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シンクロ・フードとは

シンクロ・フードは、飲食店向けに特化したインターネットプラットフォームを運営する企業であり、飲食店の開業前から運営中、さらには退店・事業承継に至るまで、飲食店のライフサイクル全体を支援するサービスを展開している。2003年にアクセンチュア出身の藤代真一氏によって設立され、飲食業界に特化したプラットフォームビジネスという明確なコンセプトのもと成長してきた。
中核となるのが「飲食店ドットコム」であり、飲食店開業希望者、現役の飲食店経営者、閉店や事業整理を検討する事業者まで、幅広い層が会員として登録している。会員数は創業以来一貫して増加しており、この会員基盤を軸に多様なマッチングサービスを生み出している点が同社の最大の強みである。求人、不動産、店舗設計、食材仕入れ、業務支援といった飲食店経営に必要な情報やサービスを一つのプラットフォーム上で提供している。
収益モデルは、求人掲載料や各種情報掲載料、広告収入が中心で、飲食店や関連事業者からの課金によって成り立っている。飲食店向け求人サービスでは「求人@飲食店.COM」を展開し、慢性的な人手不足という業界課題に対応してきた。不動産分野では「居抜き情報.COM」を通じて、出店・退店時のマッチングを支援しており、店舗開業の初期コストを抑えたい事業者からの需要が高い。
また、店舗デザインや内装関連の情報を提供する「店舗デザイン.COM」、飲食店のPR支援を行う「飲食店PR.COM」など、周辺領域にもサービスを広げてきた。近年では、飲食店向けM&A支援、フランチャイズ比較サービス、POSレジ比較サイト、飲食店経営者と税理士をつなぐ「飲食店ドットコム 税理士探し」など、経営支援色の強いサービスも拡充している。
こうしたサービスはすべて、飲食業界に特化している点が特徴であり、業界特有の課題やニーズを理解したうえで設計されている。単一サービスで完結するのではなく、飲食店ドットコムの会員基盤を起点に、複数のサービスを横断的に利用させることで、プラットフォームとしての価値を高めている。
沿革を見ると、2003年の設立以降、複数の専門サイトを段階的に立ち上げ、2016年に東証マザーズへ上場、その後2017年には東証一部へ市場変更を果たしている。飲食業界という景気変動の影響を受けやすい分野に属しながらも、情報・マッチングを軸とした軽量なビジネスモデルにより、固定費を抑えた運営が可能な点も同社の特徴である。
総じてシンクロ・フードは、飲食店経営のあらゆる場面に寄り添う情報とサービスを提供する、飲食業界特化型プラットフォーム企業である。求人や不動産といった需要の大きい分野を入口に、経営支援や周辺サービスへと展開を広げることで、会員基盤を活かしたストック型に近い収益構造を築いており、飲食業界のインフラ的存在を目指して事業を展開している企業だといえる。
シンクロ・フード 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(円) | 一株当たり配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 2,930 | 876 | 878 | 628 | 23.6 | 0 |
| 24.3 | 3,602 | 1,038 | 1,036 | 704 | 26.4 | 10 |
| 25.3 | 3,951 | 1,097 | 1,086 | 659 | 24.0 | 15 |
| 26.3予 | 4,100 | 820 | 820 | 570 | 20.3 | 15 |
| 27.3予 | 4,500 | 1,000 | 1,000 | 700 | 25.0 | 15 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 850 | -4 | 0 |
| 2024 | 736 | -530 | 49 |
| 2025 | 439 | -10 | 374 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 29.8% | 17.7% | 14.6% | ― | ― |
| 2024 | 28.8% | 16.4% | 13.8% | ― | ― |
| 2025 | 27.7% | 12.3% | 10.7% | 13.6~26.7倍 | 3.83倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見ると、連24.3は営業利益10億円、経常利益10億円、純利益7億円と、飲食店向けプラットフォーム企業としては高い収益力を示している。連25.3では営業利益10億円、経常利益10億円、純利益6億円と、売上は伸びているものの利益はほぼ横ばいで推移している。一方、連26.3予では営業利益8億円、経常利益8億円、純利益5億円と減益予想となっており、短期的には利益成長が一服する前提となっている。売上自体は拡大基調にあるものの、利益面では成長が鈍化している点がまず確認できる。
収益性指標を見ると、営業利益率は29.8%、28.8%、27.7%と非常に高水準を維持しつつも、年々低下傾向にある。ROEは17.7%、16.4%、12.3%、ROAは14.6%、13.8%、10.7%で、こちらも依然として高い水準ではあるが、効率性は明確に低下している。これはビジネスモデル自体の収益力は高いものの、成長投資や競争環境の影響により、利益率と資本効率がピークアウトしつつある段階に入っていることを示している。
次にバリュエーションを見ると、2025年の実績PERは高値平均26.7倍、安値平均13.6倍とレンジが広く、市場の評価が業績の振れに敏感であることが分かる。PBRは3.8倍とかなり高く、資産価値よりも成長性と収益力を強く織り込んだ評価水準にある。利益率やROE、ROAが低下傾向にある中で、このPBR水準は決して割安とは言えず、今後の成長継続が強く求められる状態といえる。
