東京都千代田区に本社を置く日本有数の大手製紙メーカーである。製紙業界においては、生産量ベースで国内第4位に位置し、紙・板紙と家庭用紙の両分野を手がける総合製紙会社として確固たる地位を築いている。とりわけ家庭用品ブランド「エリエール」で広く知られており、家庭紙分野では国内首位クラスの存在感を持つ企業である。みどり会の会員企業で三和グループに属し、北越コーポレーションが持分を保有する関連会社でもある。

紙・板紙の年間生産量は約270万トン規模で、新聞用紙、印刷・情報用紙、包装用紙、段ボール原紙など、用途の異なる多様な製品を展開している。これらの製品は出版・広告、物流、産業用途など幅広い分野で使用されており、国内製紙産業の基盤を支える役割を担っている。一方で、衛生用紙分野では生産量ベースで国内市場シェア約15%を誇り、家庭用紙におけるトップメーカーとしての地位を確立している。

事業は大きく三つのセグメントに分かれている。第一は新聞用紙や印刷用紙、段ボール原紙などを含む紙・板紙事業で、売上高の約7割を占める主力事業である。第二は家庭用紙や紙おむつ、生理用品などを扱うホーム&パーソナルケア事業で、売上構成比は約3割となっている。第三はその他事業であり、全体に占める割合は小さいが、周辺領域を補完する役割を果たしている。

ホーム&パーソナルケア事業は、大王製紙の競争力を象徴する分野である。ティッシュペーパーやトイレットペーパーといった家庭紙に加え、ベビー用紙おむつ、大人用紙おむつ、生理用品、介護用品、吸水ケア用品など、生活に密着した製品を幅広く展開している。中核ブランドである「エリエール」は、衛生用紙分野において国内トップクラスのシェアを誇り、同社の収益とブランド価値を支える存在となっている。

エリエールブランドの下には、ベビー用紙おむつの「GOO.N」、介護・大人用紙おむつの「アテント」、生理用品の「elis」など、用途別に確立された派生ブランドが存在する。これらは単なる紙製品にとどまらず、肌へのやさしさや吸収性能、使いやすさといった付加価値を重視した商品設計が特徴であり、消費者向けブランドとしての競争力を維持している。また、業務用紙加工製品などBtoB向け製品も展開し、販路の多様化を進めている。

沿革をたどると、大王製紙は1941年に愛媛県で設立された四国紙業を起源とし、1943年に複数の紙関連企業が合併することで現在の基盤が形成された。製紙産業が集積する四国中央市を生産の中核としつつ、1989年からは東京本社との二本社制を採用し、経営・営業機能を全国展開している。大阪、名古屋、福岡といった主要都市にも拠点を持ち、全国規模での事業運営体制を構築している。

近年では、2017年に日清紡ホールディングスの紙製品事業を取得し、家庭用紙・業務用紙分野を強化した。これにより、製品ラインアップの拡充とブランド統合を進め、エリエールブランドの存在感をさらに高めている。加えて、海外市場の開拓にも力を入れており、国内需要が成熟する中で成長余地を海外に求める戦略を進めている。総合すると、大王製紙は、紙・板紙という伝統的な基盤事業と、エリエールを中心とした家庭用紙・衛生用品事業を両輪とする総合製紙メーカーである。成熟産業に属しながらも、生活必需品である家庭紙分野を強みに持ち、安定性とブランド力を背景に事業を展開している点が、この企業の最大の特徴といえる。

大王製紙 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益 EPS(円) 一株当り配当(円)
連23.3 646,213 -21,441 -24,050 -34,705 -209.0 16
連24.3 671,688 14,367 9,622 4,507 27.1 16
連25.3 668,912 9,807 4,530 -11,197 -67.3 14
連26.3予 670,000 22,000 14,000 5,000 30.0 14
連27.3予 680,000 25,000 17,000 10,000 60.1 14〜16

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023年3月期 -26,233 -57,950 96,437
2024年3月期 59,297 -26,543 -13,612
2025年3月期 44,649 -20,901 -35,486

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率(%) ROE(%) ROA(%) PER(倍) PBR(倍)
2023年3月期 -3.4% -14.8% -3.8%
2024年3月期 2.1% 1.8% 0.4%
2025年3月期 1.4% -4.8% -1.3% 高値平均 48.8 / 安値平均 37.2 0.64

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず売上高を見ると、24.3期は6716億、25.3期は6689億、26.3期予は6700億となっており、事業規模は大きいものの成長性はほぼ横ばいである。製紙・家庭紙という成熟産業の特性を考えれば極端な落ち込みがない点は評価できるが、売上拡大による成長期待は持ちにくい。

次に利益面を見る。営業利益は24.3期143億、25.3期98億、26.3期予220億となっており、25.3期に大きく落ち込んだ後、26.3期予で急回復を見込んでいる。経常利益も24.3期96億、25.3期45億、26.3期予140億と同様の動きで、利益水準の振れ幅が非常に大きい。純利益は24.3期45億の黒字から25.3期に-111億の赤字へ転落し、26.3期予で50億の黒字回復見込みとなっているが、純利益の安定性は明らかに低い。

