株価
朝日ネットとは

株式会社朝日ネットは、「ASAHIネット」の名称で全国展開する独立系インターネットサービスプロバイダで、東京証券取引所プライム市場に上場している。老舗ISPの一社として長い歴史を持ち、通信の安定性と信頼性を重視した事業運営を特徴としている。個人向けインターネット接続サービスを基盤としつつ、法人や教育・研究機関向けにもサービスを提供しており、ストック型収益を中心とした安定した事業構造を持つ企業である。
同社のルーツは1988年に朝日新聞社が開始したパソコン通信サービス「ASAHIパソコンネット」にある。1990年には朝日新聞社とトランスコスモスの出資により株式会社アトソンが設立され、サービス運営を引き継いだ。その後、1993年にサービス名称を「ASAHIネット」に変更し、1994年から本格的にインターネット接続サービスを開始した。2000年には経営陣と社員によるマネジメント・バイアウトを実施し、朝日新聞社との資本関係を解消、名実ともに独立系通信事業者として再スタートを切っている。
主力事業であるインターネット接続サービスでは、ASAHIネットブランドで全国にサービスを提供している。光回線を中心に、IPv6接続など次世代インターネット技術にも早期から対応しており、通信品質やサポート体制を重視する利用者層を中心に顧客基盤を築いてきた。価格競争を前面に出す事業者とは一線を画し、安定性や信頼性を重視する姿勢が長期利用会員の多さにつながっている。
朝日ネットの大きな特徴として、教育・学術分野への強い関与が挙げられる。2007年に開発したクラウド型教育支援システム「manaba(マナバ)」は、大学を中心に多くの教育機関で採用されており、同社の重要な成長分野となっている。授業支援、課題提出、学習管理などを行う学習管理システムとして、教育現場のICT化を支えてきた。国内だけでなく海外にも展開しており、米国子会社を通じた教育支援サービスの拡大も行っている。
沿革を振り返ると、2006年に東京証券取引所第二部へ上場し、その後第一部、現在のプライム市場へと指定替えされている。2010年にはIPv6事業推進を目的とした会社設立に関与するなど、次世代ネットワーク技術への対応にも積極的である。2013年には朝日新聞社と再び業務・資本提携を行い、教育・学術分野での成長を見据えた関係を再構築した点も特徴的である。また、情報セキュリティへの取り組みも重視しており、ISMSの国際規格であるISO/IEC27001を全社で取得し、プライバシーマークも取得済みである。通信事業者として、情報の安全性や個人情報保護を重視した運営を行っている。
総合すると、朝日ネットは、老舗独立系ISPとして培ってきた通信サービスの安定性を基盤に、IPv6などの先端技術対応と、大学向け教育支援システム「manaba」という独自性の高いクラウドサービスを併せ持つ企業である。派手な成長や話題性は少ないものの、通信と教育という分野で着実に顧客を積み上げ、長期的に安定した収益を生み出す堅実なITサービス企業と言える。
朝日ネット 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益EPS(円) | 一株当り配当(DPS) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 単23.3 | 12,170 | 1,841 | 1,846 | 1,285 | 45.9 | 22.5 |
| 単24.3 | 12,217 | 1,965 | 1,986 | 1,289 | 46.5 | 23 |
| 単25.3 | 13,078 | 2,345 | 2,364 | 1,752 | 65.0 | 24.5 |
| 単26.3予 | 13,500 | 2,400 | 2,400 | 1,700 | 65.6 | 25〜25.5 |
| 単27.3予 | 14,000 | 2,500 | 2,500 | 1,750 | 67.5 | 25〜26 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023 | 1,363 | -1,093 | -615 |
| 2024 | 2,468 | -1,770 | -836 |
| 2025 | 2,462 | -563 | -1,247 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 15.1% | 10.7% | 9.4% | — | — |
| 2024 | 16.0% | 10.3% | 9.0% | — | — |
| 2025 | 17.9% | 13.3% | 11.8% |
高値平均 13.2倍 安値平均 11.1倍 |
1.37倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、朝日ネットの売上高は2024年3月期で122億円、2025年3月期で130億円、2026年3月期予想で135億円と、規模は大きくないものの着実に拡大している。ISP事業を中心としたストック型収益モデルらしく、急成長ではないが減速感もなく、安定した成長軌道にあることが数字から読み取れる。
利益面では、営業利益が2024年19億円、2025年23億円、2026年予想24億円と右肩上がりで推移している。経常利益も2024年19億円、2025年23億円、2026年予想24億円とほぼ同様の動きで、事業構造のシンプルさと利益の再現性が高いことが分かる。純利益は2024年12億円から2025年17億円へ大きく伸びるが、2026年予想では17億円と横ばい見通しで、利益成長は一段落する形となっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年15.1%、2024年16.0%、2025年17.9%と年々改善しており、通信・ISP業界としては非常に高い水準にある。価格競争を抑えつつ、付加価値サービスやコスト管理がうまく機能していることが数字に表れている。ROEは2023年10.7%、2024年10.3%、2025年13.3%と安定して10%を超えており、株主資本を効率的に使えている。ROAも9.4%から11.8%へと改善しており、資産効率もかなり良好である。
一方で評価面を見ると、2025年実績PERは高値平均13.2倍、安値平均11.1倍と、市場全体と比べても低めの水準にある。営業利益率が15%超、ROEが10%以上という収益性を考慮すると、PER10倍台前半は割安感がある。PBRも1.3倍で、資産価値から見ても過度な割高感はない。
これらを総合すると、朝日ネットは規模は小さいものの、安定成長、高収益、高効率という三拍子がそろった企業と言える。業績のブレが小さく、利益の質も高い一方で、株価評価は比較的控えめで、過度な成長期待は織り込まれていない。
結論としては、数字だけで判断する限り、朝日ネットは「安定収益型で割安寄りの銘柄」と評価できる。急激な株価上昇を狙う銘柄ではないが、業績の安定性と収益性を重視する中長期投資、特に配当を含めたトータルリターン狙いには適した水準にある。既に保有していれば安心して持ち続けやすく、新規でも大きな割高感を気にせず検討できる、堅実寄りの投資判断となる。
配当目的とかどうなの?