これらの数値を総合すると、シンクロ・フードは営業利益率3割近い高収益モデルを持つ優良なプラットフォーム企業である一方、直近では利益成長が鈍化し、ROEやROAも低下局面に入っている。にもかかわらず、PERは10倍台後半から20倍台、PBRは3倍超という評価が付いており、市場は引き続き成長企業としての位置づけを崩していない。
結論としては、シンクロ・フードは事業の質そのものは非常に高いが、足元の利益成長鈍化を考えると、現在の評価水準はやや成長期待先行の面がある。高い利益率とROEを背景に中長期での再成長を信じられる投資家にとっては魅力がある一方、安定性や割安さを重視する投資スタンスには向きにくい銘柄であり、成長継続が確認できるかどうかが投資判断の分かれ目になる、という評価になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点でシンクロ・フードを見ると、向いていなくはないが、配当特化銘柄ではないという位置づけになる。連26.3、連27.3ともに予想配当利回りは2.34%で、東証全体で見れば平均よりやや高い水準ではあるものの、高配当と呼べるほどではない。一方で、同社は無配から配当を開始し、その後も15円配当を維持する計画となっており、配当姿勢そのものは明確に前向きである点は評価できる。
利益水準を見ると、連24.3で営業利益10億円、純利益7億円、連25.3でも営業利益10億円、純利益6億円と、十分な配当原資を確保できている。連26.3予では営業利益8億円、純利益5億円と一時的に利益が落ちる想定だが、それでも配当維持が可能な水準であり、配当性向としては無理のない範囲に収まっている。営業CFも毎期プラスで、本業から安定して現金を生み出せている点は、配当の持続性という意味では安心材料になる。
ただし、シンクロ・フードはもともと高い営業利益率とROEを武器に成長してきた企業であり、PBRは3倍超、PERも10倍台後半から20倍台と、明確に「成長株の評価」がついている。このため、配当利回りそのものを主目的に投資すると、株価変動リスクに対して利回りの魅力が相対的に弱く感じやすい。
総合すると、シンクロ・フードは高配当銘柄ではないが、利益水準とキャッシュフローを背景に、安定配当を上乗せした成長株という位置づけがしっくりくる。配当だけを目的に長期保有する銘柄ではないものの、成長を期待しつつ、2%台前半の配当を受け取れる点を評価する投資家にとっては、バランスの取れた選択肢といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
シンクロ・フードは、飲食店向けに求人、不動産、内装、食材仕入れ、M&A支援などの情報サイトを運営するプラットフォーム企業である。主力サービスである「飲食店ドットコム」を中心に、飲食店の開業前から運営、退店までのライフサイクル全体を支援するビジネスモデルを構築している。求人掲載料や広告収入を主な収益源とし、固定費の低いプラットフォーム型ビジネスである点が特徴だ。営業利益率は2割後半と非常に高く、ROE、ROAも二桁水準を維持しており、収益性の高い企業である。現在価格641.0円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、飲食店の新規出店や人材需要が回復・拡大し、求人関連サービスを中心に売上と利益が再び成長軌道に乗るケースを想定する。営業利益率は25〜30%近辺を維持し、ROEも15%前後で安定する。プラットフォーム型で利益率が高い点が改めて評価され、成長株としての位置づけが強まる。PERは20倍台後半から25倍前後で許容され、利益成長が株価を押し上げる。この場合、現在価格641.0円から段階的な株価上昇が続き、5年後には1,100円から1,300円程度まで上昇する展開が考えられる。値上がり益を主軸とした、最も強気なシナリオである。
中間のシナリオでは、飲食業界は緩やかな回復にとどまり、売上・利益は横ばいから小幅成長にとどまるケースを想定する。営業利益率は25%前後を維持するものの、ROEやROAは徐々に低下し、高成長企業としての評価は落ち着く。市場の評価は冷静となり、PERは18〜22倍程度、PBRも切り下がる。この場合、株価は急騰せず、上下を繰り返しながら緩やかに推移し、5年後の水準は750円から900円程度に収まる可能性が高い。配当利回りは高くないため、トータルリターンは値上がり益が中心となる。
悪い場合のシナリオでは、外食市場の停滞や人材需要の低迷が長期化し、求人・広告需要が伸び悩むケースを想定する。営業利益率は依然として高水準を維持するものの、売上成長が止まり、成長株としての評価が剥落する。PERは15倍前後まで低下し、PBRも調整される。この場合、株価は調整局面に入り、500円前後まで下落する可能性がある。その後は利益率の高さとキャッシュ創出力を背景に下値は固まるが、5年後でも550円から650円程度にとどまり、現在値近辺を行き来する展開になりやすい。
総合すると、現在価格641.0円を起点としたシンクロ・フードの5年間の値動きは、良い場合で1,100円から1,300円前後、中間で750円から900円、悪い場合で550円から650円といったレンジが想定される。配当目的にはやや物足りないが、高い営業利益率とプラットフォーム型ビジネスの強みを背景にした成長余地は大きく、飲食業界の回復を前提に値上がり益を狙う中長期投資家向けの銘柄だといえる。
この記事の最終更新日:2025年12月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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