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オロとは

オロは、自社開発のERPソフトを中核としたクラウドソリューション事業と、Web活用を軸とするマーケティング支援事業を両輪とする情報サービス企業である。東京都目黒区目黒に本社を置き、日本国内に加えてアジア各地に現地法人を展開している点が大きな特徴で、国内市場にとどまらない事業展開を行っている。
同社は1999年、インターネット・バブル期に川田篤と日野靖久によって、ソフトウェアの受託開発を行う企業として設立された。当初は顧客企業向けのシステム開発を中心に事業を行っていたが、その後、受託開発で培った業務知識や技術力を背景に、自社プロダクトの開発へと舵を切った。その代表例が、現在の主力製品であるクラウドERP「ZAC」である。2006年には本社を東京都目黒区目黒に移転し、事業基盤を整えながら成長を続けてきた。
クラウドソリューション事業では、「ZAC」を中心に、中堅・中小企業向けの業務管理システムを提供している。ZACは、販売管理、原価管理、工数管理、勤怠管理などを一元的に管理できるERPで、特にIT企業や広告代理店、コンサルティング会社など、プロジェクト単位で業務を行う企業との親和性が高い。SaaS型で提供されるため、月額課金によるストック型収益を積み上げやすく、同社の安定収益源となっている。また、クラウドPSA「Reforma PSA」も展開しており、より幅広い業種・規模の企業ニーズに対応している。
このほか、企業向けシステムソリューションやITインフラソリューションの提供、ビジネスプロセスアウトソーシングなども手がけており、単なるソフトウェア提供にとどまらず、IT導入から運用、業務改善までを包括的に支援する体制を構築している。これにより、顧客との関係性が長期化しやすく、継続的な取引につながりやすい点も特徴といえる。
もう一つの柱であるマーケティングコミュニケーション事業では、企業のデジタル戦略策定から実行、運用までを一貫して支援している。Webサイト構築やUI・UX設計、デジタル広告の企画・運用、各種マーケティングプロモーションの実施などを通じて、企業の集客やブランド価値向上を支援している。国内案件に加え、海外向けプロモーション支援にも強みを持ち、アジア各地に展開する現地法人を活用することで、グローバル案件にも対応できる体制を整えている。
海外展開については、2012年にマレーシアで現地法人を設立したのを皮切りに、ベトナム、シンガポール、タイ、台湾、中国大連など、アジア各国へ進出してきた。これらの拠点は、マーケティング支援や開発リソースの確保、現地企業向けサービス提供など、複数の役割を担っており、オロの国際展開を支える重要な基盤となっている。人件費や成長市場を意識したアジア展開は、同社の中長期戦略の一部といえる。
2017年には東京証券取引所マザーズへ上場し、翌2018年には東京証券取引所市場第一部へ市場変更を行った。上場後は、ガバナンス体制の強化や事業の透明性向上を進めつつ、自社プロダクトの拡販と海外展開を加速させている。グループ会社としては、国内の開発拠点や教育拠点に加え、中国、台湾、マレーシア、ベトナム、タイなどに複数の現地法人を有し、グループ全体で事業を展開している。
全体としてオロは、受託開発で培った技術力を土台に、自社開発ERPによるストック型収益と、マーケティング支援によるフロー型収益を組み合わせたビジネスモデルを構築している企業である。国内外で進むDX需要や業務効率化ニーズを追い風に、クラウドERPの拡大とアジア展開を成長エンジンとしながら、中長期的な事業拡大を目指している点が特徴だといえる。
オロ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益EPS(円) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連20.12 | 5,240 | 1,707 | 1,713 | 1,182 | 71.2 | 10 |
| 連21.12 | 5,762 | 2,120 | 2,132 | 1,490 | 92.1 | 15 |
| 22.12 | 6,210 | 2,286 | 2,352 | 1,623 | 100.8 | 20 |
| 23.12 | 7,033 | 2,547 | 2,602 | 1,836 | 113.9 | 30 |
| 24.12 | 7,899 | 2,720 | 2,856 | 2,072 | 128.6 | 35 |
| 25.12予 | 9,150 | 3,000 | 3,000 | 2,100 | 134.4 | 50 |
| 26.12予 | 10,700 | 3,700 | 3,700 | 2,600 | 166.4 | 50〜60 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 1,603 | -278 | -436 |
| 2023 | 2,515 | -129 | -517 |
| 2024 | 2,490 | -163 | -1,183 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 36.2% | 20.6% | 14.8% | — | — |
| 2024 | 34.4% | 20.1% | 15.2% | 高値平均26.2倍 / 安値平均14.8倍 | 3.31倍 |
| 2025 | 30.5% | 16.2% | 12.2% | 予想19.64倍 | — |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず売上の規模と伸びを見ると、2023年は約70億円、2024年は約78億円、2025年予想で約91億円、2026年予想で約107億円となっており、派手さはないものの毎年着実に積み上がっている。外部環境に左右されにくいビジネスモデルで、安定した成長軌道に乗っていることが数字から読み取れる。
利益面を見ると、この会社の強さはよりはっきりする。営業利益は2023年約25億円、2024年約27億円、2025年予想約30億円、2026年予想約37億円と、売上以上に安定して伸びている。経常利益も同様に、2023年約26億円、2024年約28億円、2025年予想約30億円、2026年予想約37億円で、本業の収益力が非常に高い水準で維持されている。純利益も2023年約18億円、2024年約20億円、2025年予想約21億円、2026年予想約26億円と、堅実に増加している。