配当目的で朝日ネットを見ると、結論から言えば「配当を主目的にしても十分検討できる銘柄」であり、これまで見てきた業績や指標と照らしても、配当の安定性と水準のバランスはかなり良い。まず予想配当利回りは、2026年3月期で3.65%、2027年3月期でも3.65%と、東証全体の平均を明確に上回る水準にある。いわゆる高配当株と呼ばれる4%超には届かないものの、通信・ITサービス系の中では高めで、インカム目的の最低ラインはしっかり満たしている。
次に配当の裏付けとなる収益力を見ると、営業利益率は直近で15%台後半まで上昇しており、ROEも10%超、ROAも9~11%台と高水準を維持している。これは単なる売上規模の大きさではなく、事業の収益性そのものが高いことを意味している。営業キャッシュフローも安定してプラスで推移しており、投資キャッシュフローを差し引いても、配当を継続する余力は十分にある。
配当性向についても、EPSとDPSの関係を見る限り無理のない水準で、利益を食いつぶすような配当ではない。業績が急拡大する局面ではないため、今後配当が急激に増える可能性は高くないが、その分、減配リスクも小さい。ISP事業というストック型モデルの特性上、業績の見通しが立てやすく、配当の安定性はかなり高いと判断できる。
一方で注意点としては、成長期待による株価上昇余地は限定的で、配当利回りが主な投資リターンになりやすい点が挙げられる。つまり朝日ネットは「値上がり益を大きく狙う銘柄」ではなく、「安定した配当を受け取り続ける銘柄」という性格が強い。総合すると、朝日ネットは配当目的の投資として相性が良く、特に業績の安定性を重視しながら3%台後半の利回りを長期で確保したい投資家には向いている。高配当株のような派手さはないが、数字だけで判断する限り、配当の持続性と安心感は高く、インカム重視のポートフォリオに組み込みやすい銘柄という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価684.0円を起点に見ると、朝日ネットは高収益で安定配当を重視する成熟型の企業であり、株価は期待先行で動くよりも、業績と配当を着実に評価されながら推移する銘柄である。老舗ISPとしてのインターネット接続サービスを基盤に、大学向け教育支援システム「manaba」を展開し、通信と教育という安定分野を収益源としている。営業利益率は17%前後と高水準で、ROEやROAも良好な一方、成長率は緩やかで、PERは10倍台前半にとどまる。大きな値上がりは期待しにくいが、安定収益と配当を重視する投資に向いた銘柄である。今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合で考えていきます。
良い場合のシナリオでは、ISP事業と教育クラウド事業がともに安定推移し、営業利益率が17%前後を維持するケースを想定する。ROE、ROAも高水準を保ち、配当も着実に積み上がっていけば、市場は朝日ネットを「高収益・安定配当の優良小型株」として再評価する可能性がある。この場合、PERは現在の10倍台前半から15倍前後まで切り上がり、EPSの成長と評価改善が重なる。5年後の株価は900円から1,050円程度まで上昇し、配当を含めた総リターンはかなり良好なものとなる。
中間のシナリオでは、業績は計画どおり推移するが、大きな成長材料や市場テーマにはならないケースを想定する。営業利益率は16〜17%程度で横ばい、PERも11〜13倍程度に収れんする。この場合、株価は650円から800円程度のレンジで推移し、5年後も現在値付近か、やや上の水準にとどまる。値上がり益は限定的だが、毎年3.6%前後の配当を受け取り続けることで、トータルリターンは堅実なものになる。
悪い場合のシナリオでは、通信事業の競争激化やコスト増により、営業利益率が15%台前半まで低下するケースを想定する。業績そのものが大きく崩れるというより、市場が「成長余地は小さい」と判断し、評価を引き下げる形で調整が起きる展開である。この場合、PERは9〜10倍程度まで低下し、配当が一定の下支えにはなるものの、株価は520円から600円程度まで下落する可能性がある。
総合すると、現在値684.0円を起点とした朝日ネットの今後5年間の値動きは、良い場合で900円〜1,050円、中間で650円〜800円、悪い場合で520円〜600円といったレンジが現実的である。急騰を狙う銘柄ではないが、業績の安定性、高い利益率、3%台後半の配当利回りを考慮すると、大きく失敗しにくいタイプの銘柄と言える。朝日ネットは、値上がり益を狙うよりも、「高収益体質の企業を安定配当込みで長期保有する」ことに向いた銘柄であり、相場環境に左右されにくい資産形成の一部として組み込むには適した存在である。
この記事の最終更新日:2025年12月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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