収益性を見ると、営業利益率は2023年-3.4%、2024年2.1%、2025年1.4%である。赤字状態からは脱したものの、黒字幅は小さく、むしろ直近では低下している。構造的に高収益な体質に転換したとは言い難く、外部環境やコスト要因の影響を受けやすい状態が続いていると考えられる。資本効率を示すROEは2023年-14.8%、2024年1.8%、2025年-4.8%であり、黒字化しても株主資本を有効に使えているとは言えない。ROAも2023年-3.8%、2024年0.4%、2025年-1.3%と低水準で、総資産に対する収益力は弱い。事業規模の大きさに対して利益が十分に乗っていないことが数字からはっきり読み取れる。

バリュエーションを見ると、2025年の実績PERは高値平均48.8倍、安値平均37.2倍と非常に高い。一方でPBRは0.6倍となっており、資産価値面では割安に見える。ただし、この低PBRはROEの低さを反映した結果であり、単純な割安とは言えない。利益水準が低いためPERが極端に高くなっている状態で、回復期待がなければ正当化しにくい評価水準である。

以上を総合すると、この銘柄は売上規模は大きく安定しているものの、利益の変動が激しく、営業利益率・ROE・ROAはいずれも低水準にとどまっている。PBRは0.6倍と一見割安だが、PERは40倍前後と高く、業績回復を前提にした評価がすでに株価に織り込まれていると考えられる。

この数値だけで判断するなら、現時点の大王製紙は安定成長株でも安心して持てる高配当株でもなく、業績回復が本物かどうかを見極める段階にある再建途上の銘柄である。黒字回復が数年続き、営業利益率とROEが明確に改善しない限り、評価が大きく切り上がる可能性は限定的であり、投資判断としては慎重寄り、積極的に買いに行く局面ではないという結論になる。

配当目的とかどうなの?

予想配当利回りは26.3期、27.3期ともに1.55%と低水準である。国内株の配当投資という観点では、特別に魅力がある水準とは言えず、インカム目的で選ばれる利回りではない。業績面を踏まえると、この低利回りは必ずしも「余力があって抑えている配当」というより、「配当を積極的に増やせる段階にない」ことの表れと考える方が自然である。

直近数年では純利益が大きく振れており、25.3期には赤字に転落している。26.3期予では黒字回復を見込んでいるものの、営業利益率は1%台、ROEとROAもマイナス水準にあり、安定して配当原資を積み上げられる体質とは言い難い。

PBRは0.6倍と低いが、ROEがマイナスである以上、資産価値に対して株主還元が弱い状態が続いている。PERも回復期待込みで高水準にあり、配当利回りの低さを株価上昇で補える状況とも言いにくい。

以上を踏まえると、この銘柄は配当目的には明確に不向きである。利回りが低く、将来的な増配期待も現時点では描きにくい。配当を軸に長期保有する銘柄ではなく、あくまで業績回復や事業再建が進むかどうかを見極めるための銘柄であり、インカム投資として選ぶ理由は乏しいという判断になる。結論として、大王製紙は配当目的で保有する銘柄ではなく、配当を重視する投資家にとっては他に優先すべき選択肢が多い水準である。

今後の値動き予想!!(5年間)

現在の株価903.0円を起点に今後5年間を見据えると、大王製紙は紙・家庭紙という成熟産業に属する大手企業であり、テーマ性や高成長期待で株価が急騰するタイプではない。一方で事業規模は大きく、黒字回復が定着すれば一定の評価修正余地はあるが、収益性と資本効率の低さが上値を抑えやすい構造にある。

良い場合のシナリオでは、業績回復が想定どおり進み、営業利益が200億円前後で安定し、純利益も黒字を継続するケースを想定する。営業利益率は1%台後半から2%程度まで改善し、ROEもプラス圏で安定する。この場合、市場は最悪期を脱したと判断し、PBRは0.6倍から0.8倍程度まで見直される可能性がある。ただし成長企業として評価されるわけではないため、PERは高水準を維持しつつも大きくは拡張しにくい。株価は段階的に切り上がり、5年後には1,200円~1,500円程度まで上昇する展開が考えられる。

中間のシナリオでは、売上は横ばい、利益は黒字を維持するものの改善は限定的なケースを想定する。営業利益は100億円台後半から200億円弱で推移し、営業利益率は1%前後にとどまる。ROEは低水準のままで、PBRも0.6倍前後から大きく動かない。この場合、市場の評価は慎重なままで、株価は現在値903.0円を中心としたレンジ相場になりやすい。5年後の水準としては900円~1,100円程度が現実的な到達点となり、値上がり益よりも横ばい推移が続く可能性が高い。

悪い場合のシナリオでは、業績回復が一時的に終わり、再び利益が不安定化するケースを想定する。営業利益率は1%を下回り、純利益も赤字と黒字を行き来する状態が続く。ROEはマイナス圏にとどまり、市場の評価はさらに厳しくなる。この場合、PBRは0.5倍を割り込み、株価は下値を探る展開となる。1年から2年で700円前後まで下落し、その後も大きな回復は見られず、5年後でも700円~850円程度にとどまる可能性がある。

総合すると、現在値903.0円を起点とした今後5年間の値動きは、良い場合で1,200円~1,500円前後、中間で900円~1,100円、悪い場合で700円~850円といったレンジが想定される。大きな成長や高配当を狙う銘柄ではなく、業績回復がどこまで定着するかを見極める再建色の強い銘柄であり、値動きも比較的緩やかになりやすい。

この記事の最終更新日:2025年12月14日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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