株価
ラクスとは

株式会社ラクスは、東京都渋谷区に本社を置く日本のSaaS企業で、企業のバックオフィス業務や顧客対応業務を効率化するクラウドサービスを主力としている。社名の「ラク」は漢字の「楽」に由来しており、楽に導入できて楽に使えるITシステムを提供することで、業務の時間を削減し、働く人がより創造的で豊かな時間を持てる社会を実現したいという思想が込められている。
同社は2000年に中村崇則氏によって設立され、当初はITエンジニアスクールとして事業を開始した。その後、中小企業向けの経費精算システムやメール管理システムなどのSaaS事業へと軸足を移し、クラウドサービスを中核とする企業へ成長した。2015年に株式上場を果たして以降、業績は急速に拡大し、創業以来20期以上連続で増収を継続している。SaaS企業としては国内最大級の規模に成長し、2021年には東証マザーズ市場から東証1部へ市場変更した。
事業の中心はクラウド事業であり、特に楽楽精算と楽楽明細が成長を牽引している。楽楽精算は交通費や旅費、経費精算業務を一元管理できるクラウド型経費精算システムで、インボイス制度や電子帳簿保存法にも対応している。導入社数は1万社を超え、クラウド型経費精算システムとして高いシェアと顧客満足度を誇る。楽楽明細は請求書や支払明細書、納品書などの帳票を電子発行できるサービスで、企業のペーパーレス化や経理業務の効率化ニーズを背景に導入が拡大している。
このほかにも、請求書受領業務を効率化する楽楽請求、販売管理業務を自動化する楽楽販売、勤怠管理を行う楽楽勤怠、メールや電話、チャットなどの問い合わせを一元管理できるメールディーラー、メールマーケティングに特化した配配メール、社内問い合わせ対応を効率化するチャットディーラーAI、コールセンターやヘルプデスク向けのCRMである楽テルなど、多数のクラウドサービスを展開している。これらはいずれも月額課金型のSaaSモデルで提供されており、解約率が低く、利用企業の積み上がりによって安定的に売上が拡大するストック型収益構造が特徴である。
また、同社はIT人材の派遣や紹介を行うIT人材事業も展開してきたが、現在はクラウド事業への経営資源集中を進めており、IT人材派遣事業については譲渡方針を示している。今後は高成長が見込めるSaaS事業に注力し、より収益性の高い事業構造への転換を進める方針である。全体としてラクスは、楽楽精算と楽楽明細を中核とした各種クラウドサービスによってバックオフィス業務のデジタル化需要を取り込み、安定した成長と高い収益性を両立するSaaS専業企業としての地位を確立している。
ラクス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益(EPS) | 一株当り配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 27,399 | 1,656 | 1,677 | 1,274 | 7.0 | 1.95 |
| 連24.3 | 38,408 | 5,559 | 5,610 | 4,185 | 23.1 | 2.35 |
| 連25.3 | 48,904 | 10,192 | 10,218 | 8,003 | 44.2 | 4.5 |
| 連26.3 予 | 59,600 | 15,500 | 15,500 | 11,800 | 65.4 | 6.5〜6.6 |
| 連27.3 予 | 62,000 | 16,200 | 16,200 | 12,000 | 66.6 | 6.6〜6.7 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 (百万円) |
営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 2,170 | -699 | -348 |
| 2024.3 | 5,288 | -4,860 | 579 |
| 2025.3 | 9,006 | -3,465 | -1,180 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 6.0% | 13.3% | 9.0% | — | — |
| 2024.3 | 14.4% | 31.3% | 19.7% | — | — |
| 2025.3 | 20.8% | 36.4% | 25.2% |
高値平均 158.0倍 安値平均 93.0倍 |
15.21倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績を見ると、連24.3は売上高384億円、営業利益55億円、経常利益56億円、純利益41億円。連25.3は売上高489億円、営業利益101億円、経常利益102億円、純利益80億円。連26.3予では売上高596億円、営業利益155億円、経常利益155億円、純利益118億円となっている。売上自体も順調に伸びているが、それ以上に営業利益、経常利益、純利益の伸びが非常に大きく、明確に利益率改善フェーズに入っていることが分かる。特に営業利益は2年で約3倍近くまで拡大しており、スケール効果が強く出ている。
収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年6.0%、2024年14.4%、2025年20.8%と急上昇している。20%を超える営業利益率は日本株全体で見てもかなり高水準で、SaaS企業の中でも上位クラスと言える。ROEは13.3%から31.3%、36.4%へと大きく上昇しており、株主資本を使って非常に効率よく利益を生み出せている。ROAも9.0%から19.7%、25.2%まで上がっており、総資産に対する収益力も極めて高い。事業の質、資本効率の両面で、数値だけ見ればほぼ完成形に近い。
一方でバリュエーションを見ると、2025年実績PERは高値平均158.0倍、安値平均93.0倍、実績PBRは15.2倍となっている。PERもPBRも一般的な水準から見れば明らかに高く、今後も高い成長と高収益性が長期間続くことを前提にした評価であることが分かる。業績が好調でも、成長率が少しでも鈍化すれば、株価は大きく調整しやすい水準だと言える。
