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SRAホールディングスとは

SRAホールディングス株式会社は、日本で最も古い独立系ソフトハウスの一つである株式会社SRAを中核とする独立系ITサービス企業グループである。株式会社SRAはかつて東証一部に上場していたが、2006年のグループ再編により上場廃止となり、持株会社体制へ移行、現在はSRAホールディングスの完全子会社となっている。SRAホールディングスは2006年9月に東証一部(現プライム市場)へ上場し、グループ全体の経営戦略立案と管理を担っている。本社は東京都豊島区南池袋に置かれている。
SRAは設立当初からソフトウェア開発方法論の研究に取り組み、日本のソフトウェア産業の黎明期を支えてきた企業である。1980年に日本でいち早くUNIXを導入し、構造化プログラミングによる分散開発や、ネットワークを活用したコラボレーション型の開発体制を確立するなど、当時としては先進的な取り組みを行ってきた。VAXの導入も国内のソフトハウスとしては極めて早く、研究機関や大手メーカーと並ぶ技術水準を有していたことを示している。
オープンソース分野では、日本における草分け的存在として知られている。リチャード・ストールマンによるGNU宣言以降、GNUプロジェクトのソフトウェアをはじめとする自由ソフトウェア、オープンソースソフトウェアの導入や技術支援に早期から着手してきた。GNUソフトウェアに関する技術サポートビジネスやGCCのカスタマイズを行うなど、日本国内におけるGNUおよびオープンソース技術の普及に大きく貢献している。Linux、PostgreSQL、PowerGRESなどを活用したシステム構築や、LAPPスタックを基盤とした業種特化型パッケージの提供、組み込み分野向けコンサルティングなども長年の強みとなっている。
現在の事業は、純粋なソフトウェア開発にとどまらず、情報システムの構築・運用、ITコンサルティングへと広がっている。金融機関や研究機関向けの業務用ソフトウェア開発やシステム運用、電機メーカーや車載製品メーカー向けのソフトウェア開発支援が主力であり、高い信頼性や品質が求められる分野で実績を積み重ねてきた。その一方で、BtoBを中心とした事業構造のため、一般消費者向けの知名度は高くないが、専門性の高い分野では確固たる評価を得ている。
また、ソフトウェア工学に基づくプロセス改善支援にも強みを持ち、SPICE、VSE、CMMI、SCAMPIなどの各種アプレイザル手法や、オブジェクト指向分析設計方法論を用いたコンサルティングサービスを提供している。研究機関への導入実績も多く、米国国立気象局のPostgreSQL移行支援、JUNETやWIDEプロジェクトへの参画、SONY製UNIXワークステーションNEWSの開発協力など、日本のネットワーク・IT基盤の発展に関わるプロジェクトにも数多く携わってきた。大学分野では、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスや会津大学をはじめ、30校以上の大学のキャンパスネットワーク管理を担っている。
SRAホールディングスとしては、独立系のシステム開発一括受託会社として、Linuxをはじめとするオープンソース技術に強みを持ちつつ、海外展開も積極的に進めている。長年にわたり蓄積してきたソフトウェア技術、研究機関や金融機関向けの豊富な実績を基盤に、派手さはないが技術力と信頼性を重視する顧客に支持される、安定型のITサービス企業グループと言える。
SRAホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益EPS(円) | 一株当り配当(DPS) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 42,864 | 6,004 | 7,201 | 879 | 71.1 | 140 |
| 連24.3 | 47,125 | 6,907 | 8,575 | 4,584 | 367.8 | 160 |
| 連25.3 | 51,617 | 7,940 | 8,126 | 3,377 | 267.5 | 180 |
| 連26.3予 | 55,500 | 8,600 | 8,450 | 5,080 | 402.1 | 180〜193 |
| 連27.3予 | 58,300 | 9,100 | 8,950 | 5,380 | 425.8 | 180〜199 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023 | 5,141 | -315 | -1,313 |
| 2024 | 4,103 | -165 | -1,575 |
| 2025 | 5,778 | -264 | -1,907 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 14.0% | 3.3% | 2.0% | — | — |
| 2024 | 14.6% | 15.7% | 9.6% | — | — |
| 2025 | 15.3% | 10.9% | 6.5% |
高値平均 25.6倍 安値平均 19.4倍 |
2.06倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、SRAホールディングスの売上高は2024年3月期で471億円、2025年3月期で516億円、2026年3月期予想で555億円と、毎期着実に拡大している。景気循環や一時的なブレはあるものの、事業規模は中期的に右肩上がりで推移しており、安定した受注基盤を持つ企業であることが数字から読み取れる。
利益面では、営業利益が2024年に69億円、2025年に79億円、2026年予想で86億円と継続的に増加している。経常利益は2024年85億円から2025年81億円へ一度低下するが、2026年予想では84億円まで回復しており、大きな失速は見られない。純利益については2024年45億円から2025年33億円へ減少しているものの、2026年予想では50億円まで回復する見通しで、利益の振れはあるが構造的な悪化とは言いにくい。
収益性を見ると、営業利益率は2023年14.0%、2024年14.6%、2025年15.3%と着実に改善している。15%前後という水準はITサービス企業としては高く、価格競争に陥らず、付加価値の高い案件を安定的に積み上げていることがうかがえる。長年培った技術力と顧客基盤が、利益率という形で表れている。資本効率の面では、ROEが2023年3.3%、2024年15.7%、2025年10.9%と年によって振れがあるものの、直近では10%を超える水準を確保している。ROAも2023年2.0%から2024年9.6%、2025年6.5%と改善しており、資産を活用して利益を生み出す力は十分にあると評価できる。
