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日本製紙(3863)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

日本製紙とは

日本製紙株式会社は、日本第2位、世界でも上位に位置する大手製紙メーカーであり、日本製紙グループの中核会社である。新聞用紙や印刷用紙、段ボール原紙といった産業用紙から、ティシューペーパーやトイレットペーパーなどの家庭紙、さらに木材・化成品・機能性素材まで、木材資源を基盤とした幅広い事業を展開している。三井グループおよび芙蓉グループに属し、長い歴史と業界内での高い存在感を持つ企業である。

同社の前身は、十條製紙、東北振興パルプ、山陽国策パルプ、大昭和製紙の4社であり、これらが段階的に合併・統合されて現在の日本製紙が形成された。十條製紙は旧王子製紙の分割によって誕生した企業であり、日本の製紙産業の中核的な流れを汲んでいる。2003年に大昭和製紙と合併し、さらに板紙、紙パック、化成品部門、持株会社機能を統合することで、現在の事業体制が確立された。

主力事業は紙・板紙事業である。新聞用紙、印刷出版用紙、情報用紙、産業用紙を中心に製造・販売しており、特に新聞用紙では国内シェア約37%と圧倒的な地位を占めている。段ボール原紙や包装用途など、比較的需要が安定している分野にも注力している。生活関連事業では、日本製紙クレシアを中心に、家庭紙や紙パック、包装関連製品を展開している。生活必需品を扱う分野であり、景気変動の影響を受けにくい点が特徴である。また、木材・建材・土木関連事業では、外材や建材、パルプ材の販売、建築・土木工事など、森林資源を活用した事業を展開している。

海外事業では、かつてオーストラリアでグラフィック用紙事業を展開していたが、森林火災や原材料調達問題を背景に、2023年に豪州でのグラフィック用紙事業から撤退を決定した。この撤退に伴い、特別損失や減損損失を計上しており、海外事業のリスク管理が経営課題として浮き彫りになった。一方で、オセアニア地域では段ボール・パッケージ分野を中心に再編を進めてきた経緯もある。

国内には、石巻工場、富士工場、岩国工場といった基幹工場を有し、新聞用紙、印刷出版用紙、情報用紙、パルプなどを生産している。これらの工場は長い操業実績を持ち、日本の紙供給を支えてきた重要な拠点である。全体として日本製紙は、伝統的な製紙事業を基盤としつつ、家庭紙や包装、木材・建材といった分野へ事業を広げてきた総合素材メーカーである。一方で、紙需要の構造変化や海外事業の不確実性といった課題も抱えており、今後は事業の選択と集中、環境対応、収益構造の改善が重要なテーマとなる企業である。

日本製紙 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
純利益
(百万円)
一株益
(円)
一株当り配当
(円)
連23.3 1,152,645 -26,855 -24,530 -50,406 -436.3 0
連24.3 1,167,314 17,266 14,550 22,747 197.1 10
連25.3 1,182,431 19,706 15,505 4,539 39.3 10
連26.3(予) 1,205,000 34,000 26,000 12,000 104.0 15
連27.3(予) 1,225,000 36,000 28,000 14,000 121.3 15〜20

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF
(百万円)
投資CF
(百万円)
財務CF
(百万円)
連23.3 65,823 -68,018 6,976
連24.3 90,283 -22,031 -46,566
連25.3 72,790 -33,435 -18,274

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

決算期 営業利益率 ROE ROA PER(実績) PBR(実績)
2023 -2.4% -12.8% -3.1%
2024 1.4% 4.8% 1.3%
2025 1.6% 0.9% 0.2% 30.3倍(高) / 20.8倍(安) 0.27倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず利益の推移を見ると、24年3月期は売上が約1兆1,673億円に対して、営業利益は約172億円、経常利益は約145億円、純利益は約227億円となっており、前期の大赤字から明確に黒字へ回復している。一方で、利益規模としては売上に対してまだ小さく、収益力が十分に戻ったとは言いにくい水準である。25年3月期になると、売上は約1兆1,824億円と微増し、営業利益は約197億円、経常利益は約155億円とやや改善しているが、純利益は約45億円まで大きく減少している。これは一時的な要因の影響が大きいと考えられるものの、最終利益の不安定さが目立つ内容であり、利益構造の脆さは残っている印象を受ける。

26年3月期予想では、売上が約1兆2,050億円、営業利益が約340億円、経常利益が約260億円、純利益が約120億円と、再び利益水準が持ち直す見通しとなっている。特に営業利益は前期比で大きく伸びる計画であり、構造改革や市況改善の効果が数字に反映される前提となっている。次に収益性指標を見ると、営業利益率は23年が-2.4%、24年が1.4%、25年が1.6%と、赤字からは脱却しているものの、依然として極めて低い水準にとどまっている。製紙大手という事業特性を考慮しても、利益率の低さはこの企業の構造的な課題を示している。