収益性を見ると、営業利益率は2023年36.2%、2024年34.4%、2025年予想30.5%と年々やや低下しているが、それでも30%を超えており、一般的なIT企業やSaaS企業と比べても突出した水準である。多少の低下があっても、事業の儲かりやすさそのものが揺らいでいる印象はない。ROEは2023年20.6%、2024年20.1%、2025年予想16.2%と高水準を維持している。ROAも2023年14.8%、2024年15.2%、2025年予想12.2%で、資産を効率よく利益に変えていることが分かる。2025年は利益率低下を反映して数値が下がる想定だが、それでも市場平均と比べれば十分に高い。
バリュエーションを見ると、2024年実績PERは高値平均26.2倍、安値平均14.8倍と幅があり、相場環境によって評価が大きく振れている。実績PBRは3.3倍で、高収益企業としては標準的からやや高めといった水準である。2025年予想PERは19.6倍となっており、利益成長を前提にすると過度な割高感はない。
全体をまとめると、この会社は売上成長のスピードこそ緩やかだが、営業利益率30%超という圧倒的な収益性を長期間維持しており、ROE・ROAも高水準な、質の高い企業であることが数字からはっきり分かる。すでに一定の評価は株価に織り込まれているため、誰が見ても割安という水準ではないが、利益の安定性と成長の確度を考えると、妥当な評価レンジにあるといえる。
結論としては、短期的な値幅取りを狙う銘柄というより、事業の強さと高収益体質を評価して中長期で保有するタイプの銘柄である。業績が大きく崩れるリスクは小さく、時間を味方につけて利益成長と企業価値の積み上がりを取りにいく投資に向いている、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
まず予想配当利回りを見ると、2025年12月期で2.43%、2026年12月期でも2.43%となっている。この水準は高配当株と呼ばれる3〜4%台には届かないものの、成長株としては比較的しっかりした利回りで、極端に低いわけではない。配当の推移を見ると、これまで10円、15円、20円、30円、35円と段階的に増配しており、2025年予想では50円、2026年予想では50〜60円と、明確な増配基調にある。営業利益率30%超、安定した営業CFを背景に、利益成長を株主還元に回している姿勢ははっきりしている。
キャッシュフローを見ると、営業CFは毎年安定して高水準で、投資CFは小さく、財務CFは配当支払いによるマイナスが中心と考えられる。これは本業で稼いだキャッシュで十分に配当を賄えている状態であり、配当の持続性という点ではかなり安心感がある。一方で、利回りそのものは2%台前半にとどまるため、配当収入を主目的とする投資家にとっては、やや物足りない水準である。高配当株のように、配当だけで満足できる銘柄ではない。
総合すると、この銘柄は「配当が弱い成長株」ではなく、「成長しながらしっかり増配もしていくタイプ」に近い。配当はあくまで副収入であり、主軸は利益成長とそれに伴う株価上昇、そして増配の積み重ねにある。結論として、配当目的“だけ”で買う銘柄ではないが、安定成長と増配を両立する企業として、長期保有しながら配当も受け取りたい投資家には十分に選択肢になる。高配当狙いではなく、トータルリターン重視の配当込み投資に向いた銘柄だと判断できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
オロは、自社開発のクラウドERP「ZAC」を中核とし、Web活用を軸としたマーケティング支援も展開する情報サービス企業である。ERPによるストック型収益と、マーケティング支援によるプロジェクト型収益を組み合わせた事業構造が特徴で、営業利益率は3割前後と非常に高い水準を維持している。ROE、ROAも二桁と資本効率が高く、キャッシュ創出力にも優れた高収益体質の企業である。現在価格2,057.0円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、クラウドERP「ZAC」の導入が中堅・中小企業を中心に順調に拡大し、ストック型収益が着実に積み上がるケースを想定する。売上は安定成長を続け、営業利益率は30%前後を維持、ROEも15〜20%台で安定する。高収益SaaS企業としての評価が一段と定着し、PERは20倍前後で許容される。利益成長と増配が同時に進み、現在価格2,057.0円から株価は緩やかに切り上がり、5年後には3,200円から3,600円程度まで上昇する展開が考えられる。値上がり益と配当の両方が期待できる、最も強気なシナリオである。
中間のシナリオでは、ERP市場での競争は続くものの、既存顧客の継続利用と新規導入がバランスよく進み、売上・利益は安定成長にとどまるケースを想定する。営業利益率は30%前後からやや低下するが、それでも高水準を維持する。市場の評価は落ち着き、PERは15〜18倍程度に収れんする。この場合、株価は大きく跳ねることはなく、上下を繰り返しながら推移し、5年後の水準は2,200円から2,600円程度に収まる可能性が高い。配当利回りは中程度で、トータルリターンは安定した値上がり益と配当の組み合わせとなる。
悪い場合のシナリオでは、ERP市場の競争激化や新規導入ペースの鈍化により成長率が低下し、営業利益率も25%前後まで下がるケースを想定する。高収益企業としての評価が後退し、PERは12〜14倍程度まで切り下がる。この場合、株価は調整局面に入り、現在価格2,057.0円から1,600円前後まで下落する可能性がある。その後は強いキャッシュ創出力と増配余地を背景に下値は固まるものの、5年後でも1,700円から1,900円程度にとどまり、現在値近辺を行き来する展開になりやすい。
総合すると、現在価格2,057.0円を起点としたオロの5年間の値動きは、良い場合で3,200円から3,600円前後、中間で2,200円から2,600円、悪い場合で1,700円から1,900円といったレンジが想定される。配当目的だけではやや弱いものの、非常に高い営業利益率と安定したストック型ビジネスを背景に、値上がり益と増配を狙う中長期投資家向けの銘柄だといえる。
この記事の最終更新日:2025年12月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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