一方で株価の評価を見ると、2025年実績PERは高値平均で25.6倍、安値平均で19.4倍となっている。営業利益率が15%台、ROEが10%前後という収益力を考えれば、PER20倍前後は妥当な評価水準と考えられるが、25倍を超える水準ではやや成長期待を先取りしている印象がある。PBRは2.0倍で、純資産から見て割安感はないが、収益性を考慮すれば極端に割高とも言い切れない。
これらを総合すると、SRAホールディングスは売上と営業利益が安定的に成長し、高い営業利益率を維持できる収益力の高い企業である。利益の年次変動はあるものの、事業の地力は強く、長期で見れば安定したキャッシュを生み出す企業と言える。一方で、株価はすでに一定の成長と高収益性を織り込んでおり、数字だけを見る限り明確な割安局面とは言いにくい。結論としては、業績の質は高く、中長期で安心して保有できる銘柄ではあるが、現状の評価水準では積極的に新規で買いに行くよりも、株価が調整してPERが20倍前後まで下がる場面を待ちたい。既に保有している場合は、業績の推移を確認しながら継続保有、新規投資は押し目待ちが妥当、という投資判断になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的でSRAホールディングスを見ると、結論から言えば「配当重視の投資にも十分に適した銘柄」であり、これまで見てきた業績や指標を踏まえると、配当の安定性と水準のバランスはかなり良い部類に入る。まず予想配当利回りを見ると、2026年3月期で3.63%、2027年3月期でも3.63%と、東証全体の平均を明確に上回る水準にある。いわゆる高配当株と呼ばれる水準に近く、インカム目的で投資する際の最低条件は十分に満たしている。
次に、その配当の裏付けとなる業績を見ると、営業利益は2024年69億円、2025年79億円、2026年予想86億円と安定的に拡大しており、営業利益率も15%前後と高水準を維持している。キャッシュフローを見ても営業キャッシュフローは毎期安定してプラスで、投資キャッシュフローの負担は小さく、財務キャッシュフローは主に配当支出によるマイナスという健全な構造になっている。配当を出すために無理をしている印象はなく、事業が生み出すキャッシュの範囲内で配当を行っていると判断できる。
配当性向についても、EPSとDPSの関係を見る限り極端に高すぎるわけではなく、利益水準に応じた現実的な配当政策と言える。純利益が一時的に減少した年があっても、配当が維持・増配されている点からは、短期的な業績変動よりも中長期の安定配当を重視する姿勢がうかがえる。
一方で注意点としては、ROEが10%前後と決して低くはないものの、爆発的に高い水準ではないため、今後も配当を大幅に引き上げていく余地は限定的である点が挙げられる。つまり、SRAホールディングスは「急激に利回りが跳ね上がる高配当株」ではなく、「3%台後半の利回りを安定的に受け取り続ける銘柄」という位置づけになる。
総合すると、SRAホールディングスは配当目的の投資として十分に魅力があり、特に安定収益・安定配当を重視する投資家には相性が良い。値上がり益を強く狙う銘柄ではないが、業績の安定性を背景に3%台の配当を長期で受け取りたい場合には、ポートフォリオの中核に据えることも検討できる。数字だけで判断するなら、「配当目的としては前向き、価格次第では積極的に検討できる銘柄」という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価5,230.0円を起点に今後5年間を見据えると、SRAホールディングスは業績の振れが比較的小さく、株価も急騰急落よりは、評価水準の変化に応じてじわじわ動くタイプの銘柄である。独立系SIとして長年培ってきた技術力と顧客基盤を背景に、高い営業利益率を安定して維持しており、配当利回りも3%台後半とインカム面の魅力がはっきりしている。一方で急成長株ではないため、株価の上値はPERの上限に左右されやすい。
良い場合のシナリオでは、売上が年率5%前後で安定成長を続け、営業利益率も15%前後を維持するケースを想定する。高付加価値案件の比率が高まり、利益の再現性が市場に評価されれば、ROEは10%前後で安定し、同社は「高収益・安定配当のITサービス企業」として評価され続ける。この場合、PERは現在と同程度の20~25倍が維持され、EPSの成長と配当の積み上がりが株価を押し上げる。5年後の株価は6,200~7,000円程度まで上昇し、配当を含めた総リターンは堅実ながら満足度の高いものとなる。
中間のシナリオでは、業績は堅調に推移するものの、成長率は緩やかで、大きな材料は出ないケースを想定する。営業利益率は14~15%で横ばい、ROEも10%前後にとどまり、市場の評価は次第に落ち着く。この場合、PERは18~20倍程度へとやや低下し、EPSの成長と評価低下が相殺される形となる。株価は4,800~5,600円のレンジで推移し、5年後も現在値近辺での横ばいとなる。値上がり益は限定的だが、3%台後半の配当を安定的に受け取り続ける展開となる。
悪い場合のシナリオでは、IT投資の鈍化や競争激化により利益成長が止まり、営業利益率が13%台まで低下するケースを想定する。ROEやROAもやや低下し、市場が成長性よりも成熟企業としての側面を強く意識し始めると、評価の調整が先行する。この場合、PERは15倍前後まで切り下がり、配当利回りが株価の下支えにはなるものの、評価低下を完全には吸収できない。株価は5,230.0円から3,800~4,400円程度まで下落する可能性がある。
総合すると、現在値5,230.0円を起点としたSRAホールディングスの今後5年間の値動きは、良い場合で6,200~7,000円、中間で4,800~5,600円、悪い場合で3,800~4,400円といったレンジが想定される。急騰を狙う銘柄ではないが、業績の安定性と配当の確実性を重視する投資家にとっては、値動きの穏やかさを許容しながら長期で向き合う価値のある銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2025年12月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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