ROEは23年が-12.8%、24年が4.8%、25年が0.9%と、黒字化したにもかかわらず再び低下しており、株主資本を十分に活用できているとは言い難い。ROAも-3.1%、1.3%、0.2%と非常に低く、巨額の資産を抱える事業モデルに対して、利益創出力が追いついていない状況が続いている。バリュエーション面では、25年実績PERは高値平均で30.3倍、安値平均で20.8倍となっており、利益水準が低い中で見ると割安とは言いにくい。一方で、PBRは0.27倍と極端に低く、純資産価値に対して株価が大きくディスカウントされている。これは資産の多さよりも、将来の収益性に対する市場の評価が非常に厳しいことを示している。

総合すると、日本製紙は赤字期を脱して業績回復局面にはあるものの、営業利益率、ROE、ROAはいずれも低水準で、収益体質が抜本的に改善したとは言えない段階にある。PBRの低さは魅力的に見える一方で、それは収益力への不信感の裏返しとも言える。結論として、この銘柄は高成長株や効率重視の投資には向かず、業績回復と構造改善がどこまで進むかを見極めながら向き合う、再建・バリュー寄りの投資対象といえる。短期的な評価改善を狙うよりも、利益率の持続的な改善が確認できるかどうかが、投資判断の分かれ目になる銘柄である。

配当目的とかどうなの?

配当目的という観点で見ると、日本製紙は積極的に選ぶ銘柄とは言いにくい、という評価になる。26年3月期、27年3月期ともに予想配当利回りは1.35%と低く、インカム目的で株を保有するには物足りない水準である。特に、同じ高配当目的で選ばれやすい電力、通信、商社、銀行と比べると、配当水準には明確な見劣りがある。

背景として、利益水準がまだ不安定である点が大きい。24年3月期に黒字転換したものの、25年3月期は純利益が約45億円まで落ち込んでおり、収益のブレが大きい。営業利益率やROE、ROAも依然として低水準で、配当を継続的に増やしていけるだけの余力が十分とは言えない。また、製紙事業は設備投資や維持更新に多額の資金を必要とする資本集約型ビジネスであり、キャッシュフローの優先順位としては、まず事業の安定化と財務体質の改善が重視されやすい。そのため、余剰資金を株主還元に大きく振り向けにくい構造になっている。

一方で、無配や減配のリスクが極端に高いわけではない。26年3月期以降は配当を15円に引き上げる予想となっており、最低限の安定配当を維持しようとする姿勢は見える。ただし、配当利回りが1%台にとどまる以上、「配当を受け取りながら長期保有する」タイプの投資には向かない。総合すると、日本製紙は配当目的の主力銘柄には不向きであり、選ぶとすれば業績回復やPBRの低さを評価したバリュー・再建期待の投資の中で、配当はあくまで副次的な要素として考える銘柄である。インカムを重視する投資家にとっては、他により適した選択肢があると言える。

今後の値動き予想!!(5年間)

現在の株価1,110.0円を起点に今後5年間を見ると、日本製紙は業績回復の初期段階にありながらも、構造的な低収益体質を抱える大型素材株であり、株価は成長期待よりも回復度合いと財務安定性を見ながら評価されやすい銘柄である。PBRは0.3倍未満と極端に低く、資産価値面での下値余地は限定されやすい一方、営業利益率やROEが低いため、高い成長プレミアムが付く局面は想定しにくい。

良い場合のシナリオでは、26年3月期以降に計画どおり営業利益が300億円台まで回復し、営業利益率が2%前後まで安定する展開を想定する。構造改革や不採算事業の整理が進み、利益の振れが小さくなれば、市場は「再建が一巡した素材株」として評価を見直す可能性がある。この場合、PERは15~18倍程度まで切り下がりつつも、利益水準の安定を背景にPBRが0.4~0.5倍程度まで修正される余地がある。株価は段階的に切り上がり、5年後の到達点は1,400~1,600円程度が意識される展開が考えられる。

中間のシナリオでは、業績は黒字を維持するものの、営業利益率は1%台にとどまり、ROEやROAも低水準のまま推移するケースを想定する。市況や原燃料価格の影響を受けやすく、利益の上下を繰り返す中で、市場評価は大きく変わらない。この場合、PBRは0.3倍前後で推移しやすく、株価は現在値1,110.0円を中心にレンジ相場となる。5年後の水準としては1,050~1,250円程度が現実的な到達点となり、大きな値上がりも値下がりも限定的な展開になる。

悪い場合のシナリオでは、業績回復が想定ほど進まず、営業利益が再び100億円台まで落ち込み、利益率も1%を下回るケースを想定する。構造改革の効果が薄れ、原材料高や需要低迷の影響を受ければ、市場の評価はさらに厳しくなる。この場合、PBRは0.2倍台まで低下し、株価は下値を探る展開となる。5年後の到達点は800~950円程度にとどまり、配当利回りも低いため下支えは限定的となる。

総合すると、現在値1,110.0円を起点とした日本製紙の今後5年間の値動きは、良い場合で1,400~1,600円、中間で1,050~1,250円、悪い場合で800~950円といったレンジが想定される。高成長や高配当を期待する銘柄ではなく、PBRの低さと業績回復の進捗を見極めながら、バリュー・再建型として中長期で向き合う投資家向けの銘柄と言える。

この記事の最終更新日:2025年12月14日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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