以上の数値だけで判断すると、会社そのものは非常に優秀で、売上成長、利益成長、営業利益率、ROE、ROAのすべてがトップクラス。一方で株価の評価はすでにかなり先まで織り込まれており、安全余裕は小さい。成長が続く限りは正当化されるが、少しでも期待を下回れば評価調整が起きやすい。
結論としては、成長が今後も続くと強く信じられる人にとっては保有や押し目狙いの対象になるが、割安さや安定性を重視する投資スタイルでは慎重、もしくは調整待ちが妥当、という判断になる。数値だけで見れば「企業の実力は最高水準、株価はかなり高水準」という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点だけで見ると、ラクスは正直かなり弱い。予想配当利回りは連26.3で0.32%、連27.3でも0.32%にとどまっている。この水準は日本株全体の平均配当利回りと比べても極端に低く、一般的な高配当株や安定配当株と比べると、配当目的で保有する意味はほぼないと言っていい。
これまで見てきた通り、ラクスは営業利益率、ROE、ROAが急上昇しており、事業の収益性や成長性は非常に高い。一方で、その稼いだ利益を配当に回す割合はかなり低く、利益は主にクラウド事業の拡大やプロダクト強化といった将来成長のための投資に使う方針であることが、数値からはっきり読み取れる。配当を重視する経営ではなく、あくまで成長優先の資本政策だと判断できる。
また、PERが高水準であることを踏まえると、配当利回りの低さはさらに目立つ。株価が高く評価されている一方で、配当は最小限に抑えられているため、インカムゲイン目的で保有する場合は株価変動リスクだけを負う形になりやすい。株価が横ばい、あるいは調整局面に入った場合、配当による下支えはほとんど期待できない。
結論として、ラクスは配当目的には全く向かない銘柄と言える。配当を重視する投資スタイルであれば、他に利回り2〜4%程度の銘柄はいくらでもあり、あえてラクスを選ぶ理由は見当たらない。一方で、配当はおまけ程度でも問題なく、高い成長による株価上昇を狙う投資家にとっては、引き続き投資対象になり得る。まとめると配当狙いなら不適、成長株として割り切れるかどうかが判断の分かれ目、これがラクスの位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ラクスは、企業のバックオフィス業務を効率化するクラウドサービスを中核とするSaaS企業であり、「楽楽精算」「楽楽明細」を主力に、経費精算、請求書発行、問い合わせ管理などの業務インフラを提供している。中小企業から大企業まで幅広い顧客基盤を持ち、利用企業数の積み上げによるストック型収益モデルを強みとしている。売上高は年々拡大し、それ以上のペースで営業利益、経常利益、純利益が成長している点が特徴だ。営業利益率はここ数年で大きく改善し、20%を超える水準に到達。ROE、ROAも30%前後、20%台と非常に高く、SaaS企業として収益力と資本効率の両面でトップクラスの水準にある。一方で配当利回りは0.3%程度と低く、株主還元の中心は配当ではなく事業成長による企業価値向上に置かれている。現在の株価(1,029.5円)から今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合で書いて行きます。
良い場合のシナリオでは、バックオフィスDX需要の拡大を背景に、「楽楽精算」「楽楽明細」を中心としたクラウドサービスの導入企業数が引き続き増加するケースを想定する。既存顧客の解約率は低水準を維持し、単価上昇やクロスセルが進むことで売上は安定的に拡大する。スケールメリットによって営業利益率は20%超を安定的に維持、もしくはさらに改善し、ROE、ROAも高水準を継続。市場からは高成長・高収益SaaSとしての評価が維持され、PERの高水準もある程度許容される。この場合、現在値1,029.5円を起点として、5年後の株価は1,800円から2,300円程度まで上昇する展開が考えられる。業績成長が素直に株価に反映される、最も強気なシナリオだ。
中間のシナリオでは、クラウド事業の成長は続くものの、市場の成熟に伴い成長率は徐々に落ち着くケースを想定する。売上・利益は堅調に伸びるが、営業利益率は20%前後で頭打ちとなり、ROE、ROAも高水準ながら横ばいに近い動きとなる。市場評価はやや冷静化し、PERは現在よりも低下するが、極端な割安水準までは下がらない。この場合、利益成長と評価調整が相殺され、株価は大きくは伸びず、5年後の水準は1,200円から1,500円程度が現実的な到達点となる。安定感はあるが、値動きは緩やかになりやすい。
悪い場合のシナリオでは、バックオフィスSaaS市場の競争激化やIT投資抑制の影響で、導入ペースが鈍化するケースを想定する。業績自体は黒字を維持するものの、成長率の低下により営業利益率は20%を下回り、ROE、ROAも低下する。成長株としてのプレミアムが剥落し、PERは大きく切り下げられる可能性がある。この場合、業績悪化よりも評価調整が主因となって株価は下落しやすく、5年後の株価は700円から900円程度にとどまる展開も十分に考えられる。配当による下支えが弱いため、下落局面では戻りも鈍くなりやすい。
総合すると、現在値1,029.5円を起点としたラクスの今後5年間の値動きは、良い場合で1,800円から2,300円前後、中間で1,200円から1,500円、悪い場合で700円から900円といったレンジが想定される。事業の質や収益性は非常に高い一方、株価は成長期待に大きく左右されやすく、配当目的には向かない。高収益SaaSの成長が今後も続くと考える投資家が、中長期でキャピタルゲインを狙う銘柄として位置づけるのが妥当だといえる。
この記事の最終更新日:2025年12月